【相続プロ監修】相続登記の流れ・必要書類~登記完了までの全工程
2021/8/26 情報更新
皆さんは相続登記という言葉をご存知でしょうか。
相続登記とは、遺産の中に不動産が含まれていた場合、その不動産の名義を被相続人から相続人に変更手続きを行うことです。
相続登記をすることは義務付けられているわけではないのですが、相続登記をしないことで様々なデメリットが生じてしまいます。
そのため、相続登記の基礎知識や手続きの流れ、よくある疑問や問題点について詳しく解説していきます。
相続登記の基礎知識
相続登記は不動産を相続する際に、相続人が自分名義に変更を行う手続きのことです。
相続登記を行うにあたって特に期限などはありませんが、早めに相続登記を済ませておかないと生じる問題やリスクなどがあるため、充分注意して早めに行っておきましょう。
相続登記とは・相続登記を行う理由
相続登記とは、被相続人から相続した不動産の名義を変更する手続きのことです。
相続登記は現状は必須ではない(※2024年4月までに義務化予定)
実は相続登記を行うことは義務付けられているわけではないため、行わないからといって何らかの罰則を受けるわけではありません。
しかし、相続登記を行わない場合に生じる問題点というものがあり、結果として行わなければならなくなるケースがほとんどです。
この問題点については後ほど詳しくご紹介します。
相続登記の義務化について
相続登記を行う理由
相続登記を行う理由として、相続した不動産を売却する場合に名義人が故人のままだと手続きが行えないというものがあります。
そういった将来的な手続きのために、相続登記は迅速に行なっておく必要があると言えます。
相続登記の期限
相続の手続きには期限があるものが多いですが、相続登記の期限については特に設けられていません。
そのため、好きなタイミングで行うことが可能です。
10ヵ月以内に済ませておくのが良い
しかし、相続放棄・限定承認の選択期限は被相続人が死亡してから3ヶ月以内、相続税の申告は被相続人が死亡してから10ヶ月以内と定められているため、最低でも被相続人が死亡してから10ヶ月以内に相続登記の手続きを済ませておくとスムーズにその他の相続手続きを進めることが可能になります。
相続登記しない場合に生じる問題点
先ほど相続登記には期限がなく、行わなくても罰則を受けることはないと解説しましたが、相続登記を放置することで生じる問題点があります。
ではどのような問題が発生しうるのかについて見ていきます。
問題点①不動産の処分ができない
一つ目は不動産の処分についてです。もし不動産を処分するためには相続登記をしなければいけません。
そのため、すぐに不動産を売却したいという時に、不動産登記を行ってからになるためその分時間にロスが生じます。
問題点②公的書類の保管期限が過ぎてしまう可能性がある為
二つ目は相続登記に必要な公的書類の保管期限が過ぎてしまった場合です。
相続登記には戸籍謄本などが必要ですが、書類によって保存期間が定められているものがあるため、それを過ぎてしまうと書類は破棄されることになります。
その場合、手続きをする上で必要な書類が複雑化して手間がかかってしまいます。
問題点③相続関係が複雑化してしまう
三つ目は、相続関係が複雑化してしまうということです。
相続登記をしない状態で、他の相続人が死亡した場合には、死亡した相続人の子どもが代襲相続をすることになるため、時間が経てば経つほど相続人が増えてどこまでが相続範囲なのかが分かりにくくなります。
さらに、相続人全員分の同意が必要となるため、相続人が多いほど連絡の手間が増えていくことになります。
特に相続人の孫に連絡する必要がある場合など、もしかすると連絡先を手に入れるだけでも相当の時間がかかってしまうかもしれません。
問題点④不動産が差し押さえられてしまう可能性がある
四つ目は、不動産が差し押さえられてしまう可能性があります。
相続人が複数いる場合、その中のうち誰かが借金をしていて返済が滞っている際には債権者が不動産を差し押さえる可能性があります。
遺産分割協議が済むまで不動産の所有権は相続人全員が有することになります。
そのため、誰かが不動産を差し押さえられてしまった場合には、正式に相続する人物が金銭を支払い差し押さえを解除しなければいけなくなります。
このように、相続登記を先延ばしにしておくと、手間が増えたり最悪の場合相続すらできなくなってしまう可能性すら出てきます。
そのため、相続が発生した時点で早めに遺産分割協議を済ませて不動産を相続する人を定め、相続登記を済ませておくことが大切です。
不動産相続について詳しくは下記記事をご参考ください。
・家の名義変更を親から子にする際の節税方法を完全解説!贈与税を非課税にするには?
・不動産相続を完全解説!手続き・費用・相続税・節税方法を紹介!
・土地の相続を完全解説!手続き・分け方・必要書類・費用を紹介!
相続登記の義務化について(2021/8/26追記)
現在日本では、所有者不明の不動産が多く長年、問題視されてきました。その不明な土地の範囲は北海道と同じ広さともいわれるほとです。
相続登記の義務化の法案が可決
その為、2021年3月に相続登記が義務化される法案が可決されました。
2024年度までに施行予定
相続登記の義務化は2024年までに義務化され、期限も相続を知ってから3年以内となる予定です。また、罰則も設けられる予定となっています。その為、相続登記を行っていない不動産をお持ちの方は、早めの対応が必要となります。
相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
遺産相続のパターン
遺産相続のパターンとして、「遺産分割協議による分割」、「遺言書に従って遺産分割」、「法定相続分どおりに遺産分割」の3パターンが考えられます。
では、それぞれのパターンにはどのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
遺産分割協議による分割
一つ目の分割方法は遺産分割協議による分割です。
遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、複数の相続人がいる場合、誰がどうやって、どのくらい遺産を相続するのかについて話し合いを中心として決める方法です。
相続人が1人だけの場合には行う必要はありません。
また、遺産分割協議には特に期限などは設けられていません。
期限などの制限がない分、相続人同士では話がまとまらず何年もかかってしまうような場合もあります。
協議後は遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で無事に相続について全員の同意を得ることができれば、「遺産分割協議書」を作成します。
この遺産分割協議書には、相続人全員の同意のもと作成が行われたという証拠として相続人全員の署名と捺印が必要になります。
書式などは自由ですが、「誰がどの遺産を相続するのか」については明確に記載しましょう。
また、後から遺産が見つかった場合に備えて、その場合の対処法についても決めておくと良いでしょう。
不動産を相続する際に注意すべきこと
不動産の場合、遺産分割協議において注意するべきこととして、どのように分割するかについて決めることが重要です。
例えば、不動産の価値が高く、そのほかの遺産についてはそこまで価値が高くない場合、不動産を相続する人としない人で不公平になってしまうことがあります。
そういった場合には、不動産を共有することが可能です。相続人が3人の場合、それぞれの持分を3分の1ずつとして不動産の登記をすることも可能です。
ただし、不動産を共有名義で所有している場合、賃貸として利用したい際には共有者の半分以上の同意が必要で、処分したい際には共有者全員の同意が必要になります。
また、共有で不動産を所有している場合に誰かが死亡したら、その共有者の子供が相続することになるため、結果として共有者が10人以上になることもあるため、そうなると不動産を活用したい場合に大きなリスクとなります。
遺言書に従って遺産分割
もし被相続人が遺言書を作成していた場合には、遺産分割協議を行う必要はなく、遺言書の内容に沿って遺産分割を行うことになります。
ただし、相続人全員が遺言書の内容に不服があり、希望して遺産分割協議を行い、遺言書とは違うやり方で相続を行いたいということは可能です。
ただし、相続人全員の同意がなければ遺言書通りの相続となるため注意しましょう。
また、相続登記の際には遺言書のコピーが必要となるため、遺言書は複数コピーを取っておくと安心です。
法定相続分どおりに遺産分割
法定相続分とは、民法で定められている法定相続人が遺産を相続する際の割合です。
>>法定相続を完全解説!範囲・割合を紹介!
相続人が配偶者の場合は100%、配偶者と子どもの場合は50%ずつ、配偶者と被相続人の場合は3分の2と3分の1ずつ、配偶者と兄弟姉妹の場合は4分の3と4分の1ずつになります。
このように法定相続分どおりに遺産分割を行えば、相続人が複数いる場合でも簡単に分割を行うことができます。
ただし、この場合だと先ほどの遺産分割協議による分割で説明したような不動産の共有名義の問題が発生します。
もし賃貸なのであれば、誰が維持管理費用を支払うのか、誰の口座に家賃収入を振り込むことになるのか、など決めなければいけないことが多くあります。
多くの場合法定相続分での分割を選ぶことになる際には、遺産分割協議がまとまらず揉めていることが多いため、すんなりと他のことについて決めていくことは困難でしょう。
遺産相続、分割について詳しくは下記記事をご参考ください。
・遺産分割を完全解説!流れ・割合・揉めない方法を紹介!
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不動産を分ける方法
不動産を遺産分割で分ける場合には、「現物分割」、「代償分割」、「換価分割」の3種類があります。
それぞれの分割方法にはメリット・デメリットが異なるため遺産の状態や相続人の性質に合わせてベストな分割方法を選びましょう。
では、それぞれの分割方法について詳しく解説していきます。
現物分割
現物分割とは、遺産の形を変えずにそのままの形で分割するという方法です。
例えば相続人が3人、遺産が不動産A、不動産B、現金3,000万円だった場合に相続人Aが不動産Aを相続人Bが不動産Bを、相続人Cが現金3,000万円を相続する方法が現物分割です。
現物分割のデメリット
ただし、遺産がそれぞれ同じ価格であれば問題ないのですが、例えば不動産Aが5,000万円の価値、不動産Bが4,000万円の価値だった場合、相続人は不動産Aを相続したいと考えるのが普通です。
このように、手続きなどは単純で楽ですが遺産内容によっては不公平さが生じてしまうのがデメリットです。
代償分割
代償分割とは、ある特定の相続人が多く遺産を相続する代わりに、他の相続人に対して不足分を金銭で支払う方法です。
例えば相続人が2人いて、遺産が不動産(6,000万円)と現金2,000万円だった場合、相続人Aが不動産を相続し相続人Bが現金を相続することになったら差額が4,000万円生じてしまいます。
この時、相続人Aが相続人Bに対して現金で2,000万円支払うことで、お互いが4,000万円分の遺産を相続できたことになります。
このように、遺産の価値が異なる場合に有効な分割方法です。
代償分割のデメリット
注意点としては、支払う側がその分のまとまった金額を用意しなければいけないという点です。
換価分割
換価分割とは、相続財産を売却して現金に換えてから公平に分割するといった方法です。
遺産が不動産だけだった場合に、共有名義にはしたくないといった時に行うことが多いです。
全て現金にかえるため、代償分割のようにいったん自分で現金を用意する必要もありません。
換価分割のデメリット
デメリットとしては、もし相続した不動産に住みたいというような売却したく無い場合には使用できない点や、買い手が見つからず売却に時間がかかる時には難しくなってしまいます。
不動産相続について詳しくは下記記事をご参考ください。
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相続登記せず放置した状態で発生する問題の具体例
相続登記せず放置した状態で発生する問題として、「相続人が亡くなってしまった場合」、「不動産を売却したい場合」、「不動産を担保に融資を受けたい場合」、「次の相続時の不利益」と4つの場合に分けて解説します。
相続人が亡くなってしまった場合
相続登記をしない状態で相続人が亡くなった場合には、亡くなった相続人の子供が親の代わりに相続人になります。
つまり、長年にわたって相続登記をしないでおくと枝分かれ的に相続人が増えていき、その人数分だけ不動産を共有していることになり、全員の同意を得て遺産分割協議を行うことが困難になります。
不動産を売却したい場合
不動産を売却する場合、被相続人名義のままだと売却することはできません。
まず相続する人の名義に相続登記を行って変更を行い、売却先の人へ名義を変更することになります。
そのため、不動産の市場価値が上がったタイミングで売りに出したい場合や好条件で買いたいと言ってくれる人を見つけても、相続登記を行ってからじゃないと売却できないため、タイミングを逃すこととなってしまいます。
不動産を担保に融資を受けたい場合
相続した不動産を担保に入れて銀行から融資を受けたい場合には、同様に相続登記を済ませておく必要があります。
基本的に不動産を利用したいと言った場合には、必ず相続登記を済ませておかなければ、活用も処分もできないと考えておくと良いでしょう。
次の相続時の不利益
次の相続時の不利益とは、後々の相続の際に支払う相続税に対して不動産評価額を加算して支払わなければならないケースがあります。
このように、思わぬ出費に繋がることもあるため注意しましょう。
>>相続登記費用を完全解説!自分で手続きする費用・専門家の費用相場を紹介
相続登記の流れ 1、物件調査/対象不動産確認
相続登記の流れとして、まず初めに行うことは「物件調査および対象不動産の確認」です。
法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得
そのためには、登記簿謄本(登記事項証明書)を法務局で取得する必要があります。
この登記簿謄本には、不動産の所有者の名前や住所、構造、大きさについて記載されています。
取得する際に必要な書類などは特にありませんが、地番や家屋番号を把握しているとスムーズに手続きを済ませることができます。
地番と家屋番号は、固定資産税納税通知書や不動産の権利書に記載されているため、チェックしてから法務局へ行くと良いでしょう。
また、法務局は全国のどこでも問題ありません。
発行手数料
発行手数料として一通600円がかかります。法務局の営業時間は平日の午前8時30分~午後5時15分で、土日祝日は基本的にお休みなので注意しましょう。
もし近くに法務局がない場合には、郵送での対応も受け付けてくれます。
郵送の場合には、法務局のホームページから、「交付申請書」をダウンロードして内容を記入します。
ただし、返送までに時間を要するため急ぎの場合は窓口での対応が良いでしょう。
不動産所有者を確認
登記簿謄本を取得したら、対象の不動産の所有者を確認します。
被相続人が所有者だと思っていたら、他の人と所有権を共有していたりしていることがあるため、権利がどうなっているのかをしっかりと確認しておきましょう。
登記簿謄本には「登記の目的」、「受付年月日・受付番号」、「原因」、「所有者」が記載されています。
この「受付年月日・受付番号」が一番新しいものの「所有者」を確認しましょう。
もし所有者が1人だけの場合は所有者の欄に氏名だけが書かれています。
もし所有権を共有していた場合には、氏名の隣に「持分2分の1」などのように共有分が記載されています。
相続登記の流れ 2、相続人調査/戸籍謄本の取得
続いては、相続人の調査と戸籍謄本の取得を行います。
相続人調査
相続人調査とは、誰が正式な相続人かを確定させるために行うもので、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得して読み解いていきます。
戸籍謄本の取得
戸籍謄本は、被相続人の本籍がある役所で取得することが可能です。
もし遠方に住んでいて直接行くことが難しい場合には郵送で申し込みすると良いでしょう。
また、戸籍謄本については誰でも取得できるわけではなく、戸籍に記載されている人物か配偶者、子どもなどに限定されています。
代理人の場合は委任状が必要
代理人の場合には委任状が必要となるため注意しましょう。
この時に必要な書類は身分証明書や印鑑、申込書です。あらかじめ役所に問い合わせておくと二度手間を防げます。
このステップで一番難しいことは、戸籍謄本の解読です。
人によっては同じ場所にずっと本籍を置いている人もいれば、結婚や引越しなどによって本籍を移動させたことがある人もいます。
その場合、最新の戸籍から前回の本籍を探して、古い本籍のある役所で戸籍謄本を再度取得しなければいけません。
そのため、死亡時の戸籍謄本から出生まで遡って取得していく方法が良いでしょう。
相続登記の流れ 3、必要書類収集
相続登記に必要な書類は下記のようなものがあります。
・登記簿謄本(登記事項証明書)
・固定資産税評価証明書
・住所証明情報
・相続人全員分の戸籍謄本
・不動産を相続する人の住民票
・被相続人の戸籍謄本、住民票の除票
下記の書類は場合によって必要となるものです。
・遺産分割協議書
・遺言書
・印鑑登録証明書
遺言書について詳しくは下記記事をご参考ください。
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相続登記の流れ 4、書類作成
相続登記をする上で、自分で書類を作成しなければいけないものは「登記申請書」、「遺産分割協議書」、「相続関係説明図」です。
登記申請書
登記申請書は法務局のホームページから書式をダウンロードできます。
内容としては登記の目的や相続人の名前、申し込み年月日、登録免許税の金額、不動産の表示などです。
遺産分割協議書
遺産分割協議書は、遺産分割協議によって定めた内容について記載します。
遺産分割協議書には決まった書式はありません。
最低限記載しておくべき内容は、被相続人の名前、相続する財産と相続する人物の名前、相続人全員の署名と捺印です。
相続関係説明図
相続関係説明図は提出した戸籍謄本を返還してもらうために必要な書類です。
戸籍謄本は相続登記だけでなく、銀行の口座の名義人変更などにも使用するため、返還してもらう方が手間を省けるためです。
相続関係図は被相続人との相続関係を示すもので、一目で相続人が誰かを把握するために使用します。
相続関係図には決められた書式はないため自由ですが、最低限必要なものは被相続人の名前と生年月日、死亡日、最終住所と相続人の名前と生年月日、住所、作成者の名前、捺印、作成日です。
相続について詳しくは下記記事をご参考ください。
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相続登記の流れ 5、遺産分割協議署名押印
必要な書類が全て揃ったら、遺産分割協議書に対して相続人全員が署名と捺印を行います。
相続人が欠けていたことが判明した場合、遺産分割協議自体が無効となってしまうため注意しましょう。また、捺印については実印で行います。
相続登記の流れ 6、法務局へ申請(相続登記申請)
相続登記に関する書類が全て揃ったら、法務局へ相続登記の申請を行います。
申請する法務局は相続する不動産の住所の管轄の法務局になります。
この時に登記申請費用として、「登録免許税」の納付を行います。納付は収入印紙で、金額は不動産固定資産評価額の0.4%です。
相続登記の流れ 7、書類の受け取り
相続登記を申請したら、その場で登記完了日が伝えられます。
登記完了日には再び法務局へ行き、登記完了証と登記識別情報通知、添付書類を受け取ります。この時、身分証明書類と書類作成に使用した印鑑を持参します。
オンラインで相続登記することも可能
前述したように法務局での相続登記は窓口や郵送でおこなうことも可能です。さらにオンラインで申請することもできます。
電子証明書の取得が必要
ただし、オンラインでの相続登記の申請は、別途パソコンの設定や電子証明書の取得が必要になります。
不動産登記の電子申請(オンライン申請)については、法務省のHPから申請手続きの確認ができます。さらに、オンライン申請とはいっても、必要書類は郵送や窓口へ持参する必要があるので注意が必要です。
自分で相続登記を行うことを検討していいケース
今まで相続登記の流れについて紹介してきましたが、相続登記は司法書士に依頼するか自分で行うかは自由です。
しかし、手続きや作成する書類などが複雑なため、自分で行うにはある程度まとまった日数が必要でしょう。
ここでは、自分で相続登記を行うことを検討していいケースをご紹介します。
①相続関係が複雑でない
一つ目は相続関係が複雑ではないケースです。相続人が少なく必要な書類が少ない場合には、その分取り寄せる書類が少なくなるため手間が省けます。
②平日に動く事ができる
二つ目は平日に動く事ができる場合です。基本的に手続きを行ったり、書類を取得する役所については平日の昼間にしか開いていないことが多いです。
そのため、昼間に動くことができないと早い段階で躓いてしまいます。
>>相続登記費用を完全解説!自分で手続きする費用・専門家の費用相場を紹介
専門家への依頼を検討した方がいいケース
自分で相続登記を行わずに、司法書士などの専門家に依頼することを検討したほうがいいケースをご紹介します。
①相続登記を急いでいる場合
一つ目は相続登記を急いでいる場合です。相続税の申告やすでに買い手が見つかっている場合など、急いで相続と息をしたいような場合には専門家へ依頼したほうが良いでしょう。
②相続登記を行う不動産が遠方にある場合
二つ目は相続登記を行う不動産が遠方にある場合です。手続きを行う法務局は不動産の所在地の管轄の法務局でした行うことができません。
郵送でも手続きは可能ですが、もし書類に不備があった場合などに何度もやりとりすることになりますし、日数がかかります。
③相続関係が複雑な場合
三つ目は相続関係が複雑な場合です。代襲相続が発生しており、甥や姪が相続人になっている場合や相続人同士が不仲、単純に相続人が多い場合などには必要な書類が膨大になります。
④被相続人の住民票の除票の保存期間が過ぎている場合
最後は被相続人の住民票の除票の保存期間が過ぎている場合です。
住民票は除票になってから5年経過すると、取得することができません。その場合は違う書類を用意しなければいけなくなるため、手間がかかります。
相続の専門家について詳しくは下記記事をご参考ください。
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相続登記を司法書士に依頼した時の費用
先ほど相続登記を専門家へ依頼したほうが良いケースをご紹介しましたが、もし依頼した場合にはいくらくらいかかるのか気になりますよね。
相続登記を依頼する専門家は司法書士になります。司法書士に依頼した場合の費用は「司法書士への報酬」、「登録免許税」、「各種実費」になります。
では、それぞれの費用について詳しく見ていきましょう。
司法書士の報酬
司法書士への報酬ですが、一般的には「60,000円から100,000円」程度です。
この報酬には書類の作成費用や書類の作成費用などは含まれておりません。また、相続人が増えれば増えるほど金額が上がることが多いようです。
登録免許税
登録免許税とは、相続登記の申請を行うのに必要な税金で、法務局へ申請する際に収入印紙で支払うことが一般的です。
登録免許税の計算方法
この登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」で求めることができます。
例えば相続する不動産の固定資産税評価額が3,000万円だった場合、登録免許税は「3,000万円×0.4%=12万円」となります。
不動産が土地と建物や土地Aと土地Bなど複数ある場合には、それらの固定資産税評価額を合計した金額に対して×0.4%することになります。
各種実費
各種実費とは、相続登記に必要な書類を取得する際に必要な経費などが含まれます。
例えば戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書、登記事項証明書などが該当します。
一つ一つの書類は一通あたり数百円なので、全ての書類を揃えたとしても5,000円から10,000円程度で収まることが一般的です。
相続登記に関してよくある疑問と起きうるリスク
では最後に相続登記に関してよくある疑問や問題点、リスクについて解説していきます。
起こる問題で一番メジャーなのが、他者と名義を共有している場合です。
この時にどのような問題点が考えられるのかを事前に把握しておくと避けることができます。
では、実際にそれぞれのパターンについて見ていきましょう。
兄弟姉妹での共有と起きうる問題点
兄弟姉妹で不動産を共有する場合、どのような問題が起こると考えられるでしょうか。
①自分の意志で売却できない
一つ目は自分の意思決定だけでは売却をすることができないということが挙げられます。
もし売却したい場合には、共有名義者全員分の合意が必要になります。
②担保にできない
二つ目は担保に入れて金融機関からお金を借りることができないということが挙げられます。
③差し押さえられる可能性
三つ目は、もし兄弟の中に借金を抱えている人物がいて、返済が困難となっている場合には、債権者によって不動産を差し押さえられてしまうということがあります。
このように、共有名義にしていると活用もできずさらにリスクを抱える恐れがあるため、もし金銭的に余裕がある場合には、相手の共有分を買い取ってしまうというような対応をしておくと良いでしょう。
親子での共有と起きうる問題点
親子で不動産を共有する場合、どのような問題が起こると考えられるでしょうか。
①自分の意志で売却できない
一つ目は兄弟姉妹の場合と同様に、自分の意思だけでは売却できないというものが挙げられます。
もし売却したい場合には、自分の持分だけを売却してしまうという方法があります。
その場合は専門の買い取り業者に依頼することによって買い取りしてもらえます。
また、不動産が土地の場合には、分筆といって土地を持分の割合で分割して売却することもできます。
しかし、このような場合には土地が中途半端なサイズになってしまい普通に売却するよりも価格が落ちてしまうことが考えられます。
②親が認知症になった場合
二つ目は親が認知症になってしまった場合です。認知症になってしまった場合には、意思決定が自分だけでは行えないため「成年後見人」を立てる必要があります。
・成年後見制度
成年後見制度とは、任意後見制度と法定後見制度の二つに分類することができます。
任意後見制度とは、将来自分が認知症などによって判断力がなくなることに備えて自分で後見人を選定する制度です。
法定後見制度とは、現在の状況ですでに判断能力に欠けている場合に補助・補佐・後見の順で判断能力が欠けている際に利用できる制度です。
この補助・補佐・後見はそれぞれで本人に代わって行える手続きの範囲が異なるため注意しましょう。
不動産を相続する場合の名義人は母と子供どちらが良いか?
父親が不動産を残して死亡し、相続人が母(被相続人の配偶者)と子供だった場合に、共有名義を避けようとしてどちらかに相続をさせて名義変更を行う場合、どのように考えると良いのでしょうか。
この時、母を名義人にすることで考えられるリスクがあります。
①親が認知症になった場合
一つは母親が認知症などの判断能力を失ってしまった場合です。
母の方が高齢のため、認知症になるリスクは高くその場合には法律行為ができないため、不動産を処分することができなくなり、成年後見人を立てる必要がでてきます。
②二次相続が発生する可能性がある
二つ目は二次相続が発生する可能性があるという点が挙げられます。
・二次相続とは?
二次相続とは、一次相続で母と子供が相続人になった後に、母か子供が死亡して相続人が1人になるようなことを指します。
この二次相続では、基礎控除額が少なくなってしまったり、小規模宅地等の特例が使用できないことがあるため相続税の負担が大きくなってしまう可能性があります。
そのため、相続が発生した場合に母か子供かすぐに決めるのではなく、母の健康状態などで判断する必要が出てきます。
自分で手続きする際の問題点
不動産の相続登記を司法書士などの専門家に依頼せず、自分で手続きをする際の問題点としては、どのようなことが考えられるでしょうか。
①平日に休む必要がある
一つ目は、会社員などの場合には有給などを利用して何日か会社を休まなければいけないという点が挙げられます。
手続きを行う法務局、戸籍謄本などを取得する役所は平日の昼間しか開いていないため、それらを行うためには平日の昼間に行かなければいけません。
普通の会社員などの場合には、有給を取るしかないでしょう。
②書類に不備が出る可能性がある
二つ目は書類が不十分である可能性があるという点が挙げられます。
自分で被相続人の戸籍謄本を読み解き相続人が確定されていた判断しても、見落としがあって実は他にも相続人がいるようなことが考えられます。
そのため、事前準備や手続きのためにある程度まとまった時間を取れるような場合は自分で手続きを行っても問題ないかもしれませんが、リスクがあるということを念頭に入れておく必要があります。
相続について詳しくは下記記事をご参考ください。
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相続登記についてのまとめ
ここまで相続登記の基礎的な知識や放置した場合のリスク、実際の手続きの流れについて見てきましたが、いかがだったでしょうか。
ここでは簡単に今までの内容を箇条書きでまとめていきます。
・相続登記とは、被相続人から相続人に不動産の名義を変更すること。
・相続登記は期限がなく、行わなくても罰則はないが放置しておくことで様々なリスクが生じる可能性がある。
・遺産相続のパターンは、遺産分割協議、遺言書、法定相続分の3パターンが考えられる。
・不動産を分ける方法として、現物分割、代償分割、換価分割の3種類がある。
・相続登記の流れは、物件調査→相続人調査→必要書類の収集→書類作成→遺産分割協議署名押印→法務局へ申請→書類の受け取りで行う。
・自分で相続登記を行うケースとして、相続関係が単純な場合である。
・専門家へ相続登記を依頼した方が良いケースとして、相続関係が複雑な場合や日中に動くことができない、早く手続きを終わらせたいような場合である。
・相続登記を司法書士に依頼した時の費用は、司法書士の報酬、登録免許税、戸籍謄本のなどの取得費用などの各種実費である。
・相続登記に関してよくある疑問と起きうるリスクとして、不動産を共有名義にするような場合と相続登記の手続きを自分で行う場合などが考えられる。
このように相続登記は手続きが複雑で日数もかかるため、よほどの事情がない場合には司法書士に依頼してしまうのが無難でしょう。
もし将来自分が相続人となる場合、遺産の中に不動産が含まれていた場合には早めに相続登記を済ませておきましょう。
【『やさしいお葬式』『やさしい相続』では相続に特化した専門家をご紹介させて頂いております。お気軽にお問い合わせくださいませ】
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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール