相続税から控除できる葬儀費用とは?控除の可否を完全解説!
葬儀費用には相続税から控除できるものがあるとご存知でしたでしょうか?
葬儀にかかる費用についてはある程度控除を受けることができますが、逆に控除できない費用もあります。
そして、控除を受けるには様々な条件や必要な書類などがあるので分かりにくいと思います。
この記事では、具体的な控除の可否や申請方法、および知っておきたい知識について詳しく解説していきます。
葬儀費用に関する基礎知識
葬儀費用には、葬式を行うにあたって必ず発生すると思われる費用のことを指します。
その葬儀費用に含まれるものの中には、故人から遺産を相続する際に発生する相続税を控除できるものがあります。
まずは葬儀や費用の相場について詳しく解説していきます。
葬儀とは?
葬儀とは、規模や状況によって様々な種類に分けられます。主な葬儀は下記の7種類となるので、一つ一つ解説していきます。
1.一般葬
一番メジャーな葬儀の方法で、通夜・葬儀式・告別式などを行う葬儀です。遺族以外にも友人や職場の関係者、近所の方など色々な方に参加をしてもらいます。
一般葬については「知っておきたい家族葬と一般葬との違いとは?費用と参列基準とマナーについて」の記事もご参考ください。
2.社葬・合同葬
会社代表者や企業の発展に貢献した人を讃える会社主体で行う葬儀のことです。
会社の規模によって数十人から数百人の規模で行う場合もあります。
少ない人数の場合には一般葬と同じ形式で行いますが、百人規模の場合には遺族や友人だけ家族葬を行い、後日改めて本葬を行います。
社葬については下記記事もご参考ください。
・社葬とは?意味・流れ・マナー・費用を完全解説!
・社葬の目的は追悼だけではない!企業が行う目的や費用について解説
3.家族葬
家族葬とは、遺族や親族、友人など近しい人のみで行う小規模の葬儀です。葬儀の内容自体は一般葬と特に変わりはありません。
家族葬については下記記事もご参考ください。
・家族葬とは?家族葬のメリット・デメリットから参列者をどこまで招待するかまで徹底解説!
・家族葬によるメリットデメリットから、家族葬で葬儀を行う場合の費用相場までを徹底解説!
・家族葬とは?流れ・費用・マナー・選ばれる理由を完全解説!
4.密葬
家族葬と同じように遺族などの近しい人だけで行う葬儀です。
家族葬との違いは、周囲に故人が亡くなったことを伏せて行うという点です。また、社葬・合同葬のような後日改めて本葬を行うことが前提とされています。
密葬については下記記事もご参考ください。
・密葬とは何?密葬を行うメリット・デメリットなどを徹底解説
5.無宗教葬
無宗教葬とは、特定の宗教・宗派に捉われない葬儀の方法です。
葬儀の内容は、葬儀場の許可を得ることができれば、自由に企画・進行することができます。
故人との思い出の映像を流したり、故人が好きだった曲を演奏したりなども可能です。
しかし、菩提寺がある人が無宗教葬を行うと菩提寺への納骨を断られるなどトラブルになることがあるので注意しましょう。
無宗教の葬儀については下記記事もご参考ください。
・仏教のお葬式と何が違うの?無宗教で行うお葬式
・無宗教葬儀を完全解説!流れ・費用・マナー・供養方法を紹介!
6.直葬(火葬式)
通夜や葬儀などを行わず、火葬だけを行う葬儀です。葬儀の中で最も費用を抑えることができるのはこの直葬です。
通夜や告別式などを省略してしまうため、親族間でトラブルが起きる可能性がありますので、注意してください。
直葬については下記記事もご参考ください。
・火葬のみで葬儀を行う「直葬」を完全解説!
・葬儀無しで火葬のみ?直葬の流れからメリットデメリットまでを徹底解説!
7.一日葬
通夜を行わず、葬儀と告別式・火葬までを1日で行う葬儀です。
喪主や遺族が体力・時間的負担を軽減するためや、通夜費用や参列者の宿泊費用を抑えたい場合に選ばれる葬儀方法です。
近年では一日葬を選択する人が増えてきていますが、菩提寺がある場合には行えない可能性があります。
理由としては、読経は通夜に行われるものと葬儀で行われるもので意味合いが異なるため、菩提寺によっては許可が下りない可能性があります。
一日葬については下記記事もご参考ください。
・一日葬とは?流れ・メリット・デメリット・食事・マナーを完全解説!
・色々なお葬式の形 一日でお葬式を行う「一日葬」とは?
葬儀費用とは?
そもそも葬式の形式は仏式、キリスト式、無宗教など様々な種類があります。
葬儀の種類も先ほど紹介した通り、一般葬や密葬など様々です。
そのため葬儀費用を一律に定義することは不可能であるため、葬儀費用については相続税法で明確に定められていません。
ですが、全く定められていない状態だと相続税の計算ができなくなるため、国税庁が一定の規則を定めています。
葬儀にかかる費用の内訳と相場
では具体的に葬儀にかかる費用はどのくらいなのでしょうか。費用がかかる項目と相場について詳しく解説していきます。
1.祭壇費
祭壇とは、遺影や供物を飾る壇のことです。祭壇費はその祭壇のレンタル費や人件費を含む費用です。
祭壇費は葬儀費用の中でもかなりの割合を占めます。
特に祭壇のレンタル費用に幅があり、白木祭壇や花祭壇などがありますが、花祭壇は造花を使うのか生花を使うのかでも費用が変わります。
祭壇費の費用相場は数十万〜百万円程度です。
祭壇については下記記事もご参考ください。
・葬儀の祭壇はどう選ぶ⁉︎葬儀に使用する祭壇の種類について
・後悔しない祭壇の選び方:意味と宗教ごとの祭壇と相場を解説!
2.人件費
葬儀を進める上で葬儀会社のスタッフが様々な業務を行います。例としては、葬儀の司会進行や後片付けなどを行います。
葬儀の規模が大きければ大きいほど、必要な人数が増えるので人件費はかさみます。また、親族に受付や接待などを補助してもらうことも可能です。
3.車両のレンタル費用
葬儀で必要な車両をレンタルする必要があります。遺体を運ぶ霊柩車や遺族、親族が葬儀場から火葬場までの移動用に使用するマイクロバスなどが挙げられます。
マイクロバスの一般的な費用は3〜5万円程度です。また、霊柩車の費用は国土交通省によって定められており、基本料金は1~5万円です。
通常は走行距離に応じて料金が加算されていきます。
4.施設利用費
葬儀場や火葬場を使用するための施設利用費がかかります。葬儀場はセレモニーホールや寺院が一般的です。
葬儀場は大きく分けて民間企業が運営するものと、公共団体が運営しているものがあります。
全国的には公営の火葬上が多く、公営の葬儀場は税金で自治体が設置しているため利用費が安く、数万円程度で利用できます。
民営の葬儀場は10〜30万円程度です。火葬場も同様に民営と公営に分けることができます。
公営の相場は数万円程度ですが、民営の場合は5〜10万円程度です。
また、遺体が大人か子供かでも料金が変わり、子供は大人の約7割程度の金額です。子供の分け方は施設によって異なりますので、施設に確認してみましょう。
葬儀場については下記記事もご参考ください。
・葬儀場とは?公営と民営の違いから葬儀場の選び方まで完全解説!
・新型コロナの影響がこんなところにも?火葬場・葬儀場・斎場の対応一覧!
5.飲食接待費用
葬儀費用での飲食接待費用とは、通夜振る舞い、初七日法要の後の精進落とし、返礼品や香典返しが挙げられます。
通夜振る舞いは、通夜の後に親しい参列者で行う食事会のようなもので、オードブルなどを出すことが多く、そのほかにお清めとして日本酒のようなアルコールも提供します。
通夜振る舞いの費用は一人当たり2〜3,000円程度で見積もることが一般的です。
精進落としは、故人や僧侶への感謝として振る舞う食事のことで、葬儀後に行います。
内容としては懐石料理などのお膳で用意することが多いです。食材の制限などは特にありませんが、お祝い事を連想させる伊勢海老などは避けた方が良いでしょう。
精進落としの際にもアルコール類を提供します。相場としては通夜振る舞いよりも高額で、5〜6,000円程度だとされています。
お斎については下記記事もご参考ください。
・おとき(お斎)とは?意味とマナーと香典相場を3分で解説!
6.返礼品・香典返しの費用
通常、葬儀に参列してくれた人にはタオルやお茶のような返礼品を渡すことが一般的です。
また、香典を渡してくれた人に対しては香典返しを送る必要があります。
香典返しとは、四十九日の法要が済みましたという報告も兼ねて、遺族がお礼として贈るものです。
>>49日とは?49日(四十九日)の意味や行われる法要について徹底解説!
通常、あいさつ状を添えて郵送します。お茶やお菓子、洗剤などを送りますが、基本的には受け取った金額の3~5割を目安としておこないます。
香典返しについては下記記事もご参考ください。
・香典返しのマナーを完全解説!相場・時期・挨拶状・例文・品物も紹介!
7.お布施
お布施の内訳は、読経料・戒名料が含まれます。葬儀でのお布施の合計金額の相場は、五十万円前後が一般的です。
読経料は、お経を唱えてくれるお礼としてお渡しするものです。費用は十万円前後です。戒名料は授かる戒名の宗派やランクによって変動します。
高い位の戒名であればそれに合わせて金額も上がります。
戒名を授かる際に注意したいのが、入るお墓によって位を決めなければならないということです。
先祖と同じお墓に入る場合には先祖より位の高い戒名はつけないようにしましょう。夫婦で同じお墓に入る場合には、それぞれ合わせた位の戒名にしましょう。
新しく建てるお墓に入る場合には、自由に決めてしまって構いません。費用はだいたい数万〜数十万円と幅が広いです。
続いてはお御車代ですが、葬儀場まで赴いてくれた僧侶への謝礼としてお渡しします。費用は一万円程度です。
最後に御膳代ですが、僧侶が通夜振る舞いや精進落としなどの食事会を辞退された場合にお渡しします。相場は一万円前後だといわれています。
>>御膳料とは?相場と渡し方と注意点とマナーを解説!
お布施については下記記事もご参考ください。
・お布施を完全解説!意味・相場・表書き・裏書などを解説!
・3分で分かるオンライン葬儀!香典・お布施・費用を完全解説!
戒名については下記記事もご参考ください。
・戒名とは?浄土宗の戒名の特徴から他宗の特徴、生前戒名まで徹底解説!
・戒名の居士とは?他の戒名との違いから戒名の決め方、生前戒名まで完全解説!
弔事についての不明点や疑問は『やさしいお葬式』から24時間365日無料相談も承っています。電話でもメールでも行えますのでお気軽にご連絡下さい。『やさしいお葬式』では葬儀の見積もり、遺影写真、参列者のリストアップなど事前準備をおすすめしています。葬儀の作法や服装などについてもご相談できます。
相続税とは?
相続税とは、被相続人(故人)の遺産を相続した場合に、その遺産総額の金額が一定値よりも大きいと発生する税金です。
相続税の計算方法
では、その一定値を求めるのにはどうすれば良いのでしょうか。具体的な計算方法は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求めることができます。
法定相続人が二人の場合、「3,000万円+(600万円×2)=4,200万円」となります。
この金額を超えていなければ、相続税の申告は必要ありませんし、納税も行いません。金額が超えた場合には、その超えた分に応じた相続税率が発生します。
相続税の控除ができる葬儀費用について
それでは相続税の控除が可能な葬儀費用にはどのようなものがあるのでしょうか。
先ほど葬儀の種類は多岐にわたるため細かく定義できないと解説しましたが、相続税法基本通達13条4項によって一定の条件は定められています。
具体的に定められている内容は下記の通りです。
(1) 葬式または葬送の際、またはその前に、埋葬、火葬、納骨などにかかった費用(仮葬式と本葬式を行う場合は、その両者の費用)
(2) 葬式の際に施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものにかかった費用
(3) (1)または(2)のほか、葬式の前後に生じた出費で、通常の葬式に伴うものと認められるもの
(4) 遺体の捜索または遺体や遺骨の運搬にかかった費用
控除の対象になる人
葬儀費用の控除対象になる人は相続税法第13条で定められており、葬儀費用を支払った人が対象となります。
相続税は遺産の総額を各相続人が定められた通りに受け取ったと仮定して、それぞれの取り分に対して税率をかけて計算し、合計したものが相続税の総額となります。
葬儀費用を支払った人にのみ控除が適用される
葬儀費用も同様で、葬儀費用全体に控除がされるのではなく支払った人にのみ控除が適用されます。
つまり、葬儀費用を相続人全員で分割して支払うとした場合には、支払った全員が控除を受けることができます。
配偶者以外が葬儀費用を払うことで節税効果になる
相続税の控除制度で、配偶者控除というものがあります。配偶者控除では、簡単にいうと配偶者は相続税額を無料にすることができる制度です。
つまり、配偶者が葬儀費用を支払って控除されたとしても、配偶者控除で無料となるため控除のメリットは受けられません。
なので、配偶者以外の相続人が葬儀費用を払うことで、控除の節税効果を最大限受けることができます。
控除の対象になる葬儀費用項目
実際に葬儀費用の中で控除の対象となるものは下記の通りです。
つまり、葬式に関係するほとんどの費用は控除を受けることができるということです。
領収書が出ないものはメモを残しておく
注意しておきたいのが、葬式費用にはお心付けやお布施などの領収書が発行できないものが多数あります。
その場合には具体的な金額や日付けを記入したメモを残しておきましょう。
虚偽の申請を行った場合
支払う税金を少なくするため、メモなどで虚偽の申請をした場合は、税務署から追徴課税を受ける場合があります。「これくらいなら…」と軽い気持ちで虚偽の申請を行うと、後々大変なことになりますので注意しましょう。
控除の対象になる葬儀回数
それでは、葬儀を一回だけではなく複数回行なった場合にも控除を受けることはできるのでしょうか。
葬儀を出生地と亡くなった土地で二回に分けて行いたい場合には、どちらも控除を受けることができます。
しかし、一回目を親族のみで行い、二回目を会社で行う場合には、親族のみの葬儀だけが控除の対象となります。
会社で行なった葬儀に関しては、会社の経費として計上することができます。
相続税の控除対象にならない場合
控除対象にならないものは相続税法基本通達13条5項によって定められています。
1.香典返戻費用
2.墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料
3.法会に要する費用
4.医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用
つまり、通夜・告別式・葬儀・火葬に関わらない費用については基本的には控除の対象外となります。
葬儀費用の控除については下記記事もご参考ください。
・葬儀費用で相続税控除できる?葬儀費用に関わる相続税の考え方を完全解説!
・遺贈を完全解説!相続との違い・流れ・控除内容を紹介!
控除対象にならない葬儀費用項目
控除を受けることができない葬儀費用には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。下記に当てはまる費用に関しては、控除の対象外となります。
対象にならない人の条件
葬儀費用が控除になる対象の項目だとしても、控除対象にならない人がいます。ではどのような人が控除の対象外となるのでしょうか。
控除の対象外となってしまう条件は下記の二点です。
1.制限納税義務者である場合
制限納税義務者とは、相続や遺贈が発生した際もしくは相続、遺贈が発生した時から遡って5年以内に、国内に住所がない人のことです。
また、被相続人(遺産を残して亡くなった人)が外国人の場合でも相続税が発生します。
2.相続人および包括受遺者以外の場合
相続人および包括受遺者以外の場合とは、例えば特定受遺者が当てはまります。特定受遺者とは、遺言により特定された財産を遺贈された人をいいます。
具体的には「○○銀行の預金を○○に遺贈する」というような特定遺贈を受けた人です。この特定遺贈を受けた人は葬儀費用の控除を受けることはできません。
相続税の控除申請をする際の注意点
もし相続人で相続税の計算を行う場合には、控除制度を見落とさないように注意することが大切です。
見落としてしまうことで、本来支払わなくて良いお金まで支払うことになってしまうからです。では、相続税の控除制度にはどのようなものがあるのか解説します。
贈与税額控除
相続税には、生前に被相続人から受け取った贈与財産について贈与税と相続税の二重課税になってしまう可能性があります。それを防ぐのが贈与税額控除です。
贈与税額控除とは、相続財産にプラスされた贈与財産にすでに納めている贈与税があった場合には、贈与税額を相続税額から差し引くことができるというものです。
しかし、控除できる税額には利子税や延滞税といった付帯税は含まれません。なお、ここでいう贈与税額控除には相続時精算課税制度での贈与税を含みません。
贈与税については「家の名義変更を親から子にする際の節税方法を完全解説!贈与税を非課税にするには?」の記事もご参考ください。
除障害者控除
相続人が85歳未満の障害者の場合、相続税額を控除できる制度です。障害者控除を受けるには、相続人に対して条件が設けられます。条件は下記の三項目です。
・相続人が法定相続人であること
・財産を受け取る際に国内に住所を持っていること
・財産を受け取る際に障害者であること
また、上記の障害者には「一般障害者」と「特別障害者」によって違いがあり、控除の金額も異なります。
一般障害者の場合の控除金額は「(85歳-財産取得時の年齢(1年未満は切り捨て)×10万円」で求めることができます。
特別障害者の場合の控除金額は「(85歳-財産取得時の年齢(1年未満は切り捨て))×20万円」となります。
相次相続控除
相次相続控除は十年以内に再度相続が発生した場合に受けられる控除制度です。この控除を受けるには下記の条件を満たしている必要があります。
・相続開始前十年以内の相続で、今回の相続での被相続人が財産を取得している
・相続開始前十年以内の相続で取得した財産で、今回の相続での被相続人が相続税を納付している
・相続放棄や相続権を失っていない相続人である
外国税額控除
外国に財産がある場合、財産がある国と日本の両方から相続税が課税されるため、この二重課税を防ぐことを目的として控除制度です。
・財産の所在地国で支払った相続税に相当する金額
・日本の相続税額×国外財産の金額÷相続人の相続財産の総額
上記の金額のうち少ない金額を相続税から控除できます。
未成年者控除
相続人が未成年の場合、ある一定額を相続税額から控除できる制度です。控除を受ける条件は下記の三点です。
・財産取得時において相続人が20歳未満である
・財産取得時に、日本国内に住所を所有している
・財産を取得した相続人が法定相続人である
控除できる金額の計算方法は、「(20歳-財産を取得した時の年齢(1年未満は切り捨て))×10万円」です。
用意すべきもの
相続税の申告には必要な書類があります。
身分証明の書類
一つ目は身分の証明に関する以下の書類です。これは被相続人と相続人の書類が必要となります。
・被相続人の住民票の除票
・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の戸籍の附表
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人の戸籍の附表
・相続人全員の印鑑証明書
・相続人全員のマイナンバーカード
相続する財産によって準備する書類
二つ目は、相続する財産の種類によって準備する必要がある書類です。
不動産の場合には、下記の五種類の書類が必要です。
・固定資産税課税明細書
・登記簿謄本(全部事項証明書)
・公図及び地積測量図の写し
・住宅地図
・賃貸借契約書
生命保険の場合には、下記の三種類の書類が必要です。
・生命保険金支払通知書
・生命保険権利評価額証明書
・契約に関する資料
生前贈与を行なっている場合には、下記の四種類の書類が必要です。
・精算課税贈与
・特例贈与
・暦年課税贈与
・贈与契約書
もし被相続人が借金などの債務を抱えていた場合には、借入金残高証明書、返済予定表、金銭消費貸借契約書が必要です。
このように、申告に必要な書類は条件によって変動するため、個人で全てを用意するのは困難です。そのため、税理士などに相談することをおすすめします。
申請期間
相続税の申告及び納税は、故人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
それを過ぎてしまうと、葬儀費用の控除は認められなくなります。そのため、葬儀後の手続きは多いですが期間に余裕を持って申請手続きを行いましょう。
期間を過ぎてしまうと、延滞税を払わなければいけません。延滞税の計算方法は、期間を過ぎた日数によって変動します。
1.期限の翌日から二ヶ月以内に納付した場合
年7.3%と前年の11月30日の公定歩合+4%のいずれか低い方の金額
2.納期限から二ヶ月を超えた場合
年14.6%
申請方法
まずは申告する前に、そもそも相続税の申告が必要かどうかをチェックしましょう。
基礎控除額の計算方法
相続する金額が基礎控除額を下回っていれば相続する必要はありません。基礎控除額の求め方は下記の計算式を利用します。
基礎控除=3,000万円+(法定相続人の数×600万円)
申告は行う必要がある
注意したい点として、特例や税額控除などを利用して基礎控除を下回ったとしても申告自体は必要となるということです。
そのため、一旦は特例など無視して基礎控除の計算を行うと良いでしょう。
相続税申告書を作成
自分が納税する必要があると判断できたら、まずは相続税申告書を作成します。
相続税申告書は全国の税務署で受け取ることができますし、国税庁のホームページでダウンロードすることもできます。
申告書は毎年更新されるので、必ず最新版の申告書を入手しましょう。
そのほかにも申告書以外に必要な書類があります。
例としては遺産分割協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書や戸籍謄本、相続財産の資料、本人確認書類などが必要です。
公式サイト「相続税の申告手続」|国税庁
これらの書類を用意して、管轄の税務署へ提出します。
その他注意すべきこと
被相続人の債務と葬式費用は、相続した財産で賄うことができるため、財産を全て把握しておく必要があります。
例えば、被相続人が入居していた老人ホームから返金された一時金や、子供の名義で作成した預金なども含まれます。
相続財産から債務と葬式費用を引くことで、相続財産が基礎控除額に収まることがあるため、計算を怠らないようにしましょう。
相続税の申告書は専門知識が必要
また、相続税の申告書は一般的に確定申告よりも難易度が高く、個人で行うのは難しいとされています。
理由として、土地を相続した場合にはその土地価格の評価を行う必要があり、専門的知識が求められるからです。
そのほかにも、どの特例を適用することができるのかなどを判断することが難しいからです。
そのため、特例を使用したい場合や遺産に不動産関係のものが多い場合などには税理士に相談すると良いでしょう。
相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
相続税については下記記事もご参考ください。
・葬儀費用で相続税控除できる?葬儀費用に関わる相続税の考え方を完全解説!
・死亡退職金を完全解説!相続税の課税対象になる?
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葬儀費用の控除について覚えておきたい知識
葬儀費用の控除について、事前に知っておきたいこととして、凍結された口座からの引き出しや相続放棄について、複数回の葬儀は控除の対象になるのかなどがあります。
では具体的に知っておきたい項目について解説していきます。
凍結口座からの引き出し
葬儀費用は葬儀後にすぐ払わなければならないため、まとまった現金が必要です。
しかし、銀行口座は名義人が死亡した連絡が来たら口座は凍結されて現金の移動が行えなくなってしまいます。
ですが、2019年に相続法が改正されたことによって、遺産分割協議が終わる前に相続人の判断で凍結された口座から現金を引き出すことが可能となりました。
法改正前に凍結された口座から現金を引き出したい場合には死亡診断書や相続人全員の同意による署名、遺言状などが必要で、すぐに引き出すことは困難でした。
遺言状については下記記事もご参考ください。
・遺言書の書き方を徹底解説!ケース別文例・有効な書き方を解説!
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書類と上限金額が決まっている
しかし、必要な書類の提出と引き出せる上限金額が決まっています。
必要な書類は、本人確認書類、名義人の戸籍謄本または全部事項証明書などですが、銀行によって必要な書類は異なりますので、引き出す前に銀行に確認してみましょう。
引き出せる金額は、一つの金融機関につき150万円までで、かつ法定相続分の三分の一までです。
銀行については「ゆうちょ銀行相続を徹底解説!流れ・必要書類・期間・費用紹介!」の記事もご参考ください。
銀行預金の仮払い制度
家庭裁判所に葬儀費用を捻出する必要があると、申し立てを行うことで上記の金額の制限を受けることなく預貯金からお金を引き出すことができます。ただし、銀行からお金を引き出すことにより、他の相続人に不利益が発生すると裁判所が判断した場合には認められません。
相続放棄
相続する財産の中に、多大な負債などがある場合などは相続の権利を放棄することができます。
相続には放棄・限定承認・単純承認の三種類があります。
①放棄
放棄は全ての権利を放棄することです。
②限定承認
限定承認は財産から負債を差し引いてプラスになった場合のみ相続する方法です。
③単純承認
単純承認は全ての遺産を相続する方法です。相続の財産を放棄する前に少しでも使用してしまった場合には、単純承認となり放棄はできません。
しかし、葬儀費用を相続財産で支払った場合でもその後に相続放棄することが可能です。
相続放棄については下記の記事もご参考ください。
・代襲相続を完全解説!範囲・割合・相続放棄のルールを紹介!
・親の借金を相続しないための方法を完全解説!
香典は原則非課税
香典は遺族や故人のために送られるお金のため、基本的には葬儀費用を賄うために使用されることが多いです。
そのため、香典は相続税の課税対象にはならず、かつ相続人が分割請求することはできません。
もし香典で葬式費用が十分にまかなえなかった場合には、相続人同士で支払うことが一般的です。
香典については下記記事もご参考ください。
・3分で分かる法事のお金の相場(香典・お布施):お金の入れ方と袋の書き方!
・香典を完全解説!意味・歴史・金額相場・書き方・包み方・渡し方を解説!
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二回葬儀をしても控除されるか?
葬儀は一回だけでなく二回行なったとしても控除の対象になります。
しかし、控除を受けるには条件があり、一回目の告別式と二回目の告別式の内容が同じで、供養の儀式ではなく葬儀であると認められた場合です。
葬儀の内容によっては控除の対象外となる恐れがあるので、事前に税理士に相談してみることをおすすめします。
信託の相続対策との違い
信託とは、自分の所有している財産を信頼できる人に託すことで自分の目的のために運用・管理をしてもらう制度のことです。
信託は基本的には遺産相続で起こりうるリスクを避けるために行われる制度で、節税にはつながりません。
遺言の場合、自分の遺産を相続してほしい人を指定することができますが、その次の相続人を決めることはできません。
そのため、本来は二世代に渡って相続させたいと思っても、最初の相続人が全て処分してしまえば次の相続人には遺産は渡りません。
家族信託では数世代に渡って相続人を指定できる
しかし家族信託では遺産を相続する人を数世代に渡って指定することができるため、そういった相続に関するトラブルを避けることができます。
また、遺産の全てを家族信託で遺産の承継者を決めることで遺言の作成の必要も無くなります。
家族信託のデメリット
家族信託のデメリットとしては、弁護士や司法書士を受託者に指定できないということと信託財産が不動産の場合には名義変更が必要になるということです。
また、家族信託で発生する費用として、不動産の名義変更として登記費用がかかります。
家族信託については下記記事もご参考ください。
・家族信託を完全解説!手続き・費用・認知症対策を紹介!
・家族信託を完全解説!手続き・費用・活用事例を紹介!
互助会で葬儀費用代が充てられた場合は注意
互助会は結婚式やお葬式にあらかじめ備え、月々の掛け金を支払っていくシステムです。もし故人が互助会に契約をおこなっていた場合は、葬儀費用から互助会で充てられた金額を引く必要があります。
互助会の契約者が故人ではなく、妻など相続人であった場合は、互助会で充てられ金額前の葬儀費用を控除することができます。
相続税から控除できる費用/できない費用のまとめ
相続税から控除できる費用とできない費用について、ここで分かりやすいように箇条書きでまとめます。
葬儀では領収証が発行されないことが多いので、かかった費用や日付けなどをメモに残しておきましょう。
控除できるものは、基本的に葬儀に関わるものについてです。逆に控除できないものとしては、仏壇やお墓の準備費用など葬儀が終わった後にかかる費用です。
控除できるもの
控除できないもの
相続税については下記記事もご参考ください。
・葬儀費用で相続税控除できる?葬儀費用に関わる相続税の考え方を完全解説!
・不動産相続を完全解説!手続き・費用・相続税・節税方法を紹介!
相続税から控除できる葬儀費用についてのまとめ
相続税から控除ができる葬儀費用について解説してきました。ここでは今までの内容をわかりやすく要点を箇条書きでまとめます。
・葬儀は規模や状況によって一般葬、家族葬、密葬などの種類に分けることができる。
・葬儀費用は、宗教や宗派によって葬儀のやり方が異なるため明確には定められていないが、国税庁によって一定の規則が定められている。
・相続税は、遺産相続の金額が基礎控除を上回っている場合に課せられる税金である。基礎控除は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求めることができる。
・葬儀費用の控除対象となる人は、葬儀費用を支払った人である。相続人が複数いる場合、全員で支払うことで全員分の葬儀費用が控除される。
・葬儀の内容によって、二回にわけて葬儀を行ったとしても控除を受けることができる。
・相続税の控除として、様々な特例が設けられている。
・控除の対象にならない人は、相続人および包括受遺者以外の場合もしくは制限納税義務者である場合である。
・相続税の申告および納税は、亡くなったことが分かった日の翌日から十ヶ月以内に行わなければならない。もし超えてしまった場合には、それに応じて延滞税を支払う必要がある。
相続税の申請書は、確定申告よりも難易度が高いとされており、個人で作成するのは困難です。
そのため、もし相続税を申告しなければならないとなった場合には、税理士に相談することをおすすめします。
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール