生活保護受給者の遺品整理「前」に絶対に知るべき3つの注意点と対策
「生活保護を受給していた身内が亡くなったが、誰が遺品整理の費用負担をするのかわからない…」
「生活保護を受給している身内の遺品整理費用をなんとか安く抑えたい…」
こんなお悩みをお持ちではありませんか?
生活保護を受給していた方であれば、あまり日頃からの付き合いはなかったかもしれません。
親族のよしみとはいえ、亡くなったから急に高額な費用を使って遺品整理をするなんて、困ってしまいますよね。
結論からお伝えしますが、生活保護費は遺品整理には使えません。
ここを知っておかないと、遺品整理後に費用トラブルの元となってしまいます。
故人を安らかに送り出し、費用面でも納得のいく遺品整理をおこなうためには以下の2ポイントに気を付けておきましょう。
・相続放棄を考えている場合は遺品整理をしてはいけない
・(自身が生活保護を受給している場合)相続後の受給を考える
参照元: e-Gov法令検索|生活保護法
なんだか、生活保護を受けている方は誓約がたくさんあるような気がしませんか?
とはいえ、この文章だけを見てもよくわからない…という方も多いはず。
そこで今回の記事では、生活保護受給者が亡くなった場合の遺品整理について知っておくべきことがらを徹底解説していきます。
生活保護を受給していた身内の遺品整理の費用負担は、相続人が行います。費用を抑えるには、遺品の処分を自分でおこなったり、一部を売却するなどのコツがあります。
「自分が相続人になるかどうか」「相続放棄するかどうか」の判断基準についても、記事内で、しっかりとご紹介していますのでご安心ください。
また、遺品整理にかかる費用を出来る限り安く抑える方法も解説いたしますので、いざ自分が遺品整理するとなったときのためにも、ぜひ最後までご覧くださいね。
なお、遺品整理ではありませんが、生活保護者の葬儀は「葬祭扶助(そうさいふじょ)」という補助金を利用できます。
葬祭扶助を申請するタイミングや、もらえる金額の基準など詳しいことを知りたい方は 葬祭扶助とは?支給の条件から金額、申請方法まで徹底解説!をご覧ください。
生活保護受給者の遺品整理は「相続人」がおこなう!
まず、生活保護受給者の遺品整理は「自分が相続人になるかどうか?」を考える必要があります。
生活保護受給者の遺品整理は相続人がおこなうものであり、相続人に一度なると放棄することが難しくなるためです。
例えば、故人の遺品整理を始めたり、私費を故人の口座から引き出すと「相続人になることを(事実上)認めた」とみなされる可能性があります。
意図せず相続人になってしまう前に、相続人になるメリットデメリット、相続人がいない場合はどうなるのかを押さえておきましょう。
事前に知っておくべき2つのポイントを、順番に解説いたしますね。
1.相続人がいない場合は「連帯保証人」がおこなう
※故人が賃貸に住んでいた場合のみ
2.相続人になりたくないなら「相続放棄」すべき
相続人がいない場合は「連帯保証人」がおこなう
相続人がいない場合は、生活保護受給者の連帯保証人が遺品整理をおこないます。
連帯保証人とは、賃貸を借りた人が何らかの都合で支払いが出来ない場合に代理で支払う義務を負う人のことです。
連帯保証人になった時点で、連帯保証人には本人と同じ責務が発生するからです。
適用されるのは、生活保護受給者が賃貸に住んでいた場合のみで、個人宅など既にローンを払い終わっている場合かつ自分が相続人である場合は「相続人になりたくないなら相続放棄すべき」に進んでください。
相続人になるかどうか迷っており、故人に連帯保証人がいらっしゃる場合は一度連絡、相談してみましょう。
相続人になりたくないなら相続放棄すべき
生活保護受給者の相続人になりたくない場合は、相続放棄すべきです。
相続人になると、生活保護受給者の資産はもちろんマイナスの資産も引き継ぐ必要があるからです。
遺品整理の義務が生じるのはもちろん、どれだけ価値が下がっていても、所持していた不動産や株も引き継ぐ必要があります。持ち家の場合はその家も引き継ぐことになりますね。
土地や家屋の所有にはもちろん税金がかかってきますので、今後支払う目途が立たない場合は活用できないと判断する際には相続放棄をするのがおすすめです。
相続放棄すると、債務などを引き継ぐ必要は無くなりますが、遺産を売り払うこともできません。
取り返しがつかない処理ですので、後悔しないためには「 【相続放棄の手続きと費用】知っておくべき7つのポイントと注意点!」の記事も合わせてご覧ください。
生活保護受給者の遺品整理「前」に知るべき3つの注意点
生活保護受給者の遺品整理をする前に知っておくべき3つの注意点を説明いたします。
1.相続放棄を検討する為の2つの判断基準
2.生活保護費が残っていれば役所へ返還
3.(自分が生活保護受給者の場合)相続の額で受給が打ち切られる可能性がある
遺品整理を始めると、始めた行為が「相続人という事実を承認した」とみなされ、自動的に相続人に認定される可能性があります。
よって、遺品整理前にまず1の「相続放棄するかどうか?」を判断することが重要ですね。
必要に応じて、2、3も確認することで漏れがなくチェックできますよ。
相続放棄を検討する為の2つの判断基準
相続放棄をするかどうかを、後悔せずに検討するためには、以下2つの判断基準があります。
1.故人に借金はないか?
2.故人の遺品で今後管理が大変なものはないか?
故人の借金はそのまま相続されますし、今後管理が大変なものを相続すると結果的に相続人が損をする可能性があるからです。
遺品を管理していくにも、故人に借金がないことが大前提です。まずは1から確認してみてください。
故人に借金はないか?
必ず「故人に借金がないこと」を確認してください。
故人に借金がある場合、その支払い義務は相続人に引き継がれます。
相続する遺品などで支払えるだけの額であればよいですが、そうでない場合は相続放棄を検討するようにしてください。
【借金の調べ方】
故人がどこから、いくら借金していたのかを調べるには下記3つの機関のいずれかに問い合わせます。
・ CIC
・ JICC
・ 全国銀行協会
問い合わせることで分かるのは以下4点です。
・登録している銀行
・カード会社
・消費者金融などの金融機関での借り入れ状況
・返済状況などの情報
情報開示の方法は機関により異なりますので、各ホームページをご確認ください。
故人の遺品で今後管理が大変なものはないか?
故人の遺品で今後管理が大変なものは、早めに手放す、そもそも相続しないという選択肢を考えたほうが良いでしょう。
なぜなら、マイナスに転じる可能性のある資産を相続すると、相続人に負債が残ったり、損をするかもしれないからです。
例えば、不動産です。ローンの支払いが終わっていない持ち家や動かない車、売れる見込みのない不動産などマイナスの資産が多い場合は相続放棄を検討してください。
仏壇や神棚など、処分に困るような遺品は遺品整理業者に頼めば数千円で処理してもらえることがあります。
詳しくは「 遺品整理の料金はどのくらい?業者に遺品整理を依頼する際の相場や注意点、安く抑える工夫などを完全解説!」をご覧ください。
生活保護費の返済義務があれば相続人が引き継ぐこと
故人が受け取っていた生活保護費に返済義務があった場合は、相続人が役所へ返還する必要があります。
これは生活保護法という法律で決められています。
第七十八条 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。
引用元: e-GOV法令検索|生活保護法(費用等の徴収)
返済義務が発生するのは、以下2通りになります。
・仕事の収入があるのに申告していない
・家や車などを持っているのに申告していない
この返済義務の通知は、生活保護受給者の死亡通知と合わせて相続人に届くことがあります。
よって、返済義務があるかどうかも、相続人になるかどうかを判断する重要なキーポイントとなります。
(自分が生活保護受給者の場合)相続の額で受給が打ち切られる可能性がある
もしも、生活保護受給者が相続人になる場合、相続する額によっては生活保護の受給が打ち切られる可能性がある事も覚えておきましょう。
なぜなら、生活保護とは個人が生活するために必要な費用を国が工面するシステムであり、相続により生活出来る程度の金額を得た個人には支給する必要がないからです。
不正受給にならないように、遺産を分与された場合はまずはケースワーカーに相談し、市町村に判断を仰ぐことが大切です。
相続するかどうかを判断するために財産調査をおこなう
相続放棄をする場合は財産の状況を記載する必要があります。
仮に相続する場合でも遺産分割協議書作成のために財産一覧が必要となるからです。
相続放棄した後で、後からプラスの財産が発覚して後悔しないためにも、財産調査を行った後に判断するのが良いでしょう。
なお、財産にはプラスとマイナスがあり、預貯金や宝石などはプラス、借金や未払いの税金はマイナスとなります。
財産調査の詳しい時期や方法について知りたい方は、「 【相続放棄の手続きと費用】知っておくべき7つのポイントと注意点!」をご覧ください。
遺品整理の費用を抑える3つのポイント
遺品整理の費用を抑えるためには3つポイントがあります。
大項目から順に説明していきますので、チェックしていきましょう。
1.業者は使わず可能な限り自分で整理する
2.売れそうな物は買い取りに出す
3.複数の業者に見積もりを出す
業者は使わず可能な限り自分で整理する
遺品整理をする場合は、業者は使わずに可能な限り自分で整理しましょう。
遺品整理業者に頼むと、1DKの小さな部屋でさえ最低4万円はかかります。時期や荷物量、処分する物品の種類によってはさらに費用がかさむかもしれません。
部屋の整理整頓や遺品の分別、処分は可能な限り自分でおこなうようにすると、無駄な出費を防げますよ。
売れそうな物は買い取りに出す
遺品整理で出てきたもののうち、売れそうなものは買い取りに出しましょう。
売れそうな遺品を売却することで、遺品整理にかかった費用と相殺し出費を抑えることができるからです。
業者によっては、家具や家電など、一般にリサイクルのできそうな備品をそのまま買い取ってくれる場合があります。
このようなサービスを利用すると、買取金額がそのまま支払価格から減額されることになるため、一緒にそうしたサービスを利用することも良いですね。
【商品別買取法】
骨董品 |
・遺品整理業者で行っている場合、依頼すれば一括で完了できる。
・骨董品屋や古美術専門業者や個別の買取業者に依頼も可能。
|
家電・家具 |
・リサイクルショップで売ると無料または数千円で引き取ってくれる。
・ジモティーなどで出品すれば売れるケースもある。
|
グッズ |
・キャラクターやアイドルなどのコレクションはオークションやフリマアプリで販売も可能 |
1. 骨董品買取センター【査定・出張費が無料で対応可能】
TEL:0120-510-815(メールでの問い合わせも可能)
2. 高く売れるドットコム【世界最大級の総合買取サービス】
TEL:0120-503-864(メールでの問い合わせも可能)
複数の業者に見積もりを出す
最後にご紹介する最も簡単な方法としては、複数の業者から見積もりを取るといったものになります。
業者によって金額に開きがある
業者によって金額は大きく変わることがあります。
ですから、一つの業者から見積もりをとってその業者に依頼するのではなく、複数の業者から見積もりを取れると良いでしょう。
下記に、地域別の平均表を入れましたので参考にしてくださいね。
【地域別平均相場】
|
1K |
1DK |
1LDK |
2DK |
3DK |
3LDK以上 |
北海道 |
3万円~
|
4万円~
|
6万円~
|
8万円~
|
12万円~
|
14万円~
|
東北 |
3.7万円~
|
6万円~
|
8.3万円~
|
10万円~
|
16万円~
|
19万円~
|
関東 |
3.5万円~
|
5.7万円~
|
8万円~
|
11万円~
|
16万円~
|
18万円~
|
北陸 |
4万円~
|
6万円~
|
8.8万円~
|
11万円~
|
17万円~
|
19万円~
|
東海 |
4万円~
|
6万円~
|
8.7万円~
|
11万円~
|
16万円~
|
19万円~
|
近畿 |
3.4万円~
|
6.4万円~
|
7.5万円~
|
10万円~
|
15万円~
|
17万円~
|
中国 |
3.6万円~
|
5.4万円~
|
7.7万円~
|
10万円~
|
15万円~
|
18万円~
|
四国 |
4万円~
|
6.2万円~
|
8.6万円~
|
12万円~
|
18万円~
|
20万円~
|
九州 |
3.7万円~
|
5.5万円~
|
7.8万円~
|
10万円~
|
15万円~
|
18万円~
|
沖縄 |
3.8万円~
|
6万円~
|
10万円~
|
12万円~
|
18万円~
|
20万円~
|
情報引用元: 片付け堂
費用に関する『間取り別・地域別』の相場やオプション・買取品については、「 遺品整理費用は3万円~|平均相場・注意点・業者の選び方を徹底解説」で紹介しています。正しい相場感が知りたい方はぜひご参考ください。
悪質業者に注意
ただし、悪質な業者の場合、当日になって急に見積もりに無い追加費用を要求してきて、トラブルになることもあるようです。
見積もりを取るときは、ただ単に金額のみを比べるのではなく、その中身もしっかり確認して、不明な点がある場合にはすぐに問い合わせるようにしましょう。
悪徳業者には以下2つの特徴がありますので、業者選定の際は参考にしてくださいね。
1.見積書を出さない
2.遺品の扱いに不審なところがある
生活保護受給者の遺品整理でよくある質問
生活保護受給者の遺品整理でよくある質問を3つまとめました。
よく受ける質問順に掲載しましたので、自分に当てはまりそうなものがないか一緒に見ていきましょう。
1.遺品にタンス貯金があった場合はどうすべき?
2.遺品整理をしたくない。どうすれば回避できる?
3.死亡時に手元に残していた保護費はどうすればいいのか?
遺品にタンス貯金があった場合はどうすべき?
遺品にタンス貯金があった場合、まずはお住まいの役所に存在を申告して判断を仰ぎましょう。
実は、生活保護を受給していても貯金は可能です。よってタンス貯金があってもよいのですが、生活保護を受給する前から隠し持っていた場合は不正受給になってしまいます。
加えて、生活保護受給者が預貯金をおこなう際は担当のケースワーカーに相談するのが一般的です。この様な相談があったのかどうかを知るためにも、役所に相談しましょう。
この「いつごろから貯金していたか」を判断するのは役所なので、変に隠さず正直に「ありました」ということを申告して判断を待つようにしましょう。
なお、不正受給とみなされた場合は生活保護費を返還する義務が生じます。これを負うのは相続人です。
相続放棄しておけば、この生活保護の返還義務は発生しません。
遺品整理をしたくない。どうすれば回避できる?
相続人として自分の名前が挙がったとき、どうしても遺品整理をしたくない。こうなると、できるのは相続放棄のみとなります。
相続放棄すると、遺品整理を含む今後一切の後処理をしなくて済みますが、遺産の売却などの権利も失います。
遺品整理をすることによりメリットデメリットをきちんと押さえたうえで相続するかどうかを決めたい方は、「生活保護受給者の遺品整理「前」に知るべき3つの注意点」をご覧ください。
死亡時に手元に残していた保護費はどうすればいいのか?
死亡時に手元に残していた保護費は、日割換算して役所に返還する義務が生じます。
単身の生活保護受給者が死亡した場合、死亡月に前渡した扶助費の うち、廃止日以降月末までの扶助費を日割計算し、過扶助戻入金として相続人 に請求する債権が生じる(自治体の債権)。
引用元: 内閣府| 法務省からの第1次回答一覧
返還すべき例は以下のようなケースも含まれます。
・年収や財産の金額を偽って嘘の申請をしていたとき
・資力があるにもかかわらず受給を続けていたとき
まとめ
本記事では、生活保護受給者が亡くなった場合の遺品整理について知っておくべきことがらを徹底解説してきました。
遺品整理を始めてしまってからでは取り返しのつかないことも多いため、慎重に行う必要があります。
後悔しない為に、遺品整理前に押さえるべきポイントは以下3つです。
1.生活保護受給者の遺品整理に生活保護費は使えない
2.相続放棄を考えている場合は遺品整理をしてはいけない
3.(自身が生活保護を受給している場合)相続後の受給を考える
「自分が相続人になるかどうか」「相続放棄するかどうか」の判断基準は、以下2点を参照ください。
1.故人に借金はないか?
2.故人の遺品で今後管理が大変なものはないか?
併せて、以下2点も押さえておいて下さい。
1.生活保護費が残っていれば役所へ返還
2.(自分が生活保護受給者の場合)相続の額で受給が打ち切られる可能性がある
また、遺品整理にかかる費用を出来る限り安く抑えるには、以下3ポイントを守ることが大切です。
1.業者は使わず可能な限り自分で整理する
2.売れそうな物は買い取りに出す
3.複数の業者に見積もりを出す
大切な故人のための遺品整理ですが、予期せぬ法律違反で不利益を被らないためにもしっかりと、確認を行いながら進めて行くことをオススメします。
この記事があなたの納得のいく遺品整理になるよう祈っております。
【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール