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遺言執行者の役割と流れ!事前に知っておくべきメリット&デメリット

余命3ヶ月と宣告された父から、『遺言執行者』を頼まれた。

だが、何をどうするのかわからない?

そもそも弁護士や専門家がやるべき?

でも費用がかかる?断ったらどうなる?

このストーリーは、誰にでも起こりうる話です。

遺言執行者とは、故人が遺言を残した場合に、遺言の内容を実行する人のことです。

未成年や破産者以外ならば、相続人でもほかの誰でも遺言執行者になれますが、遺言の中で選任されたり、家庭裁判所に選任してもらう方法もあります。

遺言執行者には、遺産の管理などの遺言を実現するために必要な一切の行為をする権利と義務があるとされます。言い換えれば、相続などに関わる煩雑で面倒なすべてを遺言執行者に任せられるということです。

このように遺言執行者がいれば、相続人を代表して手続きをスムーズに進めることができるという大きなメリットもありますが、逆に相続手続きの知識・経験がない人が行うと円滑に進まないというデメリットもあります。

今回は、そんな遺言執行者についてわかりやすく解説し、もし遺言執行者に選任されたらどうするべきか、を判断する指針になればと思います。

「遺言執行者について知るべき情報を抑えておきたい!」という方はぜひ、最後までお読みください。

 遺言執行者とは?

遺言執行者の役割

遺言執行者の役割は、相続人全員の代理人として、不動産の名義変更や預金口座の解約と相続人への分配など、遺言内容を実現するための必要な手続きをすることです。

遺言書の具体的な書き方や種類については「遺言状を完全解説!種類・書き方・扱い・効力を紹介!」「専門知識不要!自分で作れる公正証書遺言作成の流れと費用・必要書類」の記事をご参考ください。

【遺言執行者が単独で実行できる主な手続き】

•遺産を遺言状に従い分配する(遺贈)
•預貯金の解約・名義変更手続き
•不動産の相続登記
•有価証券の名義変更
•貸金庫の開扉 など

遺言執行者の選任方法

遺言執行者の選任方法は主に「遺言書で指定」「相続人からの指定」の2つです。

遺言書で指定する方法

遺言書に遺言執行者になってもらいたい人の氏名や住所を書き込み「遺言執行者として選任する」と記載することで完了です。

誰を選任していいのか迷った場合、弁護士などの専門家からアドバイスを受けることもできます。

相続人が遺言執行者を指定する方法

遺言者が遺言執行者を選任しなかった場合、相続人が家庭裁判所に申立をすれば遺言執行者を選任できます

申立ができるのは相続人のほか、遺贈を受けた人、遺言人に債権がある人、すなわち、「お金を返してくれ、とかお金を支払ってくれ」と言える人(債権者)などの利害関係人です。

申立先の裁判所は「遺言者の最終住所地の家庭裁判所」で、例えば大阪市に住所があった場合は、大阪市の家庭裁判所に申し立てなければなりません。なお、必要書類は以下の通りです。

【必要書類】

1.申立書

 画像引用:遺言執行者の選任の申立書|裁判所

※書式と記入例は下記リンクよりご確認頂けます。
遺言執行者の選任の申立書|裁判所

2. 遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本
3.遺言執行者候補者と遺言者の利害関係、相続関係がわかる資料(親族の場合,戸籍謄本(全部事項証明書))

各市区町村にて、戸籍交付の請求書を記載し発行します。市区町村によってはコンビニで発行することも可能です。

4.遺言執行者候補者の住民票

戸籍謄本と同様に、住民票もマイナンバーカード・住民基本台帳カードがあれば、コンビニ発行が可能です。

5.遺言書の写し

メリット

遺言執行者がいるメリットは、相続手続きが確実に執行され、遺言者の思い通りの相続が実現できることです。

相続手続きでは、まず準備として相続人や相続財産を調査しますが、役所や銀行、法務局等から必要書類を取り寄せなければなりません。

また、相続税申告や、2024年4月1日から義務化される相続登記には相続を知ってから3年という期限があり、守らないと罰則もあります。

しかし遺言執行者がいれば、役所や銀行、法務局等からの書類収集はもちろん、相続税の申告や登記にも対応するため、手続きはほぼ期限内に完了するでしょう。

さらに、一部の相続人が独断で財産処分するようなトラブルも防止できるので、遺産分割前の財産も確実に保全できます。

デメリット

相続登記を行う場合、不動産の面積などの情報を正確に記載するために「登記事項証明書」や地積(土地の面積)の測量結果を明らかにする法的な図面「地積測量図」など、なじみのない書類を収集し内容を確認しなければなりません。

このように、スムーズな遺言の執行には十分な知識と経験が必要です。遺言執行者に法律や相続の知識に乏しい人を選んだ場合、本人の負担になるばかりか相続手続きも進みません。遺言執行者は人選にもくれぐれも注意すべきです。

遺言執行の主な流れ

 

遺言執行者に選ばれた際にどんな流れで手続きを進めるか、また遺言執行者にしか対応ができない手続きなどをわかりやすくまとめました。

1.遺言を確認する
2.遺言執行者になったことを知らせる
3.遺言書の内容を知らせる
4.どんな遺産があるか目録を作る
5.遺言を執行する

1.遺言を確認する

まず、家庭裁判所に遺言書の検認を請求します。「遺言書の検認」とは、家庭裁判所で遺言書の内容を確認する手続きのことです。

不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどの際に遺言書の検認が必要になってくるので、先に取っておくと手続きがスムーズになります。

ただし、公証役場で公証人の立ち会いのもと作る公正証書遺言の場合は検認の必要がありません。

遺言書が自筆証書だったり内容を公開せずに公証役場で証明してもらう秘密証書遺言だった場合のみ、検認の請求が必要になるため、残された遺言書の種類についても確認が必要です。

2.遺言執行者になったことを知らせる

遺言執行者に選任され本人が承諾した場合は、遺言執行者就任通知を作成し、相続人全員に報告します。

3.遺言書の内容を知らせる

遺言執行者に就任したことを通知する際に、遺言書の写しを添付します。

どのような内容の遺言を執行するのか、相続人に伝えておくことが肝心です。

4.どんな遺産があるか目録を作る

遺言執行者は相続財産のすべてを調査し、明確にするという義務があります。

相続財産には預貯金や現金、不動産などの「プラスの財産(積極財産)」もありますが、借金や売掛金などの「マイナスの財産(消極財産)」も含まれます。相続税の計算や節税対策を検討する上でもたいへん重要な業務になるので、徹底した調査を行います。

また、遺言内容を執行していくために必要な戸籍の収集も肝心です。

相続財産の調査が終わったら、財産目録を作成して相続人全員に送付します。

財産目録は自分で作成することも可能です。遺言執行に関わらず「自分の財産はどのくらいあるのか?」を明確にしておくことで遺産争いの対策にもなります。詳しくは「相続をよりスムーズに!「財産目録」の目的と知るべき3つのメリット」の記事をご参考ください。

5.遺言を執行する

通常、財産目録が作成できたら、預貯金の解約・名義変更や不動産の相続登記など、遺言書の内容に基づいて具体的な相続手続きを行ない遺言執行者の任務は完了となりますが、ここでは遺言執行者にしか対応できない手続き「遺言で子供を認知する」「相続権をはく奪する」「遺贈登記をおこなう」をご紹介します。

ケース1:遺言で子供を認知する

遺言書で子供を認知する場合、遺言執行者は就任から10日以内に認知の届け出をしなければなりません。

届け出は「遺言者の本籍地」、「子供の本籍地」、「遺言執行者の住所地」のいずれかの市区町村役場で行い、認知届出書に遺言書など必要書類を添付して提出します。

認知する子供が成人している場合は本人の承諾書が必要です。認知する子供が胎児の場合は母親の承諾書が必要で、届け出先は母親の本籍地の市区町村役場に限られます。

子供が認知されると、その子供は相続人となります。遺言者の配偶者や子供など相続人は、認知された子供も含めて遺産分割の話し合いをしなければなりません。

認知された子供を除いて遺産分割することはできません。

ケース2:相続権をはく奪する

例えば、相続人が暴力・虐待・侮辱など、被相続人に対して著しい非行があった場合、遺言書には、特定の相続人の廃除(相続権のはく奪)を記載しておくことも可能です。

なお、一度相続権がはく奪されると基本的に相続権は戻りません。

この場合、遺言者の死後に遺言執行者が家庭裁判所に廃除請求を行います。そのため、遺言書による相続廃除をする場合には、遺言執行者の指定もしておく必要があります。

ケース3:遺贈登記をおこなう

「遺贈」とは、遺言書により、無償で財産を譲ることです。遺贈を受ける人を受遺者といい、受遺者となる方に条件や制限などはありません。

「遺贈」の場合、特に不動産を引き継ぐ際は、相続人全員と共同しておこなう必要があり、登記に大変な時間がかかり、さらに反対やトラブルなどで執行が滞るケースもあります。

しかし、遺言執行者がいる場合には、受遺者と遺言執行者だけで登記申請することができます。仮に、受遺者を遺言執行者にすれば、受遺者が遺言執行者としてひとりで登記申請できることになります。

遺贈についてより詳しく知りたい方は「遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!」の記事をご参考ください。

選任されたときに知っておくべき2つのポイント

遺言書に突然自分が遺言執行者に選任されていたら?「聞いてないよ〜!」と焦る人も少なくないかもしれません。

しかし、遺言執行者に選任されても拒否できることや辞任できることを知っていれば慌てることはないでしょう。

1.拒否することもできる

遺言書で遺言執行者に選任されても、自動的に就任するわけではありません。遺言執行者に選任された人が、就任を承諾すれば遺言執行者になります。

つまり、選任を拒否することもでき、就任を辞退すれば遺言執行者にはなりません。

遺言執行者への就任を辞退する理由は自由ですし、方法も決まっていません。ただできるだけ速やかに相続人に辞退する旨を伝えることが望まれます。口頭や電話でも可能ですが、一般的には書面で伝えます。

2.解任や変更、辞任も可能!

遺言執行者の解任と変更

遺言執行者が遺産調査などを行わず、相続手続きが円滑に進まないような場合は、職務怠慢を理由に遺言執行者を解任することができます。

遺言執行者を解任する場合は、相続人や受遺者などが家庭裁判所に遺言執行者解任の申し立てを行います。

【遺言執行者の解任が認められるケース】

●遺産の調査管理を行わない
●手続き進捗状況を報告しない
●特定の相続人の利益に加担している
●遺産を不正に使用している
●病気等で職務の継続が困難

遺言執行者が解任されたら、家裁に申立てて新たな遺言執行者を選任できます。

遺言執行者の辞任

また、遺言執行者を辞任することもできます。ただし、遺言執行者に就任してから辞任する場合は、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

就任する前であれば自由に辞退(拒否)できたのですが、就任した後は家庭裁判所の許可がなければ辞任することができません。

ただし、辞任には正当な理由が必要となります。正当な理由とは、以下のようなものです。

●病気になった
●遠方に転勤になった
●多忙な職務への就職

遺言執行者としてどうしても職務を行うのが難しくなったという必然的な理由が必要です。

引き受けるかどうか迷った時の2つ判断基準

責任重大である遺言執行者を引き受けるかどうか、迷われる方も多いと思います。

どうすべきか迷った際の2つの判断基準を紹介します。

1.法律的な知識や経験があるか?

遺言執行者には、遺言の内容を実現するという役割がありますが、法律で決められたやるべき手続きがたくさんあります。

法的な知識も必要になるので、一般の方がすべてこなすのは難しいのが現実です。十分な知識や経験がない場合には、弁護士などの専門家に任せることも有効な選択になります。

2.遺言執行をする時間的余裕があるか?

例えば、気がつけば遺言執行に1年。相続財産の調査や各種書類の手配、登記や預金の解約、名義変更など煩雑な手続きやハードな作業ばかりです。

仮に平日昼間一般企業に勤めている方がこうした手続きや作業を行う時間的余裕は極めて厳しいはずです。

この点からも専門家に委任することも賢い選択といえます。

専門家に依頼した場合の相場費用

遺言執行者を専門家に依頼した場合、その報酬は、遺言に定めがある場合にはそれに従うことになります。

遺言書に記載がない場合、「弁護士」「税理士」「司法書士」「信託銀行」などそれぞれの相場は異なります。

  相場 報酬計算
弁護士 30万円〜100万円前後   ・300万円以下の財産:30万円

・300万円以上の財産:24〜204万円+財産の価額×0.5〜2%  

税理士 50万円前後 基本料金(50万円)+財産総額×0.5~2%程度
司法書士  20~75万円前後 ・30万円~

・相続財産価額の1%

信託銀行 30~300万円前後 ・各銀行のプランによる

(基本プラン+手数料)

●弁護士 30万円〜100万円前後

日本弁護士連合会が平成16(2004)年3月まで定めていた「旧弁護士会報酬基準規程」を参考にすれば、弁護士事務所では、財産が300万円以下の場合には30万円が報酬です。

それが、300万円以上だと24〜204万円+財産の価額×0.5〜2%となります。

弁護士に依頼するメリットは、何といっても万一トラブルが起きた時に法的に対処できるという安心感です。争いが起きたら、遺言執行人である弁護士とともに解決していきます。

●税理士 50万円前後

業界での相場は基本料金を50万円程度に設定しているところが多く、プラスとして財産総額×0.5~2%程度の報酬が発生しています。

税理士なら、相続税の節税対策を考えた遺言の作成や相続税申告と併せて依頼するとメリット大です。

●司法書士 20~75万円前後

司法書士には遺言執行報酬の規定がありません。「30万円~」か「相続財産価額の1%」という事務所が多いようです。

司法書士を選ぶ最大のメリットは、不動産登記がある場合、遺言執行がとてもスムーズです。

登記の専門家であり、相続財産に不動産が多い場合には司法書士を遺言執行者に検討してみるのもいいでしょう。

●信託銀行 30~300万円前後

信託銀行では「遺言信託」などの名称で、資産を預けている人を対象に遺言執行サービスを提供しています。

遺言者の負担が軽い「基本手数料が低額なプラン」と、相続人の負担が軽くなる「支払総額が低額となるブラン」の2種類があります。

例えば、三菱UFJ信託銀行の遺言信託「遺心伝心」では、最初に100万円型プランと30万円型プランを選ぶことができます。

完了時の報酬から最初に支払った費用を差し引くことができ、遺族の負担を軽減することができるでしょう。

信託銀行の報酬が高いのは、銀行員には遺言執行などをする権限がなく弁護士・税理士などに執行を委託するためです。

身近で資産管理を行なってきてくれた銀行に任せるのは、テマなく安心感があります。

まとめ:「遺言執行者」を上手に活用して、円滑で正当な遺言の実現を!

遺言執行者の役割は、相続人全員の代理人として、故人の意思を尊重し遺言の内容を正確に実現するために、必要な手続きをすることです。

メリットとデメリットは下記の通りです。

メリット デメリット
●相続手続きの速やかで確実な執行

●平日の日中にしかできない役所や銀行、法務局等からの書類収集の代行 

●煩雑な相続税の申告や不動産登記等の手続きの代行

●一部の相続人が独断で財産処分する等のトラブル防止と財産の保全

●法律の知識や相続の経験がない人を選んだ場合、本人の負担になったり手続きが滞る 

●弁護士等専門家に依頼すると費用がかかる

遺言執行者は、下記の流れに従い遺言を実行致します。

1.遺言を確認する
2.遺言執行者になったことを知らせる
3.遺言書の内容を知らせる
4.どんな遺産があるか目録を作る
5.遺言を執行する

手続きには、必要な書類を集めるだけで手間や時間がかかったり、難しい法律や専門用語が多く関わります。言い換えれば、法的な知識や相続の経験がない一般人には、カンタン・スムーズには執行できないことも事実です。

冷静に判断して、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも賢明な方法といえます。

専門家に依頼する場合の相場は下記となります。

  相場 報酬計算
弁護士 30万円〜100万円前後  ・300万円以下の財産:30万円

・300万円以上の財産:24〜204万円+財産の価額×0.5〜2% 

税理士 50万円前後 基本料金(50万円)+財産総額×0.5~2%程度
司法書士  20~75万円前後 ・30万円~

・相続財産価額の1%

信託銀行 30~300万円前後 ・各銀行のプランによる

(基本プラン+手数料)

円滑で正当な遺言の実現のために「遺言執行者」という制度のメリットを上手に活用できるよう、この記事がお役に立てばうれしいです。

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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)

略歴
高橋圭 (たかはし けい)
青山学院大学法学部卒業。
2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員

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栗本 喬一(くりもときょういち)
1977年 東京生まれ(名古屋育ち)
略歴
母の死をきっかけに葬儀業界に興味を持ち、大学卒業後、大手葬儀社へ入社、家族葬から大規模葬儀まで、幅広くお葬式を葬儀担当者(セレモニーディレクター)として活躍。その後、葬儀会館の店長、新規開拓を歴任。お客様からの「ありがとう」という言葉をいただけることを仕事のやりがいとし、これまでに10年以上、5,000件以上の葬儀現場に立ち会う。
資格等
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