相続税と家の未来を考えよう。税負担を押さえる特例と税額の計算方法
「家を相続することになりそうだが、税金が高くなりそうで不安…」
「実家の売却を検討しているが、生前・相続後どちらがいいの?」
「家」を相続する際には、税金の問題も考慮しなければなりません。築年数が経過している建物であっても、不動産の相続には「相続税」が関わってきます。
気になる税額は、「建物の評価額」+「土地の評価額」を元に計算されます。高額な相続税がかかるイメージがある不動産相続ですが、実は税負担を50%∼80%削減できる特例制度が設けられているため、多くの人が高額な税負担をせずとも相続が可能です。
また、家を相続したからといって、必ずしも相続税が発生するという事ではありません。相続税は、遺産の総額に対して課税されます。
家も含めた遺産総額が「基礎控除」を超えなければ、相続税は支払わなくてよいのです。
一見難しそうに感じますが、求め方は至ってシンプルで、必要な情報さえ集めれば数分で目安の税額を算出することが可能です。
当記事では、家の相続時に発生する税金問題を図や実例を用いてわかりやすく解説しています。最後までお読みいただくと、家の相続にかかる税額が自分で簡単に計算できるようになり、自信を持って相続に望めるようになります。
「実家を相続した際の、相続税がいくらになるか予め知っておきたい!」
「相続税の負担を最小限に抑える方法が知りたい。」
このようなお悩みを抱えている方は、是非参考にしてください。
家を相続した際にかかる相続税の求め方3つのステップ
家を相続した際にかかる相続税は、3つのステップに沿って計算しましょう。税金の計算と聞くと難しい印象がありますが、足し算や引き算など基礎的な計算だけでもとめることが可能です。
1.不動産の価値を求める
2.特例が適用できるか考える
3.他の財産と合算して計算する
自分で税額の計算ができるようになるためにも、計算方法を詳しく確認しましょう。
不動産の価値を求める
家は、現金とは違って価値を単純に測ることができません。相続税の計算をするために、まずは家の価値を「評価額」という具体的な金額で表す必要があります。
家など不動産の価値は「建物の評価額」と「土地の評価額」の合計で示されます。それぞれ法律で決められた算出方法がありますので、それに基づいて計算しましょう。
建物の名義人と土地の名義人が異なる場合については、相続として受け取った部分の評価額のみをもとめればOKです。詳しくは、「借地に家を建てている場合の評価額は?」を参考にしてください。
「土地」「建物」それぞれの計算方法を確認しましょう。
土地の価値の求め方
土地の評価額は「路線価方式」という国税庁が定める道路1㎡あたりの金額を元に計算します。
【路線価方式】
参考: 国税庁HP
式: 路線価 × 地積 × 補正率=相続税評価額
路線価・・・ 国税庁HPにて確認
地積・・・固定資産税の納税通知書に記載あり
補正率・・・ 国税庁HPにて当てはまる項目があるか否かを確認
尚、稀に路線価が定められていない地域が存在し、その場合には「倍率方式」にて土地の評価額をもとめます。
【倍率方式】
式: 固定資産税評価額 × 評価倍率=相続税評価額
固定資産税評価額・・・固定資産税の納税通知書に記載あり
評価倍率・・・ 国税庁HPにて確認
いずれも固定資産税の納税通知書による確認項目があります。通知書が見当たらない場合には、土地のある市区町村役場にて固定資産課税台帳を閲覧することで確認も可能です。
建物の価値の求め方
建物の評価額は、「固定資産税評価額」と同額です。厳密には固定資産税評価額に所定の倍率である1.0をかけて算出しますが、倍率が1.0なので同額と考えて差し支えありません。
現時点では、倍率は全国一律となっていますが、将来的には都道府県や地域によって異なる数値が設定される可能性があります。計算する前には、一度 国税庁HP(「家屋」の項目を参照)を確認することを推奨します。
特例が適用できるか考える
不動産の相続には、評価額の大幅な減額が可能な特例が設けられています。この特例が、適用できるか否かを考えましょう。適用できる場合には、減額分を差し引き、正味の不動産評価額を算出してください。
「小規模宅地等の評価減の特例」が適用されると、先ほどもとめた家の評価額を最大で80%減額できます。評価額の減額と聞くと「家の価値が低く評価されるマイナスなこと」のように感じますが、相続の場においては税負担を減らす大きなメリットです。
詳しい適用条件や減額率の求め方などは「3.小規模宅地等の評価減の特例とは」にて細かく解説しています。
他の財産と合算して計算する
「不動産の価値を求める」~「特例が適用できるか考える」でもとめた不動産評価額を他の遺産と合算し、具体的な税額を計算しましょう。
相続税は相続した遺産1つ1つに対してかかる税金ではありません。故人が保有していた財産の総額に対してかかってくる税金ですので、まずは不動産を含めた「遺産総額」を算出することが必要です。
画像引用元: 国税庁
遺産総額から非課税財産や基礎控除を差し引いた「課税遺産総額」がプラスになると、相続税が発生します。
基礎控除額の方が大きく、差し引き合計がマイナスになる場合には「課税遺産総額が¥0」とみなされます。つまり家を相続していても、「家を含めた遺産総額<基礎控除額」となれば、相続税は発生しないのです。
また、「家を含めた遺産総額>基礎控除額」となっている場合でも、個々に適用される控除によっては、税負担なく相続できる場合もあります。
課税遺産総額がプラスになりそうな場合には「 あなたは相続税がかかる?かからない?発生条件と税額の計算・節税法」を参考に具体的な税額を計算してみましょう。実例を交えた具体的な計算方法や、生前にできる節税対策を分かりやすく解説しています。
基礎控除額とは:「遺産総額から一定額引くことのできる非課税枠」
「基礎控除」とは、財産を相続した全ての人が受けられる控除です。「基本となる3,000万円」に「600万円×法定相続人の数」を足すことで適用される基礎控除額を算出できます。
【基礎控除額早見表】
法定相続人の数 |
基礎控除額 |
1人 |
3,600万円 |
2人 |
4,200万円 |
3人 |
4,800万円 |
4人 |
5,400万円 |
5人 |
6,000万円 |
このように、法定相続人の数が多いほど、基礎控除額も増えていきます。つまり、相続税の金額を算出するためには、法定相続人の数を正しく把握することが重要です。
家の相続で考慮するべき税金は4種類
家を相続として譲り受けた場合、4種類の税金について考慮しなくてはなりません。本記事のテーマである「相続税」以外にも3つもの税金があるため注意しましょう。
1.相続税・・・「相続」という形で財産を受け取った人が納める税金
2.固定資産税・・・土地や家屋・機械などの資産を保有する人が払う税金
3.不動産取得税・・・新規で不動産を取得・譲渡として不動産を譲り受けた場合人が払う税金
4.登録免許税・・・所有者の名義を変更する際に発生する税金
いずれも国税であるため、支払い忘れてしまうと遅延金などのペナルティが課せられます。それぞれの税金の概要や支払うタイミングなど、基本的な情報をおさらいし、正しく納税しましょう。
知名度の高いものから順に解説します。
相続税:財産を相続した人が払う税金
相続税とは、財産保有者が既に死亡しており「相続」という形で財産を受け取った人が納める税金です。
納税者 |
「相続」を受けた人(財産をもらった人) |
課税対象 |
現金、預貯金、土地、建物、有価証券など
金銭に見積もることができる全ての財産
|
申告・納税期限 |
相続の開始があったことを知った日(被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内 |
国税庁によると相続税の課税対象となった人数は「令和2年は2,692人・令和3年は2,912人」と、死亡者全体の8%前後に留まります。相続を受けた全ての人が払うことになるのではなく、非常に限定的な税金であることが読み取れるでしょう。
固定資産税:資産を保有する人が払う税金
固定資産税とは、土地や家屋・機械などの資産を保有する人が払う税金です。地方税に該当し、資産価値に応じた税額を、固定資産のある市町村に納めます。
納税者 |
資産を保有する人 |
資産とは |
土地(田んぼ、畑、住宅地、池沼、山林、温泉、牧場など)
家屋(住宅、お店、工場、倉庫など)
償却資産(事業者が所有する広告塔、フェンス、飛行機、船、車両や運搬具など)
|
納税期限 |
第1期~第4期まで年4回に分けて納税(期限は自治体により異なる) |
建物や家屋にかかる固定資産税は、毎年1月1日の時点で資産を所有している人を対象に納税義務が課せられます。納税額を4分割した金額が1回の納税額で、年に4回に分けて納税するイメージです。(1度に全額納税することも可)
この納税通知書や支払い用紙は、1年に1度まとめて所有者の自宅に届けられます。1月1日の時点で資産を所有しているか否かが「所有者」の条件となるため、その間に所有者が亡くなった場合でも1月1日時点での所有者に対しての通知書が届きます。
固定資産税の納付義務者は時期により変わる
固定資産税の納税者は、時期によって変わるため注意が必要です。基本的には故人が支払うべきものですが、故人が亡くなった月や相続のタイミングによって支払うべき人が異なります。
家の所有者が亡くなる前までに支払期限が来ていたものについては、故人に支払い義務が生じます。支払いが滞っているものがあれば、故人の遺産から優先的に支払いましょう。
家の所有者が亡くなり、家を含めた遺産の相続についての協議中に支払い期限が来るものについては、相続人全員に支払い義務が生じます。便宜上、相続代表人を決め、その人が立て替えて固定資産税を納めるのが一般的です。
家を相続する人が決まった後に支払期限が来るものについては、新たな所有者となる人に支払い義務が生じます。
不動産取得税:不動産を新規で取得、贈与で取得した人が払う税金
不動産所得税とは、新規で不動産を取得した場合や譲渡として不動産を譲り受けた場合に発生する税金です。
納税者 |
不動産を取得した人
不動産を譲渡で受け取った人
|
課税対象 |
現金、預貯金、土地、建物、有価証券など
金銭に見積もることができる全ての財産
|
申告・納税期限 |
1/1~12/31までの1年間に贈与を受けた財産を、翌年2/1~3/15の間に申告・納税 |
新規での購入や贈与による不動産の取得が対象となるため、基本的には相続による不動産の取得は対象外となります。しかし、死亡を条件として財産を受け継ぐ「死因贈与」や法定相続人以外への「特定遺贈」などに対しては不動産所得税の納税義務が発生します。
いずれも所有者の死亡をきっかけとした取得となるため、「相続」なのか「贈与・寄贈」なのかを正しく見極めることが求められます。
「死因贈与」と「特定遺贈」に要注意!
原則として相続によって不動産を取得した場合には、不動産取得税は課税されませんが「死因贈与」と「特定遺贈」は例外です。所有者が死亡していても「相続」ではなく「贈与」とみなされ、不動産所得税の支払いが必要となります。
死因贈与・・・贈与者が死亡したことで効力が生じる贈与契約
例)「私が死んだら、この家をあげます。」「分かりました。もらいます。」という約束を双方で交わしていた場合
特定遺贈・・・財産を指定して行う遺贈で、法定相続人以外を対象としたもの
例)遺言書に「この家をAさんへ遺贈する」と書かれていた場合
特定遺贈による不動産所得税は、法定相続人以外が遺贈を受けた場合にのみ課税されます。仮に「この家を息子Aに相続させる」等、財産を指定する遺言があった場合でも、相手が法定相続人の場合は「遺贈」にあたりません。
遺贈については「 遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!」の記事があります。遺贈と死因贈与・相続の違いや税金の計算など詳しい内容を分かりやすく解説しています。併せて参考にしてください。
登録免許税:不動産の名義が変わる際に課せられる税金
登録免許税とは、登録免許税法に基づき、特許、免許、許可、認可、認定などの証明に課せられる国税です。家の相続においては、不動産所有権の移転登記が登録免許税に該当します。
納税者 |
登録免許税に該当する諸手続きを申請した人 |
税額 |
登記の内容により異なる
(不動産の場合は、その価値により税額が決まる)
|
納税期限 |
特別設けられていない
(相続登記の手続き期限は、相続後3年以内)
|
参考: 国税庁HP
不動産を相続した場合「相続登記」といわれる名義変更の手続きを行う必要があり、この手続きには、登録免許税という税金が発生します。
【相続登記の登録免許税額】
不動産の価額(課税価格)×税率0.4%(4/1,000)
例)
土地のみを相続・・・土地の価額×0.4%
土地+家を相続・・・土地の価額×0.4%+建物の価額×0.4%
仮に3,000万円の評価額が付く家(建物+土地)を相続したケースでは、登録免許税は12万円です。尚、不動産の価額が100万円以下の場合に、登録免許税の納税は免除されます。
小規模宅地等の評価減の特例とは:相続人の税負担を軽減させるための制度
「小規模宅地等の特例」とは、故人が持っていた土地を最大80%まで相続税の評価額を下げてくれる特例です。相続人の税負担を軽減させるために作られた制度で、大幅な節税効果が見込めます。
対象となる不動産 |
・故人が住んでいた家
・故人が事業で使っていた土地、建物
・故人が貸付を行っていた土地、建物
|
申請できる人 |
・配偶者
・同居家族
・別居親族(諸条件あり)
|
減額割合 |
50%~80% |
詳しい適用条件や減額割合について解説します。
適用条件は厳しくない
この特例の適用条件は決して難しいものではなく、多くの人が適用対象となることができます。適用条件は、建物の「利用区分」によって異なるため、まずは自分が相続した家の利用区分を確認しましょう。
何に使っていた家か |
利用区分 |
故人が住んでいた家 |
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 |
故人が事業用に使っていた家
(事務所、商店、会社など)
故人が貸付を行っていた家
(賃貸マンション、アパート、駐車場など)
|
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 |
それぞれの利用区分ごとの、適用条件は以下を参考にしてください。
「居住の用に供されていた宅地」の特例適用条件
故人が生前住んでいた家は、「居住の用に供されていた宅地」とみなされます。居住の用に供されていた宅地に課せられる条件は、相続した人と故人の関係によって異なります。
【取得者が満たすべき要件】
取得者 |
要件 |
配偶者 |
特別な要件なし |
同居親族 |
相続~相続税の申告期限(10か月)までの間
・継続してその家に居住していること
・売却等の手続きをふんでいないこと
|
上記以外の親族 |
・故人には、配偶者がいないこと(他界も含む)
・故人には、同居家族がいなかったこと
・居住制限納税義務者の場合、日本国籍を有していること
・該当の家屋の所有者になったことがないこと
・相続~相続税の申告期限(10か月)までの間、売却等の手続きをふんでいないこと
|
配偶者は特別な要件なく、特例の適用が可能です。一方、同居親族や同居していない親族へは所定の要件が課せられます。
同居家族の場合、相続税の申告手続きが完了するまでの間に「引っ越し」や「家の売却」を行ってしまうと特例が適用されません。
相続税の税務署への申告を完了させた後も、不備等で調査が入る可能性があるので一定期間は「引っ越し」や「家の売却」は控えましょう。
故人に配偶者や同居家族がおらず、別居親族が家を相続した場合も同様です。相続税の申告手続きを終えるまでは、売却等の手続きを進めるのはおすすめできません。
「事業の用に供されていた宅地」の特例適用条件
故人が事業を営むために所有していた家や土地は、「事業の用に供されていた宅地」とみなされます。この場合の事業とは、商店や事務所だけでなく賃貸アパートや賃貸マンション、貸駐車場などの賃貸経営も含まれます。
事業の用に供されていた宅地に課せられる条件は、以下の通りです。
【取得者が満たすべき要件】
相続~相続税の申告期限(10か月)までの間に
・その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を引き継いでいること
・その申告期限までその事業を営んでいること
・売却等の手続きをふんでいないこと
・賃貸物件の場合は、3年以上継続して事業を営んでいること
新たな所有者がその建物を使って営んでいた事業を引き継ぐことが必要条件にあげられます。そのため、事業用の不動産を相続した際には、期間内は継続して事業を続けることが推奨されます。
減額割合は50%~80%
特例を適用することで、計算でもとめた家の価値(土地の評価額+建物の評価額)を50%∼80%減額することができます。
減額の割合は、以下の通りです。
画像引用元: 国税庁
故人が住んでいた家は、一律で80%の減額が可能です。一方、故人が事業用に使っていた家に関しては、「営んでいた事業が貸付業か否か」によって減額の割合に違いがあります。
また、特例の適用には「限度面積」という項目が定められています。この限度面積の範囲内に対して減額が適用され、限度面積を超えた部分については減額の対象とはなりません。
限度として設定されている面積の目安を表にまとめました。
面積 |
目安 |
200㎡ |
109畳
60.5坪
|
330㎡ |
180畳
99.8坪
|
400㎡ |
219畳
121坪
|
国土交通省が発表した戸建て住宅の目安面積は「3人家族で100㎡」「4人家族で125㎡」です。また、建売住宅の住宅面積の全国平均は30坪程だといわれています。
このことから、広大な土地を保有していない限りは相続した家の全域に対して特例が適用されると言えます。
具体例を用いて計算してみよう
家の最終的な評価額を、具体例を用いて計算してみましょう。
例1)故人が居住していた家の場合
土地の評価額:1,000万円
建物の評価額:980万円
式 (1,000万円+980万円)×80%=396万円
例2)故人が大家をやっていたアパートの場合
土地の評価額:1,000万円
建物の評価額:1,430万円
式 (1,000万円+1,430万円)×50%=1,215万円
不動産の相続税を抑える2つのポイント
家の相続税を、少しでも抑えるため「相続後」にできることは2つあります。
・「小規模宅地等の評価減の特例」の活用
・「路線価補正のコツ」をおさえて計算する
この2つのポイントを知っているのと知らないのとでは、税負担額が大きく変わってくるでしょう。節税率の高い順に内容を詳しく紹介します。
「小規模宅地等の評価減の特例」の活用
「小規模宅地等の評価減の特例とは」で紹介した、特例を活用する方法です。家の評価額が減額されることで、遺産総額が抑えられます。基礎控除を超える部分を少しでも減らすことで、相続税負担の軽減に繋がります。
小規模宅地等の評価減の特例には、難しい適用条件はありません。故人が住んでいた家であれば、ほとんどのケースで適用できるでしょう。
但し、適用されるケースであっても、自ら申告しなければ自動で減額されることはありません。また、特例に関する案内やお知らせが来る訳でもありませんので、家を相続した本人が忘れずに適用申請を行うことが必要です。
申請に必要な書類
申請に必要な書類は、複数あります。相続税の計算や遺産分与関係で必要となるものがメインなので、都度保管して特例の申請に備えましょう。
【全員が必要】
種類 |
概要、取得方法 |
法定相続情報一覧図の写し |
被相続人の法律で定められた相続関係を一覧にした家系図
取得方法:管轄法務局(登記所)に申請
|
遺言書または遺産分割協議書のコピー |
相続人全員が遺産の分割に合意していることを証明するために必要 |
相続人全員の印鑑証明書 |
「遺産分割協議書に押印した印鑑」の印鑑証明書
取得方法:居住の市区町村役場にて申請
|
【宅地の種類別の必要書類】
宅地の種類 |
書類の種類 |
居住の用に供されていた宅地 |
同居親族
・住民票の写し(マイナンバーカードでの代用可)
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別居親族
・戸籍の附票の写し(マイナンバーカードでの代用可)
・家屋の登記事項証明書
|
事業の用に供されていた宅地 |
事業の相続が確認できる書類
例)個人事業の開業・廃業等届出書、所得税の青色申告承認申請書の写し等
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事業の用に供されていた宅地(賃貸不動産) |
被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて特定貸付事業を行っていたことを証明する書類
例)賃貸借契約書、確定申告書
|
事業の用に供されていた宅地(同族会社の事業) |
・対象法人の定款の写し
・対象法人の登記事項証明書
・対象法人の株主名簿
|
参考: 国税庁HP
申請方法
小規模宅地等の評価減の特例は、相続税の申告時に行います。相続税の申告書に特例の適用を受けようとする旨を記載し、必要書類一式を添付してください。
申請の流れ |
相続税の申告時に、窓口で申請 |
申請期限 |
相続開始を知った日から10か月以内 |
申請にかかる費用 |
・各書類の発行手数料
・税理士への報酬(計算や手続き等を依頼した場合)
|
申請期限は相続税と同じく10か月以内で、相続税の手続きをする際に一緒に特例の申請も行うイメージです。申請に特別な費用はかかりませんが、必要書類を集めるのに発行手数料などで数千円程度かかるでしょう。
「路線価補正のコツ」をおさえて計算する
不動産を相続した場合「路線価の補正のコツ」をおさえて計算することで、相続税の負担額を軽減させることができます。
土地や建物といった不動産を相続した場合、その土地の「相続税評価額」を計算し、遺産額に加える必要があります。つまり、評価額が低いほど税負担が軽くなるということです。
評価額は、国税庁が定める「相続税路線価図」や「評価倍率表」を使って計算します。この読み取り方や計算の仕方によって答えに幅が出ることがあり、結果として評価額を下げられるケースが存在します。
財産評価基準書路線価図・評価倍率表
画像引用先: 財産評価基準書路線価図・評価倍率表
この計算は、非常に複雑になるケースが多いため、不安が残る場合には税理士等のプロに相談することがおすすめです。
家の譲渡は「贈与」より「相続」がお得
家の価値がいくらなら贈与税がお得・相続税がお得といったような、万人に共通する損益分岐点はありません。しかし、一般的には「相続」の方が基礎控除額が大きく税率も低いため、相続税をベースに考えることがおすすめです。
相続税と贈与税の関係については「 相続と贈与どちらがお得?シチュエーション別の賢い財産の渡し方」の記事があります。詳しい税率や同じ財産譲り渡した時の、税負担額の比較などを具体例を交えて分かりやすく解説しています。併せて参考にしてください。
生前の譲渡 :贈与税・不動産所得税・登録免許税・固定資産税
贈与税とは、財産保有者は存命で「贈与」という形で財産を受け取った人が納める税金です。
納税者 |
「贈与」を受けた人(財産をもらった人) |
課税対象 |
現金、預貯金、土地、建物、有価証券など
金銭に見積もることができる全ての財産
|
申告・納税期限 |
1/1~12/31までの1年間に贈与を受けた財産を、翌年2/1~3/15の間に申告・納税 |
贈与税には、全ての人を対象に「年間110万円」という基礎控除がある他、夫婦間での贈与に対しては最大で2,000万円の配偶者控除制度があります。
しかし、考慮しなければならない税金は、贈与税・不動産所得税・登録免許税・固定資産税
と4種類にも及びます。又、いずれの税金を見ても相続税の基礎控除を超える控除制度が設けられているものはありません。
家族が必要としているタイミングで譲渡でき、家族の喜ぶ顔が見えるというメリットこそありますが、基本的には控除額が少ないため税負担額は大きくなるでしょう。
相続による譲渡 :相続税・登録免許税・固定資産税
遺産として家を相続した場合は「家を相続した際にかかる相続税の求め方3つのステップ」で解説したように、他の遺産と合算して相続税について考えます。
但し、「小規模宅地等の評価減の特例」や「相続税の基礎控除」など課税対象額を大幅に減額させる制度があるため、非課税となるケースが大半を占めます。よほど高額な遺産を持っている、いくつも土地や建物を所有しているという場合を除けば、まず心配ないでしょう。
家を相続した後の手続き「相続登記」
家を遺産として相続した場合、相続税の申告手続きとは別に「相続登記」の手続きをしましょう。相続登記とは、亡くなった人の名義から新たな所有者への不動産の名義変更のことです。
現時点で、この相続登記手続きは「任意」となっており「義務」ではありません。しかしながら不動産を保有していく上で「名義」は非常に重要な事項ですので、家を相続した場合には早めに手続きをすることが推奨されます。
不動産を正しく管理していくためにも、手続きの概要や手続きの方法について確認しましょう。
相続登記(名義変更)の義務化が決定
家を相続により譲り受けたあと、相続登記の手続きを怠るとさまざまなデメリットが生まれます。
【相続登記をしない事でのデメリット】
・相続人同士でのトラブルにつながる(勝手な売却、建物の取り壊しなど)
・売却や担保として差し入れることができない
・他の相続人の事情により差し押さえられる可能性がある
また、不動産登記が正しく行われていないことで「所有者不明」の土地や空き家が増えていることも国全体の問題となっています。そこで、法務省では令和6年4月1日から相続登記の申請を義務化することを決定しました。
参考: 法務省HP
譲り受けた家を正しく適切に管理していくためにも、相続登記は相続後の早い段階で行うことが推奨されます。相続登記にかかる費用については、「登録免許税:不動産の名義が変わる際に課せられる税金」で解説していますので参考にしてください。
手続きの方法
相続登記の手続きは、以下の3つの方法で行うことができます。いずれの方法でも正しく申請は可能ですので、ライフスタイルに併せて無理のない方法を選択してください。
・対象の不動産を管轄する法務局の窓口へ出向く
・対象の不動産を管轄する法務局へ書類を郵送する
・オンラインで申請する
詳しい手続きの流れやWEBでの申請方法については法務省から発行されている リーフレットも参考にしてください。
必要書類
登記申請に関する書類は、原本の添付が原則です。下記の書類の原本を用意しましょう。
・不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
・被相続人の住民票の除票
・被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
・固定資産評価証明書
加えて、相続の方法に合わせた以下の書類の作成が必要です。
申請書の書き方については、 法務省のホームページに詳しく載っているので併せて参考にしてください。
家の相続に関するよくある質問
家の相続に関するよくある質問をQ&A方式で紹介します。
質問 |
答え |
相続した家のローンが残っていた時はどうなるの? |
原則、相続人全員で負担する。(債務として相続される) |
借地に家を建てている場合の評価額は? |
土地の「借地権割合分」を相続財産として計算する必要あり。 |
相続後、すぐに家を売っても問題ない? |
はい。但し、相続手続き完了前の売却は税負担が増える可能性があるので要注意! |
老人ホームなどに入所していた場合は特例の対象外? |
一定の条件を満たしていれば、小規模宅地等の評価減の特例を適用する事は可能。 |
それぞれの内容について詳しく確認しましょう。
相続した家のローンが残っていた時はどうなるの?
相続時点で家のローンが残っていた場合は、「債務」という扱いで相続人全員で残高を分割して支払う必要があります。
「財産が2,000万円」「住宅ローン残が800万円」の場合には、遺産から債務である住宅ローン残高を差し引いた1,200万円を遺産として分割することになります。逆に、財産よりも債務の方が多い場合には相続人で分割して債務を負担することが必要です。
住宅ローンは「家」にかけられたローンであるため、家を相続する人が負担する物であるというイメージが強いでしょう。しかし法律上は、消費者金融からの借入やクレジットカードの利用残高と同じように「故人が残した債務」として扱われます。
債務の負担を負いたくない場合には、相続放棄という方法もあります。相続放棄をすると、債務だけでなく財産の相続も放棄することになるため、よく考えて決断しましょう。
借地に家を建てている場合の評価額は?
借りた土地(借地)の上に建物を建てている場合は、土地の「借地権」という権利を所有していることになります。そのため、建物の評価額とは別に「借地権の評価額」を計算して相続財産として加算する必要があります。
参考: 国税庁HP
借地権割合のみが評価額となるため、自己で土地を保有していた場合と比べて評価額が低く算出されます。尚、借地権の相続については別途手続きが必要となりますので、忘れずに行ってください。
相続後、すぐに家を売っても問題ない?
遺産として残された不動産は、相続手続き前に売却・相続手続き後すぐに売却いずれも問題ありません。但し「小規模宅地等の評価減の特例」が使えなくなるなど、デメリットもあるため税負担が増えるリスクについても考慮して行動してください。
【相続手続き前の売却】
メリット |
デメリット |
・換価分割(売却して得た現金を相続人全員で分ける)ができる
・売却に関する諸手続きを相続人皆で考えて行える
|
・相続税の申告期限までにやるべき手続きが増える
・すぐに売却できるよう遺品を整理する必要がある
・譲渡所得税がかかる
|
【相続手続き後の売却】
メリット |
デメリット |
・「小規模宅地等の評価減の特例」を使って相続税負担を抑えることができる
・死亡後、相続などの諸手続きがひと段落したタイミングで動き出せる
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・例え住まなくても、固定資産税などが発生する
・相続人が手続きを1人で行うことになる
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いずれの方法にも、メリットとデメリットがあります。相続人全員でよく検討して行動すると共に、税負担額などの計算については税理士に依頼するなどして損の無いよう動いていきましょう。
老人ホームなどに入所していた場合は特例の対象外?
老人ホームなどの介護施設に入居していた人が亡くなった場合でも、小規模宅地等の評価減の特例を受けることは可能です。但し、以下を満たしていることが条件となります。
・被相続人が介護保険法第19条第1項により「要介護認定」「要支援認定」を受けていた
・「老人福祉法等に規定する老人ホーム」に入居していたこと
・被相続人が老人ホーム等に入所した後に新たな居住者が増えていないこと
・被相続人が老人ホーム等に入所した後に賃貸事業をはじめていないこと
ポイントは、故人が介護認定を受けていたかどうか・利用していた老人ホームの法律上の区分を正しく把握することです。特例が受けられる場合には、上記を証明する書類を添付の上で申請手続きを行いましょう。
家の相続に関する相談先
当記事のテーマである「家」の相続に関しては、土地や建物の評価額を正しく計算することが求められるため難しいと感じる方も多いでしょう。計算に不安が残る方や納税に関するアドバイスが欲しい方は、プロへ相談して対応することがおすすめです。
1.税理士(5,000円~/30分 ※初回相談無料の事務所もある)
2.税務署
3.無料相談を利用して専門家を紹介してもらう
「緊急度の高い順」にご紹介しています。相談を上手に活用し、最適な形で家を管理しましょう。
税理士(5,000円~/30分 ※初回相談無料の事務所もある)
「書類をいくつも集めて手続きするのは面倒!」という方は、税理士に依頼しましょう。相続関係の相談は、弁護士や行政書士という印象が強いですが、税金に関しては税理士への相談がおすすめです。
税理士でないとできない作業も多く、納税手続きを代行できるのは税理士だけです。相談したからといって必ず依頼しなければならないということはありませんので、まずは無料相談を活用しながら見通しを建てるとよいでしょう。
また、節税を目的に税理士に相談するというケースも増えています。「4.不動産の相続税を抑える2つのポイント」をプロにお任せすることで確実に遂行することができるでしょう。
相談先を選ぶ際には、相続を専門にしている事務所や相続関係の税制度に詳しい事務所を選ぶようにするのがポイントです。
税務署
税務署に直接電話をかけたり出向いたりすることで、税全般の相談ができます。相談は無料でできますが、税務署の対応時間である平日の日中に限られます。また、確定申告時期などは窓口が混みあうことが想定されますので時間に余裕を持って対応しましょう。
路線価補正など節税を目的とした質問には答えてもらえないこともあるため、注意してください。
無料相談
税理士の伝手がない人や、いきなり税務署を尋ねることに不安がある人は「無料相談」を利用してみるのもオススメです。
どの専門家にお願いすればいいのかなどの疑問も『 やさしい相続』の24時間365日無料相談で承っています。電話でもメールでも行えますのでお気軽にご連絡下さい。しつこい勧誘等も行いません。
大切なことだからこそ、丁寧に・確実に進めていきましょう。
まとめ
当記事では、家の相続に関わる税制度や手続きについて解説しました。
家を相続する際は、その評価額に応じて「相続税」が発生する可能性があります。家を含めた遺産総額が、基礎控除を超える場合、既定の税率で相続税の納付義務が発生します。
家の相続にかかる税金だけをピンポイントでもとめることはできません。家の評価額も含めた「遺産総額」が分かって、はじめて相続税がかかるか否か・税額がいくらになるのかを算出することができるのです。
家の評価額のもとめかた |
1.不動産の価値を求める
土地の価値:路線価 × 地積 × 補正率=土地の評価額
路線価・・・国税庁HPにて確認
地積・・・固定資産税の納税通知書に記載あり
補正率・・・国税庁HPにて当てはまる項目があるか確認
建物の価値:固定資産税評価額 × 評価倍率=建物の評価額
固定資産税評価額・・・固定資産税の納税通知書に記載あり
評価倍率・・・国税庁HPにて確認
2.特例が適用できるか考える
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特例とは |
【小規模宅地等の評価減の特例】
・居住用の不動産の場合「最大80%」評価額を減額
・相続税の負担額が大幅に減る
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相続税を抑えるポイント |
・小規模宅地等の評価減の特例の活用
・「路線価補正のコツ」をおさえて計算する
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家の評価額は、「土地の価値+建物の価値」で計算します。故人が住んでいた等、条件を満たした場合には「小規模宅地等の評価減の特例」が適用され、評価額を大幅に減額することができます。
家の相続は、税額の計算や相続登記など比較的手間のかかる項目です。個人での対応に不安が残る場合には、税理士や無料相談など第三者の手を借りながら着実に進めていきましょう。
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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール