遺言状を完全解説!種類・書き方・扱い・効力を紹介!

遺言状には遺産分配に関することなど重要な情報がたくさん詰まっています。

だからこそ適当に作成することはせず、様々なルールに則り適切に内容を実行していかなければいけません。

この記事では、具体的に遺言状をしっかり運用するための知識についてご説明していきます。

遺言状とは

遺言状とは、遺産の分配などに関して「遺言者が亡くなった後に自身の遺産をどのようにしてほしいのか?」という意思表示を記載しておく書面のことです。 

遺言者の所有している遺産は、基本的には「法定相続人」として定められた人物に引き継がれます。

この法定相続人とは、遺言者との関係が「配偶者・子供・両親・兄弟姉妹」のどれかに当てはまる人物のことです。

対象者には「法定相続分」という形で、民法により定められた割合の遺産が分配されるのです。

もしも遺言状によって遺言者の意思表示が遺されていなければ、この法定相続分に従って分配されることになります。

しかし遺言状を作成することによって、法定相続分による分配の考え方よりも「遺言者の意思」が優先的に適用されるのです。 

例えば「お世話になった配偶者には少し多めに遺したい」「特定の団体に遺産を寄付したい」というような内容であっても、ルールに則っていればその分配方法が適用されます。

遺言状の種類

遺言状にはいくつかの種類があります。主な違いは作成方法です。

どのように作成するかによって手間や手順などが違うためしっかり確認しておきましょう。

自筆証書遺言

その名の通り「全ての内容を自筆によって記載する」という作成方法の遺言状です。これが一番オーソドックスな作成方法であると言われています。

自筆証書遺言では、文章・署名・作成年月日など基本的に全ての部分を自筆で記載することが必須(ただし財産目録に関してはPC等での作成可)。

さらに遺言状の保管も遺言者自身で行うことがほとんどです。

この作成方法であれば、面倒な手続き等が一切必要ないため自分のタイミングで作成することができます。

「遺言状の内容を誰にも知られたくない」という人にもピッタリでしょう。 

しかし「1人で作成する」ということにはいくつかのデメリットもあります。

まず、遺言状の中身をチェックしてくれる人物がいないため、記載内容に間違いがあっても訂正することができません。

そのため、もし遺言状に必要な情報に漏れがあったりすると、その内容全てが無効になる危険があるのです。

また、遺言状の保管場所を把握しているのが遺言者だけの場合、亡くなってから遺された人物で探す必要が出てきます。

すぐに見つかれば良いのですが、わかりにくい場所に保管していると面倒なことになりかねません。 

自筆証書遺言は手軽に好きなタイミングで作成することが可能ですが、このようなデメリットもあるということは覚えておきましょう。

公正証書遺言

公正証書遺言は、証人立会いのもと安全・確実に遺言状の作成から保管までを行う方法です。

自筆証書遺言とは違い手軽に好きなタイミングで作成することはできません。

原則として作成の際は公証役場へ行き、「2名以上の証人」「公証人」の立会いが必要です。

詳しい作成方法は後述しますが、手間がかかる分完成した遺言状は非常に信頼性が高いと言えます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、証人立会いのもと「遺言状が間違いなく存在している」ということを保証してもらう作成方法です。

その名の通り、遺言状の内容自体は秘密にしておけます。

特別方式遺言

上記の3つを「普通方式」と呼ばれており、一般的に用いられることが多い遺言状の作成方法です。

それに対して「特別方式」は、やや特殊な状況下でのみ作成が認められた遺言状のことです。

具体的な作成方法は後述しますが、基本的にあまり使うことはないでしょう。 

公正証書遺言の書き方

公正証書遺言は原則として公証役場で作成します。流れとしては、まず2名以上の証人を連れて公証役場に行きましょう。

そしてその場で「公証人」に対して、遺言状に記載したい内容を口頭で伝えます。

その内容を基に公証人が遺言状を作成するので、文章をチェックして問題がなければ「遺言者本人・証人・公証人」それぞれの署名と捺印を行い完成です。

原本は公証役場で保管してもらうことができます。 

少し手間やお金がかかりますが、この方法であれば公証人によって「遺言状の内容が法的に問題ないか?」を保証してもらうことが可能です。

分配のタイミングになって内容に不備が見つかるとどうしようもないので、それを未然に防ぐことができますね。

また保管も行なってくれるので、遺言者が亡くなった後にわざわざ探し出す必要もありません。 

遺言者の死後に遺された人物が極力スムーズに分配できるようになるので、余裕があればこの方法がオススメです。

秘密証書遺言の書き方

秘密証書遺言では、公正証書遺言とは違い遺言状自体は自分で作成した上で「遺言状の存在」を保証してもらうことができます。

流れとしては、2名以上の証人を連れて公証役場へ行き、その場で「遺言状が確かに存在している」ということを確認してもらうことで完了です。

遺言状に関しては、(署名と捺印を除いて)文章を代筆してもらったりPCで打ち込んでも構いません。

内容チェックや遺言状の保管までは行わないので、遺言状の内容を知られたくないが作成したことだけは保証してほしいという場合にオススメです。 

特別証書遺言の書き方

この特別証書遺言は次の3種類に分けることができます。いずれの場合も特殊な状況でのみ作成可能です。

「応急時遺言」は、不慮の事故や病などで命の危険が迫っている場合に作成できます。

作成するために、まず3名以上の証人に対して遺言内容を後述し、誰か1人がその内容を書き起こしてください。

その文章を全員でチェックし、問題がなければ署名と捺印を行います。そして遺言状を作成してから20日以内に家庭裁判所の承認を得て完成です。 

「船舶応急時遺言」は、飛行機や船などの乗り物内で命の危機にさらされた場合に作成できます。

応急時遺言とは異なり、2名以上の証人に対して遺言内容を口述すればOKです。

特に内容を書き起こす必要はありません。こちらも遺言状を作成してから20日以内に家庭裁判所の承認を得ましょう。 

「隔絶時遺言」は、感染症による隔離を受けたり、被災によって分断された場合などに作成できます。

「事情により一般社会から離れている」と認定されればOKです。

こちらも証人に対して遺言内容を口述するのですが、状況によって証人として認定される人物は異なります。

例えば、船舶内であれば船長(もしくは事務員)1名と証人2名以上、服役中であれば警官1名と証人2名以上、という組み合わせで認定可能です。 

遺言状が法的効力を持つ条件

上記のように様々な種類がある遺言状。ではどのような条件を満たせば法的効力を持つのでしょうか?

意思能力のある満15歳以上かどうか

遺言状は満15歳以上であれば作成することができます。両親や代理人など、第三者による許可は必要ありません。

当然、作成された遺言状の内容を別の人物が取り消すことも不可能です。

成年後見人の場合は条件あり

原則として、遺言者に認知症等の症状があり「常に判断力が乏しい」という状態の場合は遺言状を作成することはできません。 

しかし、症状の程度によっては作成が可能です。

例えば「認知症等の症状はあるが判断力が戻る時がある」というような場合は、2名以上の医師に証人として立ち会ってもらうことで遺言状を作成することができます。

もし作成後に症状が悪化したとしても、「遺言状の作成時には問題がなかった」ということで効力を発揮するのです。 

決められたルールに沿っているか

作成方法はもちろん、遺言状に記載する内容自体がルールに沿っていないと遺言状は無効になります。

特に自筆証書遺言の場合は、全てを自分1人で作成しなければいけないため、記載内容に不備があってもそれを訂正してくれる人がいません。

具体的なチェックポイントは後述するので、それを基にルールに沿った内容を作成しましょう。

法的効力を持つ遺言状の内容

遺言状では、様々なことに関して遺言者の意思を反映させることが可能です。

もちろんなんでも思い通りにできるというわけではなく、法律でその効力の適用範囲は定められています。

では具体的にどのようなことに関して法的効力を持つのでしょうか? 

遺言書の執行に関する効力

遺言者の子供が未成年であった場合、基本的に遺産相続などの法律が絡むことに関わることができません。

もちろん子供は法定相続人として認められているので、本来は相続する権利があるのにそれが行使されないということになってしまいます。

そうした事態に備え、遺言状の中で「後見人」を指名することが可能です。

この「後見人」とは、未成年者に変わって法律行為に関わることができる代理人のことです。

子供に適切な遺産が引き継がれるように、後見人を指名しておくと良いでしょう。

相続分の指定

遺言者の遺産は法定相続人に対して分配されるのが一般的。しかし遺言状に遺産分配に関する遺言者の意思が記載されている場合はそちらが優先です。 

とはいえその全てを認めてしまうと、遺産が法定相続人に対して適切に分配されない可能性も出てきます。

仮に「遺産の全てを親友に引き継ぐ」という遺言があった場合、本来の法定相続人としては納得できないはずです。

そうした事態を防ぐために、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」という最低限度の分配割合が定められています。

この制度によって、遺言者の意思を尊重しつつも最低限の権利を守ることができるのです。

相続人の廃除

遺言者が指名した人物を相続対象から除外することも可能です。これを「相続人の廃除」と言います。

もちろんこれも遺言者の主張を全て認めてしまうと、「正当な理由が無いのになぜか相続対象から廃除された」という事態になりかねません。

そのため、基本的には以下のような行いをした法定相続人に対して廃除が適用されます。

・懲役刑を受けた経験がある

・(やむを得ない理由を除き)遺言者に借金を負わせた

・愛人がいた

・遺言者への虐待行為があった

気をつけなければいけないのは「遺留分の権利を持つ法定相続人に対してのみ廃除を適用できる」という点です。

そのため、もともと遺留分の権利が無い兄弟姉妹に対して相続排除は行えません。もし廃除したい場合は遺言状にその旨を一筆記述しておけば大丈夫です。 

なお、相続廃除よりも強力な制度として「相続欠格」というものがあります。

これは、廃除よりもさらに重大なことをしでかした場合にのみ適用可能です。具体的には以下のような理由が当てはまります。

・遺言者への殺人未遂があった

・他の法定相続人を殺害した

・遺言者への脅迫行為があった

・悪意を持って遺言状の改竄や破棄を行なった 

いずれもかなり悪質な理由ばかりのため、一度相続欠格を適用されるとそれを取り消してもらうことはほぼできません。

遺言者が生前に対象者を許した上で生前贈与を行えば遺産を引き継ぐことはできます。しかしそのようなことはほぼ無いでしょう。

相続人の身分に関する効力(認知)

仮に遺言者に隠し子がいた場合は、「自分の子供である」という旨を遺言状に記載しておくことでその子供に相続権を与えることができます。 

相続人相互の担保責任の指定

遺言者の遺産は何らかの問題を抱えていることがあります。

もしかするとすでに他人の手に渡っているなど、予想外の問題を抱えている可能性もあります。

もしも相続した遺産にそのような問題があった場合、相続人はそれに対する責任を負わなければいけません。これを「担保責任」と呼びます。 

遺言者は万が一担保責任が発生した場合に備え、遺言状の中に「誰が責任を負うのか?」「負担はどのくらいになるのか?」ということを記述することが可能です。 

相続財産の処分

遺産は法定相続人に引き継ぐだけでなく、遺言者の指定した第三者や団体などにも分配することが可能です。

このことを「遺贈」と言い、遺贈を受ける対象者を「受遺者」と呼びます。

この「遺贈」と一般的な「相続」は、税制面などで異なる部分があるので使い分けには注意してください。

遺言執行者の指定または委託

「遺言執行者」とは、遺言状に記載された内容が法的に問題ないかをチェックしつつ、遺言者の希望通りに遺産分配を行うために推薦された人物のことです。 

遺産分配に関しては、この遺言執行者に大きな権限が与えられています。

基本的に法定相続人や受遺者などは遺言執行者の決定には従わなくてはいけません。

反対に遺言執行者はどの利害関係者とも対等に接する義務が生じます。

もし特定の人物と裏で繋がり、有利に分配を運ぼうとした場合は解任請求をされることもあるので注意しましょう。 

遺言執行者は責任もあるためなかなか重労働です。しかしその代わり報酬が支払われます。

この報酬額は遺言書に記載してある通りに従ってください。もし記載が無ければ相続人同士の話し合いになります。 

なお、少し遠回りですが「遺言執行者を決める人物を指定する」ということも可能です。

なぜこのようなことをするかというと、遺言執行者が先に亡くなる可能性などもあるため、

その時の状況に合わせて、遺言執行者にふさわしい人物を選ぶことができるのが理由となります。

遺産分割方法の指定と分割の禁止

遺産の分配方法を指定することはもちろん、分配自体を禁止することも可能です。

ちなみに禁止期間は「相続が始まってから5年以内」と決まっています。

この期間を設けた理由は、遺言者が亡くなった直後は遺産分配に関するトラブルが起きやすいため。

少し時間を空けて冷静な状態で協議できるようにするという配慮なのです。 

遺留分侵害額請求方法の指定

法定相続人に最低限保証された取り分である「遺留分」は、実際に遺留分を侵害された人物が「侵害しているであろう人物」に対して請求します。

ここで協議をして解決できれば良いのですが、難しい場合は家庭裁判所での調停が必要です。

ここでも厳しそうなら地方裁判所まで話を上げなくてはいけません。 

この遺留分の請求には期限があります。

いつの間にか相続が開始されていた場合は10年以内ですが、そうでなければ相続の開始や遺留分の侵害を知った日から1年以内が期限です。 

無効になる遺言状

遺言状が無効になってしまうケースにはどのようなものがあるのでしょうか? 

共同遺言

基本的に遺言書は「遺言者1人につき1通」しか作成することができません。

そのため、配偶者や兄弟姉妹と一緒に内容を考え作成しても効力は発揮しないのです。 

そもそも共同で遺言状を作成してしまうと、お互いに遠慮して素直な意思を記載できないことが想定されます。

また、1人が亡くなった後に遺言状の内容を取り消したい場合、それが可能かの判断が非常に難しいのです。

さらに、遺言状が遺言者の死後に効力を発揮するということを考えると、共同では「いつから効力を発揮するのか?」という時期の特定も難しくなります。

代理遺言

先述の通り、自筆証書遺言では代筆が禁止されています。当然「遺言者が以前話していた遺産の話を代理で記載する」ということもできません。

もしそれをやってしまうと、どこかで遺言者の話した内容とズレが起きたり、悪意を持って改竄されてしまう可能性があるからです。

それを防ぐためにも、必ず遺言者が筆を取り自身の意思を確実に記載しておく必要があります。

遺言状の扱い方の注意点

遺言者は注意深く遺言状を作成する必要がありますが、遺された方々もその扱いには気をつけなければいけません。

では具体的にどのような面で気をつけるべきなのでしょうか? 

勝手に開封しないこと

基本的に遺言状は勝手に開封してはいけません。なぜなら悪意ある人物によって意図的に改竄されたり破棄されたりする可能性があるためです。

もし悪意を持って開封した場合は遺産の相続権を喪失します。

仮に悪意なく開封してしまった場合は、相続権の喪失まではありませんが、5万円以下の罰金を科されることもあるので注意しましょう。

遺言状の開封には家庭裁判所の許可が必要です。これを「検認」と言います。

検認があることによって、改竄されていない遺言状であるということが証明されるのです。

なお、公正証書遺言であれば作成段階ですでに中身のチェックを受けた上に原本が公証役場に保管されているので、原本以外の遺言状を勝手に開封しても何も問題はありません。

遺言状があっても遺留分の請求が可能 

先述の通り、全てを遺言状の通りに分配する必要はありません。

法定相続人が「遺留分を侵害されている」と感じた場合は遺留分請求を行うことができます。

遺留分とは

上記の遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保証された最低限度の取り分のこと。具体的な取り分の割合は以下の通りです。

◎相続するのが配偶者だけなら「遺産の1/2」が遺留分

◎相続するのが配偶者と子供なら、配偶者は「遺産の1/4」で、子供は「遺産の1/4」が遺留分。子供が複数人の場合は、1名あたり「1/4×人数分」で分配する

◎相続するのが配偶者と親なら、配偶者は「遺産の1/3」で、親は「遺産の1/6」が遺留分。父母両方の場合は、1名あたり「1/6×2=1/12」で分配する

◎相続するのが子供だけなら「遺産の1/2」が遺留分。子供が複数人の場合は、1名あたり「1/2×人数分」で分配する

◎相続するのが親だけなら「遺産の1/3」が遺留分。父母両方の場合は、1名あたり「1/3×2=1/6」で分配する

自筆証書遺言を無効にしないチェックポイント

自筆証書遺言において、遺言状を無効にしないためにはどのようなことを意識すべきなのでしょうか? 

必ず自筆で記載

どのような場合であっても必ず全ての文面を自筆で記載してください。

例え配偶者の場合でも、わずかに代筆部分があった時点で遺言状の内容は全て無効になります。

そのため、病気などになって文字が書けなくなる可能性が出てくる前に、なるべく元気な間に遺言状を作成できると良いでしょう。

ただし、財産目録に関してはPCで打ち込んでも構いません。財産目録は遺言者の所有する遺産を全て書き出した非常に大切なもの。

これを基に遺産の分配を行うので、抜け漏れなく作成する必要があります。

しかし遺産の量が多いほどこれを自筆するのはかなりの手間です。そのため法改正により、財産目録に限り自筆でなくても大丈夫になりました。 

必ず署名・押印

誰が作成したのかをはっきりさせるために必ず書きましょう。

署名は本名をフルネームで正しく記載します。押印に関しては、認印と実印のどちらでも構いません。

必ず日付を記載

些細な部分ですが、こちらの記入漏れがあると遺言状は無効になります。

また、日付を書くときは「8月吉日」というような表記は避けてください。具体的な作成日がわからないためです。

必ず「◎◎年□月×日」のように丁寧に記載しましょう。あるいは「満70歳の誕生日」という記載方法でも大丈夫です。

訂正の方法に気を付ける

細かい訂正を行うこともあるかと思います。その際の訂正は丁寧に行いましょう。

訂正する場合は、まず間違えた部分に二重線を引きその線の上に訂正印を押します。

そして二重線を引いた近くに正しい文章を記載してください。

これをした上で、遺言状の最後に「訂正した箇所」「削除文字数」「追加文字数」を記載して完了です。

数カ所の訂正であればこの方法で問題ありません。

しかしあまりにも訂正箇所が多い場合は遺言状自体が見にくくなってしまうので、新しい遺言状を作成した方が良いです。 

2枚以上になる場合の対応

複数枚の場合は、バラバラにならないようにホッチキスなどで留めて「契印」をしましょう。

契印はページをまたがって押印されているため、紙が正しく続いているということを証明することができます。 

ちなみに、契印をしていない遺言状が無効になることはありません。

あくまでも念のための処置です。とはいえそこまで手間がかかるものでもないので、大切な遺言状を守るためにも押印しておいて損はないでしょう。

自筆証書遺言の標準的な文例

それでは実際に遺言状を書くときに用いる文例をご紹介しましょう。作成方法に違いはありますが、文例自体に差はありません。

おさえるべきポイント

後ほど文例もご紹介しますが、基本的には以下のポイントをきちんと掴んでいれば文章に縛りはありません。 

①全て自筆

自筆証書遺言ではこれが大原則です。例え一部分であっても代筆は許可されていません。

②署名と捺印を残す

これらがないと誰が作成したのかが保証されないため必ず記載しましょう。

署名はフルネームで本名を正しく記載します。捺印は実印でも認め印でも構いません。 

③遺言状の作成年月日は具体的な日付で記載する

「8月吉日」というような表現はNGです。これだと具体的な作成日がわかりません。

必ず「◎◎年□□月××日」というような表現で記載しておきましょう。

ただし「遺言者の満90歳の誕生日」という表現でも日付がわかるので問題ありません。 

④遺産の分配時は遺留分を考慮する

法定相続人に保証された遺留分を無視することはできません。

これが侵害されていると、遺された人物で協議をする必要も出てきます。

お金に関することはトラブルになる危険性も含んでいるので、そうした事態を防ぐためにも遺留分に注意しつつ分配割合を記載しましょう。 

⑤「どの遺産を誰にどのくらい分配するのか」を明確に記載する

ここが一番重要です。遺された人物はこの遺言状を基にして遺産を分配します。

そこでトラブルを回避するために、分配内容に関しては誰が見てもわかるようにしておきましょう。

例えば不動産を相続する場合は「どの住所の土地を何平方メートル相続するのか?」という部分まで記載し、建物の場合は住所はもちろん家屋番号や構造、床面積までを詳細に記載します。

また、人物に関しても「娘」等ではなくきちんとフルネームで記載しなくてはいけません。 

遺言者が亡くなった後に余計なトラブルが発生しないよう、この辺りの記載はかなり注意を払っておきましょう。 

文例

遺言状に遺産分配に関して記載する場合は、以下のようなものをイメージすると良いでしょう。

ただしケースによって様々なものがあるので、あくまでも参考程度にしてください。 

◎相続させる旨を伝える文例

遺言者は次に記載する遺産を、妻である◯◯(妻のフルネーム+生年月日)に相続させる。 

①遺言者名義の預貯金

 ◎◎銀行□□支店 口座番号1234567

②土地

 住所:東京都中野区〜〜3丁目

 番地:〜〜番〜〜

 地目:宅地

 面積:××平方メートル 

◎遺言執行者を指定する際の文例

遺言者は、下記の人物を「遺言執行者」に任命する。

東京都渋谷区◎◎1丁目2番3号 〜〜〜ビル4階 ××法律事務所

以上のようなイメージです。どのような場合でも「誰が見ても内容を把握できるよう詳細に記載する」ということが大切ですね。

遺言状についてのまとめ

以上が遺言状に関する様々な知識についてです。それでは最後に改めて、今回ご説明した内容を確認していきましょう。

・遺言状とは、遺産の分配などに関して「遺言者が亡くなった後に自身の遺産をどのようにしてほしいのか?」という意思表示を記載しておく書面のこと。

遺言状を作成することによって、法定相続分による分配の考え方よりも「遺言者の意思」が優先的に適用される。 

・遺言状は主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「特別方式遺言」に分類される。

・公正証書遺言は原則として公証役場で作成する。2名以上の証人を連れて公証役場に行き、その場で「公証人」に対して、遺言状に記載したい内容を口頭で伝える。

その内容を基に公証人が遺言状を作成するので、文章をチェックして問題がなければ「遺言者本人・証人・公証人」それぞれの署名と捺印を行い完成する。

原本は公証役場で保管してもらうことができる。 

・秘密証書遺言は、遺言状自体は自分で作成した上で「遺言状の存在」を保証してもらうことができる。

2名以上の証人を連れて公証役場へ行き、その場で「遺言状が確かに存在している」ということを確認してもらうことで完了する。 

・特別証書遺言はさらに「応急時遺言」「船舶応急時遺言」「隔絶時遺言」の3種類に分けられる。いずれも特殊な状況下でのみ作成可能。

・遺言状が法的効力を持つ条件とは「意思能力のある満15歳以上かどうか」「成年後見人の場合は条件あり」「決められたルールに沿っているか」というものである。

・遺言状が法的効力を持つのは、「遺言書の執行に関すること」「相続分の指定」「相続人を廃除する場合」「相続人を認知する場合」「相続人に担保責任を指定する」「相続財産の処分」「遺言執行者の指定または委託」「遺産分割方法の指定と分割の禁止」「遺留分侵害額請求方法の指定」という状況下である。

・遺言状が無効になってしまうケースとしては、「配偶者や兄弟姉妹と一緒に共同遺言を作成した」「遺言状の内容を代筆してもらった」というものがある。

・遺された人物が遺言状を扱う時には、「勝手に開封しない」「遺言状があっても遺留分の請求が可能」という点に気を配る。

・自筆証書遺言の内容を無効にしないために、

「必ず自筆で記載する」

「必ず署名・押印をする」

「必ず日付を記載する」

「訂正の方法に気を付ける」という点に気をつける。

・遺言状を書く時は、

「全て自筆する」

「署名と捺印を残す」

「遺言状の作成年月日は具体的な日付で記載する」

「遺産の分配時は遺留分を考慮する」

「どの遺産を誰にどのくらい分配するのかを明確に記載する」という点を意識しつつ文章を記載する。

このポイントさえ掴んでいれば文章にそこまで縛りはない。

遺言状は遺言者の最後の意思表示となる大切な書面です。当然遺された人々もなるべくその思いは汲み取ってあげたいはず。

しかし要点をしっかり掴んでおかなければ、いざという時に効力を発揮しないという可能性もあります。

そのような事態を防ぐために、上記のような基本的な内容はあらかじめきちんと把握しておきましょう。

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