海洋散骨にかかる費用は?散骨方法・自分で行う際の費用相場と流れを完全解説!
これまで故人の遺骨は、墓地に埋葬することが一般的でしたが、供養の価値観がアップデートされてきていることもあり、昨今では新しい供養方法の1つである散骨が注目を集めています。
なかでも海洋散骨は海に遺骨を散布するもので、専門業者もいるほどメジャーになりつつある供養方法です。
この記事では、海洋散骨にはどの程度の費用がかかるのかを中心に、散骨とはそもそもどのようなものなのか、メリット・デメリットまで徹底的にご紹介します。
海洋散骨とは
本来であれば火葬後に骨壷に入れてお墓へと埋葬することが主流ですが、海洋散骨では遺骨は骨壷に入れず、細かく砕いてパウダー状にしてから、海へと散布します。これが海洋散骨の供養スタイルなのです。
なお、海洋散骨自体は自力で行うことも不可能ではありませんが、基本的には日本海洋散骨協会の定めるルールに基づいて実施する必要があるため、知識のないまま闇雲に進行するのは得策ではないでしょう。
したがって、海洋散骨を行う際には業者に依頼するのも1つの手として念頭に置いておきましょう。
散骨は遺骨を自然に還す意味合いを持った供養方法ですが、そもそもどういったものであるのか、散骨の概要と数ある供養手段の中で、海洋散骨が選ばれる背景や理由についてご説明していきます。
散骨とは
散骨とは、葬送の目的で、パウダー状に細かくした故人の遺骨を自然の中に散布することを言います。
散骨には海へと遺骨をまく海洋散骨のほかにも、山などに散布する地上散骨や空中散骨といった方法もあります。
散骨は歴史としては古い時代から行われており、7〜8世紀頃にはすでに取り組まれていたと言われていますが、1990年代に入ってから海洋散骨が全国に広まりました。
海洋散骨とは
海洋散骨は、亡くなられた方の遺骨をお墓に納めずに、粉骨した遺骨を海にまいて供養する方法です。
たとえば、生前に海辺に長年住居を構えていたり、海で過ごした大切な時間があるなど、海を特別なものとして認識している人は、「海で自由になりたい、最後は海に還りたい」と考え、海洋散骨を希望されます。
一方で、子や孫にお墓の管理の面倒をかけたくないと考える人や、そもそも入るお墓がないといった場合においても、海洋散骨を検討する人が一定数存在するようです。
ただし、海洋散骨には自治体によって条例があったりと、必ず行えるとは限らないため、実施する前に海洋散骨を行う場所や予算、条例の有無や内容をしっかりと確認しておく必要があります。
海洋散骨が注目されている背景
死後、人間は火葬されて遺骨をお墓に埋葬される形式が供養として一般的に行われてきました。
そんな中、海洋散骨が注目されてきているのは、お墓に対する価値観の変化や家族形式の変化が理由として挙げられるでしょう。
海洋散骨は、広い海の中で自分の遺骨をまいてもらうため、お墓に入るよりも解放感溢れる供養方法とも考えられます。
「自由になりたい。広大な自然に還りたい。」という思いにより、海洋散骨を決断する人も少なくありません。
また、少子高齢化により、独身世帯や子なし夫婦といった家族形態も珍しくなくなりました。
本来、墓地に建つお墓は先祖代々継承してきたお墓であり、死後はそこに入ることが自然と考えられています。
ただし、それは墓守の役割を担うことのできる人間がいることが前提であり、独身世帯や夫婦2人きりの生活を送る人には、その役割を果たせる人を見込めないため、生前から自分で海洋散骨を契約しておく人も一定数いるのです。
一方で、子や孫といった継承者がいる場合であっても、管理など負担をかけたくないという気持ちから、お墓に入らず海洋散骨を選択する人もいます。
なお、海洋散骨の際、遺骨は全てまくこともできますが、全てまかず一部を手元に置いておくことも可能です。
また葬送儀礼ではないため、お坊さんを必ず呼ぶ必要もなく、仰々しいお葬式ではなく、よりフランクに故人を偲ぶ式を行いたい方には推奨できます。
ただ、すでに読経がプランに組み込まれていれば費用は変化します。
海洋散骨のプランと費用相場
海洋散骨を行う際には専門業者に依頼することができます。散骨全体を取り仕切る業者もいれば、海洋散骨に特化した業者もいます。
また、海洋散骨自体は自力で行うことも不可能ではありませんが、基本的には日本海洋散骨協会の定めるルールに基づいて実施する必要があるため、知識のないまま闇雲に進行するのは得策ではないでしょう。
なお、業者に依頼する際と自分で行う場合は費用が変わってくるため、あらかじめ把握しておきましょう。
ここでは、海洋散骨のプランと一般的な費用相場についてご紹介していきます。
代行委託
代行委託というのは文字通り、海洋散骨に関することをすべて、業者が代理で行ってくれるプランです。
費用としては、3〜5万円程度でおさまることが一般的です。
代行委託の場合、船で海へ出て故人をお見送りすることができないこともあるため、内容をしっかりと確認した上で決断しなければなりません。
一方で、遠方で暮らしていて物理的に移動するのが難しい、もしくは何かしらの理由で船に乗ることができない、そもそも墓守がおらず、費用をかけられないといった理由がある場合には、海洋散骨の代行委託がおすすめです。
合同乗船・合同散骨
合同乗船・合同散骨は、複数の家族が一緒に船に乗り、海洋散骨を共同で行い故人をお見送りするプランです。
費用は約10〜15万円程度が相場です。何組乗船するのか、1組何名乗船するのかといった制限ラインの差によって料金は変動します。
また、全国各地での海洋散骨が可能である業者もあれば、限定的なエリアでのみ実施可能な業者もいるため、エリアにこだわりがある方は、事前の下調べの段階で注意しておきましょう。
貸切・チャーター
他の家族との乗り合わせもなく、船を貸し切って、家族のみで落ち着いて海洋散骨を行うことができるプランです。
貸し切った船を1家族で利用するため、その分代行委託や合同散骨よりも費用は高くなります。
目安としては、20万〜35万が相場です。海洋散骨だけでなく、ドリンクやお菓子の提供サービスがあったり、乗船可能人数が多い大きい船であるほど高額になります。
自分で行う(粉骨費用・散骨費用)
業者に頼まず、自分で海洋散骨を行うのは不可能なことではありません。
ただし、すべて自分で行うため、粉骨にかかる費用と散骨にかかる費用の両方がかかることになります。
特に粉骨ではサイズが2mm以下のパウダー状に粉砕しなければならないため、粉砕器具と物理的な労力が必要となることを頭に入れておきましょう。
なお、粉骨費用としては使用器具や骨壷の購入、場合によっては遺骨の洗浄費などがありますが、おおよそ1万円〜5万円程度が目安です。
また、散骨費用は船のチャーター代やその他お線香などにかかる費用で、
小型船だと10万円〜30万円(エリアや時間で費用が異なる)、
大人数乗ることのできる旅客船であれば、25万円〜40万円程度チャーター代としてかかります。
したがって、自分で海洋散骨を行う場合、総額は約10万円〜50万円と内容によってかなり値段に差があります。
また、勝手に遺骨を撒くことはトラブルの原因となるため、どこで遺骨をまいて良いのかをあらかじめチェックしておかなければなりません。
海洋散骨を提供している事業者
それでは、実際に海洋散骨を行っている事業者をご紹介していきます。
ライフサポートするが
ライフサポートするがは、静岡県にある海洋散骨業者です。
散骨エリアとして、駿河湾・遠州灘・相模湾・東京湾・松島湾などかあり、富士山周辺での海洋散骨ができる事業者として知られています。
プランは、特別代行プラン、合同散骨プラン、チャータープランの3つで、費用はそれぞれ6万円〜、8万円〜、13万円〜で設定がされています。
なお、特別代行プランのみ、遺族は乗船することができません。
合同散骨、チャーターのプランでは、遺族も船に乗り、おおよそ1時間〜1.5時間で海洋散骨を行います。
おこつ供養舎
おこつ供養舎は、東京都に拠点を構える海洋散骨業者です。
海洋散骨をはじめ、粉骨や分骨、手元供養品の製作といった、供養にまつわるサービスを展開している会社です。
海洋散骨のプランとしては委託散骨プラン、合同乗船散骨プラン、貸切乗船散骨プランの3つがあります。
まず、委託散骨では、スタンダードプランとセレクトプランの2種類があり、粉骨の有無によってどちらかから選べます。
なお、費用はスタンダードプランは3万円〜、セレクトプランは約1万円〜で、海洋散骨を完全にお任せすることができます。
なお、場所によって費用は変動します。
つづいて、合同乗船散骨プランでは、6.5万円〜で1組4名までの2組限定で海洋散骨を合同で行うことができます。
最後の貸切乗船散骨では、8万円〜で散骨日の指定や、どこの海域で海洋散骨をするか選択することができます。
ベル
ベルは東京都に本社と営業所を持つ葬祭業を営む会社です。
ベルでは、西日本、東日本問わず日本全国の海域での海洋散骨が可能です。プランは、代理委託プラン、合同プラン、プライベートプランの3つです。
1つ目の代理委託プランでは、ベルが運営するオーシャンメモリアルに、散骨を完全に委託する5万円のプランです。
2つ目の合同プランは、複数家族が1つの船に乗船して海洋散骨を行うプランで、仮に1家族2名での乗船であれば、12万円で行うことができます。
3つ目のプライベートプランは、船を貸し切り、プライベート空間を保ったまま海洋散骨を行えるプランで、費用は22万円です。なお、粉骨の必要がある場合は、別途3万円が必要となります。
海洋散骨に関する法律・規制
海洋散骨を行うことは、結論から言うと法律的には問題はありません。
ただし、自治体によっては散骨自体を禁止している場所もあります。
また、散骨禁止地区でなくとも、好き勝手に散骨を行って良いわけではなく、節度をわきまえながら海洋散骨を行わなければなりません。
関連する法律
海洋散骨に関連する法律は、「墓地、埋葬等に関する法律(第4条一項)」と「死体損壊等罪(刑法190条)」の2つです。
前者は、埋葬や焼骨を墓地以外の場所で行ってはならないという法律です。ただ、遺骨を墓地以外に納めることの是非は法律では明確にされておらず、海洋散骨自体も禁止はされていません。
一方で後者は、散骨は遺体の損壊や遺棄に該当しているとも考えられるため、法に抵触しているのでないかと疑問視されている部分もあります。
ただ、こちらも節度を持って行う限りは禁止はされることはありません。
禁止している自治体
海洋散骨を禁止していたり、規制をかけている自治体としては主に以下のような地区が挙げられます。
・北海道長沼町
・北海道七飯町
・北海道岩見沢市
・長野県諏訪市
・埼玉県秩父市
・埼玉県本庄市
なお、散骨行為が自体が禁止されている条例もあれば、散骨場の経営に規制をかけられていることもあります。
海洋散骨で守るべきマナー
海洋散骨に法的な拘束はありませんが、海洋散骨の秩序を守るため、節度を持って海洋散骨を行うことが必要不可欠です。
具体的には以下のようなマナーがあります。
・遺骨を2mm以下の粉末状にする
・入れ歯やネジなどの不純物が混合していないようにする
・岸から2km以上離れた場所で実施する
・航路や海水浴場での海洋散骨は避ける
・遺骨と一緒に海へと散布するものは、ビンや缶、プラスチックなどは避け、海中で分解しやすいものにする
漁などで日々海を使用する人の迷惑にならないよう配慮したり、海の環境保全の意識を持ちながら、気持ち良く海洋散骨に取り組むことが大切と言えるでしょう。
海洋散骨のメリットデメリット
ここからは、海洋散骨のメリット・デメリットをそれぞれまとめていきます。それぞれを踏まえて、海洋散骨を行うのかどうかを検討するとよいでしょう。
海洋散骨のメリット
・後継者への負担が少ない
・後継者がいなくても心配がいらない
・業者に頼めば安心安全
・費用が手頃
お墓での埋葬となると、子や孫といった人物が管理し、順番に継承していくというシステムが一般的です。
後継者は、お墓参りはもちろんのこと、お寺との関係構築をしたり、たとえばお墓をたたむことになった場合には、お寺や親族とコミュニケーションをとりながら進行していくといった役割があり、肉体的にも精神的にも負担が大きくなるケースがあります。
一方で海洋散骨では、お墓が必要ないため維持管理を行う必要がなく、後継者がいない場合でも安心です。
さらに、新しくお墓を建てるのと比較すると、かなり低コストで専門業者へ依頼ができ、おおよそ10分の1ほどの費用で実施が可能です。
海洋散骨のデメリット
・全ての遺骨を海にまいた場合、手元に遺骨は残らない
・全て自分で行うには少し大変
・親族の理解を得るのが難しい場合もある
海洋散骨にさまざまなメリットがある一方で、遺骨を全てまいてしまった場合に、手元に遺骨が残らないことで悲しむ人もいます。
仮に、どうしても手元に遺骨を残したいときは、全体の遺骨を分割して、一方を海洋散骨へ、もう一方を手元供養として使用することも可能です。
また、海洋散骨を自力で行いたいと考える人もいますが、粉末状になるまで細かくするにはなかなかの根気が必要となります。
そもそも、家族の中では海洋散骨自体に理解を示せない人もいるかもしれません。
トラブルの元になるため、必ずお互いの合意を取ってから進行するようにしましょう。
海洋散骨費用についてのまとめ
海洋散骨の費用をはじめ、ルールやメリット・デメリットについてご紹介してきました。
新しくお墓を建てるよりも、低費用で実施できることから注目されている供養方法です。
海洋散骨の知識を豊富に持った事業者にも頼りながら、守るべきルールや節度ある海洋散骨を行いましょう。
【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
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