遺言書は財産の分配方法などを記載した非常に重要な書類です。遺言書が原因で親族とトラブルになる可能性もあります。本記事では、遺言書の書き方や法務局における遺言書保管制度や家庭裁判所による検認、遺留分についてまで詳しくご紹介していきます。
2021/8/13 情報更新
遺言書は財産の分配方法などを記載した非常に重要な書類です。
お金が関わることなので、相続人としても内容が気になるところでしょう。
それゆえにトラブルとなる可能性も大いに含んでいます。
お金は大切ですが、そのために周囲の人間が争うというのはとても悲しいことです。
そうした事態を避けるためにも正しい遺言書の書き方を知り、残された方がスムーズに財産を引き継げるようにしておきましょう。
INDEX
遺言とは?
それではまず、遺言についての基本的な知識についてご説明します。
遺言とは?
「遺言」とは、被相続人(相続可能な財産を遺して亡くなった方)が自身の財産について「どのような形で遺したいのか?」という最終意思決定表示をしたものです。
遺言の意義
被相続人の財産がどのように相続人に引き継がれるかは、民法の内容によって定められているのが基本です。
法定相続人の対象者
ここで定められている相続人のことを「法定相続人」と呼び、具体的には以下のような形で分類されます。
・被相続人の配偶者
・直系卑属(被相続人の子供)
・直系卑属(被相続人の両親)
・傍系血族(兄弟姉妹)
法定相続分とは?
この法定相続人の中で、具体的にどのような配分で相続するのかを「法定相続分」という形で定めています。
ただし、これはあくまでも相続における基本にすぎません。
もともと財産というものは、被相続人の方が築いてきたもの。
そのため、被相続人が亡くなった後も「相続に関する故人の意向」を無視することはできません。
この意思を尊重できるよう、法的には遺言書の方が強い効力を持っており、故人の意向が強く反映されることが多いのです。
もちろん被相続人の遺言全てが適用されるわけではありません。
それらが法律の要件を満たしているかはチェックする必要があるでしょう。しかし特に遺言の内容に問題がなければ法的拘束力を持つことになります。
このように、被相続人の意思をきちんと反映させることこそが遺言の意義と言えるでしょう。
法定相続について詳しくは下記記事をご参考ください。
・法定相続を完全解説!範囲・割合を紹介!
・法定相続分を完全解説!範囲・割合を紹介!
遺書と遺言書の違い
「遺書」と「遺言書」は似ている言葉ですが、意味は全く違います。
「遺書」は亡くなる前に自分の気持ちやご遺族に伝えたかったことなどを書き遺している物。
それに対して「遺言書」は、遺った財産の分配方法を記した法的拘束力のある物です。
そのため法的拘束力を持たせられるように、「文章の書き方」「遺言書の効力を及ぼせる範囲」などが法律に則っている必要があります。
遺言書といえど、全てを被相続人の願い通りにできるわけではないので注意しましょう。
逆にいえば、例え遺書であっても遺言書としての要件を法律的に満たしていれば、遺言書として機能するということです。
遺言書について詳しくは下記記事をご参考ください。
・遺言書の書き方を徹底解説!ケース別文例・有効な書き方を解説!
・遺言とは?意味・種類・書き方・効力を紹介!
・遺言状を完全解説!種類・書き方・扱い・効力を紹介!
遺言の種類
遺言書には遺産分配に関わる重要事項が記載されているため、万が一にも改竄されるようなことがあってはいけません。
そのため、偽造等を防ぐために大きく以下の2つの方式に分類して作成されます。
普通方式
こちらは一般的に利用されている遺言書の方式です。さらにこの普通方式は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」に分類されます。
これらの詳しい内容は後述しますが、基本的には被相続人が自ら文章を書く「自筆証書遺言」が選択されることが多いです。
特別方式
この特別方式は、「普通方式では遺言の作成が困難である」と判断された場合にのみ適用可能なもの。具体的には以下のような場合に選択可能です。
◎応急者遺言
これは、怪我や病気などで被相続人に死期が差し迫っている場合に作成可能な遺言のことです。
3名以上の証人立ち会いのもと、被相続人がそのうちの1人に対して遺言内容を口頭で伝え、内容を受けた証人がそれを筆記します。
それを証人全員で内容が正しいかを確認した後、署名・押印するという流れです。
作成した遺言は、作成日から20日以内に家庭裁判所の承認を得ないと無効になるので注意しましょう。
◎船舶遭難者遺言
こちらは、船舶や飛行機などの乗り物内で死亡の危機が差し迫った場合に作成可能な遺言のことです。
先ほどの応急者遺言とは異なり証人は2名以上で問題ない上に、証人が聞いた内容を必ずしも筆記する必要がありません。
ただしこちらも家庭裁判所の承認を得る必要はあります。
◎隔絶地遺言
これは、「感染病などにより隔離されている方」「服役中の囚人」などが作成可能な遺言のことです。
一般社会から離れた場所にいると認定された場合に適用されます。立会人として認定される者は状況によって様々。
囚人であれば警官1名と証人1名以上を以って認定され、船舶内であれば船長あるいは事務員1名と証人2名以上を以って認定されます。
いずれの状況もかなり特殊であるため、基本的には「普通方式」に則り遺言書を作成することになるでしょう。
相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
遺言書の種類と作成方法
それでは上記でご紹介した中から、一般的に使うことが多い「普通方式」の遺言書の内容を詳しくご説明します。
自筆証書遺言
最も簡易的で一般的な作成方法です。
自筆証書遺言のメリット
被相続人自身が、日付・氏名・文章・捺印などを全て記入し保管しておきます。
特に証人等や特別な手続きが必要ないため、気軽に自分のタイミングで作成できるのが特徴です。
また、定められた書式もないため自由に書くことができます。
自筆証書遺言のデメリット
ただし、「誤字脱字がある」「遺言の内容が曖昧」「作成年月日がない」「署名押印がない」など、遺言書としての要件を満たさない部分があると、些細なミスであっても内容自体が無効になる可能性もあるので注意しましょう。
誰かに内容を精査してもらうわけではないので、こうしたリスクは免れません。
さらに遺言状の場所を伝える前に亡くなってしまった場合、探すのにも一苦労な点も課題です。
公正証書遺言
「公正証書遺言」は、公証役場に行き作成する遺言書です。
まずは被相続人が公証人に対し、「自分が遺言書に記載したい内容」を口頭で述べ、それを公証人が文章で記録し遺言書を作成します。
そしてこの内容で誤りがなければ、「被相続人」「公証人」「2名以上の証人」それぞれが署名・押印を行い、公証役場にて保管するという流れです。
公正証書遺言のメリット
この方法であれば、公証人によって「遺言内容がきちんと法律に則っているかどうか」ということを確認してもらえるため、後から記載不備が見つかり遺言内容が無効になるという心配がほぼありません。
また、自分で保管しなくもいいので破損や紛失の恐れがほぼ0になります。
相続人側からすると、被相続人が亡くなってから慌てて遺言書を探す負担も無くなるでしょう。
公正証書遺言のデメリット
ただし、公証役場に行く必要があるためその手間と時間は掛かります。依頼するための手数料も必要です。
さらに証人を司法書士などに依頼する場合はその分の費用もあるため、自筆証書遺言と比較すると手間、費用が掛かる方法となります。
秘密証書遺言
こちらは、証人2名以上と一緒に公証役場へ遺言書を持ち込み、「遺言書が存在している」ということを保証してもらう方法です。
署名と押印は被相続人自身のものが必要ですが、それさえあれば遺言書自体は代筆してもらったりPCで文章を作成したりしても問題ありません。
秘密証書遺言のメリット
遺言書の保管は被相続人自身で行いますが、その中身までは公証人に知らせる必要がないため「亡くなるまでは遺言書の内容を知られたくない」という方にオススメです。
秘密証書遺言のデメリット
秘密証書遺言のデメリットは、公正証書遺言と同様に費用や手間がかかることです。手数料は11,000円支払う必要があります。また証人も2名必要です。さらに、保管は自身で行う必要があり銀行の貸し金庫や弁護士へ預けるなど、紛失対策も考えなければいけません。
相続について詳しくは下記記事をご参考ください。
・遺産相続の兄弟の割合・トラブル・手続きを完全解説!
・内縁の妻は相続可能?内縁関係の財産継承方法を完全解説!
・遺贈を完全解説!相続との違い・流れ・控除内容を紹介!
遺言書の効力
このように様々な形式で被相続人の意思を守る遺言書ですが、当然どんなことでも思い通りにできるというわけではありません。
遺言書が及ぼす効力の範囲は法律で定められています。では具体的にどのような効力を持つのでしょうか?
遺言書の執行に関する効力
被相続人が亡くなり残された子供が未成年であった場合、そのままでは財産の相続手続きなどの法律行為を行うことができません。
そのため、法定代理人としての役目を果たす「後見人」を遺言書に記載しておくことが可能です。
相続分の指定
被相続人の財産は、「法定相続分」という法律で定められた割合によって相続人へ分配されるのが基本です。
しかし遺言書がある場合は、そこに書かれている割合によって分配されるようになります。
ただし全てが遺言書の通りに分配されるとは限りません。
遺留分とは?
法定相続分とは別で「遺留分」というものが存在しており、これは「遺言書の内容に関わらず、相続人に保証されている最低限度の分配割合(ただし兄弟姉妹は除く)」のことです。
例えば、遺言書に「全ての財産を配偶者ではなく愛人に贈与する」という記載があった場合、配偶者としては納得ができません。
そうした場合に相続人である配偶者は遺留分の請求を行うことで、法律に基づいた最低限の財産を受け継ぐことが可能となります。
遺留分について詳しくは下記記事をご参考ください。
・遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介!
・遺留分を完全解説!計算方法・侵害請求権の行使方法を紹介!
相続人の廃除
遺言書によって相続人を廃除することも可能です。
相続人の廃除となる例
例えば「生前相続人から虐待を受けていた」などの行為があった場合に、被相続人が希望すれば財産を相続させないようにすることができます。
ただし「相続分の指定」の部分でご説明した通り、相続人には遺留分制度によって最低限の分配割合が決まっているため、「全ての財産を遺さない」と記載しただけでは遺留分を主張されてしまうでしょう。
そのため以下のような条件を満たした場合には、「相続廃除制度」を行使することで相続権を剥奪することが可能です。
・被相続人に、ギャンブルなどの理由で借金を負わせたことがある相続人
・5年以上の懲役を受けたことがある相続人
・被相続人の財産を勝手に処分した相続人
・相続人である配偶者が愛人と同棲していた
・被相続人を虐待していた相続人
上記のような行為をした相続人は相続廃除の対象となります。
相続人の廃除を行使できる対象
ただし、相続廃除を行使できる対象は「遺留分を主張可能な相続人」のみです。
つまり、遺留分の主張ができない兄弟姉妹に関しては相続廃除を行うことができません。
その場合は、遺言書で「兄弟姉妹には財産を渡さない」という旨を書いておけば大丈夫です。
相続欠格制度
さらに、相続排除制度に加えて「相続欠格制度」もあります。
この相続欠格は、廃除の場合よりもさらに強い不正を行なった場合に適用可能です。
具体的には、以下の条件に当てはまる相続人に対して適用されます。
◎被相続人や他の相続人を意図的に殺害した(しようとした)場合
被相続人や他の相続人を殺害した、あるいは未遂の場合でもこの条件が適用されます。虐待も適用範囲です。
◎被相続人が殺害された事実を把握していたにも関わらずそれを告発しなかった場合
告発せずに犯人をかばった相続人も権利を失います。
◎被相続人を脅迫し、遺言書の内容変更を妨害した場合
自分に不利な分配内容とならないように、相続人が被相続人を脅迫などした場合は権利を失います。
◎被相続人を脅迫し、遺言書の内容を無理やり変更させた場合
上記と似ている状況です。例えば、被相続人を刃物で脅迫しながら自分に有利な内容で遺言書を作成させた場合に権利を失います。
◎遺言書の改竄・隠蔽・破棄を行なった場合
発見した遺言の内容を自分に有利なように偽造したり、その物自体を破棄した場合に権利を失います。
基本的に「相続欠格」を取り消すことはできません。
可能性としては、被相続人が生前に相続欠格者を許した上で、財産の生前贈与を行えばそれを受け取ることはできます。
しかし相続欠格になる要件はどれも犯罪に近しいものばかり。生前に許してもらえることはほぼないでしょう。
「相続廃除」に関しては、「被相続人に許してもらい家庭裁判所に相続廃除の取り消し請求を行う」あるいは「遺言書に相続廃除を取り消す旨を記載してもらう」のいずれかで取り消すことは可能です。
相続人の身分に関する効力(認知)
被相続人に隠し子がいた場合、遺言書の中で「自分の子供であると認知する」という旨を記載することで、その子供にも相続権を与えることができます。
相続人相互の担保責任の指定
もし相続された遺産に「欠陥があった」「実は他人のものであった」という問題が発生した場合、それに伴う責任は相続人が背負うことになります。
これは「担保責任」と呼ばれており、担保責任が発生するような不測の事態に備えて、遺言書の中に「責任を負う者の指定」「担保責任の負担割合」を記載することができるのです。
相続財産の処分
基本的に被相続人の財産は法定相続人に相続されます。
しかし、「それ以外の第三者や慈善団体などに対し財産を分配する」という旨を記載しておくことも可能です。
このように、遺言によって法定相続人以外の人や法人に財産が渡ることを「遺贈」と呼びます。
この財産を受け取るかどうかは、遺贈の対象となる「受遺者」の判断に委ねられるのが一般的です。
遺贈について詳しくは下記記事をご参考ください。
・遺贈を完全解説!相続との違い・流れ・控除内容を紹介!
・遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!
遺言執行者の指定または委託
被相続人の意思に基づき、遺言書の内容を実現するために動く方を「遺言執行者」といいます。
遺言執行者の役割
遺言執行者は遺言書の中で被相続人によって指定される方であり、「遺言の内容を正しく執行する」ということを目的にして大きな裁量が与えられた存在です。
もちろん遺言執行者に指名された方には報酬が与えられます。
報酬内容は基本的に遺言書に書いてある通りに支払われますが、記載が無ければ相続人と遺言執行者の間で話し合いが必要です。
それでも決まらなければ裁判所が介入することになります。
このような報酬もあるため、遺言執行者はどの相続人に対しても平等な立場を取ることが必須です。
もしも特定の相続人に有利となるような言動があった場合には、他の相続人から解任請求をされる可能性もあります。
相続人は原則として遺言執行者の妨げとなるような言動をできないので、厳格な運用が求められるのでしょう。
ただしこの遺言執行者は必ずしも選ばなくてはいけないというものでもありません。
遺産分割方法の指定と分割の禁止
遺言書の中で「どのように遺産分割をするか?」ということを指定することができます。
さらに、この遺産分割のやり方の決定を第三者に依頼することも可能です。
また、遺産分割自体を「相続開始の時から5年を超えない期間」の中で禁止することもできます。
遺産分割ではトラブルが起きやすいので、そうしたことを見越して一旦冷静に話し合える期間を設ける場合などに禁止することもあるそうです。
遺産分割協議とは?
遺留分侵害額請求方法の指定
先述の通り遺言書の分配割合に納得ができなければ、法律に基づき最低限の取り分である「遺留分」を請求することができます。
これを「遺留分侵害額請求権」といい、分配割合は以下の通りです。
◎配偶者のみ
遺産の1/2
◎配偶者+子供
配偶者→遺産の1/4
子供→遺産の1/4(複数人の場合は、1名あたり「1/4×人数分」で分配)
◎配偶者+ 親
配偶者→遺産の1/3
親→遺産の1/6(父母両方の場合は、1名あたり「1/6×2=1/12」で分配)
◎子供のみ
遺産の1/2(複数人の場合は、1名あたり「1/2×人数分」で分配)
◎親のみ
遺産の1/3(父母両方の場合は、1名あたり「1/3×2=1/6」で分配)
◎兄弟姉妹
遺留分無し
遺留分侵害額請求の流れ
上記は以下の流れで請求可能です。
まずは「遺留分を侵害された相続人」が「侵害している相続人」に対して遺留分侵害額請求を行います。
この時点で話し合いによって解決できるのが理想です。念のため、書面などで内容を記録しておきましょう。
話し合いで決まらなければ家庭裁判所での調停に移ります。
もしここでも決まらなければ、最終的に地方裁判所に判断を委ねることになるでしょう。
話し合いではなく、地方裁判所から出された判断に従って処理を進めることになります。
遺留分侵害額請求の時効
この遺留分侵害額請求には時効があるので注意してください。
「相続の開始や遺留分の侵害を把握した時から1年以内」「知らないうちに相続が開始されてから10年以内」のいずれかが時効になります。
相続開始自体を知らなければ10年間は請求できますが、知ってしまうと1年が時効となりますので気をつけましょう。
遺留分侵害額請求について詳しくは下記記事をご参考ください。
・遺留分侵害額(減殺)請求を完全解説!侵害された財産を取り返し方を紹介!
・遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介!
・遺留分を完全解説!計算方法・侵害請求権の行使方法を紹介!
遺言書の書き方
上記のように遺言書には様々な効力があります。
しかし記載不備があったりすると遺言書自体が無効になる危険性もあるため、間違えのない具体的な書き方をしっかり覚えておきましょう。
自筆証書遺言の書き方
大前提として、自筆証書遺言は全文を被相続人本人が手書きする必要があります。
仮に配偶者であっても代筆は認められていないため、一部でも代筆をしてしまうと遺言書が全て無効になるので注意しましょう。
当然録画や録音なども認められません。ただし、財産の一覧表(財産目録)作成に関してはパソコンで打ち込んでも大丈夫です。
遺言書の紙に特に規定はないため、便箋やレポート用紙でも問題ありません。
縦書きや横書きの規定もないので自由に書いてください。ペンは、文字が消えないようにボールペンや万年筆を使いましょう。
自筆証書遺言に書く内容
実際に書く内容ですが、以下のような事柄を抜け漏れなく記載することが必要です。専門用語を使う必要は全くありません。
それよりも「読む人が正確かつ具体的に内容を把握」できるように記載しましょう。
◎フルネームでの署名
◎作成した年月日
◎財産目録
財産の中には、すでに他人に譲渡したものなどが混ざっている場合があります。そうしたものを目録に入れてしまうと相続人を混乱させるため、財産すべてを正確に記載しておきましょう。
◎押印
押印は実印でも認め印でも構いません。
◎相続人の名前
必ず戸籍通りにフルネームで正しく記載しましょう。「娘」「長男」などはNGです。
◎どの財産のことを指しているのかを明確に記載する
例えば「土地は娘の△△に譲渡する」という記載があった場合、これがどの土地のことなのかを明確に記載しておく必要があります。
口座に関しても同様に「どの支店のどの口座」を相続するのかをはっきりさせておきましょう。
土地や不動産などを相続する際に起こりがちな問題です。
◎誰にどの財産をどのくらい相続するのか?
現金であれば「妻である××に●●●万円・娘の△△に◇◇万円」などのように明確に金額まで記載し、土地であれば「誰にどこの土地をどのくらいの広さで相続するのか」までを明確に記載しましょう。
「多め・少なめ・半分」などの曖昧な記載では、相続人同士のトラブルに繋がりかねません。
自筆証書遺言書保管制度の開始
これまで自筆証書遺言は、「自宅で保管する」というのが一般的でした。
しかし2020年7月からは「自筆証書遺言書保管制度」という制度が開始されました。
これにより紛失や改竄などのトラブルを事前に防げるようになりました。
法務局の専用ホームページから申請
まずは「法務局手続案内予約サービス」という専用ホームページで事前予約を行います。
数日後に「遺言書保管手続予約」というメールが届くので確認しておきましょう。
そして以下の必要書類を法務局に提出します。
・保管申請書(法務局のHPからダウンロード可能)
・自筆証書遺言書
・パスポートや運転免許証などの本人確認書類
・住民票
・手数料3,900円
これらを持参し当日の審査にクリアすると「保管証」を受け取れるので大切に保管しましょう。
再発行不可であるため要注意です。
また、この制度を利用して保管することによって、被相続人が亡くなった時に「死亡した事実が相続人に伝達される」ようになります。
これにより、相続人全員に対して平等に遺言書の存在が明かされることになるのです。
ただし、この制度が担当しているのはあくまでも「遺言書の保管」のみ。遺言書の内容が法的に問題ないかどうかのチェックまでは行われません。
公正証書遺言の書き方
基本的な記載内容は、上記の「自筆証書遺言」と同様です。必要な事柄を抜け漏れなく記載してください。
公正証書遺言の場合は、公証役場で証人と一緒に作成するのでそのための準備が必要です。
証人の選び方
まず証人の選び方ですが、「未成年者」「法定相続人や受遺者」「公証人の関係者」以外の第三者から指定します。
もしいなければ、費用はかかりますが公証役場に人材を紹介してもらうことも可能です。
そして指定した証人と共に公証役場へと行き、公証人に遺言内容を伝えて公正証書遺言を作成してもらいます。この時に必要な書類は以下の通りです。
・被相続人の本人確認書類
・被相続人と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
・被相続人の実印
・被相続人の印鑑登録証明書
・証人の認印
・不動産を相続する場合は、登記簿謄本や固定資産税評価証明書等の課税関係書類
これらの条件が揃って遺言書を作成することができます。手数料もかかるので用意しておきましょう。
秘密証書遺言の書き方
こちらも、基本的な記載内容は「自筆証書遺言」と同様です。
秘密証書遺言では、遺言書の保管自体は被相続人本人が行い、遺言内容も知られることがありません。
しかし「遺言書が存在しているという事実」を公証人及び証人2名に把握してもらうことが可能です。
遺言書が本当に本人によって作成されたかどうかでトラブルになることもあるため、それを回避するための手段として利用できます。
ただし、中身のチェックまでは行われないため「いざ中身を確認したら遺言書の内容が要件を満たしていなかった」ということで無効になる可能性もあるので注意しましょう。
秘密証書遺言の手続き手順
秘密証書遺言の手続き手順としては、まず遺言書持参で公証役場へ行き、公証人と証人2名の前で「自分の遺言書である」という旨を宣言します。
確認できたら公証人が遺言書の入った封筒に日付を記載し、その場にいる全員の署名及び押印を封筒に施して手続き完了です。
ただし、手続き費用として一律「11,000円」がかかるので注意してください。
秘密証書遺言はパソコンなどの手書き以外で作成しても大丈夫です。
また、もし遺言書自体に日付を書き忘れていても、封筒に日付が記載されるので無効になることもありません。
遺言書作成の費用相場
相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
遺言書は、上記のように様々な方法で遺言書を作成することができます。
もし「自分で遺言書を作成して要件を満たさなかった時が心配」ということがあれば、専門家に作成を依頼するのも一つの手です。
では、作成を依頼するとなるとどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
弁護士に依頼した場合
弁護士の場合は、相続財産の金額によって依頼費用が変動します。
しかし、よほど大量に財産を保持しているなどではない限り、一般的には10万〜30万円前後になることが多いです。
また、弁護士であれば法的な面での相談も可能なので、遺留分などの問題が起こりそうな場合にはあらかじめ弁護士に依頼しておくといいでしょう。
ただし、遺言書の作成とは別途費用がかかる可能性があります。
>>相続弁護士の選び方を完全解説!依頼の流れ・費用・期間を紹介!
司法書士に依頼した場合
司法書士は、財産の額に関わらずそこまで依頼費用に変動はありません。
7万〜15万円前後であることが多いです。
弁護士とは違い相続トラブルなど法的問題への対応は弱いですが、不動産メインの相続であれば司法書士の得意分野といえるでしょう。
ただし、相続に関しての知識、実務経験に課題がある専門家もおりますので、注意が必要です。
行政書士に依頼した場合
依頼費用は司法書士と同程度で、7万〜15万円前後であることが多いです。
行政書士は官公庁などへ提出する書類の作成をはじめとして、書面作成業務をメインとしていることがほとんどです。
そのため、書面作成であればかなり適任といえるでしょう。
司法書士と同じように相続トラブルなど法的問題への対応はやや弱いですが、言い換えれば「相続人が1名しかいない」など相続トラブルが起こりにくい状況であれば、安価に作成することができます。
ただし、相続に関しての知識、実務経験に課題がある専門家もおりますので、注意が必要です。
『やさしい相続』では「相続手続きの専門家」をご紹介しております。
信託銀行・信託会社に依頼した場合
信託銀行及び信託会社には「遺言信託」というサービスがあります。
これは、遺言書の作成や保管、及び遺言執行までを一貫して担当してくれるというもの。最後まで全ての面倒を見てくれるという面では安心です。
しかし、遺言信託費用は「基本手数料」「保管料」「修正手数料」「遺言執行費用」など段階に応じた料金体系であるため、合計するとかなり高額になります。
各社ごとのサービス内容にもよりますが、150万円前後〜200万円程度となることも珍しくありません。
そのため、費用的にどうしても財産に余裕のある方向けにはなってしまうでしょう。
信託について詳しくは下記記事をご参考ください。
・家族信託を完全解説!手続き・費用・認知症対策を紹介!
・家族信託を完全解説!手続き・費用・活用事例を紹介!
遺言書についてのポイント
これまで遺言書の書き方など、必要な要件についてご説明してきました。
それではこれ以外にも遺言書を作成する上でポイントはあるのでしょうか?
遺言書を勝手に開けてはいけない
遺言書はどの立場の人間であっても勝手に開封してはいけません。
なぜなら、最初にこっそり開封した人間の手によって中身が改竄される恐れがあるためです。
開封には家庭裁判所の検認が必要
正しく遺言書を開封するためには、家庭裁判所による「検認」を受けなければいけません。
検認があることによって、遺言書の内容が改竄されていないことの証明になるのです。
では「全ての方式の遺言書で検認が必要になるのか?」というと、必ずしもそうではありません。
家庭裁判所の検認が必要なのは、公証人に遺言書の中身を把握されていない「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」です。
「公正証書遺言」はあらかじめ公証人に中身を確認されているので、改めて検認する必要はありません。
遺言書があっても遺留分の請求が可能
先述の通り、法定相続人には最低限の取り分である「遺留分」が定められています。
そのため遺言内容に納得ができなければ、そのまま了承する前に一度「自分への分配割合は遺留分に沿っているのか?」を確かめてみましょう。
遺留分について詳しくは下記記事をご参考ください。
・遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介!
・遺留分を完全解説!計算方法・侵害請求権の行使方法を紹介!
遺言の保管サービスの利用
公正証書遺言は原本が役場に保管してあるため特に保管サービスを利用する必要はありません。
しかし自筆証書遺言と秘密証書遺言に関しては、先ほどご紹介した「自筆証書遺言書保管制度」を活用するといいでしょう。
自宅で保管するよりも確実に、かつ安全に遺言書を保管することができます。
遺言書をいつ書くか?
遺言書の作成に期限はありません。しかし、人はいつ亡くなるかわかりません。考えたその時から動き出すことが大事です。
そのため、ある程度の年齢を迎えたら元気なうちに遺言書を書いておくといいでしょう。
特に財産が複数ある場合は「どの財産を誰にどのくらい分配するのか?」について細かく考えなければなりません。
そのため、なるべく自分の判断力が衰えないうちに書いておいた方が安全です。
一度書いた遺言書の内容を変更や撤回をしたい場合
遺言書の変更や撤回は可能です。被相続人の意思を確実に反映したものを完成品としましょう。
遺言書の変更方法
基本的には、遺言書の原本をそのまま破棄するか、「古い遺言書の内容を破棄する」という旨を記載した新たな遺言書を作成することで変更できます。
公正証書遺言の変更方法
ただし公正証書遺言の場合は原本が公証役場にあるため、まず手元にある原本ではない遺言書を破棄し、その後「古い遺言書の内容を破棄する」という旨を記載した新たな遺言書を作成しなくてはいけません。
原本がないため、どちらのステップも踏む必要があるということですね。
ちなみに、新しく作成する遺言書の形式が、古い遺言書の形式と異なっていても構いません。
遺言書の開封・検認についての注意点
上述の通り、遺言書を開封する際には家庭裁判所の検認が必須。勝手に開封するのはNGです。ではこれに違反した場合どうなるのでしょうか?
家庭裁判所での検認が必要な遺言書
そもそも先述の通り、全ての遺言書で検認が必要というわけではありません。
検認の対象となるのは「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の2種類。
公正証書遺言は遺言書の原本が保管されているので、仮に開封されてしまっても改竄などにすぐ気付くことができるからです。
もし開封してしまったら?
もし勝手に開封してしまうと5万円以下の罰金が科されることがあります。
この無断開封は本人に悪気がない場合も多いため、これだけで相続人の権利が失われることはありません。
ただし、相続人が悪意を持ちながら遺言書を開封して改竄した場合は、相続人としての権利は失われます。
遺言書が簡単に開封されないための対処法
確実に遺言書を開封されないようにするためには「自筆証書遺言書保管制度を活用する」「公正証書遺言で作成する」の2点が確実でしょう。
これらの方法であれば、公的な機関に保管してもらうことが可能なので安心です。
とはいえ、上記の方法はある程度の費用がかかってしまいます。
そのため、お手軽な保管方法として「封筒を二重にしておく」というのもオススメです。
中の封筒に「勝手に開封してはいけない」という旨を記載したメモなどがあれば、それ以上見られることはほぼ無いでしょう。
相続について詳しくは下記記事をご参考ください。
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遺言書が無効となってしまうケース
せっかく書いた遺言書ですが、以下のような場合ですと無効となってしまうケースがあります。
遺言を書いた人が認知症だった
遺言書を作成している時に、故人に「遺言(判断)能力」があったかどうかにより遺言書が有効か無効か判断されます。仮に認知症が進行してしまっていた状態で書かれた遺言書であると、判断されてしまうと無効となってしまう可能性があります。
後のトラブルにならない為にも「遺言書を作成時に、遺言能力があった」という医療記録などを残しておきましょう。
遺言を書いた人が15歳未満だった
遺言書が有効となる年齢は15歳からと民法で決められています。その為、14歳以下の故人が書いた遺言書は無効となります。
遺言書が複数見つかった
遺言書が複数見つかった場合は、日付が最新のものが有効となり他の遺言書はすべて無効となります。また、例え最新の遺言書であっても、「令和元年7月吉日」など、正確な日付が判断できない遺言書は無効となってしまうので注意が必要です。
遺言書についてのまとめ
以上が遺言書に関する様々な知識です。改めて、今回ご説明した内容を確認しておきましょう。
・「遺言」とは、被相続人(相続可能な財産を遺して亡くなった方)が自身の財産について「どのような形で遺したいのか?」という最終意思決定表示をしたもの。
・被相続人の財産がどのように相続人に引き継がれるかは、民法の内容によって定められており、ここで定められている相続人のことを「法定相続人」と呼ぶ。
しかし、被相続人が亡くなった後も「相続に関する故人の意向」を無視することはできない。
この意思を尊重できるよう、法的には遺言書の方が強い効力を持っている。
・「遺書」は亡くなる前に自分の気持ちやご遺族に伝えたかったことなどを書き遺している物。「遺言書」は、遺った財産の分配方法を記した法的拘束力のある物。
・遺言書には「普通方式」「特別方式」の2種類がある。普通方式はさらに「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」に分類される。
・遺言書が及ぼす効力の範囲は法律で定められている。具体的には以下の通り。
「遺言書の執行に関する効力」
「相続分の指定」
「相続人の廃除」
「相続人の身分に関する効力(認知)」
「相続人相互の担保責任の指定」
「相続財産の処分」
「遺言執行者の指定または委託」
「遺産分割方法の指定と分割の禁止」
「遺留分侵害額請求方法の指定」
・遺言書に記載不備があったりすると、遺言書自体が無効になる危険性もあるため注意する。
・専門家に遺言書の作成を依頼した時の費用は目安は以下の通り。
「弁護士の場合は10万〜30万円前後」
「司法書士の場合は7万〜15万円前後」
「行政書士の場合は7万〜15万円前後」
「信託銀行・信託会社の場合は150万円前後」
・これら以外にも遺言書を書く上で気をつけるべきなのは以下の通り。
「遺言書を勝手に開けてはいけない」
「遺言書があっても遺留分の請求が可能」
「遺言の保管サービスの利用も検討する」
「遺言書はなるべく早めに作成しておく」
「一度書いた遺言書の内容を変更や撤回をすることは可能」
・遺言書を開封する際には家庭裁判所の検認が必須。
検認の対象となるのは「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の2種類。これらを勝手に開封してしまうと5万円以下の罰金が科されることがある。
確実に遺言書を開封されないようにするためには「自筆証書遺言書保管制度を活用する」「公正証書遺言で作成する」の2点が確実。
お手軽な保管方法として「封筒を二重にしておく」というのもある。
遺言書は財産の分配を記載した大切な書類です。
そのため細かい部分まで法律に則り、正確な内容で作成することを意識する必要があります。
お金にまつわることでご遺族がトラブルに巻き込まれないように、上記のことをしっかり守りながら作成しましょう。
また開封する側も法律に則り、被相続人の意思を尊重しながら丁寧に扱ってください。
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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール