線香とは?身近だけど意外と知らない線香の種類や選び方、供える際の作法まで徹底解説!
線香には色々な種類があることをご存知でしたか?線香には種類だけでなく、宗派によって供え方が違かったり細かな作法など、意外と知らないことが多いのです。
この記事では、線香の歴史からどうして線香を供えるのか、実際の供え方などについて詳しく解説していきます。
線香とは?
仏教では仏壇に「五供(ごくう)」と呼ばれる香・花・灯明・水・飲食の5種類のお供え物をしますが、その中の「香」が線香になります。ここでは線香の意味や歴史、選び方など線香の基礎的な知識をご紹介します。
線香の意味
そもそもなぜお墓や仏壇に線香をあげるのでしょうか?先ほど紹介した通り、線香は故人へのお供え物になります。
仏教の経典の「倶舎論(くしゃろん)」では、「死んだ人間の中でも、生前良い行いをしたものは良い香りを食べる」と記載されています。
また、「食香(じきこう)」という考え方があり、四十九日までは故人がお腹を空かせないよう常に線香を焚くとされています。
四十九日以降は故人の魂はあの世へと旅立つとされているため、香りを通じて心を通わせる意味合いなどがあるとされています。
四十九日については下記記事もご参考ください。
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線香の歴史
線香の起源はとても古く、古代インドが発祥だと言われています。日本に伝わってきたのは595年、推古天皇の時代だとされており、「淡路島に沈水が漂着した」と「日本書紀」に記載されています。
また、日本書紀だけでなく聖徳太子による「聖徳太子傳暦」にも同じ内容が記されています。
ただし、お香自体はそれよりも古くから伝わっていたとされており、奈良時代に鑑真が唐から仏典とともに香木や薬などを持参し、「薫物(たきもの)」の技術を広め貴族の間では「薫物合せ」と呼ばれる遊びが広まっていきました。その後、「香道」が室町時代に成立し、現在まで愛されています。
今と同じ棒状の線香ができたのは、1500年代後半や1600年代中盤など様々な説がありますが、おおよそ江戸時代頃だと言われています。
線香の選び方
線香には良い香りがする「匂い線香」と呼ばれるものや、煙がたくさん出る「杉線香」など多くの種類があります。線香は宗派によって使い分けたりする必要はないので、基本的に自分の好みのものを使用して構いません。
線香の材料
線香の材料は「椨(タブ)」と呼ばれる植物です。椨の皮を乾燥させ粉末状にし、水を練りこみます。
椨は香りが少ないという特徴があり、これらに香り付けとして白檀や沈香、丁子などを加えます。線香の種類によっては着色料や防カビ剤の他に燃焼時間を調整する薬剤などを加え調整します。
お香の種類
お香には線香や焼香以外にも、抹香や塗香など様々な種類があります。
葬儀で使用することが多いという印象があるかもしれませんが、香水の代わりなどで使用できるため、気になる方はぜひチェックしてみてください。
線香
線香は棒状にしたお香で、香りが強い匂い線香と煙が出やすい杉線香があります。椨を原料としてそのほかに香料を混ぜ合わせ、カビないように防カビ剤なども混ぜ合わせることがあります。
焼香
焼香は香木などを細かく切り刻んだものを調合し、炭などにくべて焚くものです。焼香にはもともと沈香、白檀、丁子、鬱金、龍脳が使用されることが多いですが、最近では10種類以上の原料を調合して作ることが多く、調合した原料の数に合わせて「七種香」や「十種香」と呼ばれます。
香木
香木(こうぼく)とは、木そのものが香りを持つ木です。香木というと白檀、沈香(じんこう)、伽羅を指すことが一般的です。沈香の主な生産地は東南アジアですが、香りを持つには木に雨風などでダメージが入り菌の作用によって樹脂化しなければいけません。
それまでには数十年かかると言われているほか、様々な自然的要因が必要なため貴重なものです。
沈香の中でも最良の香りを持つものが伽羅と言い、正倉院に奉納されている「蘭麝待(らんじゃたい)」が有名です。香木はその他にも仏具などに使用されることがあります。
抹香
抹香(まっこう)はもともとは安息香(あんそくこう)や甘松香(かんしょうこう)を使用していましたが、最近では樒(しきみ)という植物を乾燥させて粉末状にしたものが多く流通しています。昔は仏像などに塗ったり撒いたりしていましたが、今では葬儀の焼香で使用されています。
練香
練香(ねりこう)とは沈香などの原料を粉末状にし、炭粉やはちみつ、梅肉などと練り合わせて丸薬状にしたものです。
塗香
塗香(ずこう)とは粉末状にした漢薬や香木を調合したもので、もともとは水などで手を清めることができなかった場合に使用されていました。現在では香水代わりに用いられるほか、お寺に入る前に体を清める方法として使用されています。
匂い袋
匂い袋は別名香り袋と言い、袋の中に常温で香りを発する香料を詰めたものです。クローゼットなどで保管することで、衣服に香りをつけて楽しんだりします。欧米ではサシェやポプリとして親しまれています。
線香の種類
線香には普段見慣れている短いスティック状以外にも、円錐型や蚊取り線香のような渦巻型などがあります。それぞれメリット・デメリットがありますので、購入の際の参考にしてみてください。
短尺線香と長尺線香
短尺線香
短尺線香とはお墓や仏壇に供える線香で、燃焼時間がそこまで長くないかつ香りも強くないことが特徴です。
長尺線香
長尺線香は寺院などで僧侶が読経をする際や座禅などを組む場合に時計がわりに使用するもので、1時間以上燃える線香もあります。
渦巻き型と円錐型
渦巻型
渦巻型はお香の中でも燃焼時間が長いのがいちばんの特徴で、物によっては2時間程度燃え続けるものがあります。
燃焼時間が長いため広い空間などに香りを広げることがでるほか、スティック状のように1日で何度も変える必要がないこともメリットです。使用する際は、香皿に直接置くのではなく、香立の上に置くようにしましょう。
円錐型
円錐型は別名コーン型と呼ばれ、上から下に行くほど香りが強くなるのが特徴です。
また、燃焼時間が短いことも特徴で、だいたい10~20分程度で燃え尽きるため気軽に香りを楽しめます。香皿や香立の上に置き、頂点部にライターなどで火をつけます。
電子線香
電子線香は火を使わず電気を使用する線香です。火を使用しないため安全面で好まれることが多く、家庭で用いられることが多いです。
線香を香炉から抜き差しが可能であったり寝かせるタイプがあるほか、リモコンで操作できたり実際の炎のように揺らぐようなつき方がするものもあります。
様々な仏壇に合うように香炉が木目調や有名な焼き物で作られていたりするものがあるほか、ボトルを装着してアロマを発するタイプもあります。電子線香を購入する場合には、デザインや機能、使い方などに着目して選ぶのがオススメです。
線香を選ぶ際のポイント
線香は宗派によって使えるものや使えないものなどが特に定められているわけではないため、基本的に自分好みの線香を使用して構いません。
注意しておきたいこととして、自宅で線香を焚く場合には、煙探知機などが作動しないように煙が少ないものを使用したり、燃焼時間を気にして選ぶと良いでしょう。
線香を供える際の作法や炊き方
線香を供える場合には、注意しなければならない作法やルールなどがあるため事前に把握しておくことが重要です。
特に宗派ごとによって線香の数や立て方が違うため、故人の宗派を確認しておきましょう。ここでは自宅で線香を供える場合と訪問先で線香を供える場合、宗派ごとの線香の供え方などについて詳しく解説していきます。
線香を供える際の作法
住んでいる地域などによって詳細は異なる可能性はありますが、基本的には下記の流れに沿って線香を供えます。
1:左手に数珠を持ち、仏壇の正面に座り一礼し合掌。
2:ろうそくに火を灯して、ろうそくの火でお線香に火を点ける。
3:故人の宗派に沿った方法で香炉にお線香をあげる。
4:リン、おりんを一度鳴らし、合掌、遺影に対して一礼。
宗派によって異なる線香の本数
宗派によって、線香の上げ方が違います。そのため、故人の宗派を事前に確認しておく必要があります。また、線香の供え方は主に本数、立て方、折るかどうかの3点が異なるため下記を参考にしてみてください。
訪問先でお線香をあげる作法
遺族の方のお宅でお線香をあげる場合には、マナーや作法に注意する必要があります。
基本的には遺族へご挨拶を済ませた後に仏壇へ向かいお線香をあげることになります。詳しくは地域などによって細かい点が異なる可能性がありますが、基本的には下記のような流れに沿ってお線香をあげるようにしましょう。
1:左手に数珠を持ち、仏壇の前に置いてある座布団の手前でご遺族に一礼。
2:座布団に座り一礼後、合掌。
3:ろうそくに火を灯して、ろうそくの火でお線香に火を点ける。
4:故人の宗派に沿った方法で香炉にお線香をあげる。
5:リン、おりんを一度鳴らし、合掌、遺影に対して一礼。
6:座布団から降りて遺族に対して一礼。
お香の炊き方
お香には「空薫(そらだき)」と「聞香(もんこう)」という楽しみ方があります。
空薫
空薫は香炉の中に火をつけた炭を置き、灰を数分かけて温めます。温めた灰の上に直接香木を置くことで香木が熱され香りが上がります。
この時に使用する香木は小さく加工されたものがおすすめで、木・角割(割) ・刻・爪・笹などの種類があります。
聞香
聞香は聞香炉に香炉灰を入れ、火箸でかき混ぜ灰を柔らかくします。
コンロなどで熱を持たせた香炭団(こうたどん) を香炉の中心に入れます。灰を山形に整えて、火箸でてっぺんから香炭団まで「火窓」を作り、その上に銀葉を乗せます。銀葉の上に香木を乗せたら完了です。
線香に由来のある香典
実は香典の代わりに線香を贈る贈答線香があるということをご存知でしたか?ここでは香典の代わりに線香を贈る場合について解説します。
香典については下記記事もご参考ください。
・香典の正しい書き方を完全解説!金額・表書き・中袋・のし袋の書き方を紹介!
・香典を完全解説!意味・歴史・金額相場・書き方・包み方・渡し方を解説!
・香典金額の相場を完全解説!地域別の金額・書き方・包み方・渡し方も紹介!
贈答線香について
基本的に香典の代わりとして線香を贈る場合には、葬儀や通夜に直接参列できなかった場合です。そのほかに香典不要だった場合に後日手紙とともに贈るケースや、喪中見舞いとして贈ることがあります。
>>喪中とは?喪中の期間・喪中にしてはいけないことを完全解説!
最近では家族葬などが増えてきている背景や、香典返しを用意する負担などから香典を辞退しているケースが多いため、そのような場合に線香を贈ると良いでしょう。
>>香典返しのマナーを完全解説!相場・時期・挨拶状・例文・品物も紹介!
線香を贈る場合の注意点
線香を贈る場合の注意点として、相手の住宅環境に配慮する必要があります。マンションやアパートのような集合住宅の場合には、煙探知機などが作動してしまうことを避けるため煙があまり出ないものを選ぶようにしましょう。
また、火事などのリスクを避けるために、燃焼時間の短いものなども良いでしょう。線香には家庭用と贈答用の2種類があり、スーパーなどで手軽に購入できるものは家庭用になります。こちらを贈ることは失礼にあたりますので、贈る際には贈答用のものを選びましょう。
贈答用の線香にはのし紙や表書きなどが必要です。表書きは贈るタイミングによって異なり、四十九日までは「御霊前」、四十九日後は「御仏前」と記載します。
しかし、浄土真宗は表書きに「御霊前」を使わないため、「御仏前」と記載しましょう。もし初盆を迎える場合には「初盆御見舞」、喪中ハガキを受け取り喪中見舞いとして贈る場合には「喪中御見舞」です。
贈答用の線香の相場は2,000円~5,000円です。こちらも故人との関係性によって異なりますので確認しておきましょう。
ただし、線香は仏教でしか基本的に使用しないため、キリスト教や神教の家庭には贈らないように注意してください。
弔事についての不明点や疑問は『やさしいお葬式』から24時間365日無料相談も承っています。電話でもメールでも行えますのでお気軽にご連絡下さい。『やさしいお葬式』では葬儀の見積もり、遺影写真、参列者のリストアップなど事前準備をおすすめしています。葬儀の作法や服装などについてもご相談できます。
お香に関する香道
香道(こうどう)は室町時代に茶道や華道とともに成立したと言われています。香道では六国五味(りっこくごみ)と呼ばれるルールで香りを分類しており、六国は伽羅、羅国、真南蛮、真奈伽、佐曽羅、寸門多羅の6つの香木の種類。五味は甘、苦、辛、酸、鹹(しおからい)です。香道では香りを嗅ぐことを「聞く」と表現します。
この六国五味を用いて香りを聞き分ける競技を「組香(くみこう)」と言い、もっともポピュラーなものになります。
香元(席主)がテーマに基づいた香木を数種類用意し、なんの香木を炊いたのかを参加者は予想して紙に一人一人自分の思った答えを記載します。
この組香で用いられるテーマには文学作品や詩歌を題材にしているものがあり、源平香、源氏香、住吉香、古今香などが挙げられます。
香道の流派には「御家流」と「志野流」から始まり、それぞれ「三條西実隆公」と「志野宗信」が流祖です。御家流はきらびやかな道具などを使用している貴族や公家の流派で、志野流は簡素な道具を使用する武家の流派になります。
線香についてのまとめ
ここまで線香の歴史や意味、実際の供え方や種類など、線香に関する様々な情報を解説してきましたがいかがだったでしょうか。ここでは今までの内容をわかりやすく箇条書きでまとめていきます。
・仏教の経典の中には「死んだ人間の中でも、生前良い行いをしたものは良い香りを食べる」という考え方と「食香」という考え方がある。
・線香の起源は西暦595年だと言われており、「日本書紀」と「聖徳太子傳暦」に裏付ける記載がされている。
・線香の材料は「椨」という植物で、そこに香木や防カビ剤などを混ぜ合わせる。
・お香には、線香、焼香、抹香、塗香、練香などがある。
・線香にはスティック状だけでなく、円錐型や渦巻型、電子タイプなどがある。
・線香は宗派によって使ってはいけないものなどは特に定められていないため、好きなものを使用すると良い。
・線香は宗派によって、本数や折る折らない、立て方が異なる。
・お香には「空薫」と「聞香」という楽しみ方がある。
・もし通夜や葬儀に参列できない場合や、喪中見舞いとして香典の代わりに贈答用の線香を贈ることがある。贈答用の線香の相場は2,000円~5,000円である。
・線香を贈る場合には、相手の住宅環境や宗教に配慮する。
・茶道や華道と同様に、香りを楽しむ香道というものがある。香道は室町時代に成立し、「御家流」と「志野流」などの流派がある。
このように線香は宗派によって供え方が違かったり、香典の代わりに贈ったり身近な割に意外と知らないことが多いです。ぜひ正しい知識で線香をお供えできるようにしておきましょう。
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール