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専門知識不要!自分で作れる公正証書遺言作成の流れと費用・必要書類

2021/7/3 情報更新

遺言書には「財産の分配方法」という非常に大切な情報が詰まっています。

相続人にとっても重要なのはもちろん、亡くなった方の最後の意思を記載したものなので、可能な限りトラブルなく手続きを進めたいと考えます。

今回は、そんな大切な遺言書をより強固に守るための選択肢として「公正証書遺言」についてご説明していきます。

INDEX

01
遺言とは?
02
公正証書遺言とは?
03
遺言書の効力
04
公正証書遺言の作成方法
05
公正証書遺言の作成の流れ
06
公正証書遺言作成の費用と必要書類
07
公正証書遺言のメリット・デメリット
08
公正証書遺言の扱い方
09
公正証書遺言が無効になるケース
10
公正証書遺言を閲覧・検索する方法
11
公正証書遺言についてのまとめ

遺言とは?

相続できる財産を所有している方は「被相続人」と言われます。遺言は、この被相続人が保有する財産の分配方法などについて記載した書面のことです。

原則として被相続人の財産は、法律で規定されている「法定相続人」に対して分配されます。

法定相続人とは?

この法定相続人とは、被相続人との関係が「配偶者・子供(直系卑属)・両親(直系卑属)・兄弟姉妹(傍系血族)」のいずれかに当てはまる人物のことです。

これらの人物に対して「法定相続分」という規定されている割合で分配されるのです。

遺言によって相続人への分配割合を変える

しかし財産を残す被相続人からすると、生前の相続人への印象によって分配割合を変えたい場合もあるでしょう。

もし分配割合の全てを法律に則ってしまうと、そこに被相続人の意思が全く反映されないということになります。 

そこで、遺言を作成し「分配割合に関する被相続人の意思」を表示しておくことで、法律よりもそちらが優先されるようになるのです。

遺言書を作成した方が良いケース

遺言書を作成した方が良いケースは、自分が亡くなった後に遺産相続などトラブルが予想される場合です。きちんとした遺言書を作成しておくことで、大切な家族の遺産争いを予防することができます。

また、夫婦間に子供がいない、もしくは再婚したり内縁の妻がいる、養子縁組を行ったなどといった場合も遺言書は作成した方が良いでしょう。自営業をしていたり、会社を運営している場合も同様です。

遺言書を作成する時期

遺言書は死に際で残すというイメージがありますが、実際には15歳以上であれば遺言書はいつでも作成可能です。海外旅行や長期出張に行く前に念の為、遺言書を残す人もいます。

遺言については下記記事もご参考ください。
遺言書の書き方を徹底解説!ケース別文例・有効な書き方を解説!
遺言状を完全解説!種類・書き方・扱い・効力を紹介!
遺言とは?意味・種類・書き方・効力を紹介!

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公正証書遺言とは?

上記のように、遺言は被相続人の意思を遺す意味で大変重要なもの。この遺言を遺すために作成するのが「遺言書」です。

今回はその遺言書の形式の中から「公正証書遺言」についてご説明します。

遺言の種類

それでは、遺言にはどのような種類があるのでしょうか?

まず、遺言書の形式は大きく「普通方式」「特別方式」に分類することができます。 

一般的に遺言書の形式として利用されることが多いのが「普通方式」です。ここからさらに以下の3つに分類することができます。

普通方式

◎自筆証書遺言

最もポピュラーな形式の遺言書です。

文章の作成はもちろん、日付や氏名の記入・捺印・保管などを全て被相続人自身の手で行います。

財産目録を除いて、全ての文字を被相続人が自筆するというのが原則です。

少しでも代筆をしてしまうと遺言書自体が無効になるので注意しましょう。

特別な手続きや証人を用意する必要もなく、自分のタイミングで気軽に作成することが可能です。

ただし逆に言えば、遺言書の中身を専門家にチェックしてもらえるわけではありません。

そのため「開封してみたら遺言書としての要件を満たしておらず無効になってしまった」という可能性も十分あり得ます。

また、遺言書の保管場所を公表する前に被相続人が亡くなってしまうと、それを探し出すのが一苦労であるため、そうした点には気を配る必要があるでしょう。 

◎秘密証書遺言

遺言書の作成と保管は被相続人自身で行います。しかし「遺言書が間違いなく存在している」ということを公的に証明してもらうことが可能です。

「内容は知られたくないが、紛失などに備え遺言書があるということだけは保証してほしい」という方に利用されます。 

手続きは公証役場で行ってください。被相続人・証人2名・公証人の署名と押印を以って遺言書の存在を保証してもらえます。

この際、費用として11,000円が必要なので持参しましょう。

◎公正証書遺言

後ほど詳しくご説明します。

特別方式

これに対して「特別方式」は、かなり特殊な状況でのみ作成可能な遺言書の形式です。以下の3つに分類されます。

◎応急時遺言

想定外の事故や病気により、遺言書の自筆が難しいと判断された場合に適用される形式です。

3名以上の証人にその場で遺言内容を口頭で伝え、その中の1名が筆記し書面を作成します。

そして、最後に全員分の署名と押印を以って遺言書としての効力を発揮するのです。 

この方法で作成した場合は、そこから20日以内に家庭裁判所の承認が必要となるので注意しましょう。

◎船舶応急時遺言

飛行機や船などに搭乗している時、事故などで命が危険にさらされた場合に適用される形式です。

こちらは2名以上の証人に遺言内容を伝えることで成立します。 

◎隔絶時遺言

「懲役刑によって服役している」「感染病のためやむを得ず隔離されている」など、様々な事情で一般社会と離れてしまった場合に適用される形式です。

立会人の種類は状況によって異なります。

例えば囚人の場合は「警官1名と証人1名以上」が必要ですが、船などの場合は「船長 or 事務員1名と証人2名以上」が必要です。

公正証書遺言とは?

公正証書遺言は「遺言書の内容をチェックしてもらい、保管もお任せできる」という形式の遺言書です。 

自筆証書遺言は作成から保管までの全てを自己責任で担当する必要があるため、手軽ではありますが記載ミスや遺言書の紛失などのリスクを多く含んでいます。

また、秘密証書遺言も「遺言書が確かに存在する」ということは保証してくれますが、内容のチェックや保管までは対応できません。 

それらを考えると、遺言書をミスなく作成した上で安全に保管したいという方にとって、公正証書遺言は最もオススメできる形式と言えるでしょう。

公正証書遺言の年間作成数

日本公証人連合会よると、令和2年の遺言公正証書は9万7,700件作成(引用:令和2年の遺言公正証書の作成件数について)されています。平成元年は4万935件ですので、2倍以上増えていることが分かります。

上記からも分かるように遺言書を作成するときに、公正証書遺言を選択する方は非常に多いのです。

公正証書遺言を作成する場所

公正証書遺言を作成する際には、基本的には公証役場で行います。しかし、遺言を残したい方が病院や自宅にいる場合は、公証人が出張して作成することも可能です。

ただし、出張する際には公証人との都合や出張費もかかるため、時間や費用がかかるので注意が必要です。

公正証書遺言は後からでも変更可能

一度作成した公正証書遺言でも、後から変更することができます。

また、変更だけではなく新たに公正証書遺言を作り直すことも可能です。 

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遺言書の効力

これだけの種類がある遺言書ですが、基本的な効力はどれも一緒です。では具体的にどのようなことができるのでしょうか?

遺言書の執行に関する効力

被相続人の子供は法定相続人にあたるため、基本的には規定の分配割合が存在します。

しかし子供が未成年である場合、財産分与を含めた法律行為ができません。

このままでは権利があるにも関わらず財産を相続することができなくなってしまいます。 

そこで遺言書の中で、子供の代理として法律行為を行える「後見人」を指定することが可能です。

これにより問題なく相続などの法律行為を行うことができます。 

相続分の指定

相続人にそれぞれどの程度の割合で財産が分配されるのかは、「法定相続分」によって定められています。

そのため基本的にはこれに従うことになりますが、遺言書に被相続人の希望する分配割合が記載されていればそちらが優先することが可能です。 

先述の通り、遺言は被相続人の意思表示を書面化してある物。その意思を無視することはできません。

遺言書があっても「遺留分」の相続は変更できない

もちろん、遺言書で動かせる範囲には制限があります。

なぜなら、相続人には「遺留分」という権利によって最低限の財産相続が保証されているためです。

全てを遺言書優先にしてしまうと、正当な理由なく相続人に財産が一切渡らないという事態も起こり得るため、それを防ぐ目的でこの権利が定められています。

ただし、兄弟姉妹は遺留分の対象外です。

遺留分については下記記事もご参考ください。
遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介!
遺留分侵害額(減殺)請求を完全解説!侵害された財産を取り返し方を紹介!
相続遺留分とは?割合・取り戻す方法・費用を紹介!

相続人の廃除

それ相応の理由がある場合に限り、被相続人は相続人から相続の権利を取り上げることも可能です。

相続廃除とは?

これを「相続廃除」と呼び、具体的には「被相続人への虐待」「被相続人名義の借金を作った」「結婚していたにも関わらず愛人がいた」などの行為が当てはまります。

逆に言えばこのような正当な理由がない限り、遺言書に「財産を渡さない」などの旨を記載されていても、遺留分の主張をすることで最低限の取り分を確保することは可能です。

相続欠格とは?

これよりもさらに重い犯罪行為を行った場合には「相続欠格」という制度が適用されます。

例えば「取り分を確保するため他の相続人を殺害した」「被相続人を脅迫して自分に有利となるように遺言書を書かせた」などの行為です。 

このような重い犯罪行為に手を染めた場合は、ほぼ確実に相続の権利を戻すことはできません。

唯一戻せるとすれば、被相続人が生前に対象者を許す意思を示し、その上で財産の生前贈与を行った場合です。

しかし相続欠格になる条件はどれも重いため、許してもらえる可能性はほぼ0でしょう。

相続人の身分に関する効力(認知)

被相続人の隠し子であっても、遺言書の中でその旨を認知すれば隠し子も財産を相続することが可能です。

相続人相互の担保責任の指定

被相続人の遺した財産に欠陥が発生している場合があります。例えば「すでに財産が他人の手に渡っていた」というような状況です。

こうしたトラブルに関する責任は「担保責任」という形で、原則として相続人が担当することになります。

遺言書では、この担保責任を負う者の指定や責任の範囲を記載することが可能です。

相続財産の処分

財産は、必ずしも相続人に対して遺さなくてはならないというものではありません。

慈善団体やそれ以外の第三者に対して財産を渡すことも可能です。

このように、法定相続人以外の人物、あるいは団体などに財産を遺すことを「遺贈」といいます。

この財産の受け取り手は「受遺者」と呼ばれており、実際に受け取るかどうかは受遺者の判断に任されることが多いです。

遺贈については下記記事もご参考ください。
遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!
遺贈を完全解説!相続との違い・流れ・控除内容を紹介!

遺言執行者の指定または委託

被相続人の遺した遺言内容をルールに則り正しく運用する、という責務を担った人物を「遺言執行者」と呼び、遺言書の中で指定することが可能です。

遺言執行者が行うこと

例え遺言書の内容であったとしても、お金に関わることである以上不満を持つ相続人が出現しても不思議ではありません。

そうしたトラブルを冷静に処理し、遺言書の内容を淡々と執行するための調整を行うことが要求されます。 

非常に大切な役割であるため、相続人は遺言執行者の行動を妨害することができません。

逆に、遺言執行者も全ての相続人に対して対等な立場で接する必要があります。

個人的な感情で特定の人物に有利になるような計らいをすることはできません。もしそのような行為を行えば解任される可能性もあります。 

遺言執行者には謝礼が支払われる

このように大きな責任の伴う仕事であるため、遺言執行者には相応の謝礼が支払われるのが一般的です。

謝礼の内容は遺言書の中に記載されています。もし記載されていなければ、相続人との話し合いで決めるか、裁判所の決定に従いましょう。 

遺産分割方法の指定と分割の禁止

遺産分割方法も遺言書の中で指定することが可能です。また、この分割方法の決定を第三者に委託することもできます。

さらに分割方法の指定を行うだけでなく、遺産分割自体を禁止することも可能です。

ただし、無制限に禁止できるわけではなく「相続が始まってから5年を超えない間」であれば禁止できます。 

遺留分侵害額請求方法の指定

先述の通り、遺言書に記載された分配割合に納得できない場合は、相続人が異議を唱えることが可能です。

遺留分侵害額請求権の割合

これは「遺留分侵害額請求権」と呼ばれる権利であり、以下の割合で分配されます。 

①相続人が配偶者のみの場合、「財産の1/2」が遺留分となる。

②相続人が配偶者+子供の場合、配偶者は「財産の1/4」、子供は「財産の1/4」が遺留分となる。子供が2名以上なら、1名につき「1/4×人数分」で分配される。

③相続人が配偶者+親の場合、配偶者は「財産の1/3」、親は「財産の1/6」が遺留分となる。父母両方なら、1名につき「1/6×2=1/12」で分配される。 

④相続人が子供のみの場合、「財産の1/2」が遺留分となる。2名以上なら、1名につき「1/2×人数分」で分配される。

⑤相続人が親のみの場合、「遺産の1/3」が遺留分となる。父母両方なら、1名につき「1/3×2=1/6」で分配される。

⑥相続人が兄弟姉妹の場合、遺留分請求権は無い。

遺留分の請求は、侵害されている相続人が侵害している人物に対して行いましょう。

基本的にはここで話し合いとなりますが、もしまとまらなければ家庭裁判所が調停に入ります。それでもダメなら地方裁判所の決定に従ってください。

遺留分請求の時効

なお、遺留分の請求には時効があります。

パターンは2つで、「相続が始まった時や遺留分の侵害を知った時点から1年以内」あるいは「自分が知らない間に相続が始まってから10年以内」のどちらかです。

公正証書遺言の作成方法

それでは公正証書遺言の基本的な作成方法をご説明します。

公正証書遺言は公証役場へ行って作成するというのが原則です。公証役場には2名以上の証人と一緒に訪れる必要があります。

役場へ到着したら公証人に遺言内容を口頭で伝え、それを基に公証人に遺言書を作成してもらいます。

その内容に問題がなければ、その場にいた「被相続人」「2名以上の証人」「公証人」全員の署名と押印を行い、手続きは完了です。

これによって遺言書の内容チェックが行われ、原本も安全に保管してもらうことができます。

公正証書遺言の作成の流れ

ではさらに具体的に、「公証役場へ行く前にやるべきこと〜公証役場でやるべきこと」の一連の手続きの流れをご説明します。

①遺言内容の原案をまとめておく

公証役場に行ってから遺言内容を考えるのでは時間がかかってしまいます。そのため、メモ程度でも構わないので記載する内容を書き出しておきましょう。相続する財産を改めて洗い出すことで、当日の抜け漏れを防ぐことができます。

②必要書類を集める

以下の書類を忘れずに準備します。物によっては準備するのに時間がかかる可能性もあるので余裕を持って探しておきましょう。

・被相続人の本人確認書類

・被相続人の印鑑登録証明書

・被相続人の実印

・被相続人と相続人との関係性がわかる戸籍謄本

・証人の認印

・(不動産がある場合は)登記簿謄本や固定資産の評価証明書等の関係書類

・(受遺者がいる場合は)受遺者の住民票

③立会いの証人を2名以上見つける

証人がいなければ公正証書遺言としての効力は発揮されません。必ず見つけましょう。ただし、以下の要件に当てはまる人物は証人として認められません。 

・未成年

・公証人の配偶者及びその4親等以内の親族

・相続人及びその配偶者などの関係者

・公証役場の関係者

もし見つからなければ公証役場に証人を準備してもらうことも可能です。ただし費用はかかります。 

④公証人と文章を作成する

基本的には公証役場で作成します。しかし事情があれば、別途費用はかかりますが公証人が自宅などに出張することも可能です。 

ここで公証人に遺言内容を伝え、必要に応じて修正していきます。

ここで作成した遺言書の文章は後日、郵送・メール・FAXなどで送られてくるのでしっかり確認しましょう。

もし問題があればもう一度内容のすり合わせを行います。 

⑤遺言書を完成させる

最後にもう一度公証人による遺言書の読み聞かせを行い、そこで特に変更点が無ければ、被相続人・証人・公証人の署名と押印を行い完成です。

作成された遺言書の原本は公証役場で保管されます。全てが完了したら費用も忘れずに支払いましょう。

相続の手続きについてのご相談はやさしい相続でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。

公正証書遺言作成の費用と必要書類

上記のような流れで公正証書遺言は作成します。必要な手続きが多いため、手間はもちろん費用もそれなりにかかる可能性は大きいです。

では具体的にどの程度の費用がかかるのでしょうか?

公証人手数料

公証人に支払う手数料は、被相続人の財産の金額によって定められています。具体的には以下の通りです。

財産の金額     手数料    

〜100万円       5,000円

〜200万円       7,000円

〜500万円       11,000円

〜1,000万円    17,000円

〜3,000万円    23,000円

〜5,000万円    29,000円

〜1億円        43,000円

〜3億円        43,000円+(5,000万円を超えるごとに13,000円)

〜10億円      95,000円+(5,000万円を超えるごとに11,000円) 

10億円よりも上   249,000円+(5,000万円を超えるごとに8,000円 

 

公証人手数料の注意点

ただし注意点が2つあります。

それは「手数料は財産全体に発生するのではなく相続人及び受遺者への相続金額ごとに発生する」

「財産の合計金額が1億円以下の場合は11,000円の遺言加算がある」という点です。 

例えば「合計1,000万円の財産をAに200万円、Bに800万円相続する」という場合の手数料は、

Aの手数料:7,000円

Bの手数料:17,000円

1億円以下の遺言加算:11,000円

合計:7,000+17,000+11,000=35,000円

以上の金額になります。

これ以外にも「発行手数料250円」「(出張した場合)日当20,000円」「(証人を紹介された場合)証人への日当10,000円前後」などが必要に応じてかかるので確認しておきましょう。 

弁護士に文案作成依頼した場合の報酬目安

2004年3月までは「報酬規定」というものがあり、弁護士に文案作成を依頼した場合の報酬には上限がありました。

現在ではその上限が撤廃されているため報酬もバラバラなのですが、この報酬規定を基にしたまま料金設定をしている弁護士も多いと言われています。

以下で紹介する料金相場は、その報酬規定を基に定められているものです。 

特定の型(定型)使用の作成相場

まず、遺言書によく利用される特定の型(定型)を使用して文案を作成する場合です。

料金相場は「10万〜20万円前後」であることが多いです。

定型であれば作成の負担がそこまでかからず、打ち合わせの回数も1回で終わることが多いためこのくらいの相場になります。

非定型での作成相場

しかし、特定の型に当てはまらないような文案(非定型)を作成する場合は、財産の額によって料金相場が変動することが多いです。

具体的には以下の料金体系です。 

財産の金額     報酬

〜300万円     20万円

〜3,000万円    財産の1%+17万円

〜3億円      財産の0.3%+38万円

3億円よりも上   財産の0.1%+98万円

この他にも依頼人の希望により料金は上乗せされます。

なお公正証書遺言を作成する場合は、上記の料金にさらに「30,000円を上乗せした料金」になるので注意しましょう。

司法書士に文案作成依頼した場合の報酬目安

司法書士に関しては弁護士のような報酬規定の枠組みなどが無いため、完全に事務所ごとに異なります。

料金体系も「財産額ごとに異なる」「担当してもらう業務ごとに異なる」など様々であるため、自分の希望に合う事務所があるかどうか問い合わせてみるのが確実でしょう。 

あくまでも参考程度ですが「文案作成50,000円前後」「証人の用意20,000円前後」「保管料10,000円前後」という事務所も多く、合計で50,000〜10万円前後になると考えておいていいかもしれません。

行政書士に文案作成依頼した場合の報酬目安

行政書士にも報酬規定などはありません。そのため、司法書士と同じように担当業務や財産額によって料金は変動します。

参考までに、「内容問わず一律80,000円前後」「基本料金が10万円前後で保管や証人の紹介で追加料金」という事務所もあるので、自分の予算に応じて依頼先を決めていきましょう。

必要書類

上記の「公正証書遺言の作成の流れ」の中でご説明した通りです。

公正証書遺言のメリット・デメリット

上記のような手順で公正証書遺言を作成します。では、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか? 

メリット

①遺言内容をチェックしてもらえる

まずは「遺言内容をチェックしてもらえる」という点が挙げられます。

公正証書遺言では、公証人によって一度内容をチェックしてもらうことが可能です。

そのため「いざ遺言を開封したら遺言書としての要件を満たしていなかった」という事態を防ぐことができます。

他の形式の遺言書では、内容が合っているかどうかは基本的に自己責任です。

万が一のミスがあると遺言書全てが無効になるため、それを避けるための手段として非常に効果的と言えるでしょう。

次に「安心・安全に保管できる」という点が挙げられます。

②紛失のリスクが無くなる

自分で遺言書を保管する場合は紛失のリスクがありますし、場合によっては悪意を持って破棄・偽造されたりする可能性も否定できません。

しかし公正証書遺言であれば、原本を役場が大切に保管してくれるためそのような心配は無用です。

この原本は原則として20年間は保管されます。

しかし、だからといって20年を過ぎたらすぐに廃棄するということはほとんどありません。被相続人が存命であれば、それに応じて保管期間を延長することが多いです。 

③必ずしも自筆する必要がない

「必ずしも自筆する必要がない」というのも大きなメリットになります。

自筆証書遺言の場合は、財産目録以外の全ての文章を被相続人自身が自筆しなければいけません。

しかし、公正証書遺言であれば遺言内容を口頭で伝えそれを公証人が書面に記載してくれるため、文字を書くのが難しいというような方でも作成することができます。

また、通訳を介して遺言を伝えたり、特別な事情があれば公証人に自宅へ出張してもらうことも可能です。

 ④開封時に家庭裁判所の検認を行う必要がない

また、公正証書遺言は作成段階で公証人によって中身のチェックを終えているので、開封の際に改めて「家庭裁判所の検認を行う必要がありません」。

原本が保管されていることから、改竄の心配がほぼ無いためです。

⑤遺族が遺言書の有無を調べることができる

家族が亡くなった方の遺言書の有無が不明な場合、作成していたかどうかを確認することができます。ただし、平成元年以降に作成された公正証書遺言に限られます。日本公証人連合会でデータ管理を行っているためです。

ただし、照会するには身分証明書や故人の死亡証明書などの提出が必要です。

デメリット

①手間や費用がかかる

何よりも「手間や費用がかかる」というのがデメリットでしょう。

先述の通り必要書類も多く、証人を見つけて依頼することも必要なため、人によっては1ヶ月前後かかる可能性もあります。

公正証書遺言では遺言内容の厳重なチェックや保管も行ってくれるためかなり安全ですが、その分完了までに時間や費用がかかってしまうということは認識しておきましょう。 

②遺言内容を公証人に知られてしまう

また「遺言内容を知られてしまう」ということを気にする方もいるかもしれません。

人によっては、無用なトラブルを避けるために自分が亡くなるまでは遺言内容を明かしたくない、という場合があります。

しかし公正証書遺言では内容を秘密にしておくことができません。そのため、そうしたトラブルを心配する方であれば少し考慮する必要はあります。

なお、公証人や証人者には秘密保持義務があるため、他の人に遺言の内容を話すことはできません。

③2名上の証人者が必要

公正証書遺言の作成は一人では行えません。必ず2名以上の立ち合いが必要になります。証人者がどうしてもいない場合は、公証役場で紹介してもらえますが、別途手数料が発生します。

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公正証書遺言の扱い方

では、このようにして作成した公正証書遺言はどのように扱えばいいのでしょうか?

家庭裁判所での検認が不要

通常、遺言書を開封する際には家庭裁判所の検認が必要になります。これは「開封された遺言書が改竄されていないかどうか?」をチェックするための手続きです。

しかし先述の通り、公正証書遺言はすでに公証人によって内容をチェックされている上に、原本が役場に保管されているため改竄の心配がありません。

そのため検認を受けずに開封しても問題ないのです。 

預貯金を引き出す時に必要な書類

被相続人の財産を口座から引き落とす場合は公正証書遺言が必要になります。 

口座の引き落としを行える人物

口座の引き落としを行える人物は「実際に財産を相続した人物」あるいは「遺言執行者」のどちらかです。

引き落としを行う人物によって必要書類が異なるので注意してください。

今回は両方のパターンでご説明します。なお、以下の書類は基本的に原本を提出してください。 

①「実際に財産を相続した人物」が引き落とす場合

・公正証書遺言

・被相続人の預金通帳やキャッシュカードなど

・相続関係届出書類(各銀行の備え付けであることが多く、名称も微妙に異なる)

・被相続人の戸籍謄本(銀行によっては出生〜死亡まで全ての謄本が必要)

・実際に相続する人物の戸籍謄本

・実際に相続する人物の印鑑証明書

・実際に相続する人物の実印 

②「遺言執行者」が引き落とす場合

・公正証書遺言

・被相続人の預金通帳やキャッシュカードなど

・相続関係届出書類(各銀行の備え付けであることが多く、名称も微妙に異なる)

・被相続人の戸籍謄本(銀行によっては出生〜死亡まで全ての謄本が必要)

・遺言執行者の印鑑証明書

・遺言執行者の実印

相続登記に必要な書類

公正証書遺言に不動産相続に関する内容があった場合は、この遺言書も活用して相続登記を行うことになります。 

不動産を相続した場合は、以下の書類を「実際に相続した本人」が管轄法務局に提出してください。

・公正証書遺言の正本、あるいは謄本

・登記申請書

・「被相続人」「不動産を実際に相続する人物」「その他の相続人」それぞれの戸籍謄本

・被相続人の住民票の除票

・不動産を実際に相続する人物の住民票

・固定資産税評価証明書 

また、不動産を相続する場合は「登録免許税」の納付も必要になります。

基本的には、登録免許税相当額の収入印紙を申請書に貼り付けて提出すれば問題ありません。

不動産の相続については下記記事もご参考ください。
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公正証書遺言が無効になるケース

他の遺言書などと比べてかなり安全性が高いと言える公正証書遺言。

しかしその分、作成の際に注意すべき点も多いです。具体的には、以下のような事項を守らないと無効になる危険性があります。 

公証人が不在の状態で作られた場合

遺言書の内容を書面に記載できるのは公証人だけです。

そのため、証人がいるからといって公証人不在の状態で他の人物が書面に記した場合は無効になります。 

証人になれない人が立ち会った場合

もし選んだ証人が、先述の「証人の条件に当てはまらない人物」だった場合、遺言書は無効になります。

しかし「証人が3名以上その場にいて、その中の最低2名以上は証人の条件に当てはまる」という場合は、無効にならない可能性が高いです。

とはいえそのようなリスクを侵す意味はないので、きちんと証人全員が条件に当てはまるようにしておきましょう。

公証人に口授せず身振り手振り等で伝えた場合

遺言内容を公証人に伝えるための手段としては、基本的に「口述」のみが許可されています。

もちろん「難聴者」「何らかの理由で言葉を発するのが難しい」などの事情がある場合は、筆談など別の方法で伝えても構いません。

しかしそうした理由がないにも関わらず、身振り手振りだけで伝えようとした場合はその遺言書は無効になる可能性が高いので注意してください。

証人が席を外している間に作られた場合

公正証書遺言を作成している間は、必ずその場に「被相続人」「証人全員」「公証人」が揃っている必要があります。

お手洗いや電話などで誰かが席を立った場合は、その人物が戻ってくるまで作成を一旦中断しましょう。

そうでないと、例えば「その人物が不在の間に都合の良い文章を作成した」などということをされる可能性も否定できません。

遺言者に遺言能力がなかった場合

被相続人自身が認知症などで判断能力が無いと判断された場合、その遺言書は無効になります。

遺留分を侵害している場合

(兄弟姉妹以外の)相続人には最低限の取り分である「遺留分」があります。

例え遺言書に「◎◎には財産を一切遺さない」などの記述があっても、それは遺留分の侵害となるため無効です。

しかし公正証書遺言であれば、あらかじめ公証人による遺言書のチェックが行われるのでこういった記載が残ることはほぼないでしょう。

遺留分については下記記事もご参考ください。
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公正証書遺言を閲覧・検索する方法

作成された公正証書遺言は、公証役場にて「紙の原本」「データ化した遺言書」の2種類で保管されます。

これらの内容は誰もが自由に閲覧できるわけではありません。条件に当てはまった人物に対しての閲覧が許可されています。 

では具体的にどのような人物に閲覧が許可されているのでしょうか?

◎被相続人の存命中に閲覧できる人物

被相続人の存命中は、被相続人本人しか内容を閲覧することができません。

もし本人以外が閲覧できてしまうと、内容に納得できない他の相続人とトラブルになる可能性があるためです。 

◎被相続人が亡くなった後に閲覧できる人物

基本的には「相続における法律上の関係者」のみが閲覧できます。具体的には以下の人物などです。 

・法定相続人

・受遺者

・遺言執行者 

◎閲覧に必要な手続き

閲覧は全国の公証役場から行うことが可能です。「遺言検索システム」というものを利用します。 

この時に必要な書類は以下の通りです。

・閲覧する人物の本人確認書類と印鑑

・除籍謄本など、被相続人が亡くなったことを証明する書類

・戸籍謄本など、閲覧する人物が相続の関係者であることを証明する書類

・(代理人が申請する場合)委任状、代理人の本人確認書類、印鑑証明書 

ただし、この遺言検索システムで閲覧できるのは「被相続人の氏名」「生年月日」「作成に立ち会った公証人の氏名」「作成日」などの基本情報のみです。

遺言内容自体を確認する場合は、実際に遺言書の原本が保管されている公証役場にて手続きをする必要があるので注意しましょう。

公正証書遺言についてのまとめ

以上が公正証書遺言に関する基本的な知識や詳しい作成方法のご説明です。最後に改めて、今回の内容をまとめて確認しておきましょう。

・遺言は、被相続人が保有する財産の分配方法などについて記載した書面のこと。

原則として被相続人の財産は、法律で規定されている「法定相続人」に対して分配される。

しかし遺言を作成することで、「分配割合に関する被相続人の意思」を表示することができ、法律よりもそちらが優先されるようになる。 

・遺言書の形式は大きく「普通方式」「特別方式」に分類できる。一般的に遺言書の形式として利用されることが多いのは「普通方式」。

普通方式はさらに「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」に分類される。

これに対して「特別方式」は、「応急時遺言」「船舶応急時遺言」「隔絶時遺言」の3つに分類される。

特別方式は特殊な状況下でのみ適用されるので基本的に使うことはない。 

・この中でも公正証書遺言は「遺言書の内容をチェックしてもらい、保管もお任せできる」という形式の遺言書である。

・遺言書の基本的な効力は以下の通りです。

「遺言書の執行に関する効力」

「相続分の指定」

「相続人の廃除」

「相続人の身分に関する効力(認知)」

「相続人相互の担保責任の指定」

「相続財産の処分」

「遺言執行者の指定または委託」

「遺産分割方法の指定と分割の禁止」

「遺留分侵害額請求方法の指定」 

・公正証書遺言の一連の手続きは以下の通り。

①遺言内容の原案をまとめておく

②必要書類を集める

③立会いの証人を2名以上見つける

④公証人と文章を作成する

⑤遺言書を完成させる 

・公正証書遺言の作成には必要な手続きが多いため、それなりに手間や費用がかかる。

公証人の手数料は財産の金額ごとに定められている。

ただし「手数料は財産全体に発生するのではなく相続人及び受遺者への相続金額ごとに発生する」

「財産の合計金額が1億円以下の場合は11,000円の遺言加算がある」という2点に注意する。 

・「弁護士」「司法書士」「行政書士」などの専門家に文案作成を依頼した場合の費用は事務所ごとに異なる。

参考までに「弁護士に定型の文案作成を依頼した場合の料金相場は10万〜20万円前後」

「司法書士は財産額や担当業務範囲などにより異なるが、料金相場は50,000〜10万円前後」

「行政書士は、内容問わず一律80,000円前後の場合や、基本料金が10万円前後で保管や証人の紹介ごとに追加料金がかかる」などである。

・公正証書遺言を作成するメリットは

「遺言内容をチェックしてもらえる」

「安心・安全に保管できる」

「必ずしも自筆する必要がない」

「家庭裁判所の検認を行う必要がない」という点。

デメリットは「手間や費用がかかる」「遺言内容を知られてしまう」という点。

・公正証書遺言は「預貯金を引き出す」「相続登記を行う」などの場合にも必要。

・以下の場合は公正証書遺言無効になる危険性がある。

「公証人が不在の状態で作られた」

「証人になれない人が立ち会った」

「公証人に口授せず身振り手振り等で伝えた」

「証人が席を外している間に作られた」

「遺言者に遺言能力がなかった」

「遺留分を侵害している」 

・公正証書遺言は、公証役場にて「紙の原本」「データ化した遺言書」の2種類で保管される。

これらの内容は以下の条件に当てはまった人物が閲覧できる。

「被相続人の存命中の場合は、被相続人本人のみ閲覧可能」

「被相続人が亡くなった場合は、相続における法律上の関係者(法定相続人、受遺者、遺言執行者など)のみが閲覧可能」

亡くなった方の最後の意思表示が詰まっている遺言書。公正証書遺言であれば、安全かつ確実に遺言書を守ることができます。

もちろんその分、手間や費用は他の形式よりもかかるでしょう。

しかしトラブルなく財産相続などを済ませるためにも、こうした形式で遺言書を作成することも検討してみては良いのではないでしょうか?

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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)

略歴
高橋圭 (たかはし けい)
青山学院大学法学部卒業。
2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員

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母の死をきっかけに葬儀業界に興味を持ち、大学卒業後、大手葬儀社へ入社、家族葬から大規模葬儀まで、幅広くお葬式を葬儀担当者(セレモニーディレクター)として活躍。その後、葬儀会館の店長、新規開拓を歴任。お客様からの「ありがとう」という言葉をいただけることを仕事のやりがいとし、これまでに10年以上、5,000件以上の葬儀現場に立ち会う。
資格等
株式会社GSI グリーフサポート アドバンスコース修了。