養子縁組の相続を完全解説!養子が受取れる相続分・節税効果を紹介!

家族や人の関係性が多様化する昨今の状況下で、1つの選択肢として養子縁組というしくみがあります。

今では実際に養子縁組を検討する人も徐々に増えてきていて、養子縁組という言葉を耳にする機会も多くなったように感じられます。

そして、実際に養子縁組を組んだ後に気になるのが相続の問題。養子と実子とでは相続のしくみは異なるのか?

養子縁組は節税に効果的なのか?といった疑問をこの記事でしっかりとご説明していきます。

養子の相続権

養子には実子と同様に相続権があるのかどうか実際にご存知の方はそう多くないかもしれません。

養子の相続権がどのように考えられているのかを知る上で、まずは、そもそも養子というものがどういうものなのか、養子縁組を結ぶにはどういった条件があるのかなど根本的なことにフォーカスしてご説明していきます。 

養子とは

そもそも養子の制度とは、血のつながりではなく、法律のルールに基づいて人為的に親子関係を作り出す制度のことを言います、血のつながりを前提とした親子関係を実親子関係と呼ぶのに対し、法律上設定される親子関係を養子関係と呼び、養親と養子との養子縁組によって親子関係が生み出されます。

法の下においては、親子関係というのは血縁関係に縛られたものではなく、法的な契約として親子関係があるのかどうかということに視点が置かれています。

つまり、生物学上で親子かであるか否かという点は、そこまで重要ではないということがわかります。 

養子が検討されてきた背景として、たとえば、江戸時代ほどまで遡ると、跡継ぎがいない家を継承させるために養子をもらったり、その後の明治時代では家の労働力を増やすためや親の老後の世話をさせるためなど、目的を変えながらも活用されてきた制度です。

そしてその後は、戦争孤児の救済や家庭に恵まれなかった子のため、あるいは子に恵まれなかった夫婦のために、あくまで子の福祉と利益を重視した上で、養子が行われるようになってきました。 

ちなみに日本では、養子縁組のほとんどが成人に達している人間を養子にするものであり、未成年者の養子であったとしても、10歳以上の子や親族の子が多く、3歳未満の子や親族でない子を養子にすることが多いと言われる欧米とは異なる部分が多いようです。

普通養子縁組

養子縁組は民法に規定されている制度で、実の親子ではない人同士が法律的に親子になるための手続きのことを指します。

また、養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の大きく分けて2種類があります。まずは普通養子縁組についてご説明していきます。

普通養子縁組とは、養親と養子が養子縁組に同意し、届出をすることで成立する縁組契約のシステムです。

また、未成年の人が養子となる場合には、家庭裁判所から許可を得なければなりません。

普通養子縁組の場合、養親は成年に達していることと、養子となる人間よりも年上であることが必須条件とされており、さらに養子となる人間が養親の尊属(自分の父母、祖父母)ではないこと、などのきまりがあります。 

なお、15歳未満の子供は養子縁組の手続きにおいて、有効な合意が取れないとされており、親権者などの法定代理人の承諾が必要になることも覚えておきたい点の1つです。 

普通養子縁組では、養親と養子が実質的な親子関係を構築する意思に加え、法的効果を得ることを目的として縁組が結ばれることも少なくありません。

たとえば、以下のようなケースがあります。 

・長女の婿を後継として迎えるにあたり、長女の両親と婿の間で養子縁組を行う

・再婚相手の連れ子を養育するために養子縁組を行う

・節税のため祖父が孫を養子にする(相続税の基礎控除が相続人の数で変動するため)

・会社の経営を信頼のおける人物に引き継ぐため、養子縁組を結ぶことで持株を相続させる

上記のように、後継ぎ目的や節税目的、他にも養育目的などが理由で、普通養子縁組という選択をする人も一定数いるようです。 

普通養子縁組の要件

法律上で親子関係を作り出すというのは、いわば契約を交わすようなことであり、普通養子縁組を成立させるのにも、いくつか条件があります。

まず述べておきたいのが、普通養子縁組の要件には、実質的要件と形式的要件の2つがあり、また実質的要件も主観的要件と客観的要件に分類されるということです。

親子関係にもいろいろな形があり、一般的に認められるような親子関係を作り出そうとする実質的な意思も、養子縁組届を提出して親子関係を作り出そうとする形式的な意思も同様に重要なのです。

それではまず、実質的要件の主観的要件からご説明していきます。

養子縁組を成立させるには、本当の親子関係と同様の関係性を構築しようとする、養親と養子の意思の合致が必要となります。

これは規約で明確に定義されているわけではありませんが、養親と養子両方が養子縁組を望んでいるという意思が備わっているのかどうかを確認することが求められます。(縁組意思) 

たとえば、親子関係を作り出すといっても、成年養子の場合にはもはや養子の親権や監護、教育といった問題は生じにくく、仮に親子としての密接な関係が求められるとしても、子が成年に達していれば、実親子関係であっても生活において幼少期ほど親に依存することはないでしょう。

そうすると成年養子の場合は、扶養や相続といった目的で縁組がなされることとなり、縁組意思の根拠として認められやすいとされています。

ただ一方で、養子が未成年者の場合は、親子関係を作り出すことによって、親権の問題や監護、教育等の問題が発生します。

つまり、未成年者保護の必要性と親子の権利義務関係を実行していく意思が養親に備わっているのか、しっかりと確認することがポイントと言えます。

つまり、養子縁組は養子となるものが成人であるか否かによって、縁組意思にも少し違いが生じるため注意が必要です。 

つづいて、実質的要件の客観的要件には以下のようなものがあります。

・養親がすでに成年であること

・養子が養親の尊属(父母や祖父母)ではないこと

・(配偶者のあるものが縁組をする場合、)養親は夫婦双方がなること

・養子が未成年の場合は家庭裁判所の許可をとること 

最後に形式的要件ですが、縁組届の提出がこれにあたります。

養子が20歳以上の場合、養親および養子が届出を作成し、提出するだけで縁組が成立します。

一方で養子が未成年の場合、家庭裁判所への許可がなければ養子縁組を成立させることができません。

ただし、配偶者の直系卑属(子や孫)を養子とする場合には、家庭裁判所から許可を取る必要がありません。

さらに、養子となる人が15歳以下の場合は、法定代理人が縁組の承諾を得なければなりません。

これは判断力を補填し、子の利益や福祉に配慮した縁組が期待されているためです。この制度を代諾養子縁組といいます。

特別養子縁組

一方で、特別養子縁組という仕組みもあります。

1987年に「子の福祉のための養子縁組」制度として創設され、養子縁組の成立によって実親による監護が著しく不適当もしくは困難である場合に結ばれる養子関係であることが大きな特徴です。

実親による十分な教育が期待できない子供たちに対し、新しい親子関係を結ぶことで、安心で安全な家族関係を構築することが目的とされています。 

したがって、普通養子縁組の場合とは異なり、実父母が諸事情により養育することのできない幼児が、子供に恵まれない夫婦に実の子として迎えられるなどの場面で活用されます。

また、特別養子縁組は、家庭裁判所の承認が必要で、子の利益のために特別養子縁組が必要であることを示さなければなりません。 

特別養子縁組の要件

特別養子縁組は、子の福祉を図ること、つまり保護者のいない子や実親により養育が困難である子に温かい家庭を与えるとともに、その子の養育に法的安定性を与えることにより、子の健全な育成を図ることが目的として提示されています。

なお、特別養子縁組の要件は以下のような項目で構成されています。 

・実親の同意をしっかりと得ていること

・養親の年齢が25歳以上であること、かつ配偶者がいること

・養子の年齢が6歳未満であること

・養親が養子となる子供を6ヶ月間監護すること

普通養子縁組は実親との関係が剥奪されることはないのですが、特別養子縁組は実親との関係性を断絶することが前提としてあるため、普通養子縁組のように、法的効力の意味合いを重視した関係構築というよりも、より親子関係というものにフォーカスを当てた契約と考えられています。

したがって、要件も普通養子縁組に比べてより厳格なものになっていることが特徴です。 

養子の相続権

養子のしくみについて触れてきましたが、ここからは今回のメインテーマである養子の相続権についてご説明していきます。

まず、養子縁組をすることで養子は養親の摘出子としての身分を有することとなるため、相続する権利を持ち、養親を扶養する義務を負うことになります。

たとえば、Aさんという人物がBさんという人物に財産を譲渡したい場合になどに、Aさんが養親となり、Bさんが養子となる養子縁組を結ぶことでBさんはAさんの遺産を相続することが可能です。

ただし、養子縁組の関係性は一方的に解消することができないことも頭に入れておくと良いでしょう。

ちなみに、財産を譲渡する場合には養子縁組以外にも、贈与や遺言、死因贈与などの手法も手続きとして有効に活用することができます。 

連れ子の場合の相続権の注意点

再婚などで連れ子を養子として迎え入れる人もいるかもしれませんが、連れ子のまま特に養子縁組などの契約をしなければ、その連れ子は法定相続人としての権利を有することができないため注意しましょう。

逆に連れ子であっても、養子縁組を行うことで、基本的には実子と同じ割合で遺産を相続できるようになります。 

具体的に述べると、配偶者が遺産全体の半分を相続し、残りの半分を子供で配分することになります。

再びにはなりますが、養子であっても実子であっても法律上の扱いは変わりません。

これは民法が親子関係というものを生物学的つながりでなく、法律上の親子関係を規定しているためです。

したがって、養子であるからといって相続割合が減ってしまうこともありません。

なお、たとえ再婚相手と離婚したとしても養子との関係は残ることも頭にいれておきましょう。 

普通養子縁組と特別養子縁組の相続の違い

普通養子縁組と特別養子縁組では、相続において違いがあります。

理由としては、普通養子縁組と特別養子縁組では、契約を結ぶ目的や背景がそれぞれ異なるためです。

それでは具体的にどういう違いがあるのかをご説明していきます。

普通養子縁組の相続

まず、普通養子縁組の相続についてですが、結論から言うと養子は実親、養親どちらの相続権も有することが認められています。

普通養子縁組の場合、養子は原則として養親の戸籍に入りますが、法的効果として、養子は養親と実親双方の相続権を得ることができます。

一般的に子が得られる親の相続権といえば、父母2人の死後に発生すると考えられますが、養子縁組を契約した場合には例外となります。 

なお、基本的に養子と実子の法律上の待遇の違いはないため、相続する場合には、被相続人の配偶者が遺産の2分の1を相続し、仮に養子1人、実子1人という状況であれば、それぞれが残り半分の遺産を半分ずつ分け合うというのが基本的な考え方です。

つまり、全体の4分の1ずつを養子、実子ともに相続することになるのです。 

特別養子縁組の相続

特別養子縁組の考え方は、実親との親子関係の断絶が根本にあります。

したがって、特別養子縁組が無事結ばれたとなると、養子と養親及びその血族との間には親族関係が生じますが、一方で養子と実親及びその血族との親族関係は終了することが前提としてあります。

これは、子に実子に代わる養親を与えることが目的であるため、実親との関係性を完全に断絶し、養親のみを法律上の親とする必要があるためです。

すなわち、実親との関係性を断ち切るということは、双方は法律上では他人という立場になるということを意味し、特別養子縁組の相続では養子は実親の相続権を持たないことになるのです。

したがって、養親に対してのみ相続権を持つことになり、この部分が普通養子縁組の相続と異なる点です。

養子と実子での受け取れる相続分の違い

前述しましたが、養子と実子で受け取ることのできる相続分に違いはありません。

ここでは具体的な相続割合や遺留分の割合について改めておさらいしていきます。 

法定相続割合

被相続人が遺言書などで相続分の割合を細かく指定していない場合には、法律があらかじめ用意している相続分を受け取ることになります。

これを法定相続分と言い、相続人の公平な取り扱いが重要視されています。

また、法定相続分の割合も規定されているため、基本的にはその割合にしたがって相続分が決定します。 

では、どのように相続割合が決まっているかと言うと、相続順位と呼ばれるものにしたがって定められています。

相続順位は、その名の通り、優先して相続できる順番で、具体的には第一順位に子、第二順位に直系尊属(父母、祖父母)、そして第三順位に兄弟姉妹と決まっています。

第一順位の子は実子だけではなく、養子も同様の割合で相続するのがベーシックです。

なお、配偶者はどのような場合であったとしても、基本的に相続人となることが決められているため、この相続順位には組み込まれていません。

たとえば、配偶者と子(養子)が相続人として相続する場合には、法定相続分は2分の1ずつとなります。

つまり、財産内の半分を配偶者が相続し、もう半分を子の人数によって分配することになります。

ちなみに、養子であっても実子であってもこの2分の1という割合に差はないのですが、非嫡出子の場合には、摘出子の相続分の2分の1という割合になっています。

遺留分

通常、親の死亡によって家族で暮らしていた家や預貯金、保険などは配偶者と子が継承することになります。

とはいうものの、子という理由だけで親の全てを引き継げるかと言われるとそうではなく、親が子や配偶者以外の人物を指定して、財産を分け与えることもできるのです。

たしかに被相続人の意思を尊重して遺産を好きに分配できるというのは合点がいきますが、残された家族の生活が保障されなくなる危険性もあります。

したがって、遺族の最低限度の生活保障のために一定割合の相続財産が、一定の相続人のために処分されることなく残されることになっています。

これを遺留分といいます。 

なお、遺留分権利者としては配偶者と、養子を含む子、父母などの直系尊属が該当します。

したがって、仮に養親が養子である人物に遺産を渡さないと遺言書で明記していたとしても、養子は遺留分を取得する権利があるのです。

また、遺留分の割合に関してですが、相続財産の2分の1と指定されています。

ただし、相続人が直系尊属のみの場合においては全体の3分の1となっています。

たとえば、財産が1,000万円あった時、相続人として配偶者と養子、実子が該当する場合には、配偶者には1,000万円の2分の1である500万円が、そして養子と実子にはそれぞれ残りの500万円を2分の1ずつに分けた250万円を相続することになります。 

養子が養親よりも先に死亡した場合の代襲相続

相続人は、被相続人が死亡した際に存在していなければ、相続ができなくなります。

当たり前ではありますが、養親の相続が起これば養子が相続することになるのが通常の流れです。

しかし、養親よりも養子が先に死亡してしまった場合に、養子に子がいればその相続権は養子の子へと移るというしくみがあります。

これを代襲相続と呼びます。 

つまり、被相続人である養親が死亡した時に、相続権を有するはずの養子がすでに他界していたとしても、養子の子が養子に代わって相続することができるのです。

ただし、養子の子というのは、養子と養親が養子縁組を交わした後に授かった子を指し、仮に養子縁組を結ぶ前にできた子供であれば代襲相続をすることができません。

養子縁組の相続税と節税効果

相続人の数を増やすことで相続税の負担を少なくできるため、特に何億円、何十億円という資産を持っている資産家の間では、主に孫を養子にし、相続税の減少を目的として孫を養子にするケースも決して少なくはありません。

ここからは、養子縁組の相続税とその節税効果についてご説明していきます。

相続税の基礎控除額が増える

相続税が課税される財産の価格から控除することのできる金額があります。

これを基礎控除額と呼びます。基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の人数という計算式によって算出されます。

したがって、相続人が1人増えると600万円分課税される財産を減らすことができるのです。

なお、実子がいるケースにおいては、法定相続人に含めてもよい養子の数は1人まで、実子がいないケースにおいても、2人までにはなりますが、養子縁組を結ぶことで600万円もしくは1,200万円分の課税財産を減らすことができるのです。

死亡退職金の非課税枠が増える

被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金や功労金やその他それに準ずる給与である退職手当等を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは相続財産とみなされ、相続税の課税対象となります。

この退職手当金等の受取人が相続人である場合には、すべての相続人が受け取った保険金の合計額から500万円×法定相続人の人数という計算式で算出した非課税限度額を差し引いた残額が相続税の課税対象となります。

したがって、相続人が仮に1人増えたとしたら500万円分、また2人増えたとしたら、1,000万円分課税される退職手当金の額が減少することになります。 

生命保険の非課税枠が増える

被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金で、その保険料の全部もしくは一部を被相続人が負担していた場合は、相続税の課税対象となります。

また、この死亡保険金の受取人が相続人である場合には、すべての相続人が受け取った保険金の合計から500万円×法定相続人の人数で計算される非課税限度額を差し引いた残額が相続税の課税対象となります。

したがって、相続人が1人増えると500万円非課税限度額が増えるということになります。

なお、法定相続人に含めてもよい養子の人数は、実子がいる場合には1人まで、実子がいない場合には2人までと定められています。

つまり、養子縁組によって、生命保険の非課税限度額が500万円もしくは1,000万円増やすことができ、課税される保険金を減らすことができるのです。

養子縁組の相続税とデメリット・注意点

ここからは、養子縁組の相続税とデメリット、注意点をまとめていきます。養子縁組における相続税に影響するポイントを押さえておきましょう。 

孫を養子にすると孫の支払う相続税が20%高くなる

相続や遺贈、相続時清算課税(生前贈与であれば2,500万円まで非課税となる税制度)にかかわる贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族および配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。 

つまり、孫や兄弟姉妹を養子とした場合には相続税は1.2倍となり、20%高くなるため注意が必要です。

たとえば、仮に養子が納めなければならない税額が500万円だった場合、その養子が被相続人の孫の立場であるとするならば、相続税はその20%増加させた600万円となるのです。

養子を法定相続人にするには数に制限がある

無制限に養子にしてしまうと、意図的に相続税を減少することが可能になるため、税法上では、被相続人に実子がいる場合は相続税の計算に入れることができる養子の人数は1人までに制限されています。

また、被相続人に実子がいない場合でも、相続税の計算に入れることのできる養子は2人までと決められています。 

ただし、この人数制限内の養子であったとしても、相続税の負担についてはその養子を相続人に勘定せず、相続人の計算を行うことが可能とされています。このような節税効果を期待した養子縁組は、親に相続が発生した場合の相続税の負担を心配した子が、親を説得する形で行われることが多いようです。

必ずしも節税につながるとはいえない

一般的な考え方としては、法定相続人が増えるほど相続税の非課税額がその分増えるため、節税対策として考えられていることも否めません。

ただし、養子縁組の相続は、必ずしも節税に繋がるとはいえないのです。 

たとえば、前述にもある通り、仮に孫や兄弟姉妹などが養子として迎えられた場合、支払わなくはならない相続税は1.2倍に増加してしまいます。

他にも、仮に節税を目的とした相続であると税務署に判断されてしまった場合には、そもそも養子縁組を結ぶことすら許されないのです。

したがって、必ずしも養子縁組が節税に繋がるわけではありません。 

養子縁組を使った相続税対策は税務署に否認されることがある

養子縁組を使った相続税対策は税務署に否認されることがあります。

理由としては、相続税対策が目的となった養子縁組では、前述の養子縁組における要件でもある縁組の意思がないとみなされる可能性があるからです。

縁組意思があることを立証するためには、以下のようなことがポイントとなります。

・養子縁組を行なった経緯に関して、養親が文書に書き残しておくこと。その中で養親として監護教育や扶養、自分の財産を相続させる旨をきちんと明記しておくこと。

・養子縁組を行なったことを周囲の親戚に周知しておくこと。

なお、養子縁組をして節税対策をしようという程度の財産がある資産家の場合は、遺言書を作成しておき、その中で養子に何をどのくらい相続させるのかを明記しておくことも1つ対処法として挙げられます。

養子への相続の注意点

ここまで養子縁組に関することを紹介してきましたが、もちろん注意点もあります。

養子縁組の増加によって、相続の遺産分割が”争族”となってしまうリスクもあります。

ここでは、養子縁組を行なった上での相続の注意すべきことをご説明していきます。 

実子と揉める可能性

民法上では、すべての相続人は法律によって定められます。

この法定相続人と呼ばれる相続人は、被相続人の死亡により、民法によって定められる順位で相続人となります。

改めてにはなりますが、養子縁組は本来、親子関係を構築する制度です。

したがって、養親の死亡による相続発生により、子である養子も実施と同じ相続分を有することになります。

このような状況から、相続人の順位もしくは相続分の割合を変更するためになされた養子縁組によって、実子と養子との間で紛争が起きるケースは珍しくありません。

たとえば、相続税の節税のために養子縁組を行う場合であっても、ただちに縁組意思がないとはいえないため、養子縁組は有効とみなされます。

また、他の目的が併存している場合においても、養子縁組が有効であれば、実子と養子とで自らの権利を主張し合うことで遺産分割協議がより紛争化し、相続争いに発展する可能性もあります。

実際に揉めるケース例についてご紹介していきます。 

仮に、夫の母と暮らす妻があり、その後夫に先立たれたものの、婚姻関係を解消せず、そのまま義母と同居し、長年に渡って義母の介護を献身的に行なっていたとします。

そして、義母と夫の妻が養子縁組を結ぶことで親子関係を成立させていたとします。

その後、義母の死後の相続において、義母の実子(夫の兄弟姉妹)と妻との間で相続争いが起こる可能性があります。

もう少し具体的には、実子は実子だという理由から、多くの遺産を取得することを主張し、一方で夫の妻は長年義母の介護に献身的に努めてきたことから、特別な寄与を求める主張をすることも考えられます。

したがって、誰がどの遺産をどれほど相続するかという遺産相続協議が難航するのです。

なお、このケースの予防策としては、被相続人である義母が生前にきちんと遺書を残しておくことが挙げられます。

ただしこれは夫の妻への寄与分と実子の遺留分(基本的に侵害することのできない相続分の割合)を考慮して設定しなければなりません。

さらに、あらかじめ実子に養子縁組をしたことをきちんと共有しておくことも必要不可欠です。

相続発生後に初めて養子の存在を知ったところで、実子がその状況を素直に飲み込めるとは考えにくいでしょう。

したがって、実子と養子を交えての話し合いをあらかじめおこなっておくことが重要です。 

節税が必ず認められるとは限らない

前述しましたが、養子縁組を結んだ後に生じる相続手続きでは、節税が絶対約束されているとは断言できません。

改めてですが、あまりにも節税目的の動機が強い養子縁組はそもそも無効と判断されてしまう可能性があるためです。 

たとえば、実父母の代諾によって養子となったものの、数年後に関係解消の申し出をしたといった事例があります。

結果的には、この養子縁組は相続税の減税をはかるために便宜上なされたものであり、養親と養子の間には養親子の意思が認められないと判断され、養子縁組を無効とされました。

したがって、節税が必ずしも認められるとは限らないケースもあるので、十分に注意が必要なのです。

養子縁組の解消は簡単にできない

養子縁組を解消することを離縁と言います。離縁が成立すると養親と養子の間の法定血族関係が消滅しますが、特に特別養子縁組の場合は離縁に手間がかかることも忘れてはいけません。

まず、普通養子縁組の離縁の場合、手法としては離婚と同様、協議離縁、調停離縁、審判離縁、裁判離縁の4種類があります。

初めにそれぞれの方法についてご説明していきます。

1つ目の協議離縁とは、養親と養子、当事者双方の縁組解消の意思が合致している場合に、離縁届を提出することで行われる離縁です。

手続きとしてはもっとも簡単です。

2つ目の調停離縁は、当事者間での協議が整わない場合に、家庭裁判所に調停を申し立てて行う離縁の方法です。

協議離縁と同様、縁組解消意思が合致するのであれば離縁の理由は問われませんが、調停が成立した場合は調停成立日から10日以内離縁届を提出しなければなりません。

そして3つ目の審判離縁は、たとえば当事者間で縁組解消の意思は合致しているものの、離縁に伴う財産の清算部分争いがあるなどといった理由で調停が成立しない場合、家庭裁判所が相当と認める際に、必要な調停に代わる審判をすることができるという手法です。

なお、審判離縁に関しても10日以内に離縁届を提出する必要があります。 

最後に裁判離縁です。

裁判離縁は協議によっても調停によっても当事者間の話し合いによる離縁が困難である場合に、家庭裁判所に離縁訴訟を起こして離縁を行う方法です。

この離縁訴訟を起こす前には調停をまず提起しなければなりません。

普通離縁の場合、上記のような手法を使って離縁を行うのですが、特別養子縁組の場合は、これらの手法を取ることができません。

特別養子縁組の場合、離縁の要件が極めて厳格に規定されており、以下の全ての要件を満たしていなければならないのです。 

・養親による虐待や悪意のある遺棄、もしくは他に養子へ著しく不利益を与えていること

・実父母が監護することができる状態であること

・養子の利益のために離縁が必要だと判断されること

特別養子縁組の場合、実親による監護が著しく困難である場合に、子の福祉のために家庭裁判所がその関係を断絶させることで成立させるものでした。

このような特別養子縁組の制度のあり方から、簡単に離縁を認めることができず、成立の際と同様に必ず家庭裁判所の仲介のもと、子の利益や福祉を重視した厳格な要件のもとでしか離縁は認められません。

なお、申し立ては、養子、実父母もしくは検察官に限定されており、養親は離縁を求めることができないことも特徴として挙げられます。

これで、養子縁組の解消はなかなか手間がかかってしまうことをお分りいただけたかと思います。

養子縁組の相続についてのまとめ

現在では養子縁組を検討する方も珍しくはなく、実子がいたとしても養子を迎え入れる家庭もあるほどです。

その背景に節税対策がある家庭もあるようですが、そもそも養子縁組を結ぶためには細かい要件を満たしている必要があるため、注意が必要です。

また、相続に関しては個人の関係性や家庭の事情なども密接に関係してくるため、養子と実子が揉める可能性もあります。

以上をふまえ、養子縁組を結ぶ上での要件の理解と、最適な相続の方法を考えていく必要があります。

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