【自筆証書遺言】有効にするための必須要件と書き方・注意点を全解説
「自筆証書遺言ってどんな遺言書?どのように書けばいいの?」
「死後の遺産トラブルを前もって回避しておきたい」
「財産分与を予め決めて、遺しておきたい」
「自筆証書遺言」とは財産分与や想いを伝えるために自分で作成できる遺言書を指します。
画像引用元:<遺言書の様式等についての注意事項|法務省
2020年7月から自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる「自筆証書遺言書保管制度」が開始されたこともあり、注目を浴びているものです。
参考先:<自筆証書遺言書保管制度|法務省
自筆証書遺言は、「個人で気軽に作成できる」メリットもありますが、「無効になる」「書き換えられる」などのリスクもあるため慎重かつ正確に作成する必要があるでしょう。
【自筆証書遺言のメリットとデメリット】
メリット |
デメリット |
・自分で作成や書き直しができる
・費用がかからない
・遺言の内容を秘密にできる
|
・要件を満たしていないと無効になる恐れがある
・紛失や、死後に相続人が見つけられない恐れがある
・書き換え、隠されたりするリスクがある
|
特に、自筆証書遺言を有効にするためには、本記事でもご紹介している「5つの要件」をすべて満たしている必要があります。
1.全文を自筆で書く
2.署名が必要
3.作成した日付を明記する
4.印鑑を押す
5.訂正のルールを守る
遺言書の作成については民法に規定があり、正しく書かない場合は、全て無効、または一部無効になるリスクがあります。残された家族のために準備したものが、家族同士で争うきっかけになることもあるでしょう。
また、作成後は自宅保管していると、紛失や盗難、偽造や改ざんの恐れがあるため、保管方法を知ることも大切です。
そこで、本記事では、自筆証書遺言を無効にならないための正しい書き方から保管の仕方までを紹介します。
正しい書き方に沿って準備することで、自分の意思を明確に伝えることができ、遺族間のトラブルなく相続や諸々の手続きがスムーズに進むでしょう。
「手間なく『確実』な遺言書を作成したい!」という方はぜひ、最後までお読みください。
自筆証書遺言書を「有効」にするための5つの要件
自筆証書遺言書は、自分で作成でき書き直しも自由にできることから、近年注目を集めているものです。15歳以上の意思能力のある方であれば、遺言書に法的な効力が発生します。
遺言書の作成については民法で定められており、せっかく作成したにも関わらず正しく書かれていないことで全てまたは、一部無効になるリスクがあります。
そうならないためにも、有効にするための5つの要件を押さえておきましょう。
1.全文を自筆で書く
2.署名が必要
3.作成した日付を明記する
4.印鑑を押す
5.訂正のルールを守る
一つでも抜けていると無効になるおそれがあるので、作成後も再度確認されることをオススメします。
全文を自筆で書く
自筆証書遺言は、全文(財産目録をのぞく)を自筆しなければ有効と認められません。
遺言書は「撤回の自由」を保証する意味でも、単独で作成しなければなりません。
民法第96号にも定められている、「無効になるケース」を下記の通りです。
【無効になるケース】
・パソコンで作成
・妻と一緒に作成した
・一部を代筆してもらった
・録画や録音で遺言書を残した
署名が必要
自筆証書遺言は、全て自書しなければ無効になります。氏名を手書きで書くことは必須です。
署名欄には、必ず一人の遺言者名だけを書かなければなりません。共同作成はできませんので、必ず一人の遺言者名だけを書いてください。
作成した日付を明記する
遺言書には、作成日を自筆で記入することが必須です。「令和◯年◯月◯日」など、年月日を特定できる書き方をしなければなりません。
必ず自書しなければならないので、注意しましょう。ゴム印やスタンプは使用不可です。
印鑑を押す
捺印も必須事項の一つです。押印がない自筆証書遺言は無効になります。
実印でなければならないという規定はありませんが、偽造を避けるためにも、実印の利用が望ましいです。
訂正のルールを守る
自筆証書遺言は訂正ができるというメリットがありますが、手書きのため、書き間違えや書き漏れが発生しやすいです。一連のルールがあるので注意しましょう。
加除その他の変更は、遺言者がその場所を示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければならないと定められています。(民法968条3項)
具体的な訂正ルール
下記に無効にしないための「正しい」訂正の仕方をご紹介します。自分で書く場合も、受け取る場合も、十分な確認が必要です。
1.訂正
2.加筆
3.行頭や末尾の余白に追記・署名
1.訂正
・訂正箇所に二重線を引く
・二重線の近くに押印する(文字や数字が見えるように)
・横に正しい文字や数字を追記する
2.加筆
・挿入記号で場所を示し、追記する
・追記した内容の近くに押印する(文字や数字が見えるように)
3.行頭や末尾の余白に追記し、署名する
訂正や加筆が終わったら、
・「◯字削除◯字加入」「◯字加入」などと自署する
・署名する
スムーズに書くための5つの事前準備
自筆証書遺言を作成する前に整理しておきたい5つの事前準備を記しました。
1.財産を把握するために必要な書類を集める
2.「誰に」「何を」相続させるのかを明記する
3.用紙と書き方
4.財産目録の作成
5.遺言執行者を指定する
順番に確認することで、よりスムーズに書き進められるでしょう。
財産を把握するために必要な書類を集める
どんな財産があるのかをリストアップし、ある程度の評価額をあらい出します。
遺言書に記載する主な財産
プラスの財産 |
マイナスの財産 |
・自宅不動産、投資用不動産
・預貯金(普通預金、定期預金)
・貴金属
・自動車
・株式、投資信託、有価証券 他
|
・借金
・税金
|
以下は、原則として相続財産には含まれません。
遺言書に載せる財産が把握できたら、各種書類を取得して調査します。
財産 |
資料 |
不動産 |
登記簿謄本、固定資産税納税通知書 |
預貯金 |
通帳や定期証券 |
株式 |
取引残高報告書 |
投資信託 |
残高証明書 |
遺言書には細かいルールがあるので、個人で集めるのが大変な時や、不安がある人は解決策として専門家に相談するのも一つの手段です。本記事の「遺言書の作成に困ったときの相談先3つ」も合わせてご参考ください。
「誰に」「何を」相続させるのかを明記する
参考:<法定相続人の順位
「遺言によって財産を受け取る人」を決めていきます。自分の財産を引き継いでいく人になるため、じっくりと時間をかけましょう。
基本的には、配偶者・子・孫・親・兄弟などの法定相続人を指しますが、推定相続人以外の第三者や団体を受遺者に指名することも可能です。
また、特定の法定相続人だけに財産を多く受け継がせることもできますが、民法では、法定相続人(相続を受ける権利のある人)が定められており、相続を受ける優先順位も決まっています。
全てのケースで法定相続人になる:被相続人の配偶者
法定相続人の第1順位:被相続人の子どもや孫(直系卑属)
法定相続人の第2順位:被相続人の親や祖父母(直系卑属)
法定相続人の第3順位:被相続人の兄弟姉妹
上記順位は遺言書があっても覆すことのできない権利であるため、遺言書で財産の配分を明確に定めても法定相続人が権利を主張すれば争いに発展します。
離婚した場合などは順位が変動することも考えられるので、「<遺産相続は配偶者が最優先!順位を決める4つのポイントと割合を解説」を事前に読んで参考にしてください。
法定相続人以外を受遺者に指定する場合をはじめ特定の法定相続人に多く財産を受け継がせる場合は、専門家に相談して対応策を考えてもらいましょう。
遺産相続をしっかり行ったつもりでもトラブルは絶えません。それらの原因を知ると未然に防ぐことが可能です。「<遺産争いの原因は7つ!有効な対処法5つと未然に防ぐ方法を徹底解説」の記事を読んで、先に対策を考えてみるのも一つの方法です。
用紙と書き方
紙とペンを用意する際に、長期保管することを考えて準備することが必要です。紙はサイズの指定がありますので、以下を参考にしてください。
1.用紙
・サイズ:A4サイズ
・紙質:感熱紙やペンが滲みやすいものを使用しない。
・模様:記載した文字が読みづらくなるような模様や彩色がないもの。一般的な罫線は問題ない。
<法務省のホームページでは、ダウンロードして印刷できるA4サイズの<遺言書の用紙例が掲載されていますので、参考にしてみましょう。
2.筆記具
・ボールペンや万年筆などの消えにくい筆記具を使用する。
・消えるインクは使用しないこと。
3.書き方
画像引用元:<遺言書の様式等についての注意事項|法務省
・片面のみに記載する。
・余白:最低限、上部5mm、下部10mm、左20mm、右5mmの余白を必ず確保する。
余白が確保されていない場合や、余白に1文字でも何らかの文字等がはみ出している場合は、書き直しが必要である。
・各ページにページ番号を記載する。総ページ数もわかるように記載する。
例)1/2など
ベージ番号も必ず余白内に書くこと。
・複数ページがある場合でも、ホチキス等で綴じないこと。
遺言書作成キットも、書店やAmazonで販売されています。
<遺言書作成キット ¥1,837 (Amazon)
上記キットは、専門的な知識がなくても簡単に自筆証書遺言がつくれます。
作成は一番大変な作業ですので、準備しておくことで何度も書き直すことが減ります。先に、パソコンで下書きを作成し、それを見ながら実際に書いていくことをおすすめします。
ミスなく作成するためにも遺言書を作成する上で注意点や、ケース別の文例があるとわかりやすいですよね。「<【文例付き】相続プロが教える!有効な遺言書の書き方完全マニュアル」で紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。
財産目録の作成
画像引用先:<財産目録記載例|裁判所
財産目録はパソコンで作成可能です。ただし、記載のあるすべてのページに署名と押印が必要となります。
財産目録は、相続を円滑かつ正確に行うためのとても大切な書類の一つで、どのような遺産があるのかを明らかにするための資産、負債の内容と合計額を示す一覧表です。
預貯金通帳の写しや不動産全部事項証明書などの資料添付でも代用できます。これらすべてのページに署名と押印が必要です。
財産目録の具体的な作成方法については、<「相続をよりスムーズに!『財産目録』の目的と知るべき3つのメリット」「『財産目録』の書き方のポイントは5つだけ!簡単な作成のコツを解説」の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
遺言執行者を指定する
「遺言執行者」とは、故人が遺言を残した場合に、遺言の内容を実行する人のことです。
遺言執行者には、遺産の管理などの遺言を実現するために必要な一切の行為をする権利と義務があります。つまり、相続などに関わる煩雑で面倒なすべてを遺言執行者に任せられるということです。
遺言書で遺言執行者を指定しておくと、遺言内容をスムーズに実現できます。信頼できる相続人や弁護士などの専門家を指定しましょう。
遺言執行者に選任された場合、またその役割など知っておくことで、誰に指定するべきか具体的に考えられます。「<遺言執行者の役割と流れ!事前に知っておくべきメリット&デメリット」に知っておくべきことが網羅されていますので、事前に読んで準備しましょう。
遺言で決められる10の重要事項
遺言には、法律で必ず記載しなければならないと定められている項目を記すこと(法定事項主義)が採用されており、法律に定められた事項のみを指定することができます。
中でも重要なものは以下の10項目です。
1.相続分の指定
2.遺産分割方法の指定
3.相続人以外の受遺者への遺贈
4.寄付
5.一定期間の遺産分割の禁止
6.特別受益の持ち戻し計算免除
7.遺言執行者の指定
8.子どもの認知
9.相続人の廃除
10.生命保険金の受取人変更
それ以外については、遺言者の「希望」として扱われます。
相続分の指定
原則として被相続人の遺産は、民法902条で定められた法定相続分に則って法定相続人へと分配されます。ただし、これが優先されるのは、特に被相続人による遺言等が無い場合です。
遺言書が遺されていれば、民法の分配割合よりもそちらが優先されます。理由は、遺言書の最大の目的は「被相続人の意思を実現すること」にあるためだからです。
被相続人には、どのように遺産を残したいのかという思いがあると思いますが、民法を無視してまで法定相続分を適用することはできないようになっています。
遺産分割方法の指定
遺産分割方法の指定とは、遺言において、遺産の分割方法を指定することです(民法908条)。
指定の方法でもっとも一般的なのは、「甲には不動産を、 乙には預貯金及び現金を取得させる」 というように、 特定の財産を特定の相続人に処分させるのかを指定するものです。
また、「不動産を売却して、その売却金は甲乙各2分の1を取得する」などの、清算を必要とする遺言も、遺産分割方法の指定と考えられます。
相続人以外の受遺者への遺贈
法定相続人以外の方に財産を残されたい場合は、遺言書を作成して財産を贈与することにより相続してもらうことが可能です。これを「遺贈」と言います。
遺贈により財産を譲る相手に制限はなく、最後まで面倒を見てくれた友人など血縁関係のない第三者でも構いません。
遺贈には、相続と贈与とは違い、注意点もあります。「<遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!」の記事で専門家による詳しい解説がありますので、ご一読ください。
寄付
遺産を特定の団体や企業、相続人以外に寄付することは可能です。寄付をすることで、自身の思いを叶えたり、社会貢献もできると言うメリットがあります。
<日本ユニセフ協会や、<あしなが育英会への「遺贈」という方法により、生涯で築かれた財産を子どもたちの未来のために役立てることができます。
遺贈された財産は、相続税の課税対象にならないというメリットもありますので、参考にされてください。
一定期間の遺産分割の禁止
被相続人(遺言者)は、遺言によって遺産分割を禁止することができます(民法第908条)。遺言により遺産分割を禁止する場合、禁止期間は最大で相続開始のときから5年です。
遺産分割の禁止は必ず「遺言で」行われなければならず、生前に遺産分割の禁止を指定することはできません。
また、遺言による遺産分割禁止の期間が5年を超えている場合には、5年間の分割を禁止するものとして効力が認められます。
特別受益の持ち戻し計算免除
特別受益の持ち戻しの免除とは、被相続人の意思表示により、本来、相続財産として加えるべき特別受益を組み入れずに相続財産を計算することです(民法903条3項)。
持ち戻しの免除の意思表示は、通常、贈与契約書や遺言などに記載します。
意思表示の方法については、特に法律上のルールは存在しないため、書面に限らず口頭による持ち戻し免除も認められます。ただし、きちんと証拠が残る形でなければ遺産分割審判などに発展した場合、認められないケースがあるので、要注意です。
遺言書で明確に記載されている場合、持ち戻し免除が認められる可能性は高いです。
遺言執行者の指定
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことを言います。いつでも誰でも選任できるわけではなく、以下の3つの決まった方法で選任されなければなりません。
1.遺言書で指定する。
2.第三者に遺言執行者を指定してもらうような遺言書を作成する
3.遺言者死亡後に家庭裁判所にて遺言執行者を選任してもらう。
実際には、相続財産目録を作成したり、各金融機関での預金解約手続き、法務局での不動産名義変更手続きなど、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を持ちます。
子どもの認知
遺言認知は認知の方法の一つで、遺言によって子どもを認知します。何らかの事情で生前の認知ができない場合に遺言による認知が行われます。
認知する子どもが成人している場合は、本人の承諾が必要で、胎児を認知する場合は母親の承諾が必要です。
相続人の廃除
相続人の排除とは、相続権を持っている人を相続から外すことができる制度で、民法892条で定められています。廃除される相続人には、以下のような相応の理由が必要です。
・生前に被相続人を虐待していた
・懲役刑(5年以上)を受けたことがある
・やむを得ない理由を除き、被相続人に借金を背負わせた経験がある
・愛人がいた
・被相続人の遺産を無断で処分したことがある
相続人の排除の注意点や、詳しい内容は「<【文例付き】相続プロが教える!有効な遺言書の書き方完全マニュアル」の記事に記載されていますので、ご一読ください。
生命保険金の受取人変更
生命保険の受取人は、保険契約者と保険会社の合意によって変更できるほか、遺言によって変更することも認められています(保険法44条1項)。
遺言によって生命保険の受取人を変更する場合、新たな受取人は、原則として保険約款などで定められる者の範囲内で決定する必要がありますので、あらかじめ保険会社に問い合わせて確認してください。
自筆証書遺言の6つの注意点
自書証書遺言は自分で作成するため、書き方や表現の仕方で無効となるケースがあります。トラブルを防ぐために知っておいた方が良い6つの注意点は以下の通りです。
1.共同遺言は無効
2.ビデオレターや音声は無効
3.あいまいな表現をしない
4.裁判所で検認を受ける
5.相続開始時までに財産がなくなったら部分的に無効になる
6.紛失や書き換えを防ぐため「遺言書保管制度」を利用する
紹介の順番は順不同です。せっかく作成したのに無効になったと言うことにならないように、すべてをしっかりと読んでおきましょう。
1.共同遺言は無効
遺言書は一人一人が自分の分を作成しなければなりません。夫婦が共同して、「私たち夫婦は」などとする遺言書を遺しても無効になります。
「民法975条 共同遺言の禁止」に定められている通り、共同での遺言は認められていないので注意しましょう。
2.ビデオレターや音声は無効
遺言書は自書・書面での作成が必須で、ビデオレターや音声の録音では遺言は遺せません。
近年、動画や音声録音が一般化されたこと、映画やテレビでこのようなシーンを見たと言う理由で、映像で遺したいと考えるかもいますが、残念ながら効力は無いのです。
自筆証書遺言と一緒に遺すのであれば、有益なものとなるので、必ず書面で作成を前提に撮影を検討するようにしましょう。
3.あいまいな表現をしない
表現があいまいな場合、その解釈をめぐって相続人の間でトラブルになる恐れがあります。
財産を受け継がせたい相手には「取得させる」「相続させる」「遺贈する」などのハッキリとわかる文言を使いましょう。
「任せる」や「託す」「渡す」「譲る」などの表現は、「管理を頼みたい」と解釈される可能性もあります。
4.裁判所で検認を受ける
自書証書遺言を残した場合、相続人たちは原則として家庭裁判所で「検認」が必須です。
検認とは、裁判所で遺言書の内容や状態を確認してもらう手続きを指します。検認を終えなければ遺言書によって不動産の名義の書き換えや預貯金の払い戻しなどを受けられません。
民法1004条の規定により、検認せずに遺言書を開封した場合は、5万円以下の過料が課せられるので注意しましょう。検認前に開封したからといって、遺言書が無効になることはありません。
ただし、法務局に自書証書遺言を預けた場合には検疫が不要となります。
検認で必ず押さえておくべきポイントを理解しておきたい方は「遺言書を無効にしない!検認の流れとスムーズな相続のコツを徹底解説」をお読みください。遺言書を無効にすることなく、相続をスムーズに終えることができます。
5.相続開始時までに財産がなくなったら部分的に無効になる
遺言書を作成しても、相続開始までに財産がなくなった場合、失われた財産に関する遺言が部分的に無効になり、他の部分は有効になります。
例えば、遺言に「○○銀行の預金の中からBに2千万円を相続させる」と書いてあり、銀行の預金残高に一千万円しか無かった場合は、一千万円が限度額となるのです。
通常、預金が減ったのは、遺言を書いた人が生前に引き出したからです。よって、遺言書を書いた人の生前の行動で、「遺言の一部が取り消された」ことになります。
6.紛失や書き換えを防ぐため「遺言書保管制度」を利用する
遺言書保管制度とは、遺言書を作成した本人が、法務局に遺言書を預けることができる制度のことで、令和2年7月から運用が開始されました。
今まで自宅に保管されることが多かった自筆証書遺言書の、紛失や隠匿を防止するために、公共機関である法務局が保管してくれます。
【遺言書保管制度を利用するメリット・デメリット】
メリット |
デメリット |
・遺言書の紛失、改ざん、相続人に発見されないなどの問題が避けられる。
・相続人等は、遺言者の死亡後に、遺言書の内容の証明書の交付や遺言書の閲覧等を請求することができる。
・本制度で保管されている遺言書は、家庭裁判所の検認が不要となる。
・相続等の手続きの円滑化にもつながる。
|
・保管できる法務局が決まっている。
・本人が法務局に行く必要がある。
・写真付きの本人確認証明書が必要。
・遺言書の様式等に定めがある。
・内容の確認はしてくれない。
・氏名や住所などの変更届が面倒。
・相続人などに原本は変換されない。
|
上記を踏まえて、遺言書保管制度を利用するかどうかを検討してみましょう。
遺言書の作成困ったときの相談先3つ
遺言書の作成は自分の「最後のメッセージ」でもあるので、慎重に進めていきたいものですよね。無効にならないよう、間違いなく作成するための主な相談先は以下の3つです。
|
費用目安 |
特徴 |
1.弁護士 |
5,000円~(30分)
※初回相談のみ無料の事務所もある
|
法的に有効で、内容的に適切な遺言書をスムーズに作成することができる。 |
2.行政書士 |
0円
※初回相談のみ
|
遺言書の文案・内容についての細かいアドバイスがもらえる。作成費用は弁護士より安い。 |
3.無料相談を利用して専門家を紹介してもらう |
0円
※初回相談のみ
|
どの専門家にお願いすればいいのかなどのアドバイスがもらえる。 |
1.弁護士
2.行政書士
3.無料相談を利用して専門家を紹介してもらう
「緊急度の高い順」にご紹介しています。相談を上手に活用して、自筆証書遺言の作成を正確に進めていきましょう。
1.弁護士
相続の内容が複雑な場合は、弁護士の力を借りた方がスムーズに解決できるでしょう。プラスの財産もマイナスの財産も、亡くなった人の名義であれば全て相続財産となるため、遺産の種類や金額が多ければ多いほど、相続終了までの道のりは長くなります。
弁護士に相談したからといって必ず依頼しなければならないということはありません。特に相続について不安や悩みがあれば、早めに相談して適切なアドバイスをもらいましょう。
相続に強い弁護士の選び方や、選び方のポイントなどは、「<知らないと損をする!相続弁護士を選ぶ9つの要点と費用を抑える準備」に詳しく解説しています。参考にしてください。
2.行政書士
現在は司法書士や行政書士も積極的に遺言書作成業務を行なっています。弁護士に比べ、費用が安く、気軽に遺言書作成を行いたい方は弁護士よりも相談しやすいというメリットがあります。
国家資格者だからといって、遺言書作成の実務に精通しているとは限りません。資格より、依頼する先生の「専門性」をみるようにしましょう。
専門性を確認する方法の一つとして、その事務所のホームページをみて事前に情報収集してみてください。遺言作成業務をよく受ける事務所の場合は、遺言に関する記事や解決事例が豊富に掲載されているはずです。
直接電話で問い合わせして、確認してみるのも方法の一つです。事前に調べることはとても大切ですので、手間だと思わずに自分で確認してみましょう。
3.無料相談を利用して専門家を紹介してもらう
弁護士や行政書士の伝手がない人や、不安がある人は「無料相談」を利用してみるのもオススメです。
どの専門家にお願いすればいいのかなどの疑問も『<やさしい相続』の24時間365日無料相談で承っています。電話でもメールでも行えますのでお気軽にご連絡下さい。しつこい勧誘等も行いません。
大切なことだからこそ、丁寧に・確実に進めていきましょう。
まとめ
自筆証書遺言は、「個人で気軽に作成できる」メリットもありますが、「無効になる」「書き換えられる」などのリスクもあるため慎重かつ正確に作成する必要があるでしょう。
【自筆証書遺言のメリットとデメリット】
メリット |
デメリット |
・自分で作成や書き直しができる
・費用がかからない
・遺言の内容を秘密にできる
|
・要件を満たしていないと無効になる恐れがある
・紛失や、死後に相続人が見つけられない恐れがある
・書き換え、隠されたりするリスクがある
|
特に、自筆証書遺言を有効にするためには、本記事でもご紹介している「5つの要件」をすべて満たしている必要があります。
1.全文を自筆で書く
2.署名が必要
3.作成した日付を明記する
4.印鑑を押す
5.訂正のルールを守る
一つでも抜けていると無効になる場合があるので、作成した後も再度確認するようにしてください。
スムーズに書くための5つのポイントは
1.財産を把握するために必要な書類を集める
2.「誰に」「何を」相続させるのかを明記する
3.用紙と書き方
4.財産目録の作成
5.遺言執行者を指定する
遺言で決められる10の重要事項
1.相続分の指定
2.遺産分割方法の指定
3.相続人以外の受遺者への遺贈
4.寄付
5.一定期間の遺産分割の禁止
6.特別受益の持ち戻し計算免除
7.遺言執行者の指定
8.子どもの認知
9.相続人の廃除
10.生命保険金の受取人変更
それ以外については、遺言者の「希望」や「忖言」として扱われます。
自筆証書遺言の6つの注意点
1.共同遺言は無効
2.ビデオレターや音声は無効
3.あいまいな表現をしない
4.裁判所で検認を受ける
5.相続開始時までに財産がなくなったら部分的に無効になる
6.紛失や書き換えを防ぐため「遺言書保管制度」を利用する
遺言書の作成困ったときの相談先3つ
1.弁護士
2.行政書士
3.無料相談を利用して専門家を紹介してもらう
遺言書の作成は自分の「最後のメッセージ」でもあるので、慎重に進めていきたいものです。この記事を読んで、確実に有効となる遺言書作成ができれば幸いです。
関連サイト
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・<知らないと損をする!相続弁護士を選ぶ9つの要点と費用を抑える準備
【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール