【相続放棄の手続きと費用】知っておくべき7つのポイントと注意点!
「相続放棄したら、何か不都合がある?」
「口頭だけではダメ?具体的にどうやるの?」
「費用はかかる?自分でもできるのかな…」
負の遺産を相続しそうな時、身を守る方法として「相続放棄」があります。
相続放棄とは被相続人(亡くなった人)の財産を一切相続せず、放棄することです。放棄することで、故人が背負った借金などの債務を肩代わりする必要もありません。
一見、メリットが多いと思われる相続放棄ですが、リスクや注意点を知らずに行ってしまい、結果、相続放棄が行えず一生後悔してしまう方も多いです。
そこで本記事では、相続放棄する前に事前に知っておくべきポイント7つについて解説致します。
この記事を読むことで、
・相続放棄とはどんな制度なのか?
・メリットとデメリット
・相続放棄をする際の手順や費用
・自分が相続放棄をすべきかどうかの判断
がすべて分かり、望まない遺産を相続することなく安心して生活を送ることができるでしょう。
スムーズな相続放棄を行うには、正しい知識が必要不可欠です。「相続放棄で絶対に失敗&後悔したくない!」という方は、ぜひ参考にしてくださいね。
相続放棄とは?
相続放棄とは、「被相続人(亡くなった方)の財産を一切相続しない(放棄)こと」です。
相続放棄を行うことで「はじめから相続人でなかった」ことになり、プラス・マイナスの遺産と権利を含めすべての相続の権利を放棄することができます。
相続放棄をする2つのメリット
被相続人が残した借金から解放される
相続放棄の最大のメリットは、被相続人が背負っていた借金やローンなどの負債を肩代わりしなくてすむことです。
明らかにマイナスの財産がプラスの財産を上回るときは、積極的に相続放棄を検討する必要があります。
相続放棄を行えば、わずらわしい借金から逃れることができますし、債権者から借金遅延損害金の支払いや返済を迫られることもありません。
相続放棄は
- 家庭裁判所から送付される「相続放棄申述受理通知書」
- 家庭裁判所に依頼することで入手できる「相続放棄申述受理証明書」
で証明することができます。
相続放棄申述受理通知書の場合は原本は保管する必要があるためコピーとなりますが、どちらかの書類を提出することで債権者は負債を取り立てることができなくなります。
相続問題という揉め事に関わらなくて済む
相続放棄を行えば、相続の分割の割合をめぐり揉めるなど余計な揉め事を避けることができます。
はじめから相続人ではないという扱いとなるため、相続人同士が遺産をどのようにするかを話し合う「遺産分割協議」にも参加する必要はありません。
相続放棄をするデメリットは4つ
相続できるすべての財産を手放すことになる
相続放棄は被相続人のすべての財産の一切を放棄することなので、相続することでマイナスの財産だけではなくプラスの財産も相続できなくなります。
例えば、被相続人が親で親名義の家に同居していた場合、相続放棄するとそのまま住み続けることができません。
一度相続を放棄するとやり直しがきかない
相続放棄は、一度認められると、理由があったとしても撤回をすることができません。
例えば、相続放棄後に被相続人のプラスの財産が発覚し、「知らなかっただけ。やっぱり相続したい」と希望しても撤回や取消が認められることはないのです。
そのため、被相続人の財産は取りこぼしのないように調べておく必要があります。
仮にマイナスの財産が多い場合でも負債を負うことなく相続を放棄する判断ができるようにするには財産目録を作るとよいでしょう。
財産目録については「相続をよりスムーズに!「財産目録」の目的と知るべき3つのメリット」の記事をご覧ください。
他の相続人とトラブルの原因になる
相続放棄をすると、相続権が次の相続順位の人に移ることになります。自分が相続放棄をしたことで債務を他の人へ背負わせてしまうことになるかもしれません。
例えば、亡くなった夫に借金があり相続人である妻がその相続を放棄した場合、相続権が夫の父や母に移ることとなります。
相続権がうつることを知らずに相続放棄をしてしまうのはよくあるケースですが、親族間であらかじめ話あっておかなければ揉め事の原因となりますので、注意が必要です。
自分が遺産相続の順位のどこに位置しているかを知ることで、トラブルを事前に予測し回避することができます。
遺産相続の順位や範囲や順位のパターンについては「遺産相続は配偶者が最優先!順位を決める4つのポイントと割合を解説」の記事をご覧ください。
遺産の売却を自由に行えない
相続放棄を行った場合、家や土地などの遺産に関する一切の権限を手放すこととなります。
遺産に高額な不動産があったとしても、相続放棄を行えば売却をすすめることはできません。
預貯金だけでなく、不動産についても査定額を確認してから、相続放棄をするかどうかを判断しましょう。
相続放棄ができないケース
すでに相続をしてしまっていた場合、自動的に「単純承認」が成立してしまい、相続放棄をすることができなくなります。
例えば、被相続人の預金を自分の口座に移したり、使ってしまったり、遺産を売却・処分したりすると、すでに遺産に手をつけたことになりますので、相続を承認したとみなされます。
これは借金についても同じで、被相続人宛の請求書の支払いを善意で行ったとしても、負債を受け継いだものとみなされるため、相続を放棄することはできなくなります。
また、「相続放棄の時効は3ヶ月」でも説明しますが、相続放棄できる3か月の期限をすぎていた場合、原則として相続放棄を行うことはできません。
相続放棄をする・しないの判断基準
相続放棄をする・しないの判断基準についてご紹介します。
相続放棄をしたほうがよい場合
相続放棄を行えば、借金のリスクをわざわざ背負う必要はありませんし、親族間で誰がどのような財産を相続するかで揉める必要もありません。
一般的に相続放棄をしたほうが望ましいのは以下のような場合です。
- 財産よりも借金の方が明らかに多い
- 相続問題に巻き込まれたくない
相続放棄をしないほうがよい場合
多額の債務があるけれど、相続したい財産があるようなケースでは、限定承認が向いています。
借金が多いものの、一部の財産などの財産は残しておきたいという場合は、相続放棄ではなく限定承認という選択肢があります。
限定承認ができるケース
被相続人から相続して得た遺産の限度内で負債も承継するという方法を限定承認といい、
相続人全員の同意した場合に限定承認の手続きを行うことができます。
限定承認をすれば、被相続人に多額な負債があっても、自分の得る遺産を超える負債は相続しないため、相続した財産以上の借金を弁済する必要がないからです。
限定承認が適しているケースとしては
- ●相続する負債の額が不明
- ●借金のほうが多いものの、どうしても残したい財産がある
- ●次の順位の相続人に迷惑をかけたくない
のような場合があげられます。
例えば、相続財産に2,000万円の借金と200万円のダイヤモンドの指輪があったとします。形見として指輪をもっておきたい場合は、借金の債務者に200万円を支払えば、ダイヤモンドの指輪を相続することができます。
また、負債があった場合、相続放棄を行えば次の順位の相続人に負債の権利が移動しますが、限定承認を行えば自分たちの家族だけで借金の相続を実質的に終わらせることができます。
相続放棄同様、手続きの期間は3ヶ月と決まっており手続きは複雑ですが、相続人全員の同意がとれる場合は限定承認を行うとよいでしょう。
自宅を売却したくない
引き継がれる財産に負債は多いものの、財産である家を売却したくない場合は相続放棄を行うべきではありません。
相続放棄を行えば、一切の相続権利がなくなるため、家に対しても権限がなくなります。
そのため、次の順位である相続人が自宅を売却しようとした場合、その売却を止めることはできません。
相続放棄するための手続きの流れ
相続人が相続放棄できる期間には期限があります。相続放棄がすみやかに行えるよう手続きの流れを知ることはとても大切です。
1.財産調査を行う
2.相続放棄にかかる費用を準備(相場:5千~10万円)
3.相続放棄に必要な書類を用意
4.家庭裁判所に相続放棄を申し立てる
5.相続放棄申立後に照会書が届く
6.許可されれば相続放棄申述受理通知書が届く
財産調査を行う
相続財産すべてを把握できるよう財産調査を行いましょう。
相続放棄をする場合は財産の状況を記載する必要があり、仮に相続する場合でも遺産分割協議書作成のために財産一覧が必要となるため、財産調査を行うことになります。
相続放棄した後で、後からプラスの財産が発覚して後悔しないためにも、財産調査を行った後に判断するのが良いでしょう。
なお、財産にはプラスとマイナスがあり、一例としては以下のようになります。
【財産の一例】
プラスの財産 |
マイナスの財産 |
・現金、預貯金
・有価証券(株券、小切手、国債など)
・不動産(土地、建物、借家権、借地権など)
・自動車
・家財道具一式
・収集品(宝石、貴金属、骨董品など)
・著作権
・工業所有権(特許権、商標権など)
|
・借金
・保障債務(連帯保証人など)
・借入金(住宅ローン、車のローンなど)
・未払いの税金
・未払いの医療費
・クレジットカードの未払い分
・損害賠償の支払い
|
財産については、一度に確認する方法はなく、ひたすら地道な調査と時間が必要です。
代表的な財産の調査方法について説明していきます。
金融機関における預貯金の調査
被相続人の預貯金はどれくらいあるのか把握したい場合、通帳などをもとに金融機関に残高証明書を依頼します。
普通預金に限らず、定期預金や投資信託についても利用状況を把握することができます。
株・FXなど投資の調査
株やFX、国債などの書類や証券、残高通知などの書類から、証券会社や信託銀行などの該当する機関に残高証明書を依頼します。
もし手がかりがない場合は、上場株式の名義変更を行う証券保管振替機構に登録加入者情報の開示請求を行うことで、口座の開設先を知ることができます。
不動産の調査方法
固定資産税の納税通知書から、不動産の地番や家屋番号を確認することができます。
お墓など課税対象とならない所有物については、納税通知書には記載されていないため、市町村役場で名寄調を申請する必要があります。
地番や家屋番号が分かれば、法務局で登記簿謄本を取得できるので、その名義や担保について詳しく把握することができます。
負債の調査方法
銀行の引き落としや請求書、不動産の担保などから、負債の状況を確認します。
負債状況が分からなければ、
などの信用情報機関に借金の状況の開示を請求することも可能です。
相続放棄にかかる費用を準備(相場:5千~10万円)
相続放棄の手続きを行う場合、自分で行う場合は、5千円程度ですが、専門家に依頼する場合は、3〜10万円ほどかかるため、あらかじめ準備が必要となるでしょう。
費用の詳細は「相続放棄の費用」でご紹介しています。
相続放棄に必要な書類を用意
相続放棄を行うためには、相続放棄申述書や戸籍謄本などが必要です。
相続人の続柄によって、用意する必要書類の詳細は「相続放棄するための必要書類」でご紹介しています。
家庭裁判所に相続放棄を申し立てる
相続放棄申述書を作成したら、戸籍謄本等の必要書類とともに家庭裁判所に提出します。手続き自体は郵送でも行うことができます。
提出先は亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
相続放棄申立後に照会書が届く
必要書類を家庭裁判所に提出すると、通常「照会書」という書類が送付されてきます。
照会書とは家庭裁判所からの質疑が書かれた書類で、この質疑に回答したうえで返信します。
提出書類に不備があると、家庭裁判所から補正を求められますが、補正の指示に応じない場合、相続放棄の申述が却下される可能性があります。
一度却下されてしまえば、再度相続放棄を申請することはできませんので注意しましょう。
許可されれば相続放棄申述受理通知書が届く
問題なく照会書に回答できれば、7日から10日ほどで「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
相続放棄申述受理通知書が届けば、相続放棄が認められたということになります。
相続放棄するための必要書類
画像引用先:相続の放棄の申述書(成人)|裁判所
基本的な必要書類
相続放棄するためには、下記書類が必要となります。
|
必要書類 |
入手方法 |
1 |
相続放棄申述書 |
・家庭裁判所
・裁判所のホームページでダウンロード可能
|
2 |
被相続人の住民票除票
(または戸籍附票)
|
被相続人が住んでいた最後の本籍地の役所
(戸籍は出生までを戸籍転籍等先の役所に追っていく必要あり)
|
3 |
相続放棄する申述人の戸籍謄本 |
マイナンバーカードがあればコンビニ交付が可能 |
4 |
収入印紙 |
郵便局等 |
5 |
切手 |
郵便局等 |
被相続人の戸籍については、出生時から最期まですべてのものが必要です。郵送の請求を行うことで入手までに時間がかかる場合もあるため、必要書類は早めに請求しておくとよいでしょう。
ケースごとで追加される必要書類
基本的な書類の他に、条件や相続人と相続を放棄する人の続柄によって、追加書類が必要となります。
民法では遺産の相続順位が以下のように定められています。
第1順位:配偶者・子またはその代襲相続人(孫・ひ孫)
第2順位:父母またはその代襲相続人(祖父母)
第3順位:兄弟姉妹その代襲相続人(甥・姪)
配偶者または子
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
孫
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 被代襲者(配偶者または子)の死亡記載のある戸籍謄本
-
親
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
-
祖父母
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本
-
兄弟
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本
-
姪・甥
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本
- 兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍謄本
-
提出場所
相続放棄手続き書類は、家庭裁判所に提出します。
提出する家庭裁判所はどこでもいいわけではなく、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所と決まっているため注意が必要です。
「近くの裁判所に提出してもよい」と勘違いしやすいため、間違わないよう気を付けましょう。
相続放棄の時効は3ヶ月
相続放棄ができる期限は3ヶ月となります。この3ヶ月を「熟慮期間」と呼び、3ヶ月以内に相続をするかどうかを決めなければなりません。
相続放棄を希望する場合は、この期間内に「相続放棄申述書」を裁判所に提出する必要があります。
「相続を知ったとき」から期限が決まる
民法上、相続放棄の期限がスタートする起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」と定められています。つまり自分が相続人になったと知った時のことを指します。
例えば、父親が亡くなった場合、子供はその日に自分が相続人となったことが分かるため、父親が亡くなった日から3ヶ月以内が熟慮期間となります。
例外的ケース
熟慮機関である3ヶ月を過ぎた場合でも、特別な事情があれば相続放棄が認められる場合があります。
特別な事情とは
- ●相続財産が全く存在しないと信じた
- ●相続財産の調査が著しく困難な事情があった
- ●相続財産が存在しない信じた相当な理由がある
の3つがポイントとなります。
特別な事情と判断された場合、熟慮期限の起算点が相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した(または通常であれば認識できた)時に繰り延べされます。
例えば、亡くなった兄の財産について、仲違いなどの理由で長年兄の生前の生活状況を知らない弟が相続人となり、兄の死亡後も財産状況を知らざるを得なかった場合などは例外として相続放棄が認められるケースもあります。
相続放棄の費用(相場:3千~10万円)
自分で行う場合(相場:3千~5千円)
自分で相続放棄の手続きを行う場合の費用としては、3千~5千円程度が目安となります。
以下が必要な費用です。
書類 |
費用 |
相続放棄申述書のための印紙代 |
800円
|
郵便切手代
(家庭裁判所によって異なる)
|
500円程度
|
被相続人の住民票除票又は戸籍附票
(市区町村によって異なる)
|
300円程度
|
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本 |
750円
|
専門家に頼む場合(相場:3万~10万円)
各専門家に依頼する場合の費用相場は以下のようになります。
専門家 |
費用 |
弁護士 |
5万~10万円程度
|
司法書士 |
3万~5万円程度
|
専門家への依頼が向いている人
・手続きする時間がとれない人
・手続きが面倒な人
・自分での手続きに不安がある人
弁護士に相続放棄を依頼する場合(相場:5~10万円)
弁護士に相続放棄を依頼する場合の費用の目安は5~10万円程度。
依頼することで、代理人となった弁護士が本人に代わってすべての手続きを行います。
- ●相続に関する手続きを完全に任せたい
- ●時間がない中で急いで手続きを行いたい
- ●相続人が債権者への対応が必要
など、手続きする時間が明らかに全くとれない場合や、相続において今後のトラブルの可能性に不安を感じる場合などは弁護士に頼むほうが安心です。
相続に強い弁護士の選び方や、弁護士を決める際のポイントなどについては「知らないと損をする!相続弁護士を選ぶ9つの要点と費用を抑える準備」の記事をご覧ください。
司法書士に相続放棄を依頼する場合(相場:3万~5万円)
司法書士に相続放棄を依頼する場合の費用の目安は3万〜5万円程度。
司法書士が本人に代わり手続き書類を作成します。なお、署名・押印・提出を行うのは、相続放棄する本人です。
- ●相続放棄の期限が迫っているような場合
- ●相続財産管理人の選任申し立てを一緒に依頼したい場合
- ●不動産登記がある場合
- ●相続人間の関係性がきわめて円満かつ相続財産の構成もシンプルで、トラブルの可能性がまずないと言える状況の場合
など、特に相続に関わる問題はないものの書類作成の手間を大幅に省きたいときは、司法書士に依頼するとよいでしょう。
相続放棄は専門家にお願いしたほうがよい3つの理由
相続放棄を専門家にお願いした方がいい理由について、重要度の高い順番にご紹介します。
手続きを自分で行って失敗し、相続放棄が認められなければ一生に関わります。
ミスを起こさず確実に相続放棄を行うためには、経験豊富な専門家に依頼することがオススメです。
1.相続放棄には3カ月の時効がある為
2.失敗が許されない為
3.誤った行動をして相続放棄が認められないケースがある為
相続放棄には3カ月の時効がある為
原則として、相続放棄は、熟慮期間の3ヶ月期限を過ぎると受理されません。期限内に手続きをする必要がありますが、その作業量は多さから負担に思う方が場合がほとんどです。
例えば、財産調査では銀行などの金融機関に問い合わせを行う必要がありますし、戸籍収集ではいくつもの役所に依頼する必要がある場合もあります。
相続放棄の期限が迫っている方や、多忙な方ほど、弁護士に依頼するメリットは大きいでしょう。
また、特別の事情がある場合には、熟慮期間をすぎていても、例外的に相続放棄が認められる可能性もあります。
相続放棄を諦めざるを得ないように思っても、弁護士に依頼すると希望がつながる場合もあるところも大きなメリットといえます。
失敗が許されない為
相続放棄は一度失敗すると、原則的に再び手続きすることはできません。
希望しない借金を相続してしまわないよう、相続放棄の手続きは正確に行うことが大切です。
実は、自分で相続放棄の手続きをしても、不備があるケースも多く、さらに裁判所からの質疑に対し誤った回答を行ってしまうことで、相続放棄がみとめらないということもあります。
的確に手続きをすすめたいならば、弁護士などの専門家に依頼することをオススメします。
誤った行動をして相続放棄が認められないケースがある為
遺産に手をつけた相続人は、相続を認める「単純承認」が成立し、相続放棄ができなくなります。
自分の日常にとった行動が知らず知らずのうちに、単純承認を成立させてしまうケースはよくあるため、相続放棄をするときは知識のある専門家に相談するほうが安心です。
例えば
・被相続人の遺産である預金を使ったり自分の口座に移した
・被相続人の不動産や株式を売却した
・善意で被相続人宛の請求に対して支払った
などの行動をすれば、相続放棄はできなくなります。
相続放棄を考えているなら、原則として、被相続人の遺産を消費したり、処分したりしないことが大切です。
まとめ
今回は、相続放棄についてご紹介してきました。
相続放棄行うときは
- ●相続放棄できる期間は、相続開始3ヶ月以内
- ●手続きは被相続人の最後の住所を管轄している家庭裁判所で行う
- ●手続きには相続放棄申述書と続柄によって定められた必要書類を提出する
ことを押さえておく必要があります。
相続放棄の判断基準や注意事項については以下のようになります。
相続放棄を検討するときの判断基準
相続放棄をしたほうがいい場合 |
相続放棄をしないほうがいい場合 |
・財産よりも借金の方が明らかに多い
・相続問題に巻き込まれたくない
|
・財産を残したい
・限定承認できる
(ただし相続人全員の同意が必要)
|
相続放棄における注意事項
手続き開始前 |
手続き時 |
・財産調査は行ったほうがよい
・他の相続人に相続放棄することを伝える
|
・手続き必要書類の入手は時間がかかる
・被相続人の財産に手をつけない
・放棄後の撤回は不可
・失敗すると、原則的に再手続き不可
|
相続放棄は自分でもできますが、スムーズな手続きをしたいなら弁護士か司法書士に頼むのがオススメです。
相続放棄には気を付けるべき点が多いため、手続きの方法やルールを正しく知る必要があります。相続放棄の手続きが困難であれば専門家に頼みましょう。
【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール