遺言書の書き方を完全解説!効力・有効な遺言書の書き方を紹介!
2021/8/8 情報更新
遺言書には、財産の分配方法などの情報がたくさん記載されています。
そのため相続人にとっては非常に大切な書面であると言えるでしょう。
しかしそんな大切な書面である遺言書も、定められた作成方法やルールに従わないと効力を発揮しません。
そのような問題を起こさず故人の最後の意思表示をきちんと相続人に遺すため、遺言書の正しい書き方について確認していきましょう。
遺言とは?
それではまず、遺言について基本的な知識を確認していきましょう。
遺言とは?
基本的に遺言は、相続可能な遺産がある方(被相続人)が「自分の死後に遺産をどのように分配して欲しいか?」という意思表示をしておくものです。
この内容を定められた形式やルールに則り、書面に書き起こしたものが「遺言書」と呼ばれます。
遺言の意義
原則として被相続人の遺産は「法定相続人」に対して引き継がれます。
誰が法定相続人に当てはまるのかは法律で定められており、相続順位の高い者から「配偶者→子供(直系卑属)→両親(直系尊属)→兄弟姉妹」となるのが決まりです。
しかし、こうした法律だけに沿って遺産を分配するとなると、被相続人の意思が全く反映されなくなる恐れがあります。
例えば、人によっては「生前お世話になった◎◎には少し多めに渡したい」「相続人ではないが□□に遺産を渡したい」という思いを持つ場合もあるでしょう。
遺言書は法定相続よりも優先される
そうした被相続人の意思がある場合は、遺言書を作成することによって「法律に則った遺産分配」ではなく「被相続人の希望に則った遺産分配」をすることが可能になります。
このように「法律よりも被相続人の意思を優先させることができる」ということこそ、遺言の意義と言えるでしょう。
遺書と遺言書の違い
遺書と遺言書は、言葉は似ていますが意味は異なります。
遺書の意味
「遺書」は、故人の持つご遺族への感謝の思いや言い遺したいことなどを記した「自由な書面」です。
特に規定などは無いため、思った通りに文章を書くことができます。
遺言書の意味
それに対して「遺言書」は、法律で定められたルールに則って文章を記載しなくてはいけません。
遺産分配という大切な内容について触れているため、のちのトラブルとならないように細心の注意を払わなければいけないのです。
そのため遺言書を遺す場合は、きちんとルールを把握した上で抜け漏れなく書面を作成することを心がけましょう。
遺言書については下記記事もご参考ください。
・遺言書の書き方を徹底解説!ケース別文例・有効な書き方を解説!
・遺言書を完全解説!種類・効力・扱い時・費用を紹介!
相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
遺言の種類
このように、被相続人の意思を遺すための手段として非常に有効な遺言書。ではそれぞれどのような種類があるのでしょうか?
普通方式
この「普通方式」は一般的に用いられることが多い方式であり、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つに分類されます。
この3つはいずれも、遺言書として記載すべき内容に関してはそこまで大きな違いがありません。
大枠のルールは法的に定まっているので、そこから逸れることはできないということです。
ただし、そうした法的ルール以外の保管方法や作成方法などは違ってきます。
その違いを生かし、自分の状況や希望に沿った方法で遺言書を作成することが可能になるのです。より詳しい内容は後ほどご説明します。
特別方式
特殊な状況下でのみ適用される方式のこと。種類は「応急者遺言」「船舶遭難者遺言」「隔絶地遺言」の3つです。
応急者遺言とは?
まず「応急者遺言」とは、被相続人が「事故に遭遇する」「怪我をしてしまった」など、生命の危機にさらされている場合に適用可能です。
作成するために、まず証人3名以上に対して遺言内容を口述し書面に記載してもらいましょう。
そして全員の承認を得て、最後に押印と署名を行い完成です。完成後は家庭裁判所の承認を20日以内に受けましょう。
船舶遭難者遺言とは?
次に「船舶遭難者遺言」とは、被相続人が飛行機や船などの事故で生命の危機にさらされている場合に適用可能です。
この形式の場合は、2名以上の証人で成立します。ちなみに遺言内容を書面に記載するのは必須ではありません。
こちらも作成後に家庭裁判所の承認を得ておきましょう。
隔絶地遺言とは?
最後に「隔絶地遺言」とは、被相続人が「服役中である」「感染症にかかり隔離された」など、特別な事情により一般社会から離れてしまった場合に適用可能です。
なお、必要な証人の種類は被相続人の状況によって異なるので注意しましょう。
服役している場合は「警官1名と証人1名」、船の中にいる場合は「船長(事務員可)1名と証人2名」という組み合わせになります。
遺言については下記記事もご参考ください。
・遺言状を完全解説!種類・書き方・扱い・効力を紹介!
・遺言とは?意味・種類・書き方・効力を紹介!
・遺言書を完全解説!種類・効力・扱い時・費用を紹介!
遺言書の種類と作成方法
このように遺言書には、被相続人の希望や状況に沿えるようにいくつかの種類が用意されています。
では具体的にどのように作成するのでしょうか?今回は、一般的に利用されることが多い「普通方式」ついて詳しくご説明します。
自筆証書遺言(詳しくは後述)
自筆証書遺言は自筆が必須です。たとえ配偶者などの近しい関係であっても代筆は認められていないので注意しましょう。
より詳しい作成方法は後述します。
公正証書遺言
上記の自筆証書遺言とは違い、遺言書の作成及び原本の保管を公証役場に依頼することができます。
公正証書遺言の作成方法
作成するためには、まず「2名以上の証人」を選任してください。そして証人を連れて公証役場を訪ね、その場で「公証人」に遺言内容を口頭で伝えます。
公証人が聞いた内容を基に遺言書を作成し、特に問題がなければその場にいた全員分の署名と押印を施し完成です。
原本は公証役場で保管されます。
この手続きを踏むことによって、遺言書の内容が法的に問題ないかどうかのチェックを行うことが可能です。
記載不備で遺言書が無効になる可能性をほぼゼロにできるというのがポイントでしょう。
さらに原本の保管を委託できるので、相続人が後から遺言書を慌てて探す必要もありません。
この形式を使えば、遺言書における大きなリスクを取り除けるということです。
公正証書遺言のデメリット
ネックになるとすれば、「お金と手間がかかる」という点でしょう。
公証人が遺言書を作成しその内容をチェックするという手間があるため、基本的には1日で完成しません。
さらに証人を弁護士などの専門家に依頼するとその分の費用もかかります。
なお、以下の人物を証人として選任することはできないので注意しましょう。
・未成年者
・相続人などの相続に関係する人物
・公証人と関係している人物(配偶者など)
>>公正証書遺言を完全解説!書き方・流れ・費用を紹介!
秘密証書遺言
秘密証書遺言形式で作成すると、公正証書遺言のような内容チェックや原本の保管までは行われませんが、遺言書の存在を公的に保証してもらうことが可能です。
秘密証書遺言の作成方法
作成するためには、2名以上の証人と一緒に公証役場へ遺言書を持ち込み、そこで公証人によって遺言書の存在を承認してもらうことで完了します。
自筆証書遺言とは違い、署名及び押印が被相続人のものであれば文章の代筆やPCでの作成も可能です。
もちろん自筆でも問題ないため、内容を知られずに遺言書の存在を知らせておきたいという方にぴったりの方法と言えるでしょう。
亡くなってからの手続きについては下記記事もご参考ください。
・死亡手続きを完全解説!するべきこと・期間・費用を一覧で紹介!
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遺言書の効力
このように遺言書には多数の種類があります。しかし、その遺言書が及ぼす範囲というのはどのような形式であっても変わりません。
具体的には以下のような形で効力に関して定められています。
遺言書の執行に関する効力
基本的に法定相続人には子供も指定されるため、本来であれば遺産の引き継ぎなどを行うことが可能です。
しかし子供がまだ未成年であれば、そうした法律行為を行うことができません。
そのため、このままでは子供に遺産が引き継がれないということになってしまいます。
そのような事態を避けるために、未成年の代理として法律行為を行う人物(後見人)を遺言書に記載しておくことで指定が可能です。
相続分の指定
先述の通り、原則として被相続人の遺産は「法定相続分」に基づき法律で定められた法定相続人に対して分配されるのが一般的です。
とはいえ全てをその通りに分配してしまうと、割合に関して被相続人の意思を反映することができません。
しかし遺言書に自分の希望する分配割合などを記載しておくことで、法律よりもそちらの内容を優先することが可能になるのです。
遺言書は作成者の最後の意思表示とも言える物。このように相続分の指定を行えるのは本人にとっても嬉しいことでしょう。
だからといって全ての希望が通るわけではありません。
遺留分とは?
(兄弟姉妹を除く)法定相続人には、最低限の遺産が分配されることを保証した「遺留分」という権利があるため、その取り分を侵害してしまう内容は適用されないのです。
仮に、遺言書の内容に「遺産の全てを養子に遺す」と記載があっても、これは遺留分の侵害に当てはまるため最低限の分配額を請求することができます。
遺留分については「」の記事もご参考ください。
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相続人の廃除
相続人の排除とは?
「相続人の廃除」とは、相続人として定められている人物を相続対象から除外する制度のこと。
遺言書にその旨を記載しておくことで、指定した人物には遺産が相続されないようになります。
この制度を適用するためには、廃除される相続人にそれ相応の理由があることが必須です。
そうでなければ、仮に相続廃除の旨を記載しても遺留分を主張されてしまいます。
相続人の排除となる理由
それでは、廃除の理由として妥当であるのはどのようなものなのでしょうか?
具体的には「懲役刑を5年以上受けたことがある」「生前被相続人を虐待していた」「愛人と同棲するなどの不貞行為を行った配偶者」などが当てはまります。
なお、兄弟姉妹には遺留分の請求権が無いため相続廃除の対象となりません。
もし兄弟姉妹に遺産を引き継ぎたくない場合は、遺言書に「兄弟姉妹には相続しない」と記載しておくだけで大丈夫です。
上記の相続廃除相当理由よりも重大な行為をした相続人に対しては「相続欠格」が適用されます。
具体的には「遺産を引き継ぐために被相続人や相続人を殺害した」「被相続人を脅迫した」「遺言書を意図的に破棄したり改竄したりした」などの行為です。
このような明らかな犯罪行為は相続欠格に当てはまります。
相続欠格を取り消す方法
相続欠格を取り消すためには「生前に被相続人から許してもらう」という以外に方法はありません。
しかしいずれも犯罪行為ばかりなので、ほぼその可能性は無いでしょう。
相続人の身分に関する効力(認知)
もし被相続人に隠し子の存在が発覚した場合、その子供を認知する旨を遺言書に記載しておくことで、実子と同様に相続する権利を与えることが可能です。
相続人相互の担保責任の指定
相続される遺産は全てが完璧であるとは限りません。
もしかしたら「すでに他人の手に渡っていた」などの問題が発生する可能性もあります。
万が一遺産にそうした欠陥があった場合、その責任は相続人が負わなければいけません。この責任のことは「担保責任」と呼ばれています。
遺言書には、こうしたことが起こった場合に備えて「誰が担保責任を負うのか?」「どういった割合で責任を負担するのか?」ということを記載しておくことが可能です。
相続財産の処分
遺産は相続人に対してだけではなく、被相続人が指定した第三者や団体に引き継ぐこともできます。
この行為は相続ではなく「遺贈」と呼ばれており、遺贈される相手のことは「受遺者」と呼ぶのが一般的です。
この遺産の受け取りを辞退するかどうかは、受遺者の意思決定に委ねられています。
相続については下記記事もご参考ください。
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遺言執行者の指定または委託
遺言書に書いてある分配割合や遺産の相続先に関しては、遺留分などに違反していない限り原則として優先されます。
しかし、それに納得できない相続人との間でトラブルになる可能性も当然あるでしょう。
そのような事態に備え、遺言書の内容実現のために行動する「遺言執行者」を指定することもできます。
遺言執行者とは?
遺言執行者には、遺言書に記載されている通りに相続を進めるための権限が与えられているため、相続人はその執行を妨害することができません。
もちろん遺言執行者には、特定の相続人に肩入れすることなく平等に接する責任があります。
これを守れないと解任請求を出されることもあるので注意しましょう。
このように大きな裁量がある立場であるため、遺言執行者にはそれ相応の報酬が支払われます。
遺言書に報酬内容を記載しておくのが一般的ですが、もし特に記載が無ければ相続人との話し合いで決める必要があるでしょう。
ちなみに「遺言執行者を決める人物を指定する」ということも可能です。
まわりくどいように思えますが、遺言書を作成してから被相続人が亡くなるまでの間に周囲の人間関係などが変化する可能性もあるため、そうしたことに対応することができます。
・遺言執行者の選定基準
特に基準は設けられていませんが、未成年者や破産者は遺言執行者になることはできません。選定する場合は、相続に関係のない第三者や弁護士や行政書士に依頼するのが良いでしょう。
遺言施行者は必ずしも選定する必要はない
遺言施行者の選定は必ずしも必須ではありません。しかし、遺産相続でトラブルに発展しない為にもできるだけ信頼できる人に依頼しておいた方が良いでしょう。
遺言書の修正
遺言書は作成した後でも修正することが可能です。修正箇所に二重線を引き、訂正印を押した後に修正します。注意点はあまりに遺言書の修正箇所が多い場合は、後からの見やすさを考え一から書き直した方が良いでしょう。
遺産分割方法の指定と分割の禁止
遺言書では遺産の分割方法を指定することができます。さらにこの「遺産分割方法の決定」を、被相続人が指定した第三者に委託することも可能です。
場合によっては、この遺産分割自体を禁止することもできます。
ただし無制限に禁止できるというわけではなく、相続が始まってから5年以内であれば遺産分割を禁止することが可能です。
これには、被相続人が亡くなった直後は相続人同士のトラブルが起きやすいため、一度冷静になれる期間を作るという意味合いもあります。
遺産分割については下記記事もご参考ください。
・遺産分割を完全解説!流れ・割合・揉めない方法を紹介!
遺留分侵害額請求方法の指定
兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺産の最低限の分配割合を保証した「遺留分」という権利があります。
もし遺言書の内容に納得ができなければ、この遺留分に基づいた遺産を請求することが可能です。
遺留分の分配配合
ちなみに遺留分で定められている分配割合は以下のようになります。
◎相続人が配偶者だけの場合は、遺留分は遺産全体の1/2
◎相続人が配偶者と子供の場合は、遺留分は「配偶者が遺産全体の1/4」「子供が遺産全体の1/4。複数人いる場合は、1名あたり「1/4×人数分」で分配する」
◎相続人が配偶者と親の場合は、遺留分は「配偶者が遺産全体の1/3」「親が遺産全体の1/6。父母両方の場合は、1名あたり「1/6×2=1/12」で分配する」
◎相続人が子供だけの場合は、遺留分は遺産全体の1/2。複数人いる場合は、1名あたり「1/2×人数分」で分配する
◎相続人が親だけの場合は、遺留分は遺産全体の1/3。父母両方の場合は、1名あたり「1/3×2=1/6」で分配する
実際に遺留分請求をする場合は、遺留分を侵害しているであろう人物に対して行います。
まずは話し合いが行われ、決着がつかなければ家庭裁判所の調停が必要です。それでも決まらなければ地方裁判所の判断に従いましょう。
遺留分請求の時効
ちなみに遺留分請求には時効があるので要注意です。時効は2種類あり、
・相続が始まり遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内
・いつの間にか相続が開始していた場合はそこから10年以内
のどちらかです。
相続開始を知ってしまうと1年しか猶予がありません。
遺留分については下記記事もご参考ください。
・遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介!
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自筆証書遺言の書き方:前提となるポイント
それでは先ほどご紹介した「自筆証書遺言」の詳しい書き方や、自筆証書遺言に関するポイントをご説明しましょう。
法律に則ったルールで記載しないと内容が無効になる可能性もあるので注意が必要です。
守るべき5つのルール
まず自筆証書遺言を作成する上で適用するルールは以下の5つです。
①必ず被相続人自身が手書きする
自筆証書遺言は、書面に記載されている内容の全てを被相続人本人が手書きしなければいけません。
仮にほんの一部分でも代筆箇所があれば遺言書の内容は全て無効になるので要注意です。
もちろん録音や録画などは認められていません。このことを考えると、できるなら被相続人が元気なうちに遺言書を作成しておくと良いですね。
ただし、遺産を一覧表にした「財産目録」に関してはパソコンなどで作成しても構いません。
②必ず作成年月日を記載する
ここも必ず本人が手書きをしてください。ただし「令話元年1月吉日」というような書き方だと具体的な作成日が不明なため遺言書は無効になります。
必ず「年月日」を数字で記載しましょう。
ただし「満90歳の誕生日」などであれば日付が特定できるため問題ありません。
③必ず署名と押印をする
誰が作成したのかがわからないと遺言書は無効になるので気を付けましょう。
押印に関して、認印や実印などの種類は問いません。
④訂正する時のルールに注意する
もし自筆証書遺言の内容を訂正する場合は、必ず定められた方法に従いましょう。
具体的にはまず、訂正箇所に二重線を引き、その二重線に押印した上で近くに訂正後の文章を書きます。
そして遺言書の最後に「どの箇所を何文字削除して何文字追加したのか?」という旨を記載して署名するという方法です。
このように訂正方法が厳格に定められているため、もし訂正量が多ければ新しく遺言書を作成してしまった方が良いでしょう。
⑤遺言書が複数枚になった場合について
もし遺言書が2枚以上になった場合は、ホッチキスなどでまとめた上で「契印」をすると良いでしょう。
契印とは、両ページにまたがって押印をすることで「この書面は正しく連続している」ということを証明するものです。
契印をしていないからといって遺言書が無効になるということはありません。
しかし契印があることで遺言書の偽造を防ぐことは可能です。そこまで手間ではないので、大切な遺言書を守るためにも施しておきましょう。
こうして作成した遺言書は封筒に入れて保管しておくとさらに安全です。
⑥ボールペンで記載する
遺言書は鉛筆で書くと後から修正が可能となってしまいます。そのため、修正不可なボールペンで記載しましょう。鉛筆で記載した場合、裁判所や銀行が正規の遺言書を認めてくれない場合もあります。
「特定遺贈」と「包括遺贈」
遺産を引き継ぐ方法として「特定遺贈」と「包括遺贈」というものがあります。これは主に、遺産を相続人以外に引き継ぐ際に利用する言葉です。
特定遺贈とは?
特定遺贈とは、「誰にどの遺産を引き継ぐのか?」ということを指定する方法のことです。
具体的には「◎◎には□□にある土地を遺贈する」というような形です。
包括遺贈とは?
一方で「包括遺贈」とは、引き継ぐ遺産を割合で明示したものです。
具体的には「××には遺産の2割を遺贈する」というような形です。
どちらが良いというものでもありません。
ただし、遺産を引き継ぐ相手をしっかり指定しておかないと遺贈を受ける者や相続人同士でトラブルになる可能性もあるため、可能なら特定遺贈で明示してあげた方がわかりやすいです。
遺贈については下記記事もご参考ください。
・遺贈を完全解説!相続との違い・流れ・控除内容を紹介!
・遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!
自筆証書遺言の方式緩和
これまでは、自筆証書遺言の作成にあたっては内容の全てを被相続人の手書きで記載する必要がありました。
しかし先述の通り、財産目録に関してはパソコンでの作成が許可されています。
さらに、通帳のコピーを使い相続する預金を明示しても遺言書の効力は持続するようになりました。
自筆証書遺言の保管制度
作成した遺言書の紛失や偽造リスクを避けたい場合は「自筆証書遺言書保管制度」を活用しましょう。
まず「法務局手続案内予約サービス」のサイトから事前予約を行い、保管手続き予約に関する確認メールを受け取ります。
それを確認した上で、以下の書類を法務局に提出してください。
・作成した遺言書
・本人確認書類(運転免許証など)
・法務局のサイトからダウンロードした保管申請書
・住民票
・手数料3,900円
書類不備等が無ければ「保管証」と引き換えに遺言書を保管してもらえます。
さらにこの制度では遺言書の保管だけでなく、被相続人が亡くなった際に相続人へその旨を伝えてもらうことも可能です。
これにより、相続人に対して遺言書の存在を忘れずに伝えることができるようになります。
内容を訂正する場合
こちらは先述の「守るべき5つのルール」に則り、正しく訂正箇所に二重線を引き、押印や署名などを忘れないようにしましょう。
検認とは?
自筆証書遺言は勝手に開封することができません。なぜなら、悪意のある人物によって偽造をされたり破棄される可能性があるためです。
もし勝手に開封してしまうと5万円以下の罰金が科せられることもあるので注意しましょう。
ただし、勝手に開封したからといって(特に偽造等をしなければ)相続権が失われることはありません。
遺言書の内容確認は「検認」によって行います。検認は家庭裁判所に申し立てをすることで手続き可能です。
検認を申し立てる人は、遺言書を最初に発見した人物や遺言書の保管を委託されていた人物なので、相続人でなくとも問題ありません。
検認に必要な書類
なお、検認にはいくつか必要書類があるので確認しておきましょう。
・被相続人の出生時〜死亡時までの戸籍謄本
・相続人全員分の戸籍謄本
・被相続人の子供や代襲者が先に亡くなっている場合、その人物の出生時〜死亡時までの戸籍謄本
・家事審判申込書
・収入印紙(800円/通)
遺言書を撤回したい時
上記のような訂正ではなく「遺言書の撤回」を行う場合は、内容の異なる遺言書を作成すれば大丈夫です。
なぜなら基本的には「作成年月日が後の遺言書」の効力が優先されるため。特に撤回のための手続き等はありません。
ただし、先に作成した遺言書の内容全てが撤回されるわけではありません。
撤回されるのは、あくまでも「先に作成した遺言書と後に作成した遺言書の中で内容が被る部分」のみです。
それ以外の部分はそのまま効力が持続するので注意しましょう。
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自筆証書遺言の書き方:おさえるべき内容
それではここで、自筆証書遺言に記載しておくべき内容のポイントを簡単に見ていきましょう。
タイトル
タイトルはシンプルに「遺言書」としてください。一番わかりやすいです。
自筆
財産目録以外の内容は全て被相続人による手書きです。
相続と遺贈
法定相続人以外の第三者や団体に遺産を引き継ぐ場合は、「遺贈する」という表現を使いましょう。
相続、あるいは遺贈する遺産は「誰にどの遺産をどのくらい引き継ぐのか?」ということをわかりやすくはっきりと書いてください。
遺贈については下記記事もご参考ください。
・遺贈を完全解説!相続との違い・流れ・控除内容を紹介!
・遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!
財産の書き漏れに対する対応
万が一相続する遺産に漏れがあった場合、その部分に関しては遺産分割協議をしなくてはいけません。
それを防ぐために、「その他遺言者に属する一切の財産は、妻◎◎に相続させる」というような文章を記載しておきましょう。
こうすることで、漏れがあっても残りを被相続人が希望する人物に引き継ぐことができます。
遺言執行者の指定
トラブルを避けるために、遺言執行者も記載しておきましょう。
付言事項
これは遺された家族へのメッセージなどを記載します。ここに関しては特に法的拘束力はありません。
日付
作成した年月日を正確に記載してください。
自筆での署名・押印
署名と押印も忘れずに行います。実印を使った方がトラブル防止になる可能性が高いです。
封入・封印し、保管
念のため遺言書を封筒に入れて、のり付けをした後に「封印」をしておきましょう。
封筒の入り口に押印をすることで、万が一開封されても一目でわかるようにしておきます。
封筒の裏面などに「勝手に開封しないこと」などを念押しで書いておくとより安全に保管できるでしょう。
相続については下記記事もご参考ください。
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遺言書を書いた方が良い人
財産を正しく分配するためにも、遺言書はできるだけ残した方が良いでしょう。ただし、「財産が少ない」「相続人が一人」といったケースであれば、わざわざ遺言書を書かなくても良いかも知れません。
反対に、「離婚歴がある」「内縁の妻や養子に財産を残したい」「相続人同士でトラブルになる可能性がある」などといった場合は、遺言書は書いておいた方が良いでしょう。
遺言書の作成を専門家に依頼する場合
自身での遺言書作成に自信が無い場合は、専門家に依頼することができます。遺言書の作成は基本的には法律のプロフェッショナルである弁護士に依頼すれば間違いないでしょう。
専門家に依頼するメリット
専門家に依頼することでミスなく遺言書を作成してもらうことができます。また、遺言書の内容が問題ないか、相続の遺留分などにも考慮したアドバイスをもらうことも可能です。
専門家に依頼するデメリット
専門家に依頼する場合は、当然それなりの費用がかかります。仮に弁護士や司法書士に遺書の作成を依頼した場合、相場目安としては、10万円~20万円程の費用がかかることがほとんどです。
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遺言書の書き方についてのまとめ
以上が遺言書に関する書き方の説明です。最後に改めて今回の内容をまとめて確認しておきましょう。
・遺言とは、相続可能な遺産がある方(被相続人)が「自分の死後に遺産をどのように分配して欲しいか?」という意思表示をしておくもの。
原則として被相続人の遺産は「法定相続人」に対して引き継がれるが、遺言書を作成することによって「被相続人の希望に則った遺産分配」をすることが可能になる。
・「遺書」は、故人の持つご遺族への感謝の思いや言い遺したいことなどを記した「自由な書面」である。
それに対して「遺言書」は、法律で定められたルールに則って文章を記載しなくてはいけない。
・遺言書の種類は大きく「普通方式」「特別方式」分類される。
普通方式はさらに「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つに分類され、特別方式はさらに「応急者遺言」「船舶遭難者遺言」「隔絶地遺言」の3つに分類される。
・遺言書が及ぼす効力は、「遺言書の執行に関する効力」「相続分の指定」「相続人の廃除」「相続人の身分に関する効力(認知)」「相続人相互の担保責任の指定」「相続財産の処分」「遺言執行者の指定または委託」「遺産分割方法の指定と分割の禁止」「遺留分侵害額請求方法の指定」である。
・自筆証書遺言を作成する上では以下の5つのルールを守る。
①必ず被相続人自身が手書きする
②必ず作成年月日を記載する
③必ず署名と押印をする
④訂正する時のルールに注意する
⑤遺言書が複数枚になった場合について
・遺産を引き継ぐ方法として「特定遺贈」と「包括遺贈」がある。
・作成した遺言書の紛失や偽造リスクを避けたい場合は「自筆証書遺言書保管制度」を活用する。
・遺言書の内容確認は「検認」によって行う。
・遺言書を撤回したい時は、内容の異なる遺言書を作成すれば良い。
・自筆証書遺言に記載しておくべき内容のポイントは、
「タイトルはシンプルに」
「自筆する」
「相続と遺贈を使い分ける」
「財産の書き漏れに対する対応を行う」
「遺言執行者の指定」
「必要なら付言事項も記載する」
「作成した年月日を正確に記載する」
「自筆での署名・押印を忘れない」
「封入・封印し、保管する」
遺言書は被相続人の最後の意思表示です。
できればその記載通りにトラブルなく遺言書の内容を執行したいですよね。
そのためには、今回ご説明したようなルールを守ることが必要不可欠。遺された人物がスムーズに手続きできるように気をつけて作成しましょう。
【弊社『やさしいお葬式』『やさしい相続』では相続の専門家をご紹介しております。お電話・メールなど、お気軽にお問い合わせください】
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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール