遺産分割では「財産確認」「相続割合」「遺産分割協議」などが必要です。事前知識を持たずに行う事で、相続分が減ったり余計な費用が掛かることも…。予め遺産分割で何を行うかを把握することで、損なく効率の良い相続が可能に。必要なポイントを解説します!
2021/7/25 情報更新
あなたの身近な大切な人が急に亡くなり、通夜・葬儀・告別式が終わり悲しみに暮れる中、落ち着く暇もなく突然『遺産相続』の話があった場合、あなたはどれくらいの知識があり、対応することができますか?
もしも相続する人があなただけではなく複数人いた場合、あなたはどのように対応しますか?もしも遺産を巡ってトラブルに発展する可能性が出てきた場合、あなたはどれくらい対応することができますか?
遺産相続は「亡くなった方の遺産を受け取る」だけではありません。
あなた以外にも遺産を受け取れる人がいる場合は、遺産となっているもの一つ一つ「誰が受け取るのか」ということを決めていかなくてはなりません。
遺産を受け取る人が複数いて、遺産が多ければ多いほど、揉めてしまう可能性も出てきます。相続する人で揉めるなど無益な争いが避けられるならそれにこしたことはありません。
「私には関係ない」と思っている人も多いかもしれませんが、遺産相続の話は突然やってきます。
そんな時に慌てず対応できるよう、知識として知っておくときっと役に立つはずです。
これから、一つずつ遺産相続について詳しく解説していきたいと思います。急な連絡に慌てず対応するためにも、ぜひ参考にしてください。
INDEX
遺産分割とは?
身近な人が亡くなり、あなたが遺産相続を出来る人ということになりました。
この時に、遺産相続できる人があなた一人であれば分割について考える必要はありませんが、遺産相続人があなた以外、複数いる場合はどの遺産を誰が受け取るのかなどきちんと遺産の分け方を決めなくてはいけません。
思いがけず身内が亡くなり、突然遺産相続の話になってしまったということもあるかもしれません。
そんな時に慌てず対応できるよう、知識として知っておくときっと役に立つはずです。この機会に、一つずつ確認しておきましょう。
遺産分割とは?
遺産分割(いさんぶんかつ)とは、遺産相続した人たちで遺産を分け合うことを言います。
遺産の持ち主が遺産を誰に渡したいなどの遺言を残さないまま亡くなった場合、一旦亡くなった方の遺産が相続する人全員の共有財産となります。
共有財産として複数人で遺産を持ち続けてはいけないということではありませんが相続したものが土地や不動産など、どうやって分ければよいのか難しく曖昧なものの場合、のちのちトラブルの原因になることがあります。
そういった、トラブルの原因になる可能性がないとも言い切れないものについては誰がどのように相続するのか話し合いによって一つ一つ解消しておくとトラブル回避につながっていくでしょう。
相続と遺産分割の違い
「遺産分割」と「相続」、どちらも同じような意味なのでは?と思う人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
相続とは遺産を引き継ぐこと
相続とは、亡くなった人の遺産を配偶者や子供が引き継ぐことです。
ここで引き継ぐ遺産は、プラスになる財産だけではなくマイナスになる財産も引き継がれます。
遺産分割は複数人で遺産の割合を決めること
遺産分割とは、亡くなった人の遺産を相続する人が複数人(二人以上)いて、誰がどの遺産をどれだけ受け取るのかということを決めることです。
一人で全て相続する場合は、遺産分割について考える必要はありませんが、相続する人が複数人(二人以上)の場合は遺産分割について考える必要があります。
遺産については下記記事もご参考ください。
・遺産相続を完全解説!手続き・流れ・注意点を紹介!
・遺産相続の兄弟の割合・トラブル・手続きを完全解説!
・遺産相続を孫にする方法を完全解説!3つの方法と税金と割合を紹介!
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遺産分割とは:4種類の分割方法
遺産分割とは、遺産相続した人たちで遺産を分け合うことを言いますが、遺産分割にも種類があります。
今回は、「現物分割」・「換価分割」・「代償分割」・「共有分割」の4種類について一つずつ詳しく解説していきたいと思います。
現物分割
現物分割とは、亡くなった方が残した遺産をそのままの状態で相続することです。
現物分割の例
例えば、亡くなった方が残した遺産は全部で「現金2,000万、不動産、貴金属類」だったとします。
相続する人は、配偶者、長男、長女の三名。この三名に遺産を分配しました。
現金2,000万 → 配偶者
不動産 → 長男
貴金属類 → 長女
相続する人が、現物のまま遺産を受け取りました。このような分割を『現物分割』と言います。
現物分割は、遺産分割の中でもとても分かりやすい分割方法と言えるでしょう。
換価分割(かんかぶんかつ)
換価分割とは、遺産を現金化して相続する人全員で分割して相続することです。
換価分割の例
例えば不動産が3つ、物品が複数あり、三人で相続することになった。
それぞれ不動産価値や物品の価値に違いがあり平等に分割することが難しい場合、三つの不動産を全て売却して現金化しその現金を三人で分割して相続する。
換価分割のメリット
換価分割の方法を利用し現金化することで分割の際もわかりやすく、不平等感を解消することができます。
換価分割は、わかりやすく不平等感も解消できるということが最大の利点です。
換価分割のデメリット
ただし、不動産などその他の物品についても売却するまでに時間がかかったり、売却するための対応が大変だったりと現金化するまでに時間と労力がかかる可能性があります。
また、不動産や物品など売却するタイミングによって目減りする可能性がないとも言えません。
この点を踏まえて、換価分割の方法を選択することが最善なのか検討する必要はあるかと思います。
代償分割
代償分割とは、現金ではない不動産や物品などの遺産を一人の相続人がすべて相続し、その他に相続するはずだった人へ、全ての遺産を相続した人が相続したものの代わりにお金を渡すことです。
代償分割の例
例えば、
遺産を相続する人が二人いたとします。そのうちの一人が遺産である不動産を自宅として住み、利用しているとします。
出来ることなら今後も住み続けたいと考えている。
そのため、遺産である不動産を売却するなどの対応は避けたい。
話し合いの結果、売却するのではなく現在自宅として住んでいる相続人が遺産である不動産を全て相続することになり、今回遺産を相続した人が、相続できなかった人に同等の金額を支払うことで同意することになった。
このようなケースの場合に代償分割の方法を利用することとなります。
但し、相続したものが不動産や物品だった場合、相続した人に現金が入るわけではありません。
他の人へ現金を支払わなくてはならないので、ある程度の財力が必要となります。
又、支払われる金額の折り合いがつかなければトラブルになる可能性もあります。
代償分割は、相続人同士の理解と納得のいく条件にならなければ成立しないので注意が必要です。
共有分割
共有分割とは、相続できる遺産が土地や家だった場合、遺産として相続したまま相続する人全員で土地や家を持ち続けることです。
共有分割のメリット
相続できるものが現金のように分けやすくわかりやすいものであれば、同じ金額になるように分けて相続すれば良いですが、土地や家などを面積でわけようとしても、価値に違いが出たり不平等と感じてしまう可能性があります。
また、話し合いでもどのように分けるのか決まらないなどトラブルになってしまう可能性も考えられます。
そのようなトラブルを回避すべく、全員で持ち続けるという選択をするのです。
共有分割のデメリット
とはいえ、全員で遺産を相続することで全てのトラブルを回避することができたのかというとそうとも言い切れません。
この先、固定資産税など支払わなくてはならないお金を誰がどう支払うのか、賃貸物件として取り扱っていた不動産だった場合、家賃収入は誰がどのくらい受け取りどうやって分配するのかなど、次々に問題が出てくることが想定されます。
共有分割を選択する場合は、その先起こることについても話し合いで決めておく必要があるので一つの選択肢ではありますが十分検討した上で選択するようにしましょう。
不動産や家の相続については下記記事もご参考ください。
・不動産名義変更を完全解説!流れ・費用・必要書類・期間を紹介!
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遺産分割とは:3つの手続き方法
ここまで、遺産分割は「現物分割」・「換価分割」・「代償分割」・「共有分割」四つの種類があり、それぞれどんな意味があり、どんな時に利用すれば良いのか解説してきました。
ここからは、遺産分割の手続き方法について解説していきます。こちらも確認しておくようにしましょう。
遺産分割協議
亡くなった人の遺産を相続する人が複数人(二人以上)いる場合、誰がどの遺産をどれだけ受け取ることができるのかということは、遺言状がない限り、相続する人全員で決めていけなくてはいけません。
亡くなった方の財産を相続して自分のものにするためには、相続する人全員と話し合いを行い遺産分配の手続きをする必要があるのです。
この相続する人全員での話し合いのことを『遺産分割協議』と言います。遺産相続する際には、最も重要な手続きであるといえるでしょう。
遺産分割調停
遺産分割調停とは、遺産を相続する人が複数人いて、相続人全員と相続する遺産をどのように分け合うのか話し合いをしていたが、どうしても折り合いがつかなかった場合に家庭裁判所で調停や審判の手続きを行うことです。
遺産分割調停でおこなうこと
遺産分割調停では、家庭裁判所の調停員が間に入り、お互いに配慮しながら話し合いを進めてくれます。
出来る限り当人同士での話し合いで解決できれば時間もお金もかからず良いとは思いますが、どうしても折り合いがつかない場合は遺産分割調停を選択することを考えてみましょう。
遺産分割調停の費用と必要書類
遺産分割調停では、申立書や戸籍謄本の他、遺産となる預貯金の残高証明書などが必要になります。その他手数料として1,200円の収入印紙が必要となります。
遺産分割審判
遺産分割審判とは、遺産を相続する人同士で遺産分割調停での話し合いでも折り合いをつけることができず、合意に至らなかった場合に進むことができる方法です。
遺産分割調停の場合は、調停員を介して遺産の分割について話し合いを行うものなので、相続する人の意思を尊重しながら進め、決めていくことができます。
遺産分割審判になると、遺産分割について相続する人の意思が尊重されるものではなく裁判官が決定するものとなるため、双方の合意に基づくものではありません。
遺産については下記記事もご参考ください。
・遺産相続を完全解説!手続き・流れ・注意点を紹介!
・遺産相続手続きを完全解説!流れ・必要書類・費用・期限を紹介!
遺産分割の流れ
ここまで、遺産分割とはどういう意味なのか、相続と何が違うのか、何をしなくてはならないのか、どんな種類があるのかということを解説してきました。
遺産分割にも色々な種類や手続き方法があり、確認しておかなくてはならないことがあるということをお分かりいただけたかと思います。
ここからは、遺産分割をどうやって行っていけばよいのか、遺産分割の進め方について確認していきましょう。
遺言書の有無を確認
遺産分割の話が出た場合は、遺言書の有無を確認する必要があります。
遺言書とは?
遺言書とはどういったものなのでしょうか?
遺言書とは、自身の財産を誰にどのように分けて相続してもらうのか、どのように処分してもらいたいのかなど自身が亡くなった後の財産についての取り扱いについて意思が書かれている文書のことです。
遺言書の有無によって、誰が何をどのくらい相続するのかということが変わってくるので亡くなった方が生前、遺言書を残しているのかどうか確認することはとても重要です。
必ず遺言書の有無を確認するようにしましょう。
遺言書については下記記事もご参考ください。
・遺言書の書き方を徹底解説!ケース別文例・有効な書き方を解説!
・遺言書の書き方を完全解説!効力・有効な遺言書の書き方を紹介!
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相続財産の確認
亡くなった方の財産を相続する場合、その方がそのような相続財産を持っていたのか、何がどのくらい存在するのか確認する必要があります。
「きっと預金くらいしか財産はないだろう」、「自分が相続するからもう少し落ち着いてから確認しよう」などのんびりしていると、
「早く確認しておけば良かった」、「大変でもあの時やっていれば…」と後悔してしまうことも出てくるかもしれません。
相続財産は預金に限らず、有価証券や自動車、ゴルフ会員権、骨とう品など広範囲にわたり存在します。
最近ではネット上で管理される方も多く、パスワードがわからず情報収集に時間がかかってしまうこともあります。
共有されていない相続財産の確認を確認することはとても大変ですが、遺産相続や遺産分割などへのステップに進むために重要なことです。
早めに確認しておくようにしましょう。
相続人の確定
相続の確定とは、遺産相続についての話し合いの場に誰が参加すべきなのか、参加しなくてはならないのかを確認することです。
遺産分割協議を行う際、相続する人全員の出席が必要です。
そのため、遺産分割協議を始める前に確認しておく必要があります。相続する人の自己申告や多分この人もだろう、という甘い考えは厳禁です。
相続人を確認していく中で、誰も知らなかった「隠し子」や「前妻の子」などが発覚する場合もあります。
先程も記載しましたが、遺産分割協議を行う際は、相続する全員の参加が必要です。
全員が参加しないまま話し合いを進め決定したとしても無効になってしまいます。必ず、遺産分割協議の前に確認しておくようにしましょう。
法定相続割合
法定相続割合は、民法900条で定められています。
遺産を相続する場合、どうやって割合を決めるのか均等割りということも話し合いで決まったのであればもちろん良いですが、配偶者がいる場合と配偶者がいない場合によって計算式が違います。
更に子どもがいると割合もそれぞれ変わってきます。養子・非摘出子でも法定相続割合が決まっています。
相続する人がどのような家族構成にあるのかなど確認しておく必要があるでしょう。
法定相続については下記記事もご参考ください。
・法定相続分を完全解説!範囲・割合を紹介!
・法定相続を完全解説!範囲・割合を紹介!
遺産分割協議
『遺産分割協議』は前でも説明したように、相続する人全員で話し合いを行い、誰がどの遺産をどれだけ受け取るのかということを決める話し合いです。
以下のような条件に当てはまる場合には遺産分割協議を行う必要があります。
・遺言状を作成しないまま亡くなってしまった
・遺言状作られていたが、遺言状に記載のない財産がある
・遺言状に誰がどのくらい受け取るのかという割合しか記載されていない
遺産分割協議は、遺産の分配について話し合うことですが必ずこういう形で分配しなくてはならないなどの分配に関する決まりごとはありません。
相続する人全員が分配に関して同意すれば、どのような分配内容でも構いません。
言ってしまえば、相続する遺産を必ず相続する人全員で分配しなくてはならないわけでもありません。分配するということが絶対ということでもないのです。
相続する人が複数人いてもその中の一人が全てを相続する、という内容に相続する人全員が同意すれば、そのような分配方法でも何の問題もありません。
遺産分割協議書にまとめる
次に、遺産分割協議書について解説していきます。
遺産分割協議とは?
遺産分割協議書は、遺産分割協議を行いその結果、遺産の分配方法について相続する人全員の合意が得られた場合に作成する文書のことです。
遺産分割協議書は、遺産分割協議での話し合いがまとまった証なのです。
遺産相続する人全員が話し合いの内容を理解し、合意し異論がないことを証明するために作られる文書になるので、全員の署名・押印(実印)が必要となります。
遺産分割協議書でおこなえること
遺産分割協議書は、不動産名義の変更や、相続の際の手続き、相続税の申告、凍結されていた銀行預金の引き出しなど様々な手続きに使用されます。
そのため、署名・押印は重要で、押印については実印でなくてはならないのです。
また、遺産分割協議書には印鑑証明書や戸籍謄本等の添付も必要となります。
法的に、遺産相続に関する分割の話し合いが終了し、誰が何を相続するのかということが明確になったことを示すものでもあるので、とても重要な書類となります。
遺産分割協議書は必ず必要か?
遺産分割協議書は絶対に作らなければならないかというと、そういうわけではありません。遺産分割協議書が無くても相続はおこなえます。ただし家や土地などの不動産の遺産分割では遺産分割協議書が必要です。
話がまとまらない場合は調停(裁判)を行う
相続する人が複数人いる場合、どのように遺産を分配するのか相続する人全員で話し合いを続けていたが、どうしても遺産の分配方法について折り合いをつけることができず決まらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停の手続きへと進めます。
調停では、調停員が相続人全員の話を聞き、解決に必要な助言を行いながら分配についての合意を目指し話し合いが進められます。
それでも分配について決めることができなかった場合は遺産分割審判へと進むこととなります。遺産分割審判は、裁判官が分割に関する決定を行います。
遺産相続については下記記事もご参考ください。
・遺産相続手続きを完全解説!流れ・必要書類・費用・期限を紹介!
・相続を完全解説!相続の方法・手続き・費用・流れを紹介!
・遺産相続を完全解説!手続き・流れ・注意点を紹介!
事前に知っておきたい、遺産分割で揉めやすいケース
遺産を相続する人が複数いた場合、遺産分割協議での話し合いがすんなりまとまれば良いのですが、すぐにまとまるケースばかりではありません。
昨日まで仲の良かったはずなのに、遺産分割の話になり揉めてしまい、泥沼化してしまうということも少なくありません。
ここからは、どんな時揉めてしまうのかなどまとめてみました。ぜひ参考にしてください。
子どもたちだけが相続人の場合
両親が亡くなり、両親の遺産の相続人が亡くなった両親の子どもたちだけだった場合、兄弟姉妹血のつながりのある人たちだけなので話し合いがスムーズに進むのではと思われるかもしれませんが、実は意外と揉めることの多いケースの一つです。
揉める原因の一つは、子どもたちに影響力のあった両親が亡くなり、各人の不満を抑える人がいなくなってしまったことが大きいのではないかと思われます。
遺産に関しての不満が原因となる
今までは「お父さんの言うことだから…」、「お母さんが言うなら…」と両親の言うことには理解を示していた人もその存在がいなくなった途端、遺産を巡り今までの不満が噴出してしまう場合があります。
もちろん揉めるケースばかりではないので、「揉めてしまったらどうしよう…」とビクビクする必要はありません。
また、揉めてしまったからといってあなただけが我慢する必要もありません。
揉めてしまっても焦らないことが一番です。
揉めてしまった場合は、遺産分割協議や調整など第三者を踏まえて解決に向けて話し合いが出来る方法を選択してみましょう。
遺産が実家の不動産のみの場合
遺産が現金であればわかりやすいですが、実家の不動産のみだった場合。あなたは1階の部屋、私は2階の部屋…なんて、うまく分け合うことが出来ないですよね。
どういった場合、どのように考えていくのが良いのでしょう。
・誰が相続するか?
そもそも、実家の不動産は誰が相続するものなのでしょうか。
すべての血縁関係にある人が相続できる対象者になるわけではありません。
基本的には、配偶者のほか、子ども、父母、兄弟姉妹が対象になります。
その中でも優先順位も決められています。配偶者は順位に関係なく相続する対象者になります。
次に、子ども→父母→兄弟姉妹という順位で相続対象となります。亡くなった方が遺言状を残していた場合は、この限りではありませんので注意が必要です。
・不動産の評価
相続する対象が不動産だった場合、土地や家などどのくらいの価値があるのかを知らなくては分配や相続も進まないことがあるかと思います。
ではどうやって知ることができるのか、家や土地を査定してもらう?それも価値を知るための方法の一つであるかもしれませんが、時間がかかってしまいます。手っ取り早く知る方法として、固定資産納税通知書を確認してみると良いでしょう。
固定資産納税通知書とは?
固定資産納税通知書には、各市区町村による不動産の評価額が記載されています。
そのため、おおよその価値を知るためには多いに役立ちます。
但し、固定資産納税通知書の評価額を元に話し合いを行う場合、土地については、2割~3割減で記載されていることが一般的なので注意が必要です。
不動産については下記記事もご参考ください。
・不動産相続を完全解説!手続き・費用・相続税・節税方法を紹介!
・家の名義変更を完全解説!流れ・費用・必要書類・期間を紹介!
・土地相続を完全解説!手続き・費用・必要書類・期間を紹介!
寄与分を主張する相続人がいる場合
そもそも寄与分とはどういうものなのでしょうか。
寄与分とは?
寄与分とは、遺産の維持など特別に貢献した人がいる場合、貢献した相続人の遺産を他の相続人よりも多く分配することです。
例えば、両親の介護が必要となり兄弟姉妹の中で全てを一人が行ってきた場合、経済的・肉体的・精神的・介護にかかる時間は計り知れないものだったでしょう。
介護を頑張ってきた分を寄与分として相続の話し合いの場で主張すること、そして介護を全くしてこなかった相続人が、平等に分けようと言ってしまうこともよくあるケースと言えます。
その主張のへだたりにより大きく揉めてしまうのです。ですが、一度立ち止まって考えてみてください。
自分の両親の介護を全て引き受けてくれたのです。
介護したから何なの!と否定するのではなく介護してきた状況を聞き、労力と努力やその思いに感謝の気持ちを示してあげることも考えてみましょう。
本当に誠心誠意、介護をしてくれていたのであれば、やはり大きな心を持って対応してあげることも大切ではないでしょうか。
もちろん状況を聞き、寄与分の主張に値しないと感じたのであれば、話し合いを行いましょう。
どうしても解決が見込めない場合は、家庭裁判所で調停・審判へ進む道を選択も検討してみると良いでしょう。
特別受益を受けた相続人がいる場合
特別受益とは?
特別受益とは、亡くなった方の遺産を相続する人が複数人いた場合、その中の一部の相続人だけが遺産の持ち主から生前贈与などにより、特別に利益を手に入れることを言います。
特別受益を受けた相続人は、特別に手に入れた利益分を、遺産として相続する分配分に合算します。
とはいえ、生前贈与などで特別受益を受けたものをなんでもかんでもすべて特別受益として合算して考えるものではありません。
但し下記の場合は、特別受益として相続する分配分と一緒に合算して考えます。
・婚姻のための贈与されたもの
・養子縁組のための贈与されたもの
・生活していくための資金としての贈与されたもの
半血のきょうだいがいる場合
半血きょうだいという言葉はあまりなじみがない言葉ではないでしょうか。
半血きょうだいとは?
半血きょうだいとはどういう意味なのでしょう。半血きょうだいとは、父親、又は、母親の一報だけが異なる兄弟のこと、異母兄弟のことです。
半血きょうだいだけではなく、全血きょうだいという言葉もあります。
これは、父親、母親が同様の兄弟のことです。
全血きょうだいには相続する権利はあると思うが、半血きょうだいに遺産を相続する権利があるのか?と思われる方もいるかもしれません。
全血きょうだいと同等の権利ではありませんが、半血きょうだいにも受け取る権利があります。
>>養子縁組の相続を完全解説!養子が受取れる相続分・節税効果を紹介!
遺産分割についての注意点
ここまで、遺産分割とは何か、遺産分割の手続きや流れなどを解説してきました。
ここからは、遺産分割の様々なケースを取り上げその場合の注意点を解説していきたいと思います。ぜひ、参考にしてください。
遺産分割終了後に遺言書が出てきた場合
遺産分割の話し合いがようやく終わったと思った矢先に、遺言書が出てきてしまった場合、話し合いでまとまった遺産分割についてはどうなってしまうのか、とても気になりますよね。
遺産分割協議よりも遺言書が優先される
結論から申し上げますと、遺産分割協議が終わって分割方法についての話がまとまっていたとしても、遺言書が見つかった場合は遺言書が優先されます。
なんとか回避する方法はないものか…と考える方もいらっしゃるでしょう。
例えば、遺言書の中に記載されている相続対象者が、今回の遺産分割の話し合いの場にいなかった人だとします。
遺言書によると遺産を受け取ることが出来るはずですが、本人が受取を放棄すれば、遺産分割の話し合いの内容で進めることができるかもしれません。
また、遺産分割の話し合いに参加していた一部の人が話し合いの結果よりも多く受け取ることができる内容が遺言書に記載されていた場合、その対象者が遺産分割協議で決まった内容で進めて良いと同意すれば、遺産分割の話し合いで決まった内容で進めることができるかもしれません。
当然、どちらのパターンであっても同意したことを書面で残す必要があります。
とはいえ、遺産を放棄することについて同意を得ることは容易なことではないと思います。
やはり、遺言書が本当に存在しないのかということを遺産分割協議の前にしっかり確認しておくことが必要でしょう。
借金を相続したくない場合
亡くなった方に財産と借金があった場合、財産を相続する人が借金も背負うことになります。
財産相続を放棄すれば返済の義務はない
但し、財産相続を放棄すれば、亡くなった方の借金を背負うことなく返済の義務はなくなります。
借金を背負いたくないからと安易に財産放棄をするということはあまりお勧めしません。
もしかしたら、借金を上回る財産を相続する可能性もないとは言い切れないからです。
財産放棄をするのか、相続するのかは、相続する人がどちらを選ぶか選択することができます。
財産と借金を把握してから相続を放棄してもよい
亡くなった方の財産と借金がどのくらいあるのか、相続した場合はプラスになるのかマイナスになるのかをきちんと把握してから放棄するのか相続するのかを考えても遅くはないと思います。
但し、放棄する場合は相続放棄の手続きを家庭裁判所で行う必要があり3カ月の期限もあるので、いつまでに判断しなくてはならないのかも確認しておくようにしましょう。
相続放棄と遺産放棄の違い
相続放棄は家庭裁判所に申立てを行う法律手続きのことをさし、遺産放棄は遺産分割協議で、遺産を相続しないことを話し合いで決める方法です。遺産分割協議書にも遺産放棄したと記載されます。
連絡のとれない相続人がいる場合
相続する人の中に連絡が取れない、音信不通の人がいたとしてもその人を抜きにして遺産分割協議を進めることはできません。
遺産分割協議は相続する人全員が参加しなくてはならないからです。
では、どうすればよいのでしょう。
連絡が取れない、音信不通の人が相続する人の中にいる場合は、家庭裁判所でその人の代わりになる代理人を選出(不在者財産管理人)し、代理人として参加をしてもらう、又は失踪宣言を法的に行い対応するとよいでしょう。
不動産の遺産分割をする場合
不動産の遺産を分割する場合は、「換価分割」・「代償分割」・「共有分割」のどの方法を選択するのかを考えなくてはいけません。
換価分割は、不動産を現金化して相続人全員で分割する方法、代償分割は、不動産を相続人の中の一人が相続し、その他の相続人に分配相当分を現金で支払う方法、共有分割は、不動産を複数の相続人と共に共有財産として保有する方法です。
一番わかりやすい方法は、換価分割ですがケースによって必ずしも良い選択肢かということは言い切れません。
なかなか決めきれない、揉め事へと発展してしまう可能性があるなどの場合は、弁護士に相談することも選択肢の一つとして覚えておくと良いでしょう。様々なケースを想定して提案してくれるはずです。
遺留分侵害権請求が発生する場合
遺留分侵害権請求とは、本来相続できるはずだった遺産を金銭として取り戻すための請求です。
本来であれば相続する権利があるはずですが、遺言書に名前がなく相続することが出来ないということがあった場合、遺言書に書かれていたとしても一定範囲の権利が侵害されないよう不公平がないようにするためのものです。
遺留分侵害権請求については下記記事もご参考ください。
・遺留分侵害額(減殺)請求を完全解説!侵害された財産を取り返し方を紹介!
・遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介!
・相続遺留分とは?割合・取り戻す方法・費用を紹介!
遺産分割しない場合の注意点
一人の人が全て遺産を相続する場合は、亡くなった方の遺産がどれくらいあるのか、借金がどれくらいあるのかを全て把握しておく必要があります。
もしも、複数相続する人がいるにも関わらず自分一人が相続する場合は遺産と借金以外にかかる経費についても確認しておきましょう。
他の相続する人から、葬式費用などは相続人が持つべきだなどの意見も出てくるかもしれません。
一人で相続する場合は、細かいところまで確認して遺産分割協議書に記載しておくと良いでしょう。
相続人の中に未成年がいる場合
相続する人が未成年という場合もあるかもしれません。未成年は遺産相続できるのか?と思う方もいるかもしれませんが、未成年でもれっきとした相続人です。
遺産の相続をすることが可能です。但し、相続人が複数いる場合に行う分割協議の話し合いに参加することはできません。
未成年の場合、法律行為を行うことが出来ないからです。未成年の相続人は話し合いの場で対応してくれる代理人を立てる必要があります。
相続人の中に認知症の人がいる場合
遺産を相続する人が複数いる時、ほとんどの場合、遺産分割協議の話し合いで誰がどれくらい遺産を相続するのか決めていくことになります。
もしもその中の一人が認知症だった場合、適切な話し合いが出来ない可能性はありますが、だからといって、相続人としての権利がなくなるということはではありません。
認知症でも遺産を受け取ることは可能です。遺産分割協議を行う際、認知症の相続人の代わりに代理人を立てて話し合いを行うと良いでしょう。
代理人は、文書への署名は行うことが出来ません。遺産分割協議書への署名・捺印は必ず本人が行わなくてはならないので注意しましょう。
内縁の妻がいる場合
内縁の妻には相続権がないため、相続人になることはできません。ただし、遺言書で財産を渡すことが書かれていれば、財産を受け取ることができます。詳しくは『内縁の妻は相続可能?内縁関係の財産継承方法を完全解説!』をご覧ください。
相続については下記記事もご参考ください。
・遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!
・相続登記を完全解説!意味・流れ・費用を紹介!
・相続を完全解説!相続の方法・手続き・費用・流れを紹介!
遺産分割についてのまとめ
「遺産分割」について特に重要となるポイントを下記にまとめました。
【遺産分割とは?】
●遺産分割(いさんぶんかつ)とは、遺産相続した人たちで遺産を分け合うことをさす
●相続とは、亡くなった人の遺産を配偶者や子供が引き継ぐことだが、遺産分割とは、亡くなった人の遺産を相続する人が複数人(二人以上)いて、誰がどの遺産をどれだけ受け取るのかということを決めること
【遺産分割の方法】
●現物分割
-現物分割とは、亡くなった方が残した遺産をそのままの状態で相続すること
●換価分割(かんかぶんかつ)
-換価分割とは、遺産を現金化して相続する人全員で分割して相続すること
●代償分割
-代償分割とは、現金ではない不動産や物品などの遺産を一人の相続人がすべて相続し、その他に相続するはずだった人へ、全ての遺産を相続した人が相続したものの代わりにお金を渡すこと
●共有分割
-共有分割とは、相続できる遺産が土地や家だった場合、遺産として相続したまま相続する人全員で土地や家を持ち続けること
【遺産分割の手続き方法】
●遺産分割協議
-相続する人全員と話し合いを行い遺産分配の手続きをする必要があり、この話し合いを『遺産分割協議』という
●遺産分割調停
-遺産分割調停とは、遺産を相続する人が複数人いて、相続人全員と相続する遺産をどのように分け合うのか話し合いをしていたが、どうしても折り合いがつかなかった場合に家庭裁判所で調停や審判の手続きを行うこと
●遺産分割審判
-遺産分割審判とは、遺産を相続する人同士で遺産分割調停での話し合いでも折り合いをつけることができず、合意に至らなかった場合に調停員を介して遺産の分割について話し合いを行うこと
【遺産分割の流れ】
①遺言書の有無を確認
②相続財産の確認
③相続人の確定
④法定相続割合を確認する
⑤遺産分割協議
⑥遺産分割協議書にまとめる
⑦話がまとまらない場合は調停(裁判)を行う
【遺産分割についての注意点】
●遺産分割終了後に遺言書が出てきた場合は、遺言書の方が優先される
●借金を相続したくない場合は、財産相続を放棄すれば返済の義務はない
●連絡のとれない相続人がいる場合は、家庭裁判所でその人の代わりになる代理人を選出(不在者財産管理人)し、代理人として参加をしてもらう、又は失踪宣言を法的に行い対応する
●不動産の遺産を分割する場合は、「換価分割」・「代償分割」・「共有分割」のどの方法を選択するのかを考えなくてはいけない
●未成年も相続人になれるが、分割協議の話し合いに参加することはできない。遺産分割の方法や、手続きについて、遺産分割の流れや注意点など解説してきました。未成年の相続人は話し合いの場で対応してくれる代理人を立てる必要がある
●相続人の中に認知症の人がいる場合は、遺産分割協議を行う際、認知症の相続人の代わりに代理人を立てて話し合いを行うと良い
身近な人が突然亡くなり、思いもよらず遺産相続の話が出ることもあるでしょう。
そんな時でも、頭の片隅に知識としてもっておけば慌てることなくスムーズに対応できます。
「知っておけば良かった」などの後悔をすることもないでしょう。この機会にぜひ覚えていただき、お役立ていただけたらと思います。
やさしいお葬式では相続の専門家をご紹介させて頂いております。いつでもご連絡ください。
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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール