遺留分を完全解説!計算方法・侵害請求権の行使方法を紹介!
2021/5/7 情報更新
皆さんは遺留分という言葉をご存知でしょうか。遺留分とは、法定相続人に与えられる最低限の保証のことです。
被相続人(亡くなった方)が作成した遺言状によって、法定相続人がこの遺留分を侵害された場合には、自分で遺留分侵害額(減殺)請求という手続きを行わなければいけません。
この記事では、遺留分を請求できる人や取り戻せる金額、実際に請求する際の流れなどについて詳しく解説していきます。
もしこれから相続などが発生する可能性があるという方は参考にしてみて頂けると幸いです。
遺留分とは?
遺留分とは、法定相続人に対して保証された最低限の相続財産のことです。
>>法定相続を完全解説!範囲・割合を紹介!
この遺留分の制度は、被相続人が残した遺言書などによって法定相続人が遺留分を侵害されるような場合に必要となってくる制度です。
つまり、配偶者と子どもが1人いる父親が、「配偶者に対して全ての遺産を相続させる。」
というような遺言を残した場合、本来子どもがもらえるはずだった遺産がもらえなくなると不公平となってしまうため、遺留分という権利が設けられました。
本来自分がもらえるはずだった遺産が、遺言書などによって一切もらえなくなってしまったり、明らかに少ない金額しかもらえなかったら困る方もいるかもしれません。
ここでは遺留分制度の概要と、遺留分を認められる人・認められない人の条件について見ていきます。
遺留分制度については下記記事もご参考ください。
・相続遺留分とは?割合・取り戻す方法・費用を紹介!
・遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介!
・遺留分減殺請求を完全解説!侵害された財産を取り返し方を紹介!
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遺留分制度の概要
遺留分制度とは、法定相続人に対してあらかじめ最低限の相続財産を保証する制度のことです。
この遺留分は、認められる人と認められない人がおり、また、人によって遺留分の割合は異なります。
被相続人は遺言書などにより、相続させる財産や誰にどのくらいの割合で相続させるかを指定することができます。
つまり、遺言書で指定した相続人に対して過剰な相続をさせてしまい、遺留分を認められる相続人に対して遺留分を侵害してしまった場合には、遺留分を認められた相続人が遺言書で指定されている相続人に対して「遺留分侵害額」を請求することができます。
しかし、この遺留分侵害額請求を行使できる期限は、遺言書で遺留分を侵害されていると把握した時点から一年、知らなかった場合は十年とされているため注意しましょう。
遺言書については下記記事もご参考ください。
・遺言書の書き方を徹底解説!ケース別文例・有効な書き方を解説!
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遺留分を認められる人
では遺留分を認められる人は誰になるのでしょうか。
遺留分権利者
遺留分を認められる人のことを「遺留分権利者」と言いますが、権利者に該当するのは下記の人物になります。
1:被相続人の配偶者
2:被相続人の子
3:被相続人の父母、祖父母など(直系尊属)
代襲相続人
また、子の代襲相続人も遺留分権利者となることができます。
代襲相続人とは、本来相続をするはずだった相続人が死亡した場合、その相続人の子どもが代わりに相続の権利を持つことです。
代襲相続が起こる場合、法定相続人の人数に注意しましょう。
養子の場合も実子と変わらずに請求可能
例え子供が養子だったとしても、実子と変わらずに遺留分の請求を行うことができます。後述する遺留分の割合も実子と養子で差はありません。
代襲相続人については下記記事もご参考ください。
・代襲相続人を完全解説!相続割合・権利・範囲を紹介!
・代襲相続を完全解説!範囲・割合・相続放棄のルールを紹介!
遺留分請求ができない人
逆に遺留分請求ができない人というのはどのような人なのでしょうか。
兄弟姉妹
まずは被相続人の兄弟姉妹が該当します。
被相続人の兄弟姉妹には遺留分権利者の資格がないのですが、その理由としては民法で定められた法定相続の順位がもっとも遠いからだと考えられています。
甥や姪
例え血のつながりがあっても、被相続人の兄弟姉妹に遺留分が認められないように、その子どもである甥や姪にも遺留分の請求権はありません。
法定相続の順位
民法で定められている法定相続の順位は下記のようになっています。
1位:子ども、もしくは孫(直系卑属)
2位:父母、もしくは祖父母(直系尊属)
3位:兄弟姉妹
兄弟姉妹以外に遺留分が請求できない人
兄弟姉妹以外には、相続放棄をした人物や相続欠格者、相続人廃除された人物は遺留分を請求できません。
相続放棄をした人物は、家庭裁判所で相続放棄を申告した人物が該当します。
相続欠格者とは?
相続欠格者とは、被相続人を殺害したあるいは自分以外の相続人を殺害した者、または被相続人が殺害されたことを把握しているにも関わらず刑事告訴をしなかった者、詐欺や脅迫により被相続人が作成する遺言書を変更させるあるいは撤回させた者などが該当します。
相続人廃除された人物とは、被相続人に対して暴力や虐待、著しい侮辱などを行なった人物です。
相続の排除とは?
上記、相続欠格者のように犯罪を犯した場合で無くても、被相続人の意志で相続から排除することが可能です。相続の排除は自分の配偶者や子供、両親に対しておこなうことができます。相続の排除を行うには、家庭裁判所に相続人廃除の申立てをする必要があります。仮に、被相続者が亡くなっていた場合でも、遺言書に、遺言執行者の指定と、相続人排除の旨が記載されてあれば、遺言執行者が代わりに家庭裁判所へ手続きを行えます。
法定相続については下記記事もご参考ください。
・法定相続を完全解説!範囲・割合を紹介!
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相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
遺留分の放棄
遺留分の放棄とは、遺留分侵害額(減殺)請求を行う権利を放棄することです。遺留分の放棄は原則相続が発生する前にしか行えません。
また、遺留分の放棄を行うには家庭裁判所の許可を得なければいけません。
理由としては、家庭裁判所で許可をもらう必要がない場合には遺留分権利者が被相続人あるいは相続人から遺留分権利を放棄させられてしまう可能性があるからです。
そのため、遺留分権利者が自ら遺留分を放棄したいという事実が必要となります。
遺留分放棄の流れ
遺留分放棄の流れとして、まずは遺留分権利者本人が申立人となり被相続人の住所の管轄の家庭さん番所に申立を行います。
この時に必要な書類として、申立書と被相続人の戸籍謄本、申立人の戸籍謄本が必要となります。
費用は800円分の収入印紙となります。
申立が裁判所に受理されたら、裁判所から審問の期日連絡が来ます。審問では裁判官から申立人に対して遺留分の説明や権利を放棄する理由などを問われます。
審問が滞りなく済んだら、放棄を認めるか否かの結論が下されることになります。もし遺留分の放棄が認められた場合、申立人へ裁判所から連絡がきます。
遺留分の放棄と相続放棄の違い
よく混合されがちなのが、遺留分の放棄と相続放棄です。
同じ相続に関する言葉に対して放棄と付いているため間違われることが多いですが、全く意味合いが異なるためそれぞれについて抑えておく必要があります。
相続放棄とは?
相続放棄は相続に関わる全ての権利を放棄することになるため、相続人の権利は無くなりますし、もちろん遺留分も無くなります。
また、遺産分割協議にも参加はできません。代襲相続の権利も無くなりますし、相続放棄は被相続人が生前の間には行えません。
手続きは家庭裁判所で行い、相続発生から三ヶ月以内に行う必要があります。
遺留分の放棄とは?
対して遺留分の放棄とは、「遺留分の権利のみ」を放棄するため相続人としての権利は放棄されません。
そのため、相続人の権利はありますし遺産分割協議が行われた場合には参加しなければいけません。
ここで注意しておきたいこととして、遺留分の放棄を行っただけでは負債を相続する可能性があるということです。
もし負債を相続したくないという場合には、相続放棄を行う必要があります。
相続放棄については下記記事もご参考ください。
・代襲相続を完全解説!範囲・割合・相続放棄のルールを紹介!
遺留分侵害額(減殺)請求の対象
遺留分侵害額請求の対象となるものとしては、「遺贈」・「死因贈与」・「生前贈与」があります。
遺贈は遺言書で法定相続人以外の人物に財産を譲渡したい場合に、死因贈与は贈与者が死亡した場合にあらかじめ指定された財産を受遺者に贈与する場合、生前贈与は贈与者が生きているうちに財産を贈与することです。
遺贈と贈与では課される税率が異なったり、行える条件なども異なります。
そのため、それぞれの特性を理解して活用することが大切になります。では、この3つの遺留分侵害額(減殺)請求の対象について見ていきましょう。
遺贈
遺贈とは、遺言書によって被相続人の財産を法定相続人以外の人物に譲渡したい場合に行われます。
相続の場合は法定相続人のみしか財産を継承することができないため、遺贈と相続の異なる点としては財産を受け取る側の人物と被相続人との関係性です。
遺贈と税金について
ちなみに、遺贈と相続では税金の考え方も異なります。遺贈の場合、相続税が2割加算されることになります。
また、遺贈された財産の中に不動産が含まれていた場合、登記手続きが必要となりますが登録免許税が相続と遺贈で異なります。
相続の場合は不動産価格の4/1000ですが、遺贈を受けた人物が相続人の場合は同じく4/1000、相続人以外の場合は20/1000となります。
しかし、遺贈の中でも税金が課されないケースがあります。それは、「認定NPO法人」への遺贈です。
NPO法人とは内閣府から認定された市民団体のことを指しますが、その中でも国税局に認定されている認定NPO法人への遺贈には、相続税が課されません。現在認定NPO法人の数は1,000件以上あります。
遺贈には大きく「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。
包括遺贈とは?
包括遺贈とは、財産を直接指定するわけではなくて、財産の割合を指定して遺贈する方法です。
具体的には遺産の三分の一のような形で指定ができます。
つまり、遺産の中に負債がある場合にはその負債も受け取ることになってしまいます。
包括遺贈を受け取る人のことを「包括受遺者」と言います。
包括受遺者は通常の相続と同様に、「単純承認」・「限定承認」・「相続放棄」の3種類の方法を選択できます。
なので、遺贈を受ける財産がプラス財産だけの場合は単純承認を、マイナス財産も含まれている場合には差引を考えて限定承認を、明らかにマイナスとなってしまう場合には相続放棄を選択することができます。
この包括受遺者には、遺留分はありません。
特定遺贈とは?
特定遺贈とは、土地や建物など特定の財産を指定して遺贈する方法です。
非常にシンプルな遺贈のため、家庭裁判所を通して行う手続きなども必要ありません。
遺贈財産の中に不動産が含まれている場合、特定遺贈の場合は不動産取得税が課されますが、包括遺贈の場合には不動産取得税は課されません。
遺贈については下記記事もご参考ください。
・遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!
・遺贈を完全解説!相続との違い・流れ・控除内容を紹介!
死因贈与
死因贈与とは、財産を贈与する人(贈与者)が死亡した場合、あらかじめ指定していた財産を受遺者に贈与するという契約を結ぶというものです。
では、死因贈与と遺贈にはどのような違いがあるのでしょうか。
①死因贈与には相互の同意が必要
一つ目は、受遺者と贈与者の関係性です。死因贈与では、受遺者と贈与者の相互に同意があり、贈与契約を結ぶため一方的な財産の贈与は起こりません。
しかし、遺贈の場合には遺言書を作成した人物が受遺者に事前に相談せず遺言書で指定することができるため、受遺者が相続を承認するのか放棄するのかを決めなければいけません。
②死因贈与は未成年は行えない
二つ目は行える年齢の制限です。遺贈を行える年齢は15歳以上です。
しかし、死因贈与では契約が発生するため法律行為となります。そのため未成年では独断で死因贈与は行えないので法定代理人を立てる必要があります。
ですが、贈与者になれないだけで受遺者になることは可能です。
③税金の課税率が異なる
三つ目は課される税金の課税率についてです。遺贈の場合は下記の通りです。
【遺贈】
・登録免許税:法定相続人=0.4%、法定相続人以外=2%
・不動産所得税:法定相続人=非課税、法定相続人以外=4%
死因贈与の場合は下記の通りです。
【死因贈与】
・登録免許税:法定相続人=2%、法定相続人以外=2%
・不動産所得税:法定相続人=4%、法定相続人以外=4%
生前贈与
生前贈与とは、相続が起こる前の生前に財産を贈与することです。生前贈与は多くの場合、相続税の節税目的として行われます。
しかし、通常は贈与税の方が相続税よりも高い傾向にあります。ではなぜ生前贈与で税金対策が行えるのでしょうか。
生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」、「住宅取得等資金の贈与」などの贈与方法があります。
暦年課税
暦年課税とは、1月1日~12月31日の間に110万円以下の贈与を行うことで贈与税の基礎控除額である110万円を超えないように生前贈与を行う方法です。
1年に110万円まで贈与することができるため、3年続ければ330万円を贈与することが可能となります。
相続時精算課税
相続時精算課税とは、60歳以上の父母もしくは祖父母から20歳以上の子どももしくは孫に対して、将来相続するであろう財産を2500万円まで一旦非課税で贈与することができる仕組みです。
一旦非課税という意味ですが、相続時精算課税を利用して生前贈与を行なった場合、贈与したタイミングでは非課税で行えますが、実際に相続が発生した場合には生前贈与分の財産にも贈与税が課されるためです。
つまり、納税のタイミングを実際の相続が発生するまで先延ばしにできるというものです。
この制度は子どもや孫が経済的事情により今すぐ大金が欲しい場合などに利用されます。
住宅取得等資金の贈与
住宅取得等資金の贈与とは、子どもあるいは孫が新築住宅を購入する場合、3,000万円までの贈与が非課税で行えます。
利用できる条件には下記のようなものがあります。
1:受遺者は子どもあるいは孫であること
2:贈与を受けた次の年の3月15日までに住宅を新築などで取得していること
他にも贈与税が非課税となる様々な制度があるので、上手に活用すると良いでしょう。
贈与については下記記事もご参考ください。
・家の名義変更を親から子にする際の節税方法を完全解説!贈与税を非課税にするには?
・遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!
遺留分侵害額(減殺)請求の順序
遺留分侵害額(減殺)請求を行う際には、減殺できる財産に順序があります。
その順序は民法1033条で定められており、
1:遺贈2:贈与の順番で減殺しなければいけません。
つまり、まずは遺贈から減殺し、遺贈だけでは遺留分侵害額に達さない場合に贈与の減殺を行うことになります。
また、もし贈与が複数ある場合には、新規の贈与から辿っていきます。
もし遺贈が複数ある場合には、民法1034条により次のように定められています。
「遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。
ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」
つまり、遺贈が二人以上に行われている場合、その二人に対して同時に減殺請求が行われるということです。
そして、相続人Aが3,000万円、相続人Bが1,000万円の遺贈を受け取っており、遺留分侵害額が1,000万円の場合には相続人Aが750万円、相続人Bが250万円を支払う必要があります。
遺留分侵害額(減殺)請求先の優先順位
遺留分侵害額(減殺)請求先の優先順位は、減殺できる財産に順序があるため受遺者が最優先で請求されます。
二人以上に遺贈があった場合には、遺贈の価値に応じて二人以上に請求を行うことになります。
しかし、遺言書で請求先が指定されていた場合には、その指定された人物に優先的に請求を行うことになります。
受遺者だけでは請求した金額に不足があった場合には受贈者に請求を行います。
受贈者が複数いた場合には、贈与を後に受けた順から請求します。
例えば受贈者が二人いて、受贈者Aが2020年に、受贈者Bが2019年に贈与を受けていた場合、受贈者Aに請求を行います。
受贈者Aに請求を行い、それでも金額に不足があった場合に初めて受贈者Bに請求を行うことができます。
遺留分減殺請求については下記記事もご参考ください。
・遺留分減殺請求を完全解説!侵害された財産を取り返し方を紹介!
・遺留分を完全解説!計算方法・侵害請求権の行使方法を紹介!
遺留分の割合と具体例
遺留分の割合については、父母などの直系尊属が法定相続人の場合は法定相続分の三分の一、それ以外の場合は法定相続分の二分の一となります。
では具体例から遺留分の割合について見ていきましょう。
法定相続人が配偶者と子ども一人の場合、全体の遺留分は二分の一となります。
配偶者と子どもの法定相続分はそれぞれ二分の一となるので、配偶者と子どもの遺留分はそれぞれ四分の一となります。
法定相続人が配偶者と子ども二人の場合、全体の遺留分は先ほど同様に二分の一となります。
配偶者の法定相続分が二分の一、子ども二人の法定相続分が二分の一×二分の一で四分の一となります。
つまり、最終的な遺留分は、配偶者は四分の一、子どもたちの遺留分は八分の一となります。
両親が法定相続人の場合、全体の遺留分は三分の一になります。
父と母の法定相続分はそれぞれ二分の一となるため、最終的な遺留分はそれぞれ六分の一となります。
法定相続については下記記事もご参考ください。
・法定相続を完全解説!範囲・割合を紹介!
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計算方法とモデルケース
遺留分の計算方法は、
「相続財産+相続人に対する相続が発生する10年以内の生前贈与+相続人以外に対する相続が発生する1年以内の生前贈与+遺留分権利者に損害を与えると知っていた上で行われた贈与-債務」で求めることができます。
つまり、相続が発生した段階の財産だけでなく、被相続人が行なった生前贈与や遺贈なども遺留分に含むことになります。
ではモデルケースを参考に、遺留分侵害額(減殺)請求で取り戻せる金額を見て見ましょう。
・ケース①
配偶者と子ども一人がいる男性が遺産を6,000万円残して亡くなりました。
その男性は遺言で愛人に遺産を5,000万円渡してしまいました。
このケースの場合、配偶者と子どもが遺留分侵害額(減殺)請求で取り戻せる金額はいくらになるでしょうか。
配偶者と子どもに残された遺産は1,000万円です。
それを二分の一ずつ分配するため、配偶者と子どもは500万円ずつ受け取ることになります。
配偶者と子どもの法定相続分はそれぞれ二分の一となるため、配偶者と子どもの遺留分はそれぞれ四分の一となります。
すると配偶者は6000万円×四分の一=1,500万円となります。
子どもも同様に6000万円×四分の一=1,500万円となるため、愛人に対して1,500万円-500万円=1,000万円の請求が可能となります。
・ケース②
では、配偶者と子ども二人の場合を見て見ましょう。
配偶者が受け取る遺産は500万円、子ども一人が受け取る遺産は250万円となります。
配偶者の遺留分は6000万円×四分の一=1,500万円となりますが、子ども一人あたりの遺留分は6000万円×八分の一=750万円となります。
そのため、配偶者は愛人に対して1,500万円-500万円=1,000万円の請求が可能となり、
子ども一人あたりが請求できる金額は750万円-250万円=500万円となります。
遺留分の計算をする際の注意点
遺留分の計算をする際の注意点として、遺留分を求める計算式の「遺留分算定の基礎となる財産額」の範囲や評価のタイミングについてが挙げられます。
遺留分を求める計算式は「遺留分算定の基礎となる財産額×各相続人の遺留分割合」となります。
遺留分算定の基礎となる財産額には、被相続人が相続開始時に所持していた財産(有価証券や現金)と被相続人が生前贈与した財産、被相続人が生前贈与した財産で特別受益にあたるもの、被相続人の債務が当てはまります。
この遺留分算定の基礎となる財産額を算定する際に、どの財産が特別受益になるのかや、財産は本当に正確な額なのかどうかが問題になることが多いです。
また、法定相続人が多い場合や養子などがいた場合には、遺留分の計算がとても複雑になってしまうため、個人で計算した金額が間違ってしまうようなケースが起こりうる可能性があります。
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遺留分侵害額(減殺)請求権の時効消滅
遺留分侵害額(減殺)請求権は、相続の開始および減殺すべき贈与又は遺贈を知った時から1年で時効消滅、あるいは相続開始から10年(除斥期間)で消滅すると定められています。
この相続の開始および減殺すべき贈与又は遺贈を知った時から1年というのは、相続が始まったあるいは贈与や遺贈があり自分の遺留分が侵害されたことを知った時から1年間とされています。
この1年の間に遺留分請求を行わなければ、請求権が消失してしまうため裁判ではこの1年をどこからスタートとするのかという争点になることがあります。
そのため、相続が開始されてから1年以内に遺留分の請求を行っておくと良いでしょう。
時効をリセットする方法
しかし、時効の進行を中断させてリセットさせることも可能です。
リセットとは、例えば自分が遺留分を侵害されたと気づいてから10ヶ月経過した場合、10ヶ月と10日目に請求権を行使すれば、そこからまた1年のカウントダウンがスタートします。
具体的に時効の中断をさせるための方法としては、内容証明郵便の送付や遺留分侵害額(減殺)請求の調停・訴訟の申し立てを行った場合です。
口頭のみの請求だと、実際に請求を行ったという立証が難しいため、公的に請求したという証拠が残るように請求する必要があります。
10年経過すると請求権は喪失する
また、相続開始から10年が経過した場合は強制的に遺留分侵害額(減殺)請求権は喪失します。
先ほど紹介した時効の中断を行うことができないため注意しましょう。
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遺留分侵害額(減殺)請求権の行使方法1:内容証明郵便送付と話し合い
遺留分侵害額を請求する場合、相続の開始を把握した時、または贈与や遺言書の事実を把握した時から一年以内に行わなければいけません。
一年を過ぎてしまうと請求できなくなってしまうため注意しましょう。
遺留分侵害額請求の行使方法
では、遺留分侵害額請求をする場合にまず行うこととして、内容証明郵便送付と話し合いがあります。
内容証明郵便を送付する
内容証明郵便には遺留分請求額の請求書を送付します。内容証明郵便では、誰が誰宛にいつ郵便を送ったかを郵便局に証明してもらえます。
そのため、一年以内に請求権を行使したという証拠になります。また、配達証明をつけておくと確実です。
内容証明郵便を送付したら、直接相手と話し合いを行うことになります。
公正証書とは?
話し合いによって合意を得られた場合には、公正証書として話し合った内容を契約書として作成します。
公正証書とは、二人以上で行う権利や義務に関する契約について法的な効力を持つ形で作成する書類のことを指します。
公正証書にしておけば相手がもし合意した内容とは異なる対応をした場合に強制執行が行えます。
また、話し合いの際には内容を録音しておくようにしましょう。
公正証書については「公正証書遺言を完全解説!書き方・流れ・費用を紹介!」の記事もご参考ください。
遺留分侵害額(減殺)請求権の行使方法2:遺留分侵害額(減殺)請求調停
もし当事者同士の話し合いで解決ができなかった場合には、「遺留分侵害額(減殺)請求調停」を行わなければなりません。
遺留分侵害額(減殺)請求調停とは、当事者だけでは解決できなかった場合に裁判官や調停委員などに立ち会ってもらい、話し合いで解決を目指すためのものです。
では、この遺留分侵害額(減殺)請求調停はどのように進めていけば良いのでしょうか。申立方法から調停の流れについて見ていきましょう。
遺留分侵害額(減殺)請求調停とは?
遺留分侵害額(減殺)請求調停とは、内容証明を送付し当事者間での話し合いで解決できなかった場合に行う調停です。
調停というのは、当事者同士だけでなく、裁判官と調停委員が仲介となって行う話し合いのことです。
基本的に調停を行って、それでも解決できなかった場合に訴訟に移るのですが、あまりにも当事者同士が話し合いを拒む姿勢の場合には調停を行わず訴訟手続に移ることがあります。
あくまでも遺留分侵害は多くの場合家庭内での問題のため、話し合いで解決させるという目的があります。
調停の申立方法
では、どうやって調停を申し立てれば良いのでしょうか。まずは申立書を作成する必要があります。
申立書には、申立人と相手の本籍、住所、氏名、申し立ての趣旨、申し立ての内容を記載します。
申し立ての趣旨の欄には、最終的にどうしたいのかという結論を記載します。
具体的には「相当の解決を求める」や「遺留分侵害額の支払いを求める」などで問題ないでしょう。
申し立ての内容の欄については、被相続人と自身の関係性や遺産の内容、遺留分の内容、遺留分侵害の内容などを記載します。
申立書と一緒に提出する書類には、下記のようなものが挙げられます。
・申立書のコピー
・遺言書のコピー
・被相続人の全ての戸籍謄本
・相続人全員分の戸籍謄本
・預貯金通帳のコピーなど、遺産内容に関する全ての証明書
・遺産目録
申立には収入印紙1,200円分が必要となります。
調停の流れ
続いて調停の流れについて見ていきましょう。
申立を裁判所が受理した場合、調停の第1回期日を設定します。期日が決まったら、裁判所から相手方に対して申立書のコピーと呼び出し状などが送られることになります。
初回の調停では、裁判官と調停委員が参加します。関係者全員に対して裁判官から今回の申立に関する内容を説明されます。
説明が済んだら申立した人物と相手方が交互に調停室に入室し、調停委員に対して意向を説明します。第1回期日が終わったら、第2回の期日を決めて合意がなされるまで調停を行います。
もし複数回に及ぶ調停で合意が得られなかった場合には、訴訟へ移ります。
調停調書の効果
調停が成立した場合、「調停調書」を作成します。この調停調書には法的効力があるため、相手方が調停終了後に合意した内容を無視することができなくなります。
もし相手方が無視した場合には、「履行勧告」・「履行命令」・「直接強制」・「間接強制」という手段を用いて裁判所に申し出ることができます。
履行勧告とは、相手方が合意した内容を無視した場合、裁判所から書面で履行の勧告をしてもらうことができます。
履行命令とは、相手方が従わない場合に10万円以下の過料を行うことができます。
しかし、この過料分は申立人がもらえるわけではありませんので、履行命令を相手方に無視された場合には強制力がないため強制執行に映る必要があります。
直接強制とは、相手方が履行を無視した場合に行える強制的な財産などの改修が行える仕組みです。
相手方の給料や口座を差し押さえることで、申立人に支払うか裁判所へ提出する義務が発生します。
間接強制とは、相手方が履行を無視した場合に相手方に対してある一定の期間内に履行を行わなければ、間接強制金を支払わせるという仕組みです。
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遺留分侵害額(減殺)請求権の行使方法3:遺留分侵害額(減殺)請求訴訟
もし遺留分侵害額(減殺)請求調停でも合意を得られなかった場合には、遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を行わなければなりません。
訴訟を行うため、裁判所へ出廷する必要があります。なかなか裁判をする上での注意点や訴訟の行いかたを把握している人は少ないと思います。
ここでは遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を行う場合の内容や注意点などについてみていきましょう。
遺留分侵害額(減殺)請求訴訟の内容
遺留分侵害額(減殺)請求訴訟はどのように進めていけば良いのでしょうか。
まずは訴訟を行う裁判所についてですが、金額によって裁判所の種類が異なります。
遺留分侵害額が140万円以下の場合は被相続人の住所である「簡易裁判所」、140万円を超える場合には被相続人の住所である「地方裁判所」で行う必要があります。
訴訟を行う費用は遺留分侵害額によって異なります。
遺留分侵害額が100万円以下の場合、10万円ごとに1,000円、
遺留分侵害額が100万円を超えてかつ500万円以下の場合、20万円ごとに1,000円、
遺留分侵害額が500万円を超えてかつ1,000万円以下の場合、50万円ごとに2,000円、
遺留分侵害額が1,000万円を超えてかつ10億円以下の場合、100万円ごとに3,000円の収入印紙が必要です。
続いては書類の準備です。訴訟を行うにあたって必要な書類は下記が挙げられます。
・訴状
・遺留分侵害額を請求した内容証明郵便
・被相続人の戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・遺産目録
・遺言書のコピー
裁判所が訴状を受理した場合、後日裁判の第1回期日の連絡がきます。
公判では口頭弁論などによりお互いの主張を伝え、裁判官から判決が下されます。
裁判中にお互いが合意して場合は、その段階で裁判が終わることになります。もし判決に納得できない場合には、控訴することも可能です。
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和解
もし判決が下る前に申立人と相手方が和解できた場合には、その時点で裁判が終わり「和解調書」が作成されます。
この和解調書に沿って相手方は支払いや手続きを進めていくことになります。
しかし、和解調書を作成した上で相手方がそれを不履行とした場合には、先ほど紹介した調停調書同様に、強制執行などで財産の差し押さえなどで遺留分侵害額を回収することになります。
訴訟の注意点
消滅時効
遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を行う際の注意点として、一つ目に消滅時効が挙げられます。
遺留分減殺請求の消滅時効は、民法1042条で次のように定められています。「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」つまり、遺留分権利者は相続を知った時点から一年以内に相続人に対して請求を行わなければ、請求権を喪失してしまいます。
また、相続を知らなかったとしても十年経過した場合には同じように請求権を喪失してしまいます。
判決に不服があった場合
二つ目として、判決に不服があった場合についてです。
もし第一審の判決に不服があった場合には、判決送達日から二週間以内に控訴することが可能です。
しかし、二週間を超えてしまうと控訴ができなくなってしまうため注意しましょう。
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遺留分侵害額(減殺)請求を弁護士に依頼する
遺留分侵害額(減殺)請求は今まで見てきた通り、揃えなければいけない書類や必要な手続きなどが多いため、法律の素人が行うのはとても困難です。
そのため、諸々の手続きを一括で弁護士に依頼することが可能です。
では、弁護士に依頼した場合にはどのくらい費用がかかるのか、また費用の内訳はどのようになっているのか、弁護士へ依頼するメリットなどを一つずつ解説していきます。
弁護士に依頼するメリット
相手方とやりとりする機会が減る
弁護士に依頼するメリットの一つ目として、相手方と直接やりとりする機会を減らすことができるということが挙げられます。
遺留分を請求するということは、相手方と金銭についてのやりとりを行うことになります。
そのため、請求を行っているという時点でお互いに感情的になってしまうことがあります。
弁護士に依頼をすれば、直接やりとりする機会を最低限に減らすことができますし、精神的な安心感を得ることができます。
書類の作成を任せられる
二つ目は書類の作成などの事務手続きを任せることができるという点です。
申立書の作成や戸籍謄本などの取り寄せなど、遺留分侵害額(減殺)請求を行うにあたって必要な書類はたくさんあります。
そのため、仕事の都合上平日動くのが難しい人や、専門用語が多く書類作成に不安があるといったような方には、いっそ弁護士に依頼してしまった方が良いケースがあります。
法的な手続きを一任できる
三つ目は調停や訴訟などの法的な手続きを一任できるという点です。
もし話し合いで解決できなかった場合には調停や訴訟まで発展してしまうことがありますが、そのような場合には法的な証拠を持たせるための書類や裁判所への出廷などを全て任せることができるため、自身にかかる負担はほぼありません。
もし相手方と少しでもトラブルに発展する可能性を感じたのであれば、弁護士に依頼することを考えてみてはいかがでしょうか。
弁護士に依頼した時の費用目安
実際に遺留分侵害額(減殺)請求を弁護士に依頼した際の費用目安を見ていきましょう。
弁護士に支払う費用の内訳には、法律相談料・交渉費用・着手金・報酬金・調停費用・訴訟費用があります。
もちろん依頼する弁護士事務所や遺留分侵害額の総額によって異なるため、あくまでも目安となります。
では、それぞれどのくらいの費用がかかるのか、一つずつ解説していきます。
法律相談料
はじめにかかる費用が法律相談料になります。法律相談料は多くの場合、時間によって価格が設定されています。
30分5,000円から1時間10,000円ほどが相場となりますが、相談料に関しては初回30分は無料など、無料相談を行なっている弁護士事務所もあります。
交渉費用
遺留分を相手方に請求する場合には、まず当事者間での解決が求められます。
この交渉を弁護士に依頼して任せる場合には着手金と成功報酬が発生します。
一例ではありますが、着手金の相場は30万円前後、報酬金は請求できた額の10〜15%ほどです。
着手金
着手金とは、弁護士に正式に依頼を行った場合に支払うお金のことです。そのため、依頼の結果によって変動するものではありません。
着手金の相場は15万円〜30万円ほどです。
報酬金
報酬金とは、依頼が成功した場合に支払うお金のことです。
多くの場合、報酬金は実際に請求できた遺留分のうち何%かを支払い、そこに最低金額が設定されています。
また、請求できた額に応じて報酬金の%も上がる傾向にあります。
請求できた額が300万円以下の場合、6〜8%、300万円を超える額から3,000万円までは5%というように設定されます。
そのため、仮に請求額が1,000万円だった場合、50万円が報酬金となります。
調停
もし相手方の合意が得られず調停まで及んだ場合には、弁護士が調停代理として参加してもらうことができます。
この場合、着手金と成功報酬が別途発生します。調停の着手金は30万円前後、成功報酬は10〜15%前後が多いです。
調停の場合の成功報酬は遺留分が請求できた場合にのみ発生します。
訴訟
訴訟に及んだ場合、かかる費用は調停とほぼ同様の額で、着手金は30万円前後、成功報酬は10〜15%前後が多いです。
ただし、着手金と成功報酬以外に、弁護士が裁判所へ赴く場合などには交通費や日当が発生します。日当の相場は5万円前後です。
そのため、裁判が長引く場合には、それに応じて日当を支払う回数が多くなってしまいます。
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遺留分侵害額(減殺)請求をされたくない場合
もし被相続人が遺留分侵害額(減殺)請求をされたくない場合、どのような対処法があるのでしょうか。
遺留分侵害額請求されたくない場合の対処法
付言事項の活用
一つ目は付言(ふげん)事項の活用です。
付言事項とは、遺言書に記載するもので、法的効力はないものです。
通常、付言事項には遺族への感謝の気持ちなどを記載します。
そのため、付言事項に「相続人Aには特にお世話になったので、少し遺産を多く残してあります。」
など遺産の金額についてどうして差が生じているのかを具体的に理由を記載しておき、相続人の理解を得られるようにしておくと良いでしょう。
二つ目は生命保険の活用
二つ目は生命保険の活用です。
生命保険は原則として遺留分の対象とはなりません。
そのため、被相続人が遺産を残したい相続人Aに対して、生命保険の受取人として契約しておけば相続人Aは生命保険金を受け取ることができます。
しかし、遺産の過半数を生命保険金として残した場合、裁判所に不公平であるとされ遺留分の対象とされることがあります。
相続人に遺留分の放棄をしてもらう
三つ目は遺留分の放棄を相続人にしてもらうことです。
相続人と話し合い、生前に遺留分の放棄を家庭裁判所に申し立てを行って認められれば、遺留分の放棄が成立します。
しかし、あくまでも相続人の意思で行わなければならないため注意が必要です。
養子縁組の活用
四つ目は養子縁組の活用です。
被相続人と相続人の身内を養子関係にすることで、遺留分を請求できる人物を増やし一人一人の遺留分を減額させる方法です。
最後は遺言書による遺留分減殺方法の指定です。遺言では、遺留分減殺方法として、財産あるいは人を指定することができます。
具体的には、「相続人Aと相続人Bがいた場合、相続人Cがもし遺留分を請求した場合には相続人Bから請求すること」のように請求する順番を指定することができます。
また、「相続人Aに不動産と預貯金を相続させた場合、相続人Bが遺留分請求を行った場合には預貯金から請求すること」のように相続させた財産の中で請求順序を指定できます。
しかし、遺言書でも遺留分の侵害および贈与から遺贈の順に請求してほしいなどのような指定はできないので注意しましょう。
相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
遺留分についてのまとめ
ここまで遺留分の特徴や遺留分侵害額(減殺)請求権の行使方法、弁護士に依頼した場合の費用などについて見てきましたが、いかがだったでしょうか。
ここでは今までの内容をわかりやすく箇条書きでまとめていきます。
・遺留分とは、法定相続人に対して最低限の遺産相続を保証する制度のことで、遺留分が他の相続人から侵害された場合には、遺留分侵害額(減殺)請求を行うことができる。
・遺留分の権利を持つ人は、被相続人の配偶者、被相続人の子ども、被相続人の父母、祖父母である。
・遺留分の権利を持たない人は、被相続人の兄弟姉妹または相続放棄をした人、相続欠格者、相続人廃除された人である。
・遺留分の放棄とは、遺留分侵害額(減殺)請求を行う権利を放棄することである。被相続人が生前のタイミングでしか行えず、家庭裁判所に許可を得なければ遺留分は放棄することができない。
・遺留分の放棄と相続放棄の違いとして、遺留分の放棄はあくまでも遺留分を請求できるという権利だけを放棄するため、相続の権利は失わない。
・遺留分侵害額(減殺)請求の対象は、遺贈と生前贈与と死因贈与の三種類である。
・遺贈とは、法定相続人以外の人物に財産を譲渡することである。生前贈与とは、被相続人が生前のうちに財産を譲渡することである。
死因贈与とは、贈与者が死亡した場合に財産を受贈者へ譲渡するという契約を結ぶことである。
死因贈与は法律行為にあたるため、未成年が単独で行うことはできない。
・遺留分侵害額(減殺)請求の順序は、遺贈→贈与の順に行う。もし遺贈で遺留分が回収できた場合、贈与された者に請求はできない。
・遺留分侵害額(減殺)請求先の優先順位は受遺者→贈与者である。
・受遺者が複数人の場合、遺贈の価値に応じて同時に請求を行う。しかし、遺言書に遺留分請求の優先順位が指定されていた場合、指定された者に請求を行う。
・受贈者が複数人の場合、後から贈与を受け取った者に請求を行う。
・遺留分の割合は、直系尊属が法定相続人の場合は法定相続分の三分の一、それ以外の場合は法定相続分の二分の一となる。
・遺留分侵害額(減殺)請求を行う場合、相続開始または遺贈や贈与を知ってから一年以内に行わなければ時効消滅してしまう。
しかし、一年以内に遺留分の請求を行使すれば、そのタイミングで時効がリセットされることとなる。
・相続開始あるいは遺贈や贈与を知ってから10年で、遺留分請求権は完全に消失してしまう。
・遺留分侵害額(減殺)請求権の行使方法として、内容証明郵便の送付→当事者同士での話し合い→請求調停→請求訴訟の順で行われる。
話し合いで合意を得ることができれば、調停や訴訟は行われない。
・請求調停では当事者同士だけでなく、裁判官と調停委員が仲介となって話し合いによる解決を求められる。
・請求訴訟では、裁判を行い裁判官に審判を下してもらう。
・遺留分侵害額(減殺)請求は弁護士に依頼するという方法がある。
・弁護士に依頼をするメリットとして、相手方と直接やりとりをする機会を減らすことができる、
必要な書類の作成などの事務手続きを任せることができる、もし調停や訴訟まで及んだ場合の法律関係の手続きを一任できるというものがある。
・弁護士に支払う費用の内訳には、法律相談料・交渉費用・着手金・報酬金・調停費用・訴訟費用がある。
・法律相談量の目安は1時間10,000円、
交渉費用は着手金30万円、
成功報酬は請求できた額の10〜15%、
着手金は15万円〜30万円、
報酬金は請求できた額が300万円以下の場合、6〜8%、
300万円を超える額から3,000万円までは5%、
調停費用の着手金は30万円前後、成功報酬は10〜15%、
訴訟費用は着手金は30万円前後、成功報酬は10〜15%、そのほかに日当や交通費が発生する。
このように、遺留分についてはそもそも計算方法が複雑で、かつ遺留分を請求する場合には調停や裁判に及ぶ可能性があり、決着まで長期間かかる恐れがあります。
そのため、弁護士や税理士などの法律の専門家に依頼をして、遺留分の請求を進めてもらうことが良いかもしれません。
遺留分はお金に関することなので、注意して手続きなどを進めていくことが大切となりますので、この記事で少しでも遺留分に対する知識を深めていただければと思います。
当社『やさしいお葬式』は相続・その他トラブルでお困りな方へ、この分野専門の専門家をご紹介しております。お気軽にお尋ねください。
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール