遺言書の書き方を徹底解説!ケース別文例・有効な書き方を解説!

遺言書には遺産の分配方法などの重要事項がたくさん詰まっています。

この書面で遺された人物への分配などが決まるので、できればミスなく作成しておきたいところです。

そこで今回は、遺言書を作成する上で注意しておきたい点をはじめ、ケース別に文例もご紹介します。

INDEX

01
遺言とは
02
遺言書の種類
03
公正証書遺言の書き方
04
秘密証書遺言の書き方
05
特別証書遺言の書き方
06
自筆証書遺言を無効にしないチェックポイント
07
自筆証書遺言で相続人を困らせないチェックポイント
08
自筆証書遺言作成にあたって覚えておきたい遺言書の効力
09
標準的な遺言書の文例
10
配偶者にすべて相続させたい場合(子供がいない)の文例 
11
配偶者にすべて相続させたい場合(子供がいる)の文例
12
子供同士で分ける財産に差をつける場合の文例
13
財産を特定の団体に寄付したい場合の文例
14
本来、相続人ではない娘・婿に財産をあげたい場合の文例
15
内縁の妻(夫)に財産をあげたい場合の文例
16
遺言書の書き方についてのまとめ

遺言とは

そもそも「遺言」とは、遺産を所有している人物(被相続人)が「自分の死後の遺産分配に関する意思表示」を、法定相続人をはじめとした関係者に遺しておくことです。

この遺言内容をまとめたものが「遺言書」と呼ばれるものです。 

前提として、被相続人の遺産がどのように分配されるのかは民法によって規定されています。

具体的には、法定相続人である「配偶者・両親(直系卑属)・子供(直系卑属)・兄弟姉妹(傍系血族)」に対して、民法で定められた「法定相続分」に則り被相続人の遺産が分配されるということです。

被相続人の遺言書が無く分配に関する意思を確認できない場合は、この民法に従います。 

しかし、被相続人の中には「特にお世話になった妻には多めの遺産を遺したい」「この土地は必ず長男に継がせたい」というような意思を持っている方もいるでしょう。

こうした思いがあるのに民法通りの分配割合に従っていては、被相続人の意思は実現されないということになってしまうのです。 

しかし、遺言書がある場合は「民法の規定よりも遺言書に記載された内容が優先される」というのが原則。

当然ですが、被相続人の遺産をどうするかを決めるのは被相続人自身です。

つまり遺言書があることで、「相続に関する被相続人の明確な意思」を最優先で主張できると言えるでしょう。 

だからと言って「遺言書に記載されている内容全てが実現される」というわけではありません。

法定相続人には「遺留分」という法律によって「どのような場合でもこれだけは請求できる」という割合が守られているため、「その割合を侵害するような内容に関しては認められない」ということは覚えておきましょう。

遺言書の種類

遺言書は、被相続人の意思を優先させることに関して大きな役割を果たしています。

それではこれから遺言書の種類を確認していきましょう。

具体的には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「特別方式遺言」に分類されます。 

自筆証書遺言

「自筆証書遺言」は、遺言書の中では最もポピュラーであると言われています。

名前の通り「遺言書の文章・署名・捺印・作成年月日の記載」など、被相続人が自筆で内容の全てを書かなければなりません。

遺言書の保管も被相続人自身で行うのが一般的です。

ただし法律の改正により、「財産目録(遺産を一覧にまとめたもの)」のみPC等での作成ができます。 

また、改竄の恐れがあるため録画や録音もNG。

万が一「書面に書き起こす」という方法以外で遺言を遺したり、遺言書の一部でも被相続人以外の人物が書いた場合、代筆したのが配偶者や子供だとしても遺言書の内容全てが無効になります。

このように自筆証書遺言に限らず、基本的に遺言書は被相続人自らの手で作成することが求められます。

少々手間がかかりますが、遺言書の信頼性を上げるための決まりです。

そのため、できれば被相続人が文字を書けたり正しい判断を下せるうちに作成しておくと良いでしょう。

万が一認知症や不慮の事故によって自筆での作成が難しい状況になると、遺言書を遺すことが極めて困難になります。 

なお、先述の通り原則として自筆証書遺言は被相続人自身の手で保管しますが、場合によっては「自筆証書遺言書保管制度」を利用しても問題ありません。

この制度は、遺言書の紛失や「そもそも法定相続人が遺言書の存在を知らない」という事態を解決するために制定されたものです。

費用はかかりますが、確実に遺言書を保管しておきたい方にはオススメです。

手続きとしては、まず「法務局手続案内予約サービス」という専用サイトで事前予約を行います。予約が確定したら、以下の書類を準備しましょう。

◎完成した自筆証書遺言

◎住民票

◎パスポートや免許証などの本人確認書類

◎法務局のHPからダウンロードした保管申請書

◎手続きの手数料3,900円

これを法務局の窓口に提出し無事に申請が通れば遺言書の保管が開始されます。

承認されると、保管の証明となる「保管証」が発行されるので大切に保管してください。これは再発行不可です。 

また自筆証書遺言書保管制度を利用することで、被相続人が亡くなった際に登録しておいた法定相続人に対して訃報が届くようになります。

これにより法定相続人の抜け漏れがほぼ無くなるため、相続手続きもかなり進めやすくなるでしょう。

ただし、この制度で行われるのはあくまでも遺言書の保管のみであり、中身の確認などは行われません。

そのため、もし内容にミスがあっても気づかないこともあるため要注意です。

ちなみに、自筆証書遺言を見つけたとしても勝手に開封してはいけません。

なぜならそれを許可してしまうと、内容を意図的に改竄したり破棄されてしまう恐れがあるためです。

中身を確認する際には必ず家庭裁判所の「検認」を受けましょう。

公正証書遺言

「公正証書遺言」を作成するためには、公証役場へ出向いたり証人を探さなければならないなど、少し手間がかかります。

しかしその分、他の形式の遺言書と比べて「信頼性を担保することができる」というのが特徴です。 

原則として公正証書遺言は、自筆証書遺言とは違いそれを作成した公証役場にて保管されます。

被相続人の手元に残るのはコピーであるため、仮にそれを見つけた人物が勝手に開封しても問題ありません。

なぜなら改竄されたとしても、原本が公証役場に保管されている以上すぐに見破ることができるためです。

そうした理由から、自筆証書遺言のような家庭裁判所による検認も不要です。

秘密証書遺言

「秘密証書遺言」では、原本の保管や遺言書の内容の確認までは行いません。

ただし「遺言書が間違いなく存在する」ということを保証してもらうことができます。 

特別方式遺言

上記3つの方法をまとめて「普通方式」と呼ぶのに対して、そのどれにも当てはまらない方法で作成した遺言書は「特別方式」と言われています。

この特別方式は3種類に分けることができ、いずれもかなり特殊な状況下でのみ適用可能です。

公正証書遺言の書き方

最初に公正証書遺言の書き方について確認していきましょう。 

まず最寄りの公証役場へと出向きます。この際に証人を2名以上同行させるのですが、その証人は必ず「定められた条件に当てはまらない」ということが必要です。

具体的には「未成年」「出向いた公証役場の関係者」「公証人の配偶者や4親等以内の親族」「法定相続人及びその関係者」という条件に当てはまらないことが必要になります。

もしも証人が被相続人側で見つからなければ、費用はかかりますが役場に準備してもらうことも可能です。

証人と公証役場へ到着すると役場側が準備した「公証人」が待っているので、その公証人に対して遺言内容を伝えます。

口頭ではっきりと伝えましょう。そして公証人が聞いた内容を基に書き起こしてくれるので、完成後に中身をチェックします。

特にその内容で問題がなければ、その場にいる全員分の署名と捺印をすることで完成です。 

以上の手順通りに作成することで「遺言書の内容が法的に問題ないか?」ということをプロである公証人に確認してもらうことができます。

自筆証書遺言では自分で調べてミスが発生しないように気をつけたとしても、法律に関しての素人が作成する以上はどこに間違いがあるかわかりません。

そのリスクをほぼ0にできるというのは公正証書遺言のメリットと言えるでしょう。

保管に関しても安全性が上がります。公正証書遺言で作成した遺言書の原本は公証役場にて保管されるため、紛失や改竄の恐れがありません。

被相続人の手元にあるのはコピーなので、仮にその中身が変わったとしても原本さえ無事なら問題ないのです。 

しかし、以下のような状態で作成した遺言書は無効になるので気をつけてください。

◎上記の「証人になれない条件」に当てはまる人物が証人だった

◎被相続人が口頭ではなく身ぶり手振りで遺言内容を伝えた

◎公証人か証人のどちらかが(お手洗いや電話などで)席を立っている間に作成した

◎(認知症などが原因で)被相続人自身に遺言能力がなかった 

秘密証書遺言の書き方

次に秘密証書遺言の具体的な書き方についてご説明します。 

基本的に遺言書の作成方法自体は自筆証書遺言と同じルールです。

しかし、署名と捺印さえ被相続人本人のものであれば、PCでの作成や文の代筆も認められています。

そのため自分の身体の状況に合わせて作成できるのが特徴と言えるでしょう。

遺言書が完成したら、公正証書遺言と同じように2名以上の証人と一緒に公証役場へ出向きます。

そこで公証人に対して「自分がこの遺言書を確かに作成した」ということを宣言し認めてもらうことで完了です。

先述の通り、秘密証書遺言では遺言書の保管や内容確認までは行ってくれません。

しかし遺言書の存在を公に保証してくれます。

また、自筆でも問題ないため「遺言書があるということは知っておいてほしい。だが内容は知られたくない」という場合にぴったりと言えるでしょう。 

特別証書遺言の書き方

最後に「特別証書遺言」の具体的な書き方についてご説明します。その分類は以下の通りです。

◎一般応急時遺言

「一般応急時遺言」は、被相続人の身に危険が差し迫っている状況下で適用可能な遺言書です。

具体的には「不慮の事故にあい大怪我をした」などの状況が当てはまります。 

作成のためにはまず3名以上の証人を準備してください。その3名に対して遺言内容を口頭で伝え、誰か1名に書面に書き起こしてもらいます。

特にその内容で問題がなければ、全員分の署名と捺印を行い完成させましょう。

ただし、完成してから20日以内に家庭裁判所の承認を受けないと無効になるため要注意です。

大怪我を負った後で大変かとは思いますが、忘れずに手続きしておきましょう。

◎難船危急時遺言

「難船危急時遺言」も被相続人の身に危険が差し迫っている状況下で適用可能ですが、その中でも特に「船や飛行機による事故」に遭遇している場合は難船危急時遺言を用いて作成します。 

この方法で作成する場合は、証人の数は2名以上であれば大丈夫です。

また、証人に対して遺言内容を口頭では伝えますが、その内容を必ずしも書面に書き起こす必要もありません。

ただし一般応急時遺言と同じように、作成から20日以内に家庭裁判所の承認を得ることが必要です。 

◎隔絶地遺言

「隔絶地遺言」は、何らかの事情により被相続人と連絡を取ることが難しい場合に適用可能です。

具体的な状況としては「感染症の疑いで隔離されている」「現在服役中である」などがあります。

この場合では、遭遇している状況によって証人の種類が異なるので注意してください。

例えば「服役中→証人1名と警察官1名」「船の中→証人2名と船長か事務員1名」というような組み合わせになります。

状況に応じて自分に必要な証人の種類をしっかり確認しておきましょう。

自筆証書遺言を無効にしないチェックポイント

どの方法で作成してもある程度の手間はかかります。

しかしいずれの場合でも、定められた遺言書のルールに従い作成しなければ内容全てが無効になってしまう恐れもあるため要注意です。

では具体的にどのような点に注意すれば良いのでしょうか? 

なお、ここでは最もオーソドックな自筆証書遺言について取り上げていますが、他の方式で作成した遺言書に関しても基本的なルールは同じであることも多いです。

必ず自筆で記載

自筆証書遺言の場合はこれが大前提となります。先述の通り、誰であろうと一部でも代筆してしまうと遺言書の内容全てが無効になるので要注意です。

「財産目録」も作成しておきましょう。相続する予定の遺産をしっかり記録しておくことで、法定相続人のその後の手続きがスムーズになります。

ただし先述の通り、ここだけは手書きでなくても大丈夫です。 

必ず署名・押印

被相続人本人が作成したものであるとわかるように、フルネームで確実に記載しておきましょう。捺印も忘れずに行います。

必ず日付を記載

「遺言書の作成年月日」も必要です。この年月日がいつなのかによって、相続に関して期限があるものに影響が出る場合もあります。

記載するときは必ず「2020年1月1月」「被相続人の満80歳の誕生日に作成」のように明確に記載してください。

「1月吉日」などの表現では正確な期日がわからないため無効となります。 

訂正の方法に気を付ける

遺言書を作成する中で、文字の書き間違いや「やはり分配割合に関して訂正したい」というような時もあるでしょう。

その際の訂正方法にも注意してください。

まず、間違えてしまった部分に二重線を引きます。その二重線の上に訂正印を押し、すぐ近くに訂正後の文章を正確に記載しましょう。

そして遺言書の一番最後に「訂正した部分はどこか?」「何文字削除したか?」「何文字追加したか?」という内容を記載し、署名を行うことで訂正は完了です。 

訂正部分が数カ所ならこの方法で問題ないでしょう。しかしあまりにも多くなるようなら遺言書がかなり見にくくなってしまいます。

その場合は新しい遺言書を作成しても構いません。

2枚以上になる場合の対応

内容によってはボリュームが出てしまい、遺言書が複数枚に渡ることもあるでしょう。

その場合は、ホッチキスでまとめておき「契印」を行うのがオススメです。 

「契印」とは、書類などが複数枚になってしまった場合に活用される方法のことです。

両ページにまたがりながら捺印を行うため、書面が続いているということをきちんと伝えることができます。 

この契印に関しては、遺言書を作成する上での絶対的なルールではありません。

そのため契印がなくても無効にはなりませんが、安全・確実に遺言書を守るためにも契印を行なっておいて損はないでしょう。

自筆証書遺言で相続人を困らせないチェックポイント

他にも、遺された法定相続人が困らないようにするために注意すべき点があります。 

意思を明確に記載

実際に遺言を書くときは、まず「遺産の内容をかなり明確に記載しておく」ということを意識しましょう。

一口に遺産と言ってもその種類は様々。「現金」「住居」「土地」「銀行口座」などがあるため、被相続人本人以外では正確に把握できない可能性があります。

そのため、遺産についての話をするときは「どの遺産についての話なのか?」をかなり明確にしておきましょう。

例えば、土地であれば「どこの住所に存在している土地を何㎡くらいの広さで相続させるのか?」、口座であれば「どの銀行のどの口座番号の口座を相続させるのか?」ということまで事細かに記載しておきます。

これが少しでも曖昧で、条件に当てはまりそうな遺産が複数あるとトラブルに繋がる可能性も否定できません。 

そして、上記の話とも絡みますが「誰に何をどのくらい相続するのか?」ということも正確に記載しておきましょう。

遺産内容は上記のように詳細にしておき、「誰に」の部分も「次女」などの曖昧な表現ではなく「次女である◎◎」というようにフルネームで記載します。

これも曖昧な場合だと後ほどトラブルになることがあるでしょう。

これらの記載内容に関することはどの遺言書でも共通なのでしっかり確認しておくことが必要です。

このように、被相続人の意思を「誰が見ても一目でわかるように明確に記載しておく」ということを何よりも優先しましょう。

遺留分に配慮

先述の通り、法定相続人には民法で定めた「遺留分」という形で一定の分配割合が保証されています。

いくら遺言書といえども、この遺留分の割合を無視した内容で作成することはできません。

例えば、遺言書に「全ての不動産や現金を愛人に相続させる」という内容が記載されていた場合、被相続人の意思とはいえ遺された法定相続人からしたら決して納得できるものではないでしょう。

このような時は民法で定められた割合に応じて「遺留分侵害額請求」を行うことができます。 

この遺留分侵害額請求は、「遺留分を侵害された人物から遺留分を侵害した人物」に対して出されるものです。

そのため被相続人の意図しないところでトラブルを生む可能性もあるので十分に注意しましょう。

遺言執行者を選任

相続人がスムーズに相続を行えるように「遺言執行者」を選任することも検討してみましょう。

この「遺言執行者」とは、遺言書の内容を実行するために選任された人物のことです。

遺留分などの法的事項に注意しながら、トラブルが起きないようにしつつ無事に相続行為を完了させることを目的として動きます。

遺言執行者は被相続人の意思を実現させることを最優先にしながら動く人物です。

そのため原則として法定相続人は、この遺言執行者の決めたことに対しては素直に従う必要があります。

一方で遺言執行者も、それだけの権限を与えられている以上は正しく運用することが求められます。

例えば、「特定の法定相続人に口利きをして分配割合が有利になるような進め方をする」というような行為は許されません。

もしそのような行為をすれば解任されることもあります。 

このように遺言執行者には大きな権限がありますが、その分こなすにはかなりの労力必要です。

そのため、働きに対する相応の報酬を支払うことが定められています。

基本的には遺言書で報酬内容を決めておくことが多いです。万が一記載がなければ法定相続人との協議で決めましょう。 

自筆証書遺言作成にあたって覚えておきたい遺言書の効力

このように遺言書では(遺留分などに配慮した上で)被相続人の意思を最優先に実現させることができます。

では遺言書には他にもどのような効力があるのでしょうか? 

遺言書の執行に関する効力

被相続人の子供は法定相続人として認められています。しかしその子供が未成年の場合は、相続を含めた法律行為を適用することはできません。

本来子供には遺産相続の権利があるにも関わらず、年齢のせいで正当な取り分で引き継げないというのはおかしいですよね。

いくら未成年といっても、法律で定められた権利は受け取れるようにするべきです。

そこで被相続人は、未成年である子供の代理で相続行為を行うことのできる「後見人」となる人物を指定することができます。 

相続分の指定

原則として被相続人の遺産は、民法で定められた法定相続分に則りながら法定相続人へと分配されます。

しかしこれが優先されるのは、特に被相続人による遺言等が無い場合です。 

もし遺言書が遺されていれば、民法の分配割合よりもそちらが優先されます。

なぜなら遺言書の最大の目的は「被相続人の意思を実現すること」にあるため。被相続人にはそれぞれどのように遺産を残したいのかという思いがあることでしょう。

そうしたものを無視してまで民法の法定相続分を適用することはできないようになっているのです。 

もちろん「遺留分」を侵害するような分配を行うことはできません。

法定相続人の最低限の利益を守りながらも被相続人の意思を実現する必要があります。

相続人の廃除

遺言書においては、「誰にどの遺産を相続させるか?」ということを指定できるのと同時に「誰に遺産を相続させないか?」ということも定めることができます。

これは「相続人の廃除」と呼ばれる制度であり、特定の人物への遺産相続を拒否することが可能です。 

もちろん正当な理由もなく拒否することはできません。それだけでは遺留分の主張をされてしまい、最低限の遺産は相続されてしまいます。

そうならないためにも、廃除される相続人にはそれ相応の理由が必要です。具体的には、以下のようなことが発生すると廃除対象の相続人として認められます。

◎生前に被相続人を虐待していた

◎懲役刑(5年以上)を受けたことがある

◎やむを得ない理由を除き、被相続人に借金を背負わせた経験がある

◎愛人がいた

◎被相続人の遺産を無断で処分したことがある 

上記のような行為を行なった法定相続人に対しては相続廃除制度を適用することができます。

ただし一点注意しなければならないことがあり、それは「遺留分制度が適用される法定相続人に対してのみ相続廃除制度を行使できる」ということです。

そのため、遺留分制度の対象外である兄弟姉妹に関しては相続廃除を行うことはできません。 

それでは「兄弟姉妹には必ず遺産を相続しなければいけないのか?」という疑問が浮かびますが、決してそうではありません。

兄弟姉妹を相続廃除したい場合は、遺言書に「兄弟姉妹には遺産を相続させない」ということを記載しておけば適用されます。

この相続廃除を取り消したい場合は、「廃除を取り消すという内容を遺言書に記載してもらう」「被相続人の許しを得て廃除取り消し手続きを家庭裁判所で行う」のどちらかが必要です。

・相続欠格制度

基本的にはこの相続廃除制度を適用して相続権を剥奪するのが一般的です。

しかし実は、この相続廃除よりも強い効力を持つ「相続欠格制度」というものが存在します。

これは相続廃除以上の悪事を働いた場合に適用されるものではありますが、内容が内容なので実際に適用される例は少ないかもしれません。具体的には以下のような事象が当てはまります。

◎被相続人への脅迫によって遺言書の内容を都合の良いように改竄させた

◎自分にとって不利な内容の遺言書を意図的に破棄した

◎被相続人あるいは他の法定相続人への殺人(未遂含む)を行なった

◎被相続人あるいは他の法定相続人が殺害された(未遂含む)ことを知っていながらそれを告発しなかった

相続欠格に当てはまる事象はいずれもかなり重いものばかりであり、刑事事件に発展する可能性もあるでしょう。

そのため、相続欠格に関しては基本的に取り消しはできません。 

一応制度上は取り消しのための手続きが存在しており、「生前に被相続人から許しを得た上で遺産の生前贈与を行う」というものがあります。

しかし殺人などの犯罪行為がある以上、生前に許してもらえる可能性はほぼ0と言っていいでしょう。 

相続人の身分に関する効力(認知)

被相続人に実子以外の隠し子がいる可能性も否定できません。

その場合は通常だと相続権は与えられませんが、遺言書の中で隠し子を認知すれば他の法定相続人と同様に相続権を与えることが可能です。

相続人相互の担保責任の指定

相続によって引き継がれるのは純粋な遺産だけではありません。

仮に相続した遺産に何らかの欠陥があり、「実はすでに別の人物の手に渡っていた」「隠された借金があった」という事態になることも想定されます。

もしそのような欠陥があった場合、法定相続人はその負債も背負わなければなりません。

これは「担保責任」と呼ばれています。法定相続人側からすると、できればそうした負債まで引き継ぎたくないですよね。

そのため、そのままにしておけば法定相続人同士の間で「誰が負債を継ぐのか?」ということでトラブルになる可能性もあるでしょう。

そうしたことを防ぐために、被相続人は遺言書の中で「誰が担保責任を負うのか?」「どのような割合で責任を負担してもらうのか?」ということを指定することができます。

このようにしておけば被相続人の意思をはっきりさせておくことができるため、法定相続人側としても従いやすくなるでしょう。 

相続財産の処分

これまでは「被相続人の遺産は基本的に法定相続人に相続される」ということをメインにお話ししてきました。

しかし遺言書の内容によっては、それ以外の第三者やNPO団体などに遺産を渡すことも可能です。

もし法定相続人以外に遺産を遺す場合は、相続ではなく「遺贈」という扱いになります。

遺贈を行うことで被相続人は「受贈者」と呼ばれ、遺贈を受ける相手は「受遺者」と呼ばれるのが一般的です。

なお、受遺者には遺産を受け取るかどうかを決める権利が与えられています。

ちなみに、遺贈の場合にかかる税金も「相続税」となりますが、「法定相続人以外」「配偶者及び1親等の親族以外」の人物に遺贈されると、相続税が2割増しになるため注意しましょう。 

遺言執行者の指定または委託

先述の通り、遺言書の中で「遺言執行者」を定めることもできます。

これは強制ではありませんが、スムーズな遺産相続を実現するためにもできれば指定した方が良いでしょう。

遺言執行者が行うべき業務としては「相続が必要な財産目録の作成」「名義変更手続き」「金融機関での各種手続き」「戸籍集め」「遺贈登記」など、幅広く担当する必要があります。

そのため、遺言執行者に指定された人物が「時間的に担当する余裕がない」というようなケースも十分あり得るでしょう。

その場合は断っても何ら問題がありません。 

このような時間的な問題や専門知識が必要であることを考えると、司法書士などの専門家に依頼することを検討してみても良いでしょう。

もちろん費用はかかります。

しかし専門知識の無い人物が担当してスムーズに相続できないという状態を避けるためには、あらかじめ専門家に依頼する方が妥当と言えます。

また、遺言執行者を直接指定するのではなく「被相続人の死後に遺言執行者を指定してくれる人物を指定する」ということも可能です。

少し回りくどいように思えますが、こうすることによって「遺言書の作成当時」と「被相続人が亡くなった時」で状況が変化した場合に対応することができるようになります。

例えば、「遺言者の中で指定した遺言執行者が死亡した」というような状況も起こり得るでしょう。

そうなってしまうと再度遺された側で遺言執行者を決めなければなりません。

しかし上記のような内容を記載しておくことで、信頼できる人物にその場の状況に応じた人物を指定してもらうことができるのです。

遺産分割方法の指定と分割の禁止

被相続人に遺産分割方法に関する希望があれば、遺言書に記載しておくことで指定することができます。

また、遺言執行者と同じように「被相続人が亡くなった後に遺産分割方法を決める人を指定する」ということも可能です。

こちらも、遺言者の作成当時と被相続人が亡くなった時の状況を考慮して適切に決めてくれる人を指定できるということですね。

また、場合によっては遺産分割自体を禁止することもできます。もちろんこれは半永久的に禁止されるわけではなく、「相続が始まってから5年以内」の期間内であれば禁止にすることが可能です。

しかし、なぜわざわざ禁止にする必要があるのでしょうか?それは、遺言書があるとは言え遺産分割が始まってからトラブルになる可能性もあるため、一旦お互いに落ち着いて話し合える期間として禁止期間を設けているのです。 

遺留分侵害額請求方法の指定

すでに何度か取り上げましたが、遺言書の分配内容に納得できなければ「遺留分侵害額請求」に基づき、最低限の取り分を請求することができます。

これは法律に基づく正当な権利です。

具体的な取り分は以下の通り。

①法定相続人が「配偶者だけ」の場合、遺産全体の1/2が遺留分として保証される

②法定相続人が「配偶者と親」の場合、まず配偶者に遺産全体の1/3が遺留分として保証され、親には遺産全体の1/6が遺留分として保証される。父母が両方いる場合は、1名あたり「1/6×2=1/12」で分配する

③法定相続人が「親だけ」の場合、遺産全体の1/3が遺留分として保証される。父母が両方いる場合は、1名あたり「1/3×2=1/6」で分配する

④法定相続人が「配偶者と子供」の場合、まず配偶者に遺産全体の1/4が遺留分として保証され、子供には遺産全体の1/4が遺留分として保証される。子供が2名以上の場合は、1名あたり「1/4×人数分」で分配する

⑤法定相続人が「子供だけ」の場合、遺産全体の1/2が遺留分として保証される。子供が2名以上の場合は、1名あたり「1/2×人数分」で分配する

⑥法定相続人が「兄弟姉妹」の場合、遺留分は無し

このように、被相続人と法定相続人の関係性によって遺留分の割合は異なります。特に兄弟姉妹には遺留分制度がないため気をつけましょう。

この遺留分では、まず遺留分を侵害されたと主張する人物が侵害しているであろう人物に対して請求を行います。

ここで協議の上解決できるのが一番です。しかしそうでない場合は、家庭裁判所で調停を行います。

万が一ここでも解決しない場合は、地方裁判所の判断に従ってください。

なお、この遺留分の請求には期限があります。この時効には2パターンあり、「いつの間にか相続が始まっていればそこから10年以内」「通常通り相続の始まりや遺留分の侵害を知った日から1年以内」のいずれかです。

気づいたら時効を迎えていたということがないように、遺留分に関しては早めにチェックしておきましょう。 

標準的な遺言書の文例

それではここから、ケース別に遺言書の文例について確認していきましょう。まずは最も標準的な文例についてです。

ポイント

この標準的な文例は「特に家族関係に複雑な部分がなく、遺産の分配割合や相続相手が明確に決まっている」という場合に使用します。

最もオーソドックスなものとして覚えておくと良いでしょう。

文例

遺言者「市川 ◎◎」は、次の通り遺言する。

第一条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の妻である「市川 ××(1945年1月1日生)」に相続させる。

①家

所在:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

家屋番号:〜〜番〜〜

種類:居宅

構造:鉄筋コンクリート造り

床面積:1階→〜〜㎡

    2階→〜〜㎡ 

②土地

所在:東京都板橋区〜〜町〜〜丁目

地番:〜番〜

地目:宅地

地積:〜〜㎡ 

第二条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の長男である「市川 □□(1975年2月2日生)」に相続させる。 

〜〜銀行〜〜支店(口座番号1234567)の遺言者名義の普通預金全て 

第三条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の次男である「市川 ■■(1979年3月3日生)」に相続させる。

〜〜銀行〜〜支店(口座番号9876543)の遺言者名義の定期預金全て

第四条

遺言者は、この遺言の遺言執行者として以下の者を指定する。

東京都中央区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

〜〜ビル3階 〜〜弁護士事務所の弁護士である「鈴木 △△」 

付言事項

これまでありがとう。□□と■■で××を支えながら幸せに過ごしてください。

令和〜〜年5月5日

住所:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

遺言者:市川 ◎◎ 印 

これが最も標準的な文例です。自筆証書遺言の場合はこれらを全て自筆で記載するのが原則となります。

作生年月日や署名捺印などの細かい部分まで忘れずに行いましょう。遺言執行者も指定する場合は、その人物の所在地を正確に記載しておきます。 

また、上記のように相続させる遺産の内容は「事細かに記載しておき誰が見てもわかるような状態」にしておくのが鉄則です。ここが曖昧だと、後々のトラブルとなりかねません。

配偶者にすべて相続させたい場合(子供がいない)の文例 

次に「子供がいない被相続人が配偶者に全ての遺産を相続させたい」という場合の文例です。 

ポイント

「配偶者しかいないのだから亡くなった後は自動的に全ての遺産が配偶者に相続されるのではないか?」と考える方もいるかと思いますが、実は違います。

被相続人の父母、あるいは祖父母が存命である場合は「配偶者2/3・父母1/3」という割合で分配されるのです。

また、父母や祖父母がいなくとも、被相続人の兄弟姉妹が存命の場合であれば同様に定められた分配割合があります。

具体的には「配偶者3/4・兄弟姉妹1/4」という割合です。

文例

遺言者「市川 ◎◎」は、次の通り遺言する。

第一条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の妻である「市川 ××(1945年1月1日生)」に相続させる。

①家

所在:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

家屋番号:〜〜番〜〜

種類:居宅

構造:鉄筋コンクリート造り

床面積:1階→〜〜㎡

    2階→〜〜㎡

②土地

所在:東京都板橋区〜〜町〜〜丁目

地番:〜番〜

地目:宅地

地積:〜〜㎡ 

③預貯金

〜〜銀行〜〜支店(口座番号1234567)の遺言者名義の普通預金全て

第二条

その他、遺言者の有する遺産があればその全てを遺言者の妻である「市川 ××(1945年1月1日生)」に相続させる。

第三条

遺言者は、この遺言の遺言執行者として以下の者を指定する。

東京都中央区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

〜〜ビル3階 〜〜弁護士事務所の弁護士である「鈴木 △△」

付言事項

これまでありがとう。××には長い間僕を支えてもらいました。 

お父さんとお母さん。産んでくれてありがとう。本当に2人の子供になれて幸せでした。

それと同じくらい、妻である××には本当に感謝しています。なので、僕の持つ遺産全てを妻に遺すという願いをどうぞ受け入れてほしいと思います。 

本当に今までありがとうございました。

令和〜〜年5月5日

住所:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

遺言者:市川 ◎◎ 印

まず、遺言書の中に必ず「全ての遺産を妻に相続する」という旨を記載しておきましょう。

もちろんそれを記載しても、父母から遺留分請求をされる可能性はあります。 

そのため、付言事項で遺された遺族に納得してもらえるような文章を記載しておきましょう。

ここでしっかり感謝の気持ちと自分の願いを伝えることでそこまで大きなトラブルにはならないはずです。

それでも万全を期す場合は、念のため遺留分に相当する遺産分だけでも父母や兄弟姉妹に相続させておくと良いでしょう。

配偶者にすべて相続させたい場合(子供がいる)の文例

次に「子供がいる被相続人が配偶者に全ての遺産を相続させたい」という場合の文例です。 

ポイント

子供がいる場合は、遺言書に被相続人が希望する分配割合を記載しておかないと、配偶者と子供で1/2ずつ分けることになります。

もちろんこの割合は目安のため、遺産分割協議を行うことで配偶者に全ての遺産が相続されるようにできなくはありません。

しかしそれは子供が成人している場合の話です。

子供が未成年の場合は、そもそも相続などの法律行為を行うことができないため、遺産分割協議を行うのも困難になります。

これらのことを行うためには、子供に代理人を立ててその代理人とやり取りしなければなりません。これはかなり面倒ですよね。 

こうした事態を避けるためにも、あらかじめ遺言書に「配偶者に遺産をどのくらい相続させるのか?」ということを明確に記載しておきましょう。 

文例

遺言者「市川 ◎◎」は、次の通り遺言する。 

第一条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の妻である「市川 ××(1945年1月1日生)」に相続させる。

①家

所在:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

家屋番号:〜〜番〜〜

種類:居宅

構造:鉄筋コンクリート造り

床面積:1階→〜〜㎡

    2階→〜〜㎡

②土地

所在:東京都板橋区〜〜町〜〜丁目

地番:〜番〜

地目:宅地

地積:〜〜㎡

③預貯金

〜〜銀行〜〜支店(口座番号1234567)の遺言者名義の普通預金全て

第二条

その他、遺言者の有する遺産があればその全てを遺言者の妻である「市川 ××(1945年1月1日生)」に相続させる。

第三条

遺言者は、この遺言の遺言執行者として以下の者を指定する。

東京都中央区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

〜〜ビル3階 〜〜弁護士事務所の弁護士である「鈴木 △△」

付言事項

これまでありがとう。××には長い間僕を支えてもらいました。

そして、長男の□□と次男の■■へ。僕らの子供として産まれてくれて本当にありがとう。とても楽しい人生を送れました。

2人に対する気持ちと同じくらい、妻である××には本当に感謝しています。辛い時や大変な時も妻はずっと寄り添ってくれました。

なので、僕の持つ遺産全てを妻に遺すという願いをどうぞ受け入れてほしいと思います。

本当に今までありがとう。これからも家族みんなで幸せに。

令和〜〜年5月5日

住所:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

遺言者:市川 ◎◎ 印 

ここでも「全ての遺産を妻に相続させる」という旨は必ず記載しておきましょう。

この場合でもなるべくトラブルを避けるために、付言事項にて子供に納得してもらうための言葉を記載しておくのがベストです。

また、先ほど同様に遺留分相当の遺産を子供に相続させることによって、トラブルを避けることも検討しましょう。

子供同士で分ける財産に差をつける場合の文例

次に「子供への相続額に差をつけたい場合」の文例です。 

ポイント

例えば「長男は自分の介護のために同居をしてくれたので、死後に少し多めの遺産を相続させたい」というようなこともあるでしょう。

そのような場合には、遺言書にその旨をはっきり記載しておくことが大切です。

そうでなければ、「介護をしていた自分が次男と同じ金額なのはおかしい」というようなトラブルになりかねないからです。

そもそも長男側からしても、自分から「介護をしたから多めに遺産が欲しい」ということはなかなか言えないでしょう。

そうした気持ちにも配慮し、被相続人がしっかりと記載しておくべきです。 

文例

遺言者「市川 ◎◎」は、次の通り遺言する。

第一条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の長男である「市川 □□(1975年2月2日生)」に相続させる。

①家

所在:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

家屋番号:〜〜番〜〜

種類:居宅

構造:鉄筋コンクリート造り

床面積:1階→〜〜㎡

    2階→〜〜㎡ 

②土地

所在:東京都板橋区〜〜町〜〜丁目

地番:〜番〜

地目:宅地

地積:〜〜㎡

③預貯金

〜〜銀行〜〜支店(口座番号1234567)の遺言者名義の普通預金全て 

第二条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の次男である「市川 ■■(1979年3月3日生)」に相続させる。 

〜〜銀行〜〜支店(口座番号9876543)の遺言者名義の定期預金全て 

第三条

遺言者は、この遺言の遺言執行者として以下の者を指定する。

東京都中央区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

〜〜ビル3階 〜〜弁護士事務所の弁護士である「鈴木 △△」

付言事項

これまでありがとう。□□と■■が産まれて来てくれて本当によかったと思っています。

2人共僕の大切な息子です。しかし長男の□□には長年介護等で面倒をかけてしまったので、預貯金だけでなく不動産も相続してもらいました。

そのため次男の■■の分配割合は少し減ってしまうがどうか理解してくれると嬉しいです。これからも家族みんなで仲良く暮らしてください。

令和〜〜年5月5日

住所:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

遺言者:市川 ◎◎ 印 

付言事項で「兄弟で遺産総額に差があるという旨とその理由」に関しては必ず記載しておきましょう。

きちんと納得できる理由があれば、遺産総額が少ない側も納得しやすいはずです。 

ただし、相続廃除などをされていないのに「長男には全額相続させるが、次男には一切相続させない」というような遺言を遺すことはできません。

基本的には、分配割合が少ない側であっても遺留分程度は相続できるようにしておきましょう。 

財産を特定の団体に寄付したい場合の文例

次に「遺産を法定相続人以外の団体に寄付したい」という場合の文例です。

ポイント

法定相続人以外に遺産を遺したい場合は、遺言書にしっかり記載しておかないと実現できません。

また、この場合は相続ではなく「遺贈」という扱いになります。遺贈にも相続税がかかりますが税率が2割増になるため注意してください。

文例

遺言者「市川 ◎◎」は、次の通り遺言する。 

第一条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、「認定NPO団体▲▲」に遺贈する。 

①不動産

所在:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

家屋番号:〜〜番〜〜

種類:居宅

構造:鉄筋コンクリート造り

床面積:1階→〜〜㎡

    2階→〜〜㎡

②土地

所在:東京都板橋区〜〜町〜〜丁目

地番:〜番〜

地目:宅地

地積:〜〜㎡

③預貯金

〜〜銀行〜〜支店(口座番号1234567)の遺言者名義の普通預金全て 

〜〜銀行〜〜支店(口座番号9876543)の遺言者名義の定期預金全て

第二条

その他、遺言者の有する遺産があった場合には、その全てを「認定NPO団体▲▲」に遺贈する。

第三条

遺言者は、この遺言の遺言執行者として以下の者を指定する。

東京都中央区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

〜〜ビル3階 〜〜弁護士事務所の弁護士である「鈴木 △△」 

付言事項

「認定NPO団体▲▲」の活動に賛同し、遺産の全額を遺贈いたします。

妻の××、長男の□□、次男の■■には本当に感謝しています。今まで一緒に過ごしてくれてありがとう。

今ある遺産は、認定NPO団体▲▲に遺贈することで世の中のためになるように使って欲しいと思っています。

そのため、今回のような遺言者の内容になったことをどうか理解してくれると嬉しいです。 

今まで本当にどうもありがとう。 

令和〜〜年5月5日

住所:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

遺言者:市川 ◎◎ 印

遺産の全額を遺贈するということで、反感を覚える法定相続人も出てくることでしょう。

そうした方でも納得できるように、付言事項で必ずその意思を伝えておきましょう。

もちろんそれでも納得できず遺留分請求を行うということもあり得ます。

そのような場合に備えて、遺留分相当の遺産だけは最低限分配しておくのも良いでしょう。

本来、相続人ではない娘・婿に財産をあげたい場合の文例

次に「本来相続人ではない人物に遺産を引き継がせたい」という場合の文例です。

ポイント

こちらも先述の団体に渡す時と同じように「遺贈」という扱いで遺産を引き継ぎます。

息子の奥さんや娘婿は確かに家族の一員です。しかし法律上は法定相続人として認められないため、必ず「遺贈」として引き継ぐことが必要になります。

文例

遺言者「市川 ◎◎」は、次の通り遺言する。

第一条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の妻である「市川 ××(1945年1月1日生)」に相続させる。

所在:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

家屋番号:〜〜番〜〜

種類:居宅

構造:鉄筋コンクリート造り

床面積:1階→〜〜㎡

    2階→〜〜㎡

第二条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の長男である「市川 □□(1975年2月2日生)」に相続させる。

土地

所在:東京都板橋区〜〜町〜〜丁目

地番:〜番〜

地目:宅地

地積:〜〜㎡ 

第三条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の次男である「市川 ■■(1979年3月3日生)」に相続させる。 

〜〜銀行〜〜支店(口座番号9876543)の遺言者名義の定期預金全て

第四条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、長男□□の嫁である「市川 ▽▽(1978年6月6日生)」に遺贈する。 

〜〜銀行〜〜支店(口座番号1234567)の遺言者名義の普通預金全て

第五条

遺言者は、この遺言の遺言執行者として以下の者を指定する。

東京都中央区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

〜〜ビル3階 〜〜弁護士事務所の弁護士である「鈴木 △△」

付言事項

これまでありがとう。□□と■■、そして▽▽さんで××を支えながら幸せに過ごしてください。

特に▽▽さんには色々お世話をかけました。あなたが長男の奥さんになってくれて本当に良かったです。

お礼としてわずかながら現金を遺贈すので、どうぞ活用してください。

本当にどうもありがとう。楽しかったです。

令和〜〜年5月5日

住所:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

遺言者:市川 ◎◎ 印 

あくまでも相続ではなく「遺贈扱い」であるため、その言葉選びには注意しましょう。ここが違うだけで税率等も異なってしまいます。

遺された法定相続人に関しては、遺留分以上の遺産を相続させることで納得するでしょう。 

内縁の妻(夫)に財産をあげたい場合の文例

最後に「内縁の妻あるいは夫に遺産を渡したい」という場合の文例です。 

ポイント

例え長年連れ添った相手であっても、法律上内縁の妻あるいは夫は法定相続人として認められません。

そのため必ず遺言書を作成し「遺贈扱い」で遺産を引き継ぎましょう。これがないと法定相続人とトラブルになることも考えられます。

文例

遺言者「市川 ◎◎」は、次の通り遺言する。

第一条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の内縁の妻である「市川 ××(1945年1月1日生)」に遺贈する。

①家

所在:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

家屋番号:〜〜番〜〜

種類:居宅

構造:鉄筋コンクリート造り

床面積:1階→〜〜㎡

    2階→〜〜㎡

②土地

所在:東京都板橋区〜〜町〜〜丁目

地番:〜番〜

地目:宅地

地積:〜〜㎡ 

第二条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の弟である「市川 ◇◇(1949年7月7日生)」に相続させる。

〜〜銀行〜〜支店(口座番号1234567)の遺言者名義の普通預金全て

〜〜銀行〜〜支店(口座番号9876543)の遺言者名義の定期預金全て

第三条

遺言者は、この遺言の遺言執行者として以下の者を指定する。

東京都中央区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

〜〜ビル3階 〜〜弁護士事務所の弁護士である「鈴木 △△」 

付言事項

これまでありがとう。××とは内縁の妻という関係ではあったが、普通の夫婦と一切変わりなく楽しい人生を共に過ごすことができました。今まで一緒にいてくれて本当にありがとう。

◇◇へ。××は本当に長い間僕を支えてくれました。彼女がいたからこそ××にも◇◇にも十分な遺産を遺せたと思っています。

なので、この分配割合は僕の最後の恩返しと思ってどうか理解してくれると嬉しいです。

今まで本当にありがとう。 

令和〜〜年5月5日

住所:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

遺言者:市川 ◎◎ 印 

法定相続人に対しては遺留分程度の分配は行っておきましょう。

その上で、付言事項でしっかり今回の遺言内容に関する説明をしておけばきっと納得してくれるはずです。

遺言書の書き方についてのまとめ

以上が遺言書に関する基礎知識や文例等のまとめです。それでは改めて、今回ご説明した内容をまとめて確認していきましょう。 

◎「遺言」とは、遺産を所有している人物(被相続人)が「自分の死後の遺産分配に関する意思表示」を法定相続人をはじめとした関係者に遺しておくこと。この遺言内容をまとめたものが「遺言書」と呼ばれる。 

◎被相続人の遺産がどのように分配されるのかは民法によって規定されているが、遺言書がある場合は「民法の規定よりも遺言書に記載された内容が優先される」というのが原則。

◎遺言書の種類には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「特別方式遺言」がある。

・「自筆証書遺言」は、遺言書の中では最もポピュラーであると言われている。名前の通り「遺言書の文章・署名・捺印・作成年月日の記載」など、被相続人が自筆で内容の全てを記載するというのが原則。 

・「公正証書遺言」を作成するためには、公証役場へ出向いたり証人を探さなければならず少し手間がかかる。しかしその分、他の形式の遺言書と比べて「信頼性を担保することができる」というのが特徴である。 

・「秘密証書遺言」では、原本の保管や遺言書の内容の確認まで行わないが「遺言書が間違いなく存在する」ということを保証してもらうことができる。

・上記3つの方法をまとめて「普通方式」と呼ぶのに対して、そのどれにも当てはまらない方法で作成した遺言書は「特別方式」と言われる。

分類としては「一般応急時遺言」「難船危急時遺言」「隔絶地遺言」がある。 

◎自筆証書遺言を無効にしないためにチェックすべき点としては以下のようなものがある。

・必ず自筆で記載する

自筆証書遺言の場合はこれが大前提となる。

・必ず署名・押印する

被相続人本人が作成したものであるとわかるように、フルネームで確実に記載しておく。

・必ず日付を記載する

記載するときは必ず「2020年1月1月」「被相続人の満80歳の誕生日に作成」のように明確に記載しておく。

・訂正の方法に気を付ける

間違えてしまった部分に二重線を引く→その上に訂正印を押す→そのすぐ近くに訂正後の文章を記載する→遺言書の一番最後に「訂正した部分はどこか?」「何文字削除したか?」「何文字追加したか?」という内容を記載する 

・2枚以上になる場合の対応

「契印」は両ページにまたがりながら捺印を行うため、書面が続いているということをきちんと伝えることができる。

◎自筆証書遺言で相続人を困らせないためにチェックすべき点としては以下のようなものがある。

・意思を明確に記載する

遺言書を作成するときは「遺産の内容をかなり明確に記載しておく」「誰に何をどのくらい相続するのか?」ということを意識する。

・遺留分に配慮

法定相続人には民法で定めた「遺留分」という形で一定の分配割合が保証されている。いくら遺言書といえども、この遺留分の割合を無視した内容で作成することはできない。

・遺言執行者を選任

相続人がスムーズに相続を行えるように「遺言執行者」の選任を検討してみるのもオススメ。

◎遺言書が持つ主な効力としては以下のようなものがある。

・遺言書の執行に関する効力

被相続人の子供が未成年の場合、子供の代理で相続行為を行うことのできる「後見人」となる人物を指定することができる。

・相続分の指定

遺言書が遺されていれば、民法の分配割合よりもそちらが優先される。

・相続人の廃除

遺言書では「誰に遺産を相続させないか?」ということも定めることができる。

ただし、正当な理由もなく拒否することはできない。また、相続廃除よりも強い効力を持つ「相続欠格制度」というものも存在する。 

・相続人の身分に関する効力(認知)

遺言書の中で隠し子を認知すれば、他の法定相続人と同様に相続権を与えることが可能。 

・相続人相互の担保責任の指定

被相続人は遺言書の中で「誰が担保責任を負うのか?」「どのような割合で責任を負担してもらうのか?」ということを指定することができる。

・相続財産の処分

遺言書の内容によっては、法定相続人以外の第三者やNPO団体などに遺産を渡すことも可能となる。

もし法定相続人以外に遺産を遺す場合は、相続ではなく「遺贈」という扱いになるので注意。

・遺言執行者の指定または委託

遺言書の中で「遺言執行者」を定めることもできる。

・遺産分割方法の指定と分割の禁止

「相続が始まってから5年以内」の期間内であれば、相続行為そのものを禁止にすることが可能。 

・遺留分侵害額請求方法の指定

遺言書の分配内容に納得できなければ「遺留分侵害額請求」に基づき、最低限の取り分を請求することができる。 

◎最も標準的な遺言書の文例は以下の通り。

遺言者「市川 ◎◎」は、次の通り遺言する。 

第一条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の妻である「市川 ××(1945年1月1日生)」に相続させる。 

①家

所在:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

家屋番号:〜〜番〜〜

種類:居宅

構造:鉄筋コンクリート造り

床面積:1階→〜〜㎡

    2階→〜〜㎡

②土地

所在:東京都板橋区〜〜町〜〜丁目

地番:〜番〜

地目:宅地

地積:〜〜㎡

第二条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の長男である「市川 □□(1975年2月2日生)」に相続させる。

〜〜銀行〜〜支店(口座番号1234567)の遺言者名義の普通預金全て

第三条

遺言者は、遺言者の有する下記の遺産を、遺言者の次男である「市川 ■■(1979年3月3日生)」に相続させる。

〜〜銀行〜〜支店(口座番号9876543)の遺言者名義の定期預金全て

第四条

遺言者は、この遺言の遺言執行者として以下の者を指定する。

東京都中央区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

〜〜ビル3階 〜〜弁護士事務所の弁護士である「鈴木 △△」

付言事項

これまでありがとう。□□と■■で××を支えながら幸せに過ごしてください。 

令和〜〜年5月5日

住所:東京都中野区〜〜町〜〜丁目〜〜番〜〜

遺言者:市川 ◎◎ 印

自筆証書遺言の場合はこれらを全て自筆で記載するのが原則となる。

また、上記のように相続させる遺産の内容は「事細かに記載しておき誰が見てもわかるような状態」にしておくのが鉄則。

この文例をケースに応じて変更していく。具体的なケースごとのポイントは以下の通り。 

・配偶者にすべて相続させたい場合(子供がいない)

被相続人の父母、あるいは祖父母が存命である場合は「配偶者2/3・父母1/3」という割合で民法に従い分配される。

そのため「配偶者しかいないのだから亡くなった後は自動的に全ての遺産が配偶者に相続されるのではないか?」という考えにならないように注意。

遺言書の中に「全ての遺産を妻に相続する」という旨を記載した上で、付言事項で遺された遺族に納得してもらえるような文章を記載しておく。 

・配偶者にすべて相続させたい場合(子供がいる)

遺言書に被相続人が希望する分配割合を記載しておかないと、配偶者と子供で1/2ずつ分けることになる。

そのため、あらかじめ遺言書に「配偶者に遺産をどのくらい相続させるのか?」ということを明確に記載しておく。 

・子供同士で分ける財産に差をつける場合の文例

「長男は自分の介護のために同居をしてくれたので、死後に少し多めの遺産を相続させたい」というような場合は、遺言書にその旨をはっきり記載しておくことが大切。

そうでなければ、「介護をしていた自分が次男と同じ金額なのはおかしい」というようなトラブルになりかねないため。 

・財産を特定の団体に寄付したい場合の文例

法定相続人以外に遺産を遺したい場合は、遺言書にしっかり記載しておかないと実現できない。

また、この場合は相続ではなく「遺贈」という扱いになる。

・本来、相続人ではない娘・婿に財産をあげたい場合の文例

「遺贈」という扱いで遺産を引き継ぐ。

息子の奥さんや娘婿は確かに家族の一員だが、法律上は法定相続人として認められないため、必ず「遺贈」として引き継ぐことが必要になる。

遺された法定相続人に関しては、遺留分以上の遺産を相続させることで納得してもらう。

・内縁の妻(夫)に財産をあげたい場合の文例

例え長年連れ添った相手であっても、法律上内縁の妻あるいは夫は法定相続人として認められない。

そのため必ず遺言書を作成し「遺贈扱い」で遺産を引き継ぐ。

これがないと法定相続人とトラブルになることも考えられる。

法定相続人に対しては、遺留分程度の分配は行った上で、付言事項でしっかり今回の遺言内容に関する説明をしておけば納得してくれる可能性は高い。 

遺言書は被相続人の最後の意思表示が記載された大切な書類です。

当然遺された人物への相続に関して大きな影響力を持つため、定められたルールなどもたくさんあります。

実際に遺産相続を行う際に対象となる人物が困惑しないようにするためにも、細かいルールまできちんと確認し分かりやすい遺言書の作成を心がけましょう。

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