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思い出の海で見送れる海洋散骨のマナーと注意点・費用相場を解説

お墓参りと言えば、暮石に手を合わせるというのが主流でしたが、供養の方法も多様化してきており、最近では海洋散骨を選択する方も少なくないようです。

この記事では、実際に海洋散骨とはどのようなもので、どのくらいの費用感で実施できるのか、またどういった点に注意すれば良いのかなど、海洋散骨に関することを徹底的に解説していきます。

海洋散骨とは

遺骨は骨壷に入れられてお墓に埋葬されることが一般的ですが、実は供養の選択肢は納骨だけではなく、散骨の一種で、遺骨を海にまく海洋散骨という手法もあります。

まずは具体的に海洋散骨がどのようなものであるのか、ご説明していきます。

散骨とは

お墓を立てている場合、多くはお墓の下にある納骨堂に遺骨を入れて供養します。

一方で、納骨堂に遺骨を収納せずに、海や山に細かくした遺骨をまいて供養する方法があります。

この方法を散骨と言います。散骨する場合にはお墓を建てる必要がなく、独身世帯で後継がいない場合や、お墓の管理を子どもにさせたくないと考えている方、または、より開放的な死後でありたいと考える方などが検討される方法です。 

海洋散骨とは

散骨の中でも海洋散骨という方法があります。文字通り、海に散骨する方法です。

たとえば、海に思い入れがあり、「死後は海に骨を撒いてほしい」と考える方や、お墓や遺骨のある場所にこだわりがなく、子供に墓守としてお墓の管理の手間をかけたくないと思う方などが、生前に希望して執り行われることが多い供養方法です。

海洋散骨が注目されている背景

今までは、人は死ぬとお墓に入ることが当たり前とされてきましたが、最近ではその思想も覆されてきています。

少子高齢化による後継者問題や、家系や一族といった概念そのものの希薄化などから、供養の方法の常識も少しずつ変化してきているようです。

そういった家族形態の変化や思想の変化によって、海洋散骨も供養方法として注目されています。

海洋散骨に向いている人

海洋散骨に向いている人の特徴としては以下のようなものが挙げられます。 

・生前に本人が海洋散骨を強く希望していた人

・後継など墓守をする人がいない人

・代々引き継いでいるお墓はないが、新しく建てるほどの金銭的な余裕がない人

一般的には、継承墓と呼ばれる、一族代々で引き継いできたお墓があり、その家系の人間であればそのお墓に入るケースが多く見受けられます。

しかし、現代社会では、少子高齢化が進む中で、生涯独身であったり、既婚者であっても子供がいないケースも珍しくありません。

そういった状況下では、仮にお墓に入ったとしても、墓守がおらず管理が困難となるでしょう。 

また、お寺に供養を任せてしまう永代供養という手法もありますが、他人の遺骨と混同されてしまったり、二度と遺骨を取り出すことができないという条件があることが多いです。

したがって、形式張った供養よりももう少し自由な雰囲気での供養を望む方や、家庭環境の関係でお墓の管理をする人がいない人、金銭的にお墓を建てる余裕がない人、特別海が好きな人などは海洋散骨に向いていると言えるでしょう。

海洋散骨に関する法律・規制

どこの海にでも自由に海洋散骨をすることが認められているのでしょうか?結論から述べると、海洋散骨は違法ではありませんが、場所によっては実施不可能となる自治体も存在します。

ここからは海洋散骨に関係する法律や規制、マナーについてご説明していきます。 

関連する法律

前述の通り、海洋散骨は法律には抵触せず、散骨を禁じる法律もありません。

ただ、刑法には「死体遺棄罪」という法律が存在し、遺骨を粉砕せずそのまま散骨してしまうと、法に反することとなります。

さらに、「墓地、埋葬に関する法律」には、埋葬および焼骨の埋葬に関しては、墓地以外の区域で行ってはならないという決まりがあります。 

この部分を見ると、海洋散骨は法律に抵触していることになるのでは?と思いますが、あくまでもここで禁止されているのは埋葬、つまり、土の中に遺骨を埋める場合について言及されており、散骨は埋葬には当たらないので、海洋散骨は、法を犯していることにはならないのです。

禁止している自治体

自治体によっては海洋散骨を禁止している地域もありますが、設けられている理由としては、自治体と散骨業者との問題によるものが多いようです。

なお、散骨に関して条件を掲げている自治体には、以下のような場所が挙げられます。

・長沼町(北海道):墓地以外での散骨を禁止

・七飯町(北海道):学校、病院、都市公園、道路、河川、人家といった敷地境界線から110m以内の散骨を禁止、その他制限あり

・岩見沢市(北海道):散骨場を経営する人間は市長の許可が必須、散骨場以外での散骨を禁止

・諏訪市(長野県):散骨場を経営する場合は、市長や隣接する土地の所有者に許可、同意をしてもらう必要がある

・秩父市(埼玉県):墓地以外での散骨を禁止

・本庄市(埼玉県):散骨場を経営する人間は市長の許可が必須、散骨場以外での散骨を禁止

・御殿場市(静岡県):散骨事業を実施する計画者は市長からの許可が必須

全ての自治体で海洋散骨を行ってはならないということではありませんが、海洋散骨に対して周辺地域の方は不安を抱くこともあるかと思います。

したがって、海洋散骨は家族だけの問題ではなく、周辺地域のルールや考え方を尊重し、慎重に進めることが重要と言えます。 

海洋散骨で守るべきマナー

前述の通り、法律こそありませんが、海洋散骨は海に骨をまくため、周辺地域の方にも配慮しながら事を進めていく必要があります。

具体的には、海洋散骨するのに好ましい場所(漁船などの海上交通につき、邪魔にならない場所など)をきちんと把握した上で、きちんと粉砕処理を行った骨をまくこと、また骨以外の副葬品など環境安全に危害を加えるものをまかないことなどは必須マナーと言えます。

なお、マナーや注意点に関して不安がある方は個人での海洋散骨は避け、海洋散骨の専門業者に相談してみるのも良いでしょう。 

海洋散骨のメリットデメリット

ここまで海洋散骨の概要についてご説明してきましたが、ここからはそれぞれのメリット、デメリットに関してまとめていきます。 

海洋散骨のメリット

低コストで実施できる点、またお墓のように管理の手間がかからない点は、海洋散骨のメリットとして挙げられるでしょう。

費用相場に関しては後述しますが、3万円〜30万円程度が相場とされており、新しくお墓をたてる場合の10分の1程度のコストで済ませることができます。 

また、お墓はお花や水をこまめに入れ替えたり、暮石の掃除や雑草の除去、檀家としてお寺との関係性を構築するためにも、場合によっては足繁く通わなければならないこともあり、身体的・精神的なパワーを多く消費する可能性もあります。

そういう面では、海洋散骨は物理的に管理しなければならないことも少なく、また、どうしても形式張ってしまいがちなお墓参りと比較すると、海洋散骨の場合、海を眺めて手を合わせたりと、よりフラットな気持ちで故人を偲ぶことができるのではないでしょうか。 

海洋散骨のデメリット

一方で、デメリットとしては、遺骨を粉砕して海にまいてしまうため、手元に遺骨は残らず元の形に戻せない点や、その点の理解を遺族から得るのが難しい場合がある点が挙げられるでしょう。

遺骨はきちんと粉末状にしてからまかなければ、最悪の場合死体遺棄罪に問われてしまうため、粉砕することは必須条件となります。

したがって、一度海にまいてしまえば、手元に戻すことは不可能です。

つまり、一度海洋散骨を行ってから、再度お墓に納骨したいと思ってもなかなか難しいのです。 

また、最近では海洋散骨への理解も進み、供養方法の選択肢の1つとして検討される方も増えてきてはいますが、代々受け継いできたお墓での供養に強いこだわりがある親族の方も中にはいるかもしれません。

供養に関しては親族できちんと合意形成をはかってから進行することが、トラブルを防ぐポイントでもあることから、あらかじめ海洋散骨に反対の人がいる可能性があるということを念頭に置きながら、慎重に話し合いを進めることが大切です。 

なお、一度海洋散骨してしまうと手元に骨が残らないと記述しましたが、分骨という、遺骨を分けて2つ以上の場所に供養する方法もあります。

その分コストは上乗せされてしまいますが、選択肢の1つとして検討が可能です。

海洋散骨のプランと費用相場

それでは具体的に海洋散骨はどのような方法で実施されるのでしょうか?プランや費用相場についてご紹介していきます。 

代行委託

まず1つ目に代行委託という方法があります。遺骨の粉砕から散骨まで一式を請け負ってくれるサービスです。

この場合、遺族は船に同乗することなく、完全に全ての工程をお任せすることになりますが、展望デッキでお見送りすることも可能です。

高齢で船に乗ることが難しい方は検討されると良いでしょう。

なお、事業者のプランによっても内容は変わってきますが、散骨証明書を発行してくれたり、散骨の際の写真の提供、骨壷の処分まで3万円程度で執り行ってくれたりします。なお、遠方から依頼する場合、遺骨はゆうパックでのみ郵送が可能です。

合同乗船・合同散骨

続いて合同乗船、合同散骨です。合同乗船、合同散骨に関しては、遺族も船に乗って海洋散骨を見届けることができます。

なお、他の遺族と同乗して合同で海洋散骨をしますが、人数が多いほど船も大きくなるため、それに比例して価格が高くなるといった料金システムが一般的です。

相場としては、乗車人数が2家族合計4名で7万円〜14万円程度です。 

貸切・チャーター

合同ではなく、完全にチャーターを貸し切って海洋散骨を行うことも可能です。

この場合、家族や親しい知人のみの空間で故人を見送ることができます。

相場としては、20万〜30万円程度で8名〜10名ほどで乗船ができます。

なお、天候によっての日時変更も柔軟に行ってくれる業者が一般的ですが、万が一の場合に備えて遺族間で複数日程を押さえておくことをおすすめします。

海洋散骨を提供している事業者

ここからは、実際に海洋散骨のサービスを提供している事業者についてご紹介します。

海洋散骨を現在検討されている方は、ぜひご参考にしてみてください。 

やさしい海洋散骨

日本全国のさまざまな海域で海洋散骨を行います。

乗船人数に応じた「合同プラン」や、家族や友人だけで散骨を行うことができる「貸切プラン」などがあります。また、スタッフが遺骨をお預かりし、遺族に代わって散骨を行う「代理プラン」も提供しており、遺族の希望や予算に合わせたプランを選択できます。

やさしい海洋散骨では、散骨ガイドラインを遵守し、厚生労働省が定めた「散骨に関するガイドライン」に沿って施行を行うため、安心して利用できることが特徴です。さらに、海洋散骨後には散骨証明書や記念品を提供し、故人を偲ぶ機会を大切にしています。

また、葬儀社や各種専門家との提携もあり、海洋散骨だけでなく、葬儀や相続手続き、遺品整理など、終活に関する様々なサポートを受けることが可能です。

ブルーオーシャンセレモニー

日本海洋散骨協会加盟の、東京湾を中心に海洋散骨事業を行っている会社です。

海洋散骨事業をスタートして10年で1000件程度の案件を施行しています。

また、ブルーオーシャンセレモニーが所有する専用の旅客船は、厳格な安全基準を満たしているため安全性に優れており、安心して海洋散骨を行えることが特徴です。 

さらに、故人を偲ぶ気持ちを大切にしてほしいという思いから、海洋散骨を終えた後にクルーズでのお参りに遺族を招待するサービスを実施。

葬儀社との連携も厚く、海洋散骨だけではなく、葬儀や相続など終活に関するあらゆる面でのサポートに対応しています。

なお、海洋散骨の費用はラグジュアリープランをのぞき、5万円〜30万円のプランで構成されています。

みんなの海洋散骨

みんなの海洋散骨は、東京と大阪に拠点を持つ、日本海洋散骨協会加盟の散骨事業者です。

全国の海域での海洋散骨を実施してくれます。

北は北海道東北エリアから、南は沖縄エリアまで対応してくれます。

4万円〜22万円で行えるプランで構成されています。なお、海洋散骨だけではなく、永代供養の代行や分骨の手続きなどオプションサービスも豊富で、無料相談も随時なっています。 

オーシャンメモリアル(銀河ステージ)

オーシャンメモリアルは、大阪に本社を、東京に本店を持つ供養関連事業を行う事業者です。

2020年現在、日本一海洋散骨を行う法人となります。

海洋散骨では、価格帯は5万〜22万円程のプライベートプラン、合同散骨プラン、代理委託プラン、プレミアムプランの4種類からプランを選択します。

また、全国の海域での海洋散骨に対応しているので、遺族にとって都合の良い場所を選択しての海洋散骨が可能です。

なお、海洋散骨以外にも宇宙葬や手元供養のサービスも展開しています。 

海洋散骨後の供養方法

海洋散骨後に選択可能な供養方法についてご説明します。

なお、以下の供養を行うためには、海洋散骨の際に全ての遺骨を散骨するのではなく、一部の遺骨を取っておくことが必要です。 

手元供養

手元供養は骨壷やペンダントやブローチなどの小物に遺骨を入れ、家に置いたり身につけたりして、身近に置いておくことが可能な供養方法です。

何かしらの理由でお墓へ参るのが困難である場合や、故人へいつでも手を合わせたいと考える方に推奨できる供養方法です。

納骨

海洋散骨でまかなかった分の遺骨を改めてお墓に埋葬することも可能です。

海洋散骨では遺骨をまくことから、「遺骨がなくなるのが寂しい」「どこに手を合わせて良いかわからない」と考える人もいます。

そういった遺族の不安や懸念を拭うためにも、海洋散骨だけではなくお墓への納骨も行うことで、きちんとお墓参りができる環境を整えることができます。

海洋散骨以外のお墓を建てない供養方法

海洋散骨の特徴として、お墓を必要としないことが1つ挙げられますが、海洋散骨以外にもお墓の建立を必要としない供養方法があります。 

納骨堂

納骨堂は、室内で遺骨を管理してくれる施設です。一括りに納骨堂と言っても様々な形式があります。

たとえば、遺骨はロッカーに安置し、外側の参拝スペースで手を合わせるものや、ロッカーの中にある仏壇へと個々でお参りするもの、他にも、参拝スペースで待機していると自動で骨壷が運ばれてくるシステマティックなものもあります。 

納骨堂では、参拝スペースはそこまで広くないことが多いため、他の一家との共同参拝になることが多く、さらに室内であるためお線香をあげることができないことが一般的です。

ただ、清掃管理の必要がなく、費用面でもお墓を購入するよりも手軽に利用でき、天候を気にすることなくお参りをすることができます。

樹木葬

樹木葬は、暮石ではなく、樹木の根元辺りに遺骨を埋葬するという供養方法です。

個別の区画に納骨する場合と、1本の樹木の周囲に他の遺骨とまとめて埋葬する場合があります。

一般的に樹木葬は一代限定のお墓であることが多く、子供がいない方や、もしくは自然に還りたいと考えている方が検討されることが多い手法です。

合祀墓

合祀墓は、他の故人の遺骨と1つのお墓に一緒に埋葬される方法です。

この場合、お墓の管理自体はお寺や霊園が代わりに行ってくれますが、遺骨を同じ場所に入れてしまうため、遺骨を再度取り出すことが困難である方法でもあります。

一方で、後継者がおらずお墓の管理ができる人がいなかったり、後継者がいたとしても手を煩わせたくないと考える方には、お墓を持たない供養方法として推奨されています。

なお、お線香や献花など、共同の参拝スペースへとお参りすることが可能です。 

自宅保管

遺骨は必ずしも埋葬したり納骨したりしなければならないという訳ではありません。

骨壷をそのまま保管するケースや、遺骨を粉砕して小さい瓶に入れたり、前述の手元供養のように遺骨をアクセサリーなどの中に入れて管理する場合もあります。

ただし、遺骨は継承されるものなので、他の遺族の管理負担も見据えながら検討するとよいでしょう。

遺骨を引き取らない

遺骨は火葬場で焼いてもらってから骨壷に入れるのが一般的ですが、火葬後に遺族が遺骨を引き取らない選択肢もあります。

ただし、遺骨の引き取りを拒否できるかどうかは、自治体の取り決めや火葬場の規約に依存するため、必ずしも引き取りを拒むことができるかは断言できません。

また、遺骨の処理に別途費用がかかります。

海洋散骨についてのまとめ

海洋散骨の方法や、実際に海洋散骨を行う上での注意点や具体的な事業者についてご紹介しました。

分骨をしない限り、海洋散骨を行うと遺骨は手元に残らないことが一般的であるため、人によっては寂しさを感じたりすることもあるかもしれません。

一方で、海を見ると故人のことを偲ぶきっかけとなったり、より開放的な気持ちで手を合わせることができたりする場合もあります。

海洋散骨を実施する、もしくは検討されている方は、注意点を踏まえつつ、故人の意思の尊重と遺族間での話し合いを大切にしながら進めていくのがよいでしょう。

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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)

略歴
栗本喬一(くりもと きょういち)
1977年生まれ
出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)

株式会社東京セレモニー 取締役

ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
株式会社おぼうさんどっとこむ 
常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
株式会社ティア 
葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。

著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)

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お葬式セミナー講師
エンディングコンサルタント
栗本 喬一(くりもときょういち)
1977年 東京生まれ(名古屋育ち)
略歴
母の死をきっかけに葬儀業界に興味を持ち、大学卒業後、大手葬儀社へ入社、家族葬から大規模葬儀まで、幅広くお葬式を葬儀担当者(セレモニーディレクター)として活躍。その後、葬儀会館の店長、新規開拓を歴任。お客様からの「ありがとう」という言葉をいただけることを仕事のやりがいとし、これまでに10年以上、5,000件以上の葬儀現場に立ち会う。
資格等
株式会社GSI グリーフサポート アドバンスコース修了。