無縁墓地とは管理者のいない墓地!無縁化させない方法と原因を解説
「実家にお墓はあるけど、遠くに住んでいるし面倒を見るのは正直厳しい…」
「このまま放置して良いか心配だけど何をどうすればよいかまったく分からない」
「先祖代々のお墓を『無縁墓』としてしまうのは、心苦しい」
「無縁墓地」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
無縁墓地とは無縁墓(むえんぼ)とも呼ばれ、お墓の継承者や縁故者がいなくなった墓地を指します。
無縁墓地になってしまうのは、次のような例が原因として考えられます。
・少子高齢化で管理者がいない
・墓地が離れており管理できない
・親戚関係が希薄化している
・管理費の滞納や支払い拒否
近年では無縁墓地が増えているのが問題となっていて、霊園の管理者が公示して『1年以内に権利者からの申し出がない』場合、無縁墓地と判断されて管理者によって区画整理されてしまうのです。
いったん墓地が整理され「合祀(ごうし)」されてしまうと、他の方の遺骨とまとめて供養されるため、先祖代々の遺骨は二度と手元に戻せません。
この記事では、先祖代々から続くお墓を無縁墓地にしないための方法や、無縁墓地になってしまう原因について詳しく解説しています。
この記事を読むことでなぜ無縁墓地が増えているのか、無縁墓地にしないためにどのようにすればよいか具体的に理解できます。
無縁墓地にしない方法をとれば霊園や周囲の方に迷惑を掛けることもなくなり、自分自身の気持ちもうまく整理できるでしょう。
将来的に管理が難しいと思われるお墓がある方は、最後までご一読いただき参考にしてみてください。
無縁墓地とは「継承者のいない墓地」のこと
無縁墓地は「無縁墓」とも呼ばれ、管理・継承すべき親族がいなくなった墓地のことです。
管理すべき親族がいなくなるという理由だけでなく、管理費の滞納や支払い拒否などにより無縁墓地となるケースもあります。
近年、無縁墓地は増加傾向であり、社会問題として取り上げられることも増えてきました。
無縁墓地になる理由については、さまざまな原因があげられます。少子高齢化や墓地が遠隔地であることや、親戚関係が希薄化しているのも無縁墓地となってしまう原因のひとつです。
無縁墓地から撤去された墓石は、実際にこのような形で処分されることもあります。
法律上の取り扱い
墓地が放置されているからと言って、霊園や寺院が勝手に処理することはできません。
「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」という法律によると、無縁墓地として処理するには次の手続きが必要とされています。
・墓地の使用権を持つ方に対して1年以内に申し出る旨を官報(政府が発行する機関紙)へ掲載
・墓地の見やすい場所に1年以内に申し出る旨を記載した立て札の設置
こうした対応を取って1年以内に何も連絡がなかった場合、霊園や寺院によって処理することが認められるのです。
なお、墓地を放置していても継承者に対する法的な罰則は原則としてありません。また、無縁墓地を処理する費用についても霊園や寺院、自治体の負担となることが大半です。
こういったところが、無縁墓地の数が増えている原因の一つであるとも考えられます。
「無縁仏(むえんぼとけ)」との違い
無縁墓地と無縁仏は「供養する縁故者がいない墓」という意味で同様に使われますが、微妙に意味合いの異なる使われ方もあります。
たとえば無縁墓地はお墓そのものを指すのに対し、無縁仏は亡くなった方個人を指すといったケースです。
生前から縁故者のいない方が亡くなったり、身元不明の方がなくなったりといった場合に、無縁仏といった表現となるのはそのためです。
無縁墓地になるとお墓は撤去され整理される
法的に無縁墓地とみなされたあとは、霊園や寺院など墓地の管理者によって墓地の処理がなされます。
時系列的には、次の順に処理されます。
1.墓石の撤去
2.遺骨の合祀
3.墓地の整理
費用については、墓地の管理者もしくは自治体の負担となることが大半です。
墓石の撤去
墓地に設置されている墓石を撤去します。撤去された墓石は粉砕されて道路の材料に使われたり、そのまま廃棄されたりといった処理がなされます。
棹石(さおいし、名前が彫られたお墓の中心に置かれる石)ばかりを集めた供養場所に、棹石のみ安置する霊園や寺院も多いです。
遺骨の合祀
墓石の撤去後は、遺骨を取り出して無縁仏を集めた供養塔などに合祀されます。
合祀とは、他の方の遺骨と一緒に埋葬されることです。いったん合祀されると他の遺骨とまざってしまうため、特定の遺骨だけを取り出すことは物理的に不可能です。
合祀について知りたい方は「合祀(ごうし)とは?納骨堂の違いからメリット・デメリットまで徹底解説!」に詳細があります。合祀に抵抗のある方は、内容を読んでみてよく検討するとよいでしょう。
墓地の整理
すべて撤去した墓地は整地され、利用者を募って新しい墓地として使用します。
整地を実施したあと、場所によっては公園や通路など墓地以外の用途として使用されることもあります。
無縁墓地にしないための3つの方法
家の墓が無縁墓地になってしまうのは、誰にとっても後味の良いものではありません。無縁墓地にしないためには、次にあげる順にお墓の整理を検討するとうまく進められます。
・墓じまい
・永代供養墓への改葬
・散骨や手元供養
墓じまい
今後墓地の面倒を見るのが難しいとわかっている場合、まず墓じまいを検討するとよいでしょう。
墓じまいとは、現在ある墓地をきれいに整地して使用権を管理者へ返還することです。
墓じまいするには、現在墓地のある自治体へ各種書類を提出する必要があります。
書類の一例としてはつぎのとおりになりますが、自治体によって必要書類が異なりますので確認しておきましょう。
・改葬許可申請書
・受入証明書
・埋葬証明書
・申請書の身分証明書写し
・承諾書
書類を提出し受理されたのち、墓じまいする墓地では次の作業が必要です。
閉眼供養【費用目安:2万円~5万円】
お墓を閉じるため僧侶に読経してもらい、墓石から魂を抜いてもらう儀式をおこないます。
墓石の解体、現状復帰【費用目安:1㎡あたり10万円~20万円】
遺骨をすべて取り出し、墓石などを解体し更地にして管理者へ返還します。
納骨【お布施:3万円~5万円】
次の墓地が決まっていれば、改葬(古いお墓から新しいお墓へ遺骨を移すこと)先へ納骨します。
改葬先を決めてから墓じまいするのが基本的な流れですが、新たに墓地には入れず散骨する、自宅で遺骨を管理するなどといった方法もあります。
墓じまいの具体的な内容や取るべき方法を理解し、マナーなどで恥ずかしい思いをしたくない場合は「墓じまいのスムーズなタイミングと進め方!必要書類やマナーを全解説」をぜひご一読ください。
永代供養墓への改葬
墓じまい後に遺骨を安置する先としては、永代供養してもらえる墓地を検討するとよいでしょう。
永代供養墓とは、子孫や縁故者などに見てもらうことを前提としないお墓です。永代供養墓の種類については、次のとおりです。
永代供養墓は霊園や寺院が管理してくれるため、基本的に誰かが面倒を見る必要はありません。
永代供養墓でも個人墓では利用に期限が決められており、最終的には合祀墓へ合祀されるのが一般的です。
将来的にお墓を管理できないことが分かっている場合は、早めに永代供養墓を検討するとよいでしょう。
永代供養墓の費用やデメリット面を知ってから決めたい方は「永代供養墓とは「継ぐことを前提としないお墓」!種類と費用を全解説」に詳細がありますので、参考にしてみてください。
散骨や手元供養
墓じまい後、次にあげるようにお墓を必要としない供養方法を取ることも可能です。
散骨
遺骨を粉末状にして、山や海など自然に返すという方法です
散骨については、法律によって細かい規制はありませんが、遺骨をそのまま埋めると法に触れる可能性があるため2mm以下に砕く、地域の条例で禁止されている場所には散骨しないなど、ルールを厳守することが求められます。
個人でも散骨は可能ですが、専門業者に任せるとルールに基づいて実施してもらえるため、トラブルとならない散骨が可能です。
散骨に抵抗感があり、もう少し理解を深めたいという方は「散骨とは?流れや注意点、メリットデメリットなど散骨の全てを徹底解説!」を参考にしてはいかがでしょうか。
手元供養
遺骨を墓地に入れないで、手元に置いておくという方法です。引き上げた骨壺をそのまま手元で保管する方法の他に、遺骨を加工して置いておく方法があります。
遺骨の加工方法については「遺骨ペンダントが良くないと誤解される理由!正しい手元供養を解説!」「遺骨ダイヤモンド|値段は32〜300万円!カラット数で変わる金額」「【遺骨から作る宝石】種類・製作方法・金額・依頼先・注意点を全解説」とさまざまな方法があります。
記事を参考に、故人と自分たちに合った方法を見つけてみてください。
無縁墓地にしない!お墓で困ったときの4つの相談先
無縁墓地にしたくはないけれど、誰に相談すればよいかわからず困るといった場面も考えられます。
「無縁墓地にしないための3つの方法」にあげた内容を相談したい際には、次の順に話を持ち掛けてみるとよいでしょう。
1.家族や親族
2.霊園やお寺
3.市区町村の役場
4.民間業者
家族や親族
無縁墓地についてまず相談すべき相手は、家族や親族です。
自分が管理しているからといって、他の親族へ相談なしで墓じまいなどを決めてしまうと、のちのちトラブルに発展する可能性が極めて高くなります。
現在の墓地を将来的に管理できる親族はいるか、いないならば墓じまいをどうするか、遺骨はどうするかなど、具体的な内容を相談して納得のいく答えを導き出すことが必要です。
霊園や寺院
相談できる親族がいない場合、現在お墓のある霊園や寺院に相談してみるのも一つの方法です。
現在の墓地は将来的に存続できない旨を相談することで、どのような方法で墓じまいするのが良いか、最善策を提案してもらえるでしょう。
霊園や墓地に永代供養の設備が整っていれば、そちらへ移してもらうのもよい提案でしょう。
市区町村の役場
自治体によっては、終活や遺言などと合わせて墓じまいや改葬の相談にのってもらえる窓口が設置されています。
行政書士など専門家が相談にのってくれる自治体もありますし、ほとんどの自治体では無料で相談を受け付けてもらえます。
親族や寺院などに聞く前に気軽な相談をしてみたい場合に、まず利用してみるという使い方もよいでしょう。
民間業者
民間業者の相談窓口へ相談してみるのもよい方法です。
親族間での話し合いがこじれた場合、弁護士や行政書士など第三者に入ってもらうことで、話し合いがスムーズに進められることも考えられます。
また、墓じまいなどの相談を受け付けている弁護士事務所や葬儀業者、石材店などもあります。
無料相談を受け付けている業者もありますので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
まとめ
無縁墓地となってしまうのは、各家庭でさまざまな原因が考えられます。
だからといって無縁墓地として放置してしまうと、墓地が荒れてしまうため霊園や近隣の墓地への迷惑になるうえ、先祖に対しても申し訳ない気持ちになってしまうでしょう。
無縁墓地と判断されると、他人の手で事務的に処分されます。それを回避するためにも、早い段階で現在のお墓をどうするか、次にあげる内容を検討することが大切です。
・墓じまい
・永代供養墓への改葬
・散骨や手元供養
無縁墓地にしないためには、自分だけで判断せず親族や寺院に相談してみることが大切です。
自分の先祖をきっちりと供養するためにも、全員が納得できる方法を取るのが賢明だといえます。
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
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