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遺贈

【遺贈】事前に知るべき3つのメリットと注意点!相続・贈与との違い

「自分の遺産をお世話になった人に遺していきたい」

「これからの社会や恵まれない人のために、財産を役立ててほしい」

皆さんの中には、自分の今持っている財産については、自らの希望するように遺していきたいという方もいらっしゃることでしょう。

それを実現する方法の一つとして「遺贈(いぞう)」があります。

遺贈なら、法定相続人以外の親族や血縁関係のない人、さらにはNPOや学校といった法人・団体にも自らの財産を贈ることが可能になるなど、次のようなメリットがあります。

遺贈の3つのメリット
1.自分の希望する相手に遺産を贈ることができる
2.内容を秘密にしておくことができる
3.遺言書の作成により相続争いのリスクを減らせる

その反面、以下の点に注意をしないと、遺産の受け取りを放棄されたり遺贈した財産を巡って訴訟を起こされたりするなど、不本意なことになりかねません。

遺贈の違い

遺贈前に知るべき3つの注意点
1.遺贈でも相続税は発生するうえに割り増しになる場合がある
2.不動産の遺贈の場合は登記や許可などが必要になる
3.法定相続人から遺留分を請求される場合がある

そこで今回は、種類や相続・贈与との違いといった遺贈の基礎知識からそのメリット、遺贈をする方法、さらには遺贈の注意点まで解説していきます。

この記事を読んで遺贈を知れば、ご自身が理想とする財産の遺し方に近づくことができるでしょう。

財産をどうしようかお考えの方はもちろん、自信を持って遺贈を行いたい方も、ぜひ参考になさってください。

遺贈(いぞう)とは「遺言を残して、希望する相手に遺産を贈ること」

遺贈(いぞう)とは、端的に言えば「遺言を残して、希望する相手に遺産を贈ること」です。「遺贈」という漢字にも、意味が表れていますね。

遺贈においては、遺産を贈る側の人を「遺贈者(いぞうしゃ)」、遺産を受ける側の人や団体を「受遺者(じゅいしゃ)」といいます。

遺贈者(いぞうしゃ) 遺産を贈る側の人
受遺者(じゅいしゃ) 遺産を受ける側の人や団体

遺贈の種類には、「包括遺贈(ほうかついぞう)」と「特定遺贈(とくていいぞう)」の2種類があります

なかには遺贈の意味を知って、「相続や贈与と似たようなもの」と思う方もいるかもしれません。

そこで続いては2種類の遺贈の違い、更には遺贈と相続・贈与との違いについて詳しくご説明します。

遺贈には2種類ある

包括遺贈と特定遺贈の違い

まずは「包括遺贈(ほうかついぞう)」と「特定遺贈(とくていいぞう)」、2種類の遺贈の違いについてです。

包括遺贈(ほうかついぞう) 遺贈する財産の割合だけを指定する方法
特定遺贈(とくていいぞう) 財産を具体的に指定して遺贈する方法

包括遺贈(ほうかついぞう)

包括遺贈とは、「遺産のうち2分の1を○○に遺贈する」というように、遺贈する財産の割合だけを指定する方法です。

この場合、具体的な遺産総額が分からなければ、受け取れる財産も決定できません。そのため受遺者は、他の相続人とともに遺産分割協議に参加する必要があります。

また、借金などのマイナスの財産についても、指定した割合の分だけ受遺者は引き継がなければなりません。

例えば、遺産として預金1,000万円と土地、住宅、さらには借金100万円があり、「遺産のうち2分の1を遺贈する」と指定があったとしましょう。

この場合、「預金500万円がもらえる」という訳ではなく、土地と住宅の資産価値が分からなければ、どれくらい財産が遺贈されるか分かりません。

加えて包括遺贈の場合は、マイナスの財産の2分の1、つまり借金50万円も引き継がなければならないのです。

「遺産分割協議」とは、受遺者や相続人など遺産分割に関わる当事者同士で、実際の遺産の分け方を決める話し合いの事です。

そしてその結論は、「遺産分割協議書」という書面にまとめられます。

遺産分割協議の進め方、および遺産分割協議書をまとめる手順をもっとよく知りたい方は、 「遺産分割協議書作成について7つのポイント&項目別の書き方と注意点」をぜひご覧ください。

特定遺贈(とくていいぞう)

一方の特定遺贈は、「△△銀行にある預貯金500万円を◆◆に遺贈する」というように、財産を具体的に指定して遺贈する方法です。

このケースなら遺産分割協議に参加する必要もなく、また指定が無ければマイナスの財産を受け継ぐ必要もありません。

ただし、遺言書に指定されている財産が何らかの理由でなくなっていた場合、代わりの財産が割り当てられることはなく、遺贈は無効になります。

相続・贈与との違い

遺贈と相続・贈与には、それぞれ次のような違いがあります。

  遺贈 相続 贈与
(生前贈与) (死因贈与)
概要 遺言を残して、希望する相手に遺産を贈ること 遺産を相続人に移転させること 契約によって財産を無償で譲ること (生前に行うのが「生前贈与」、死亡後に譲るのが「死因贈与」)
財産を受け取る相手 制限なし 相続人のみ いずれも制限なし
必要なものや事柄 遺言書 不要 いずれも生前に両者の合意に基づく契約が必要
課税される税金 相続税か法人税 相続税 贈与税か法人税 相続税か法人税

より具体的にご紹介しましょう。

遺贈と相続の違い

遺贈と相続の最大の違いは、財産を受け取る相手の制限の有無です。遺贈の場合、相続人以外の個人はもちろん、各種団体や施設にも贈ることができます。

対して相続の場合、それができるのは法定相続人に限られます。

また、遺贈については遺言による指定が必ず必要なのに対し、相続の場合は本人の死亡に伴って自動的に開始されるのも違いの一つです。

とは言え、遺産相続には期限内にしなければならない手続きが数多くあります。詳しくは、 「【プロ解説】遺産相続の全手続き|死亡届~相続税還付まで徹底解説」でご紹介しています。

遺贈と贈与(生前贈与・死因贈与)の違い

贈与には、生きているうちに自分の財産を贈る「生前贈与」と、生前に契約した上で贈与者の死後に贈与を受ける「死因贈与」の二つがあります。

遺贈と贈与における一番の違いは、受け取る側の合意が必要か否かです。遺贈は、遺贈者の希望によるものなので、受け取る側である受遺者の合意は必要ありません。

一方、贈与は契約であるため、生前贈与・死因贈与いずれの場合も受け取る側の同意が必要になるのです。

その他、課税される税金も遺贈ならびに死因贈与の場合は相続税なのに対し、生前贈与の場合は贈与税が課されます。

なお、贈られたのが法人格を持つ団体の場合は、いずれも法人税が課されます。

押さえておくべき遺贈の3つのメリット

遺贈には贈る側の利点が大きい順に、次の3つのメリットがあります。

遺贈の3つのメリット
1.自分の希望する相手に遺産を贈ることができる
2.内容を秘密にしておくことができる
3.遺言書の作成により相続争いのリスクを減らせる

詳しくご紹介していきましょう。

自分の希望する相手に遺産を贈ることができる

遺贈での最大のメリットは、自分の希望する相手に遺産を贈ることができるという点です。

相続と異なり、遺贈で遺産を贈る受遺者に制限はありません。

そのため、相続人以外の親族やお世話になった人といった個人はもちろん、学校や施設、NPOといった団体や法人も受遺者に指定することができるのです。

内容を秘密にしておくことができる

遺贈の場合、贈る内容を秘密にしておくことができるというのもメリットにあげられます。

自分の希望する相手に財産が贈れるという点では、遺贈も贈与も同じです。

ただし贈与の場合、贈られる側の同意を得た上での契約という形になります。つまり、あらかじめ自分の希望を相手に伝える必要が出てくるのです。

遺贈であれば、自分の希望を遺言にまとめるだけでよいので、相手の意向を確認するという手間が省けます。

遺言書の作成により相続争いのリスクを減らせる

遺贈のために遺言を作成することで、相続争いのリスクも減らすことができます

遺言書がない場合、相続人同士で遺産の分割協議を行わなければなりません。そして、協議における相続人同士での意見の相違が、相続争いが起こる大きな要因とされているのです。

ところが、遺贈を実現させるためには、必ず遺言書を作る必要があります。その際に遺贈の内容と併せて相続の内容についても明記しておくことで、争いを未然に防ぐことができるのです。

円滑に遺贈を行う方法

ここからは円滑に遺贈を行う方法について、段取り順にご紹介します。

円滑に遺贈を行うための2ステップ
1.必要であれば遺言執行者を決めておく
2.遺言書を作成する

必要であれば遺言執行者を決めておく

遺贈をするためには遺言書作成!…となる訳ですが、その前に検討していただきたいのが「遺言執行者」の選任です。

「遺言執行者」とは、遺贈を含めた遺言の執行に必要な一切の行為をする権利・義務を持つ者のことです。

遺贈を亡くなった本人自身が実行するのは不可能ですね。そのため、原則として相続人が遺贈を実行する義務を負うことになっており、その義務を負う人を「遺贈義務者 (いぞうぎむしゃ)」と呼びます。

しかし、遺言書により法定相続人以外への遺贈があった場合、それを快く思わない遺贈義務者である相続人と遺贈を受ける受遺者との間で、トラブルになるケースがあるのです。

そんなとき「遺言執行者」が指定されている場合は、その者が相続人に代わって遺贈義務者となるため、トラブルが起こることもありません

遺言執行者の選任は、遺言書の中で指定しておけばOKです。遺贈について不安があれば、弁護士や司法書士など専門家の遺言執行者への選任をお考え下さい。

遺言執行者の役割や具体的な業務については、 「遺言執行者の役割と流れ!事前に知っておくべきメリット&デメリット」で詳しくご紹介しています。

気になった方はぜひお読みください。

遺言書を作成する

遺言書

遺言者 山本一郎は、次の通り遺言する。

第1条 遺言者は遺言者の有する財産の全部を換価し、その換価金から遺言者の一切の債務を弁済し、公租公課を支払い、かつ、遺言の執行に関する費用、葬儀・埋葬の費用を控除した残金を、下記の者に遺贈する。 ※相続人以外に財産を渡す場合は、「遺贈する」と明記します。

住所 神奈川県横浜市横浜3丁目2-1
名称 未来の遺言財団 

第2条 遺言者は、この遺言の執行者として次の者を指定する。
    東京都墨田区両国3丁目5-4
    行政書士 田中 太郎

令和〇年〇月〇日
東京都世田谷区〇〇1丁目6-7
   山本一郎 印

 

遺言執行者の選任について結論を出したら、遺言書の作成に取り掛かりましょう。

遺贈する場合は、必ず以下の内容を遺言書に明記してください。

遺贈する際に遺言書へ明記する内容
受遺者の名前(もしくは団体・法人名)
受遺者の生年月日
住民票に登録している受遺者の住所
【包括遺贈の場合】遺贈する財産の割合

【特定遺贈の場合】どの財産か特定できる情報、ならびに遺贈する金額等

また、専門家を遺言執行者に選任する場合は、併せて遺言書に明記します。なお遺言執行者には、個人ではなく弁護士法人などを指定することも可能です。

遺言書は、定められた形式に則って書かないと無効になってしまう可能性があります。十分に注意してください

無効にしたくない場合は「遺言書の効力と4つの無効なケースを解説!納得いかない場合の相談先」の記事も合わせてお読みください。

後悔を防ぐ!遺贈前に知るべき3つの注意点

自分の理想とする財産の遺し方を実現するために有効な「遺贈」。しかし安易に遺贈を用いてしまうと、受遺者への迷惑や相続トラブルを生み、天国で後悔することになりかねません

後悔を防ぐため、事前に遺贈の注意点を把握しておきましょう。知っておくべき注意点としては、頻度の高い順に次の3つがあります。

遺贈前に知るべき3つの注意点
1.遺贈でも相続税は発生するうえに割り増しになる場合がある
2.不動産の遺贈の場合は登記や許可などが必要になる
3.法定相続人から遺留分を請求される場合がある

遺贈でも相続税は発生するうえに割り増しになる場合がある

遺贈によって贈られた財産を受け取る際も、相続税はかかります。

しかも受遺者が、配偶者、ならびに子や両親といった孫養子を除く一親等の血族ではない場合は、算出された相続税額の1.2倍の額を納税する必要があるのです。

例えば、計算上100万円の相続税を支払うケースなら、実際に収めるのは×1.2倍の120万円となります。

不動産の遺贈の場合は登記や許可などが必要になる

遺贈された財産が不動産だった場合、相続人や遺言執行者と共同で、不動産の所有権移転についての登記申請をしなければなりません。

さらにその不動産が農地や借地・借家だった場合、農地なら農業委員会又は知事の許可、借地・借家なら地主や賃貸人の承諾がそれぞれ必要になります。

これら登記や許可などにかかる時間と労力、さらには税負担が遺贈された不動産に見合わないと受遺者側が判断すれば、せっかくの遺贈を放棄される事もあり得ます

不動産の遺贈については、あらかじめ相手の承諾を得てから準備をすすめるなど、慎重に検討してください。

法定相続人から遺留分を請求される場合がある

遺留分の請求

「遺留分」とは、法律によって配偶者や子どもなど一定の相続人に最低限保障されている遺産の取り分のことです。

遺言によって遺留分が侵害される程の遺贈があった場合、遺留分を侵害された相続人は受遺者に対して「遺留分侵害額請求」を行えます。

そして請求を起こされた場合、原則としてその侵害額は払わなければなりません。

例えばこのイラストのように妻と子供2人がいる故人が、「全財産である4,000万円は福祉施設に遺贈する」と遺言書に明記したとします。

しかし、配偶者である妻や子どもたちは、自分たちの権利である計2,000万円の遺留分の請求ができるわけです。

「遺留分を完全解説!計算方法・侵害請求権の行使方法を紹介!」では、遺留分の割合や具体的な請求方法についてもご紹介しています。気になった方は、こちらをぜひ参考にして下さい。

まずは法律や税の専門家への事前相談がオススメ

遺贈には自分の希望する相手に財産を遺せるといったメリットがある反面、相続税が割り増しになるなどの注意点もあります。一長一短があるのは、相続や贈与といったその他の方法も同様です。

財産の遺し方を考える上で最も重要なのは、自分の希望が実現でき、かつそれによってトラブルが起きない事であるはずです。

そのためにも、はじめから遺贈にこだわらず、専門家に事前相談される事をおすすめします。

事前相談先の例としては、行える業務が幅広い順に次の3つがあります。

遺産相続のおもな事前相談先
1.弁護士
2.司法書士や行政書士
3.税理士

弁護士

不動産がある、財産に借金も含まれるなど、相談内容が複雑な場合は弁護士の力を借りた方がスムーズに解決できるでしょう。

弁護士に相談したからといって、必ず依頼しなければならないということはありません。相談内容が複雑であるほど解決に時間はかかりますから、早めに相談して適切なアドバイスをもらいましょう。

司法書士や行政書士

現在では、司法書士や行政書士の中にも積極的に遺言書作成業務を行なっている方がいます。弁護士に比べ、司法書士や行政書士なら費用が安いのもメリットです。

遺したい財産の中身や遺したい相手が比較的シンプルだという場合なら、まずはこちらに相談するのも手です。

税理士

遺産を残した相手にかかる税負担が気になるのであれば、税の専門家である税理士に聞くのがおすすめです。

ただし税理士はあくまでも税の専門家であり、遺言書の実務や法律関係の事については別の専門家に聞くことを想定しておきましょう

無料相談を利用して専門家を紹介してもらう

専門家への伝手がない人や、不安がある人は「無料相談」を利用してみるのもオススメです。

どの専門家にお願いすればいいのかなどの疑問も『 やさしい相続』の24時間365日無料相談で承っています。電話でもメールでも行えますのでお気軽にご連絡下さい。しつこい勧誘等も行いません。

大切なことだからこそ、丁寧に・確実に進めていきましょう。

まとめ

今回は「遺贈」について掘り下げてご紹介しました。内容をまとめます。

・遺贈とは、「遺言を残して、希望する相手に遺産を贈ること」

・遺贈においては、遺産を贈る側の人を「遺贈者」、遺産を受ける側の人や団体を「受遺者」と呼ぶ

・遺贈には、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類がある。

・遺贈と相続の最大の違いは、財産を受け取る相手の制限の有無。遺贈と贈与における一番の違いは、受け取る側の合意が必要か否か。

・遺贈には贈る側の利点が大きい順に、次の3つのメリットがある。

遺贈の3つのメリット
1.自分の希望する相手に遺産を贈ることができる
2.内容を秘密にしておくことができる
3.遺言書の作成により相続争いのリスクを減らせる

・遺贈をするために遺言書を作成するにあたっては、「遺言執行者」の選任を検討する。

・遺贈前に知っておくべき注意点としては、頻度の高い順に次の3つがある。

遺贈前に知るべき3つの注意点
1.遺贈でも相続税は発生するうえに割り増しになる場合がある
2.不動産の遺贈の場合は登記や許可などが必要になる
3.法定相続人から遺留分を請求される場合がある

・はじめから遺贈にこだわらず、まずは法律や税の専門家への事前相談がオススメ

ぜひ今回の記事を参考に、理想的な財産の遺し方を実現してください。

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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)

略歴
高橋圭 (たかはし けい)
青山学院大学法学部卒業。
2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員

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栗本 喬一(くりもときょういち)
1977年 東京生まれ(名古屋育ち)
略歴
母の死をきっかけに葬儀業界に興味を持ち、大学卒業後、大手葬儀社へ入社、家族葬から大規模葬儀まで、幅広くお葬式を葬儀担当者(セレモニーディレクター)として活躍。その後、葬儀会館の店長、新規開拓を歴任。お客様からの「ありがとう」という言葉をいただけることを仕事のやりがいとし、これまでに10年以上、5,000件以上の葬儀現場に立ち会う。
資格等
株式会社GSI グリーフサポート アドバンスコース修了。