故人の借金を払うのは相続人!返済を免れる相続放棄と限定相続を解説
「死んだら借金は誰が返すんだろう…?」
「親の借金は子どもが返さなきゃいけないのかな?」
借金を返さないまま死んでしまったら、借金は帳消しになるのか?そうでなければ、一体だれが払うのか…
もし家族だったり、血族だったりした場合、周囲に迷惑をかけたり、かけられたりしそうで怖いですよね。
結論からいいますと、死んだ後に残った借金を返すのは法定相続人になった人たちです。
法定相続人とは、個人の財産を相続できる人のこと。配偶者を筆頭に、子ども、血縁の近い親族が対象です。

財産というと、貯金や不動産など「お金になる」プラスのイメージがありますが、実を言うと債権や借金などの「損になる」マイナスなものも財産。

被相続人(故人)の借金を免れるには、相続放棄または限定相続をする必要があります。相続放棄すると、プラスの財産も相続できなくなりますので注意してください。
被相続人の財産を相続する際には、プラスの財産とマイナスの財産を把握し、相続するかどうかをきちんと判断することが必要。
それとなく過ごしていると、知らず知らずのうちに借金返済の負担を負うことになるかもしれません。
本記事では、死んだ後の借金の支払いがどうなるのか、独身の場合や相続人がいない場合はどうなるのかまでを徹底解説いたします。
ポイントを押さえておけば、いざ相続するときに借金関係で損をする可能性を最大限、減らすことができるでしょう。
本記事を最後まで読んで、借金がらみの相続もスムーズに終えられるように準備しておきましょう!
亡くなった人の借金を払うのは「法定相続人」!
結論から申し上げますと、故人の借金を支払うのは、財産を相続する法定相続人です。
法定相続人とは、民法で定められた故人の財産を相続できる人を指し、相続できるかどうか、いくら相続できるのかは基本的に故人との血縁関係によって変わります。
相続には負の財産も含まれる
法定相続人が相続する遺産のなかには借金や債権などの負の遺産も含まれているため、法定相続人は故人の借金を支払う義務が生まれるということですね。
相続する財産などで支払えるだけの額であればよいですが、そうでない場合は相続放棄を検討するようにしてください。
なお、相続放棄の手続きは、自分が相続人であると知った日から3カ月以内に申告する必要があります。
手遅れにならないように相続放棄手順を予習しておきたい方は「 【相続放棄の手続きと費用】知っておくべき7つのポイントと注意点!」の記事も合わせてご覧ください。
被相続人が連帯保証人だと支払い義務も相続されてしまう
被相続人が連帯保証人の場合、支払い義務も相続されてしまうことに注意してください。
連帯保証人とは、賃貸を借りた人が何らかの都合で支払いが出来ない場合に代理で支払う義務を負う人のことです。
連帯保証人になった時点で、連帯保証人には本人と同じ責務が発生します。
相続人になりたくないなら相続放棄すべき
故人の借金の支払い義務から逃れたい場合は、相続放棄すべきです。
相続人になると、故人の資産はもちろんマイナスの資産も引き継ぐ必要があるからです。
借金返済の義務が生じるのはもちろん、どれだけ価値が下がっていても、所持していた不動産や株も引き継ぐ必要があります。持ち家の場合はその家も引き継ぐことになりますね。
土地や家屋の所有にはもちろん税金がかかってきますので、今後支払う目途が立たない場合は活用できないと判断する際には相続放棄をするのがおすすめです。
相続放棄すると、債務などを引き継ぐ必要は無くなりますが、遺産を売り払うこともできません。
取り返しがつかない処理ですので、後悔しないためには「 【相続放棄の手続きと費用】知っておくべき7つのポイントと注意点!」の記事も合わせてご覧ください。
財産の一部を相続する限定承認も視野に入れる
相続と相続放棄の中間に位置する限定承認も視野に入れておきましょう。
限定承認とは、プラスの相続財産の金額を限度として債務を相続するというもの。
借金や債務などのマイナスの財産を相続するとしても、限度が決まっています。つまり、相続人自身の財産を使って借金の返済をする必要がなくなります。
限定承認が活きるのは、「故人のプラスの財産とマイナスの財産が把握しきれていないとき」です。
例えば、借金しかないと思っていた故人に、後々多額の財産があると分かったとしましょう。
相続放棄するとプラスの財産ごと手放すしかありませんが、限定承認であれば借金を差し引いて残った資産を相続することができます。
逆に、故人に大きな借金があると後々判明した場合に備えたリスクヘッジにもなりますよ。
法定相続人の筆頭は故人の配偶者!

法定相続人の代表格は故人の配偶者です。相続開始時に存在していれば相続権が発生します。
ここでいう配偶者とは、法律上婚姻関係にある者を指します。長年内縁関係(事実婚含む)であったり、同性婚などのパートナー制度を利用したりしていても、配偶者とはいえません。
相続する人の優先順位を知り、自分が相続人になれるかどうかを知りたい方は 遺産相続は配偶者が最優先!順位を決める4つのポイントと割合を解説をご覧ください。
法定相続人とは故人の財産を相続できる人のこと

法定相続人とは、民法で定められた故人の財産を相続できる人を指し、相続できるかどうか、いくら相続できるのかは基本的に故人との血縁関係によって変わります。
民法第886条から 民法第895条までに、相続人の範囲から優先順位、受け取れる割合まで、民法で定められているのです。
法定相続人の考え方
配偶者

法定相続人の代表格は故人の配偶者です。相続開始時に存在していれば相続権が発生します。
ここでいう配偶者とは、法律上婚姻関係にある者を指します。長年内縁関係(事実婚含む)であったり、同性婚などのパートナー制度を利用したりしていても、配偶者とはいえません。
相続する人の優先順位を知り、自分が相続人になれるかどうかを知りたい方は 遺産相続は配偶者が最優先!順位を決める4つのポイントと割合を解説をご覧ください。
第1順位(子どもおよび代襲相続人)

故人の血族は相続人になりますが、より血縁の近い方が優先されます。
故人の子どもが最優先、もし子どもが亡くなっていれば、その子ども(故人から見た孫)が法定相続人となるのです。
法定相続人になるのは、配偶者と第1順位までですので注意してください。
第2順位(父母や祖父母などの直系尊属)

第1順位がいない場合、故人の父母が法定相続人になります。父母がいない場合は祖父母が該当します。
第2順位が相続人になるのは第1順位がいない場合のみですので注意しましょう。
第3順位(兄弟姉妹および代襲相続人)

第1順位および第2順位もいない場合は、故人の兄弟姉妹が法定相続人になります。兄弟姉妹が無くなっている場合は、その子ども(故人から見た姪や甥)が相続します。
第3順位が相続人になるのは、第1順位および第2順位がいないときのみですので注意してください。
必ず法定相続分に従って相続する必要はない
必ずしも法定相続分に従って相続する必要はありません。実は、法定相続分よりも故人の遺言書の方が優先されます。
これは民法964条で規定されており、遺言書にある故人の意志が尊重されるといえますね。
さらに詳しく言いますと、故人の遺言書の次に優先されるのは遺産分割協議、次に法定相続分となります。
つまり、法定相続人とはいえ、有効な遺言書により相続を指定されていたり、遺言書がなくても遺産分割協議で相続配分を決められた場合にはそれらに従う必要があるといえますね。
相続放棄を検討する為の2つの判断基準
相続放棄をするかどうかを、後悔せずに検討するためには、以下2つの判断基準があります。
1.故人に借金はないか?
2.故人の財産で今後管理が大変なものはないか?
故人の借金はそのまま相続されますし、今後管理が大変なものを相続すると結果的に相続人が損をする可能性があるからです。
故人の借金額と財産のどちらが多いか?
必ず「故人に借金がないこと」を確認してください。
故人に借金がある場合、その支払い義務は相続人に引き継がれます。
相続する財産などで支払えるだけの額であればよいですが、そうでない場合は相続放棄を検討するようにしてください。
【借金の調べ方】
故人がどこから、いくら借金していたのかを調べるには下記3つの機関のいずれかに問い合わせます。
・ CIC
・ JICC
・ 全国銀行協会
問い合わせることで分かるのは以下4点です。
・登録している銀行
・カード会社
・消費者金融などの金融機関での借り入れ状況
・返済状況などの情報
情報開示の方法は機関により異なりますので、各ホームページをご確認ください。
故人の財産で今後管理が大変なものはないか?
故人の財産で今後管理が大変なものは、早めに手放す、そもそも相続しないという選択肢を考えたほうが良いでしょう。
なぜなら、マイナスに転じる可能性のある資産を相続すると、相続人に負債が残ったり、損をするかもしれないからです。
例えば、不動産です。ローンの支払いが終わっていない持ち家や動かない車、売れる見込みのない不動産などマイナスの資産が多い場合は相続放棄を検討してください。
仏壇や神棚など、処分に困るような遺品は遺品整理業者に頼めば数千円で処理してもらえることがあります。
詳しくは「 遺品整理の料金はどのくらい?業者に遺品整理を依頼する際の相場や注意点、安く抑える工夫などを完全解説!」をご覧ください。
死んだ後の借金についてよくある質問5つ
死んだ後の借金についての疑問を、よくある順にまとめました。
いざという時に相続で悩まない、トラブルに巻き込まれないためにしっかり確認しておいてくださいね。
親が死んでなくても借金は子どもが支払うのか?
子どもが親の借金の連帯保証人かどうかにより変わります。連帯保証人の場合は支払う必要が、なければ相続しない限りは支払う必要はありません。
連帯保証人とは、賃貸を借りた人が何らかの都合で支払いが出来ない場合に代理で支払う義務を負う人のことです。
連帯保証人になった時点で、連帯保証人には本人と同じ責務が発生します。
借金がある故人の相続に関しては、相続放棄を検討する為の2つの判断基準をご覧ください。
保証人のない借金は、本人の死後誰が払うのか?
保証人のない借金は、本人の死後は相続人が、相続人がいなければ相続財産管理人により債務整理がおこなわれます。
相続財産清算人は,被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。
引用元: 裁判所|相続財産清算人の選任
相続財産管理人によって債権者が確定され、家庭裁判所の承認を経て弁済の手続きが始まるということですね。
それでも借金が残る場合は、連帯保証人はじめ、借金をしたときの保証人に支払いをするよう求められます。
借金を死亡保険金で払うことは可能なのか?
借金を死亡保険金で払うことは可能です。
ただし、死亡保険金は相続財産には入らないとされており、相続放棄した場合でも受け取ることが可能です。
よって、死亡保険金よりも借金のほうが多い場合は、相続放棄または限定相続をして、死亡保険金を受け取った方がよいといえるでしょう。
独身の場合、死んだら借金は誰が払うのか?
故人が独身の場合、法定相続人は両親、両親がいなければ祖父母、祖父母がいなければ兄弟姉妹になります。
仮に全員が相続放棄で借金の返済義務から逃れた場合、借金を払うのは連帯保証人となります。
消費者金融の借入金は誰が払うのか?
故人が消費者金融でしていた借入金は、やはり相続人が支払う義務を負います。
消費者金融の融資は、保証人を立てずにおこなうため、連帯保証人への請求はありません。
消費者金融の借入金に関しては、相続を通して法定相続人が支払い義務を課せられると考えてください。
相続に関して困ったときの相談先3つ
「ひとりで相続手続きを進めるのは無理!」
こんな方は、相続に関する手続きをプロに相談・解決してもらうことをおすすめします。「緊急度の高い順」にご紹介しています。相談を上手に活用して、検認作業をスムーズに進めていきましょう。
|
1.弁護士 |
2.行政書士 |
費用 |
25万円~
|
15万円~
|
メリット |
・各種書類の準備や申し立て作業など、相続に必要な一切の作業をまるごと依頼できる
・相続のアドバイスもしてもらえる
|
・戸籍謄本などの書類を取り寄せてもらえる
・弁護士よりも依頼費用が安い
|
デメリット |
・費用が高額になりやすい |
・相続に関する争いには対応できない |
いきなり、弁護士や行政書士に依頼するのは、ハードルが高い…という方は、
3.無料相談を利用して専門家を紹介してもらう
で、一度相談してみるのがおすすめです。
1.弁護士(相場:25万円~)
弁護士へ相続に関する相談をする場合は、以下の手順で依頼しましょう。
1.法律相談事務所へ遺産争いの内容を相談する
2.費用について弁護士から説明を受ける
3.着手金の支払い後、弁護活動を開始してもらう
必要に応じて、弁護士と都度打ち合わせが入る場合もあります。
また、弁護士へ遺産争いに関する相談をする場合は、以下の費用がかかることを覚えておきましょう。
費用の種類 |
概要 |
費用相場 |
相談料 |
遺産争いの相談にかかる費用 |
無料、もしくは約5,000円?(30分) |
着手金 |
弁護士が遺産分割や調停に着手した場合の費用 |
20?30万円 |
報酬金 |
遺産争いが解決した場合に発生する費用 |
経済的利益や着手金相場によって変動 |
実費 |
印紙代や切手代、交通費など |
1?10万円 |
日当 |
出張費用 |
約5万円 |
参考: 「相続会議」朝日新聞社
2.行政書士(相場:15万円~)
行政書士へ相続に関する相談をすると、弁護士に依頼するよりも比較的安く済ませることが可能です。
金額は15万円程度としましたが、おこなう手続きの複雑さや処理する案件の数、相続人の数によって変動します。
行政書士の中には、サービスごとに料金表を設けているところや、パック料金で一律の料金を定めているところがありますので、依頼する内容の複雑さにより使い分けましょう。
3.無料相談を利用して専門家を紹介してもらう
相続に関するお悩みに応える、 日本司法支援センター(法テラス)がおすすめです。
日本司法支援センター(法テラス)は国が設立した法的トラブルの総合解決所です。誰でも無料で相談でき、適切な支援先を紹介してもらうことができますよ。
『 やさしい相続』でも、24時間365日無料相談で承っています。電話でもメールでも行えますのでお気軽にご連絡下さい。しつこい勧誘等も行いません。
大切なことだからこそ、丁寧に・確実に進めていきましょう。

まとめ
ここまで、借金を背負ったまま死んだら借金はどうなるのか?について解説してきました。
結論、個人の借金を支払うのは法定相続人です。
法定相続人が相続する遺産のなかには借金や債権などの負の遺産も含まれているため、法定相続人は故人の借金を支払う義務が生まれるということですね。
法定相続人は相続放棄することで借金返済の義務を免れられますが、連帯保証人は逃れられません。
連帯保証人になった時点で、連帯保証人には本人と同じ責務が発生するからです。
また、故人のマイナス資産とプラス資産のどちらが多いかの判断が追いつかない場合は、相続と相続放棄の中間に位置する限定承認も視野に入れておきましょう。
限定承認とは、プラスの相続財産の金額を限度として債務を相続するというもの。
借金や債務などのマイナスの財産を相続するとしても、限度が決まっています。つまり、相続人自身の財産を使って借金の返済をする必要がなくなります。
後々大きな借金が出てきて、返済義務を負うことになった!なんて結末を防ぐことができますよ。
_1.png)

【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール