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知らないと損!法定相続分の4つのルールと割合を相続プロが簡単解説

Sep 04 2020

法定相続分の割合は故人の家族構成や関係で変わります。あらかじめ受け取れる割合を把握しておくことで損無くスムーズな相続が可能に。法定相続分の割合から相続人のルール、相続順位についてケース別に分かりやすくすべて解説致します!

2021/7/16 情報更新

故人が財産を遺して亡くなられた場合、それは「遺産」となり、遺された人たちでそれを分ける「相続」という手続きが発生します。

相続には、法的見解と私的見解(亡くなられた方の遺志)の両方が尊重されますが、相続人の数が多ければ多いほど、相続終了までの道のりはとてつもなく長いものになることが予想されます。 

相続の際は「遺言」「法定相続分」「遺留分」を基準に議しますが、法定相続分と遺留分については法律で決められた割合があります。

そこに遺言の内容を踏まえた上で遺産の分割をしていくのがセオリーです。今回は、法定相続分を中心に遺産相続についてお伝えしていきたいと思います。

INDEX

01
法定相続分とは?
02
法定相続人別の法定相続分
03
法定相続分のケース別例
04
法定相続分と遺留分の違い・遺留分の割合
05
相続権を持たない人
06
法定相続分に拘束されない場合
07
法定相続分の注意点
08
法定相続分についてのまとめ

法定相続分とは?

はじめに、「法定相続分」とは何か?について説明します。

法定相続分とは?

法定相続分とは、被相続人が所有していた財産(遺産)を相続人で分割する際に用いられる、法律上で定められた一定割合のことです。

・被相続人…亡くなった人(=遺産を持っている人)

・相続人…被相続人からみて近い関係の人(=遺産をもらえる人)
相続人の範囲については後述します。 

相続の基準となるのが法定相続分

法定相続分は、遺言があればそれにしたがって遺産を分けるのが一般的ですが、遺言書がない場合は、相続人全員が集まって話し合ってから遺産をわけることになります。

「一応法律で基準を示しておきますね」となってはいますが、あくまでも基準なので必ず従わなければならないというものではありません。 

話し合いの結果、相続人全員の合意があれば遺産の分割もスムーズにできますが、「納得がいかない、合意できない」という人がいると、調停や裁判にまで発展することもあります。

そのときに基準となるのが「法定相続分」なのです。 

法定相続人の範囲と順位

法定相続人とは、法律で定められている「相続人になれる人の範囲」のことです。

相続のときは「相続順位」というものが決められているので、それによって遺産を受け取る割合が違ってきます。

被相続人から見た続柄と相続順位は以下の通りです。

・配偶者…必ず相続人になります。

・子ども…1番目です。

・父母…2番目です。

・兄弟姉妹…3番目です。 

また、相続人がすでに亡くなっている場合は以下のようになります。 

・子どもがすでに亡くなっているとき…孫が相続します。

・父母がすでに亡くなっているとき…祖父母が相続します。

・兄弟姉妹がすでに亡くなっているとき…甥や姪が相続します。

相続には上下関係もある

さらに、相続は「上下関係」にも大きく左右されます。

自分よりも相続の順番が上の人がいる場合、その人から先に相続分をもらうというルールがあり、たとえばこのようなパターンが考えられます。 

・配偶者のみ(子ども・父母・兄弟姉妹等、他の相続人が全くいない)…配偶者がすべてを相続します。

・配偶者あり…配偶者と次の順位の人で相続します。子どもがいる場合は「配偶者と子ども」、子どもがいない場合は「配偶者と親」ということもあります。

・配偶者なし…順位が一番高い人「だけ」が相続します。子どもがいるならこどもだけ、子どもがいないなら親だけということもあります。

相続人の範囲は戸籍謄本で調べる

相続人の範囲を調べるには戸籍謄本を確認するのが一般的です。戸籍謄本は戸籍のある市区町村の役場で発行可能です。

代襲相続のルールに注意する必要

配偶者を除いた相続順位のトップは「子ども」ですが、もし被相続人より先に子どもが亡くなっている場合、「次の順位である父母に相続権が移る」と思われるかもしれませんね。

ですが、それは違います。子どもが先に亡くなっているときは、子どもの子どもである孫に遺産がいくため、父母よりも先に孫に対して相続権が発生するのです。

代襲相続とは?

このように、本来相続するはずの人の代わりにその子孫が相続権を行使することを「代襲相続」といいます。

代襲相続には、たとえば「曾孫の代まで相続可能」というような制限がありませんので、もし孫がいなければ曾孫、曾孫がいなければ玄孫…と、関係が途絶えるまで続きます。

親や祖父母が相続権を持つこともある

また、あまりないケースですが、たとえば、被相続人に子どもがいないときは、被相続人の親である父母に相続権がありますが、父母ともすでに他界していた場合、その親となる祖父母が相続権を持つことになります。 

このように、本来の順番で相続権が移るのは、代襲相続者を含めて「その人より順位が上の人が誰もいない」ときだけですので、本来の相続と代襲相続が発生したときの2つの解釈があるということを理解しておく必要があります。

代襲相続については下記記事もご参考ください。
代襲相続を完全解説!範囲・割合・相続放棄のルールを紹介!
代襲相続人を完全解説!相続割合・権利・範囲を紹介!

指定相続分との違い

指定相続分とは?

指定相続分とは、被相続人自身が事前に決めた遺産の分け方とその相続分(割合などを含む)のことです。

一番わかりやすいのが、遺言で「遺産のすべてを〇〇に渡す」というような内容がそれにあたります。

遺言は法定相続分よりも優先される

遺言は、被相続人が生前に「最後の意思」として残したものなので、法定相続分よりも優先されます。 

もともと遺産は、被相続人が生前に所有していた財産ですから、本来は何をどう使うか、誰に何を与えるかは本人の自由です。

ですが、指定相続の度合いがあまりにも過ぎてしまうと、「とりあえず法定相続分くらいはもらえるかな?」と期待している相続人たちから、

「そんなの納得できるわけない!!」

「そんな滅茶苦茶な遺言なんて無効だ!!」 

などと憤慨される可能性はおおいに考えられます。ですが、法律にはこのようなことが書かれています。 

民法第902条第1項 

被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。 

この「ただし書き」の部分が、法定相続人にとってある意味「救いの神」となる一文なのです。

遺言があっても遺留分は保証されている

前述のとおり、指定相続分は法定相続分よりも優先されるとお伝えしました。

ですが、法定相続分を超える分については、相続人が最低限の相続分をもらえるように救済する措置が講じられているのです。

これを「遺留分」といい、遺言を書いた本人である被相続人や遺言執行者となる人であっても、遺留分を侵すことはできない仕組みになっているのです。

遺留分については後述します。

相続についてのご相談はやさしい相続でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。

法定相続人別の法定相続分

では、実際自分が相続人となった場合、一体どのくらいの遺産がもらえるのでしょうか。

以下に、被相続人と相続人の関係によって変わる相続割合を示してありますのでみてみましょう。

配偶者の法定相続分

被相続人の配偶者は必ず法定相続人になります。

戸籍上の正式な配偶者になっていれば、婚姻期間の長短によって段階的に区別されるということはありません。

金婚式を迎えた夫婦でも、入籍したばかりの夫婦であっても、配偶者がなくなれば必ず相続人になるのです。

ですが、事実婚などのような内縁関係のときは、法的に夫婦とは認められないので相続人にはなれません。

配偶者の法定相続分割合

ちなみに、配偶者の法定相続分は以下のようになります。

・配偶者のみ…遺産のすべてを配偶者が相続します。

・配偶者と順位が1番目の法定相続人…それぞれが遺産の1/2を相続します。

・配偶者と順位が2番目の法定相続人…配偶者が遺産の2/3、2番目の人が1/3を相続します。

・配偶者と順位が3番目の法定相続人…配偶者が遺産の3/4、3番目の人が1/4を相続します。 

相続財産管理人とは?

たまにあるのですが、相続人が配偶者だけしかいなくて、その配偶者が「相続しません」と相続を放棄するケースがあります。

そうなると「誰も相続しない遺産ってどうなるの?」ということになりますよね。 

この場合、「遺産はあるけど相続人がいない」ということになりますので、最終的に遺産は国のものとなります。

実際はすぐさま国のものになるわけではなく、家庭裁判所で「相続財産管理人」という立場になる人を選んで、その人が遺産を整理していきます。

被相続人に債務(借りていたお金)がある場合は、被相続人に代わってそれを返済して清算し、被相続人とのご縁がある方からの申し出などがあればそれを考慮し、遺産を相続させることが妥当であると判断されれば、その方にも遺産を渡すというケースもあります。

これを「特別縁故者に対する相続財産分与」といいます。 

子どもや孫など第1順位の法定相続分

被相続人の子ども(代襲相続時は孫から後の人)の相続の順番は、配偶者の次に位置します。

養子や認知した子どもも含まれる

この「子どもの範囲」ですが、実子はもちろん、養子や認知した子どもも含まれます。

>>養子縁組の相続を完全解説!養子が受取れる相続分・節税効果を紹介!

また、被相続人が死亡した時にお腹の中にいた赤ちゃんも対象になります。

胎児については、無事に産まれれば相続権を持ちますが、流産や死産などの残念な結果となってしまった場合は、相続権を持つことはできません。

そして、子どもはもちろん孫(その先の曾孫玄孫も)もいるという場合は、被相続人の子どもが生きていれば、その先の代への相続はありません。

仮に、被相続人に子どもが3人いたと仮定して、その中の1人がすでに亡くなっている場合は、その子ども(孫より後の人)が代襲相続というかたちで遺産を相続します。子どもの法定相続分は以下のとおりです。 

・配偶者と子どもが1人…遺産の1/2をそれぞれ相続します。

子どもが2人以上の場合は、子どもの相続分である1/2を子どもの人数で割って均等に相続します。

・子どもだけ…遺産のすべてを相続します。

 子どもが複数いる場合は、それをさらに子どもの人数で割って均等に相続します。 

父母や祖父母など第2順位の法定相続分

被相続人の父母はもちろん、被相続人が養子の場合は養親も相続人になるため、全員存命中であれば相続人は4人です。

親の法定相続分は以下のとおりです。 

・配偶者と親が1人…配偶者は遺産の2/3、親が1/3を相続します。

実親と養親のように親が複数となる場合は、親の相続分である1/3を、さらに親の人数で割って均等に相続します。 

・親だけ…遺産のすべてを相続します。親が複数いる場合は、それをさらに親の人数で割って均等に相続します。

兄弟姉妹など第3順位の法定相続分

ケースによっては、被相続人の兄弟姉妹も相続人となる可能性があります。

前述にある代襲相続も、兄弟姉妹の中で誰かが亡くなっていた場合は、甥や姪が代襲相続人として相続に参加することもあります。

ただし、この場合の代襲相続は甥姪の代で終了し、甥姪の子どもがさらに代襲相続(再代襲)することはできません。

被相続人の子どもの代襲相続とは違うという点に気をつけましょう。

・配偶者と兄弟姉妹1人…配偶者が遺産の3/4、兄弟姉妹が1/4をそれぞれ相続します。

兄弟姉妹が複数いる場合は、兄弟姉妹の相続分である1/4を、さらに兄弟姉妹の人数で割って均等に相続します。 

・兄弟姉妹だけ…遺産のすべてを兄弟姉妹が相続します。兄弟姉妹が複数いる場合は、それをさらに兄弟姉妹の人数で割って均等に相続します。

相続については下記記事もご参考ください。
相続弁護士の選び方を完全解説!依頼の流れ・費用・期間を紹介!
相続権を完全解説!優先順位・割合を紹介!

法定相続分のケース別例

これまでの説明で、法定相続分は相続の順番によって分配割合が違うことがわかりました。

では、実際のモデルケースを見ながらさらに説明していきます。

配偶者のみが法定相続人の場合

配偶者のみが相続人の場合、遺産のすべてを配偶者が相続します。仮に遺産の総額が3,000万円だったとすると、そのすべてを相続することになります。 

配偶者と子どもが法定相続人

相続人が配偶者と子ども、という組み合わせは結構多いと思います。今回は配偶者と子ども3人というケースで計算してみます。

遺産総額 6,000万円

配偶者の法定相続分は1/2ですので、6,000万円×1/2で3,000万円です。

子どもの法定相続分も1/2ですので、6,000万円×1/2で3,000万円です。

これをさらに子どもの人数で割ると、3,000万円÷3人になるので、1人あたりの法定相続分は1,000万円ということになります。 

子どものみが法定相続人

配偶者がおらず子どもだけが相続人という場合は、子どもが遺産のすべてを相続します。

子どもが複数いる場合は、遺産を子どもの人数で均等に割ります。仮に遺産の総額が1,500万円で子どもの人数が3人だったとすると、1人あたりの法定相続分は500万円ということになります。

配偶者と親が法定相続人

被相続人と配偶者の間に子どもがおらず、親が健在であるという場合は、配偶者と親が相続人になります。

今回は配偶者と両親というケースで計算してみます。 

遺産総額 3,000万円

配偶者の法定相続分は2/3ですので、3,000万円×2/3で2,000万円です。

親の法定相続分は1/3ですので、3,000万円×1/3で1,000万円です。

これをさらに親の人数で割って均等にすると、1,000万円÷2人になるので、1人あたりの法定相続分は500万円ということになります。

親のみが法定相続人

被相続人に配偶者も子どももおらず、親だけが相続人という場合は、遺産のすべてを親が相続します。

両親ともに健在の場合は、遺産を1/2に分割したものが1人あたりの法定相続分になります。

仮に遺産の総額が1,000万円だったとすると、1人あたりの法定相続分は500万円ということになります。

配偶者と兄弟姉妹が法定相続人

被相続人に子どもがおらず、両親もすでに他界している場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。

今回は配偶者と兄弟姉妹4人というケースで計算してみます。 

遺産総額 4,000万円

配偶者の法定相続分は3/4ですので、4,000万円×3/4で3,000万円になります。

兄弟姉妹の法定相続分は1/3ですので、4,000万円×1/4で1,000万円になります。

これをさらに兄弟姉妹の人数で割って均等にすると、1,000万円÷4人になるので、1人あたりの法定相続分は250万円ということになります。

兄弟姉妹のみが法定相続人

配偶者も子どもも両親もおらず、兄弟姉妹のみが相続人の場合は、兄弟姉妹が遺産のすべてを相続します。

兄弟姉妹が複数いる場合は、遺産を兄弟姉妹の人数で均等に割ります。

仮に遺産の総額が2,000万円で兄弟姉妹の人数が4人だったとすると、1人あたりの法定相続分は500万円ということになります。

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法定相続分と遺留分の違い・遺留分の割合

先に記した【指定相続分との違い】の項目の中で、「遺留分」という言葉が出てきました。

法定相続分も遺留分も、遺産を受け取る権利であるということに変わりはありませんが、両者には異なる部分があります。

それは「分配する割合が違う(=計算式が違う)」ということ、そして問題となる場面(取り分の争い)における法の趣旨が違うということです。

遺留分の相続割合

遺留分は「総体的遺留分」と「個別的遺留分」とに分けられ、相続人の組み合わせによってその割合が違ってきます。

総体的遺留分

総体的遺留分は「全遺産の中からその人がもらえる分」で、個別的遺留分は「総体的遺留分を人数で割ったもの」です。

総体的遺留分の割合は、相続人が直系尊属だけなら1/3、それ以外は1/2です。 

個別的遺留分

個別的遺留分は、相対的遺留分×法定相続分で計算します。 

たとえば、配偶者と子ども2人が相続人で遺産が2,000万円だとしたら、

配偶者の総体的遺留分は2,000万円×1/2×1/2で500万円、子どもが2,000万円××1/2×1/2で500万円、さらに2人に分けるので500万円×1/2で250万円になります。

その他相続人の遺留分の割合はこのようになります。

「総」は総体的遺留分、「個」は個別的遺留分で、相続順位が同位の人が複数いる場合は、さらに人数で均等割します。

・配偶者のみ 総1/2  個1/2

・子どものみ 総1/2  個1/2

・親のみもしくは祖父母のみ 総1/3  個1/3

・配偶者と子ども1人 総1/2  個1/4

・配偶者と親 総1/2  個 配偶者1/3 親1人1/6 親2人1/12 

なお、法定相続分には兄弟姉妹が含まれますが、遺留分については、兄弟姉妹は除外されます。つまり「遺留分を請求する権利がない」ということです。

遺留分については下記記事もご参考ください。
遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介!
遺留分侵害額(減殺)請求を完全解説!侵害された財産を取り返し方を紹介!
遺留分を完全解説!計算方法・侵害請求権の行使方法を紹介!

相続権を持たない人

これまで、遺産を相続できる人についてお伝えしてきましたが、反対に血のつながりや縁があっても遺産を相続できない人もいます。

近しい間柄であっても遺産がもらえない人のケースを以下にまとめてみました。 

内縁の妻(夫)

内縁というのは、結婚の意志があって同居もしているけれど入籍の届出をしていないため、法的に夫婦と認められない夫婦のことです。

内縁の妻には相続権はない

事実婚などともいいますね。内縁関係は、社会的にみて夫婦のようであっても、婚姻届が提出されていない限り夫婦ではありませんので、配偶者として相続することはもちろん、相続権自体もありません。

遺言で包括受遺者であれば相続可能

ただし、例外があります。

遺言で、内縁の配偶者に対して「包括遺贈」をする旨が記載されていた場合、対象者は「包括受遺者」となり、他の相続人とともに遺産分割の話し合いに参加することができます。

※包括遺贈…遺産の一部もしくは全部に対して「〇%」のように、遺産を特定せず割合で示して相続させること

※包括受遺者…包括遺贈を受ける人のこと

>>内縁の妻は相続可能?内縁関係の財産継承方法を完全解説!

離婚した元配偶者

被相続人と離婚した元配偶者にも、相続の権利はありません。

離婚した時点で、被相続人の配偶者として相続する権利を失うからです。離婚の話し合いの最中で別居している場合なら配偶者は相続権を持っていますが、離婚後も同居していて事実婚状態の場合は配偶者の相続権はありません。

「法律的にみて夫婦であるか否か」という基準で、相続権が発生する・しないが決まるのです。

子どもであれば両親の相続人となる

ちなみに、離婚した夫婦の間に子どもがいる場合、子どもは夫婦のどちらに対しても相続人となります。 

再婚相手の連れ子

再婚の際に配偶者となる相手に子ども(連れ子)がいた場合、新しい夫婦の子どもになります。

相続が発生したときは、被相続人の実子であれば相続権を持ちますが、実子でない場合(再婚相手の連れ子)は、事前に養子縁組の届け出をしていないと相続人にはなれません。

ちなみに、再婚相手は婚姻届が提出されていれば、配偶者として相続することができます。

法に触れる行為をした者(相続欠格)

相続欠格(者)や廃除(後述します)に該当する人は、血縁関係から本来相続人になれる人(推定相続人)であっても、相続人になることはできません。

相続欠格になる行為

下記にあてはまる行為を行った場合、相続欠格となります。

・被相続人に対する殺人、もしくは殺人未遂行為

・被相続人の殺害を知っていたにもかかわらず刑事告訴をしない

・脅迫等の行為を伴う遺言の偽造および変造

・故意による遺言の取消や変更、隠匿、破棄 

など。

なお、相続欠格については一代限りの制約になります。

万一、相続欠格者が亡くなった場合、代襲相続人となれる者がいるときは、本人に欠格事由がなければ相続することが可能です。 

※代襲相続…本来の相続人に代わって相続をする人

【例】自分の祖父(祖母)が亡くなるよりも前にその子ども(=自分の親)が他界していた場合、孫にあたる自分に相続権が発生するということ

被相続人によって相続権を奪われた人(相続廃除)

相続人から廃除された人も、相続に参加することはできません。廃除とは、該当の相続人から法的かつ強制的に相続権を剥奪するというものです。

相続廃除になる行為

下記にあてはまる行為を行った場合、相続廃除となります。 

・被相続人に対する虐待等の暴力行為、度を超えた侮辱

・著しい非行行為(莫大な借金を肩代わりさせるなど)

・刑罰に処された(逮捕→起訴→実刑判決)

相続人廃除には裁判所での申立てが必要

なお、相続人の廃除を行う場合は事前準備が必要です。相続人が廃除相当であるという事実がわかるものを揃えた上で、家庭裁判所で相続人廃除の手続き(申立)をおこないます。

申立には2つの方法があります。

・被相続人自身が生前に家庭裁判へ相続人廃除の申立をする

・遺言に相続人廃除の一文を記し、自分の死後、遺言執行者に申立代行をしてもらう 

家庭裁判所で審理後、廃除に値すると認められれば、相続人から廃除することが可能となります。

孫は原則として相続権はない

基本的に、孫には相続権がありません。相続が発生すると、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹あたりまでが一般的な相続人の範囲となるため、孫が相続にかかわるケースは少ないといえるでしょう。

>>遺産相続を孫にする方法を完全解説!3つの方法と税金と割合を紹介!

ですので、祖父母が亡くなって相続が発生した場合は、その子どもである自分の親が相続人となるケースがほとんどです。

しかしながら、遺言で孫への包括遺贈があったときや、被相続人よりも前に自分の親が亡くなっていたときは孫にも相続権が発生するため、遺産分割の話し合いに参加する必要がでてきます。 

相続放棄した場合

法定相続人だからといって必ずしも相続をしなければいけない訳ではありません。故人に借金があった場合は相続をせずに放棄することができます。あだし、相続放棄は相続が発生したことを知ってから3カ月以内に放棄する意志を示す必要があります。また、相続放棄した場合は相続人としての資格を失う為、代襲相続は発生しません。

相続放棄については下記記事もご参考ください。
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遺産相続については下記記事もご参考ください。
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法定相続分に拘束されない場合

法定相続分は、あくまでも遺産分割の目安として法律で定められているだけなので、必ず従わなければならないというものではありません。

相続人全員による話し合いを経て、分割の内容に異議を唱える者がいないことが確認できれば、法定相続のルールに縛られることなく、自由に遺産を分割することができます。

遺言書がある場合

遺産は、元は被相続人が所有していた財産ですので、本来であれば本人の意思にもとづいて自由に処分できるものです。

そのため、遺言がある場合はそちらを最優先にして遺産の分割をおこないますが、遺言の内容によっては、法定相続分や遺留分を超える内容になっているケースもあります。

その場合、相続人は法定相続分および遺留分について相続できる権利を主張し、請求行為をおこなうことができます。 

遺言書がない場合

遺言書が見つからない場合は、相続人全員が集まって遺産分割および相続についての話し合いをします。

ですが、分割協議が話し合いで円満解決するケースは決して多くはないと思われます。逆をいえば、もめるケースのほうが多いということです。

結論が出ない場合は裁判所で決着をつける

関係者の話し合いで結論が出ない場合は、家庭裁判所での調停や裁判で結論を出すことになります。

裁判所へ申立した場合、まずは話し合いによる円満解決へと導くための調停をおこない、そこで不成立となった場合は裁判へと移行します。

なお、裁判で判決が言い渡された場合、遺産分割は法律で決められた割合を基準にして決定されます。 

>>遺産分割を完全解説!流れ・割合・揉めない方法を紹介!

遺産分割協議による合意がある場合

相続においてもっとも望ましいケースといえるでしょう。遺言がある場合は、被相続人の生前の遺志といえる遺言の内容にそって遺産を分割するのが基本です。

仮に、遺言の内容が法定相続分や遺留分などを侵している内容であっても、相続人全員の理解と納得があれば問題はありません。 

相続人の中に寄与分が認められる人がいる場合

寄与分とは、被相続人の遺産の増加または維持管理などに特別の寄与(注力すること)をした人が相続人の中にいる場合、その貢献度に応じて通常の相続分+αの遺産を渡すことです。寄与に値すると認められるケースは以下のとおりです。 

・被相続人が所有する財産の増加や維持管理と寄与行為が紐付けされていること

・寄与が特別な行為であること

・他の相続人と共同した寄与行為であること

今までは、寄与は相続人に限定されていましたが、2019年7月の相続法改正により、一定範囲の親族にも寄与が認められるようになりました。

ちなみに、寄与分を得るためには、自らが寄与にあずかれることを主張して、他の相続人からの同意を得る必要があります。

同意を得られない場合は、家庭裁判所にて調停および裁判にて寄与分を決めることになります。 

生前贈与等の特別受益を得ていた相続人がいた場合

特別受益とは?

生前贈与の特別受益とは、生前の被相続人から多額の財産をもらう(もらっていた)ことです。

たとえば、結婚式の費用や車の購入代金、教育資金など、ある程度まとまった大きな金額を与えてもらうことは贈与と判断されることがあります。

贈与による金銭援助を受けたことがある相続人と、何もしてもらっていない相続人が、遺言や法定相続分にそって遺産分割されると不公平になってしまいます。

そのため、相続の際はこれらの金額を考慮した上で、公平な遺産分割となるようにする必要があるのです。 

他の相続人が、特別受益に理解を示して納得していれば問題ありませんが、調停や裁判にまでもつれこんだ場合は、財産の中に特別受益の金額を入れて計算しなおした総額を遺産とみなして、それを基に改めて遺産を分割していきます。

遺言で意思表示があれば免除となる

ただし、被相続人が遺言で「特別受益の持戻し免除の意思表示」をしていた場合は、遺産を再計算するときに含めることができないとされています。 

遺言については下記記事もご参考ください。
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法定相続分の注意点

先にも述べたように、法定相続分は遺産を分ける目安として法律で決まっていますが、相続のケースによっては必ずしもその通りに分割されるわけではありません。では、どのようなケースに注意を払えばいいのかをみてみましょう。

嫡出子と非嫡出子がいる場合

婚姻届を提出した夫婦の間に生まれた子どもを「嫡出子(ちゃくしゅつし)」といいます。

婚姻届を提出していない男女の間で生まれた子どもは「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」といいます。

「婚外子(こんがいし)」ということもあります。内縁関係(いわゆる事実婚)の夫婦の間に生まれた子どもは非嫡出子となります。

相続の際は、「嫡出子でも非嫡出子でも法定相続分は同等である」という判例が最高裁判所から出ていますが、平成25年9月4日以前の相続に関しては、非嫡出子は嫡出子の1/2(法定相続分)とされているので注意しましょう。

兄弟姉妹の父母が異なる場合

同じ子どもの立場でも、兄弟姉妹の親が違うというケースです。

ステップファミリー(再婚等により血縁関係のない親子・兄弟姉妹関係が築かれる家族)などがこのケースに該当するでしょう。

この場合は、兄弟姉妹が被相続人と父母が同じなのか、どちらか一方が同じなのかで法定相続人が違ってきます。

父母が同じ場合を1とすると、どちらか一方が同じという場合はその半分ということです。以下に

兄弟姉妹の父母が異なる場合の相続例

モデルケースを示してみます。

父親死亡により相続が発生(母親はすでに他界)

相続人は兄弟のみと仮定

兄…父母が同じ(法定相続分は遺産の2/3)

弟…父のみ同じ(法定相続分は遺産の1/3) 

遺産総額 3,000万円

兄 3,000万円×2/3 2,000万円

弟 3,000万円×1/3 1,000万円

ということになります。

遺産分割協議には全員が参加する

相続が確実におこなわれるためには、遺産の分割協議の場に相続人が全員参加して、すべての相続人の同意を得る必要があります。

相続人はもちろん、代襲相続者、包括受遺者、遺言執行者なども一緒に参加します。

1人でも欠けた場合は無効となる

もし、この場に1人でも欠けた場合は、遺産分割協議自体が無効になるので注意して下さい。

遺言がある場合は、遺言状を開封する際に専門家に立ち会ってもらうことが望ましいです。

後々のトラブルを避けるためにも、第三者の立会いは強くおすすめします。

もし、相続人の中で下記に該当する方がいた場合は、分割協議に立ち会ってもらう第三者の存在が必要になります。 

①自分の意思表示および判断ができない方

認知症の方などがこれにあたります。この場合は、家庭裁判所に「成年後見人選任の申立」をして、成年後見人となる方を決めてもらいます。

そうすれば、相続人本人の代わりに遺産分割協議に参加することが可能になります。

ちなみに、申立から選任の決定までは数か月かかることが多いため、早めに申立することをおすすめします。

なお、成年後見人予定者も相続人であるという場合は、成年後見人になることが認められませんので、その時は「特別代理人選任の申立」をして選ばれた人が、遺産分割協議に参加することになります。

②未成年者

社会生活上であれば未成年の保護監督責任は親にあるため、親が代理人となる場面は往々にしてあります。

ですが、相続の場合はこれができません。①と同様に「特別代理人選任の申立」をおこなって、その人が代わりに話し合いのテーブルにつくことになります。

③行方不明者、音信不通者

八方手を尽くしても相続人の所在確認ができない場合、「不在者財産管理人選任の申立」をして不在者財産管理人を決めてもらいます。

さらに、その人が家庭裁判所から「権限外行為の許可」を得てから遺産分割協議に参加します。

相続については下記記事もご参考ください。
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法定相続分についてのまとめ

「法定相続分」について特に重要となるポイントを下記にまとめました。

【法定相続分とは?】
●法定相続分とは、被相続人が所有していた財産(遺産)を相続人で分割する際に用いられる、法律上で定められた一定割合のこと
●遺言がある場合は法定相続分よりも優先される
●遺言があっても遺留分は保証されている
●指定相続分とは、被相続人自身が事前に決めた遺産の分け方とその相続分(割合などを含む)のこと

【法定相続分と遺留分の違い】
●遺留分は「総体的遺留分」と「個別的遺留分」とに分けられ、相続人の組み合わせによってその割合が異なる
 -総体的遺留分は「全遺産の中からその人がもらえる分」で、個別的遺留分は「総体的遺留分を人数で割ったもの」
 -個別的遺留分は、相対的遺留分×法定相続分で計算する

【相続権を持たない人】
●内縁の妻(夫)
 -包括受遺者であれば相続可能
●離婚した元配偶者
 -子どもであれば両親の相続人となる
●再婚相手の連れ子
●法に触れる行為をした者(相続欠格)
●被相続人によって相続権を奪われた人(相続廃除)
●孫は原則として相続権はない

【法定相続分に拘束されない場合】
●遺言書がある場合
 -ただし相続人は法定相続分および遺留分について相続できる権利を主張し、請求行為をおこなうことができる
●遺言書がない場合
 -遺言書が見つからない場合は、相続人全員が集まって遺産分割および相続についての話し合いをする
 -結論が出ない場合は裁判所で決着をつける
●遺産分割協議による合意がある場合
●相続人の中に寄与分が認められる人がいる場合
●生前贈与等の特別受益を得ていた相続人がいた場合

【法定相続分の注意点】
●嫡出子と非嫡出子がいる場合
 -「嫡出子でも非嫡出子でも法定相続分は同等である」という判例が最高裁判所から出ていますが、平成25年9月4日以前の相続に関しては、非嫡出子は嫡出子の1/2(法定相続分)とされているので注意
●兄弟姉妹の父母が異なる場合
 -父母が同じ場合を1とすると、どちらか一方が同じという場合はその半分となる
●遺産分割協議には全員が参加する
 -遺産の分割協議の場で1人でも欠けた場合は無効となる

法定相続分は、遺言がない場合の遺産分割の基準となるものですが、絶対に遵守しなければならないものではありません。

遺言がある場合はそれにしたがって相続すればいいですし、遺言がなくても法定相続分や遺留分という法律で定められた基準がありますから、それにしたがって相続できるのであれば問題はありません。

ただし、どちらの場合においても「相続人全員が納得している」ということが大前提となります。

親子や兄弟姉妹の間柄でさえ争うことが多い相続。

そこに上記のような特殊なケースが絡んでくると、さらなる困難を招く状態になることは容易に想像できます。

今は相続人側であるわたしたちも、いつかは被相続人側となる日が必ずやってきます。

遺された家族や親戚が、自分の財産を巡って「争続」や「争族」とならないように、事前に備えておくことが必要なのかもしれません。

やさしい相続では相続専門の専門家をご紹介させて頂きます。お気軽にお申し付けくださいませ】

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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)

略歴
高橋圭 (たかはし けい)
青山学院大学法学部卒業。
2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員

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