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海洋葬とは?基礎知識からマナー・流れ・種類まで完全解説!

自分が亡くなった後、遺された家族や親戚、お世話になった友人などに迷惑をかけたくない…そんな思いから、生前に「終活(しゅうかつ)」をされる方が増えてきています。

持ち物など身の回り品の整理はもちろん、人生最後の行事となる葬儀についても、自分らしい見送り方を希望される人が多いそうです。

中でも、問い合わせや申し込みが多いのが「海洋葬」です。今回は海洋葬について詳しくお伝えしたいと思います。

海洋葬とは

海洋葬とは実際にはどのようなことを行うのか、その内容についてご存知の方はそれほど多くないと思います。

海洋葬とは

海洋葬とは、一言でいえば「故人の遺骨を海に散骨する」というものです。

遺骨を船に乗せて出港し、到着後散骨してお別れのセレモニーを行い、散骨場所を周回したのち帰港するというスタイルが一般的です。 

自然葬とは

自然葬は、その名の通り「故人を自然に葬る」というものです。

お墓などは建てず、遺骨を自然に還すという考えのもとで行われます。

海洋葬もそのひとつですが、自然葬には他にもいくつかの方法があります。 

・樹木葬

予め植樹された木の周辺に遺骨を埋葬するというやり方です。植えられた木が墓石の意味を成す目印となり、埋葬場所や樹木の種類によって費用は大きく違ってきます。(10万円~100万円ほど)

墓守となる人がいなくても埋葬でき、植えられた木が墓石や卒塔婆の代わりとして存在するため、最近人気の埋葬方法です。

・バルーン葬

大きなバルーン(風船)の中に遺骨を入れて、それを空へ飛ばすというやり方です。

空高く飛んでいったバルーンは、成層圏に到達すると自然に破裂し、その時に遺骨が空中散骨されます。

自宅の庭や思い出の場所などからバルーンを飛ばすことができ、バルーンリリース時のドローン撮影を行ってくれる業者もあります。費用の相場は30万円ほどです。 

・宇宙葬

遺骨をカプセル容器に入れて、ロケットや人工衛星などに搭載して打ち上げるというやり方です。

かなりスケールの大きい散骨方法ですが、費用は30万円程度と意外とリーズナブルかもしれません。

ちなみに、宇宙葬のロケット打ち上げはアメリカで行われることが多いようです。

最近では、遺骨を月へ飛ばしてそこをお墓にするという「月面葬」というやり方もあります。

海洋葬の特徴

では、実際に海洋葬を行った場合どのような特徴があるのかを見てみましょう。

墓石代・管理費が不要

海洋葬は遺骨の埋葬先(散骨場所)が海ですので、墓石を立てる必要がありません。

そのため、建墓費用は確実に抑えることができます。

また、散骨時の費用はかかりますが、従来の埋葬方法なら必須の霊園管理料や永代供養料なども不要なため、それらの費用を抑えることも可能です。

継承者や管理の心配が不要

前述の通り、海洋葬は遺骨を海に散骨するためお墓は不要です。そのため、跡継ぎなど墓守として継承してくれる人がいなくても問題ありません。

お墓参りもできる

遺骨を全て海に散骨してしまうと、年忌法要やお盆、お彼岸などの際に船をチャーターしてお墓参りすることになるため、費用もそれなりにかかってしまいます。

ですが、永代供養付きの海洋葬にした場合は、予め遺骨を分骨し、海への散骨用とお墓への納骨用とに分けることができます。

そうすれば、お寺にお墓参りをすることができるため、船のチャーター代を抑えることが可能です。

宗教・宗派・宗旨が不問

日本の葬儀の約90%が仏式といわれています。

他にも、神道、キリスト教など、世界には様々な宗教宗派が存在していますが、海洋葬には特定の宗教や宗派がありません。条件が整えば、どなたでも海洋葬が可能です。 

海洋葬のメリットとデメリット

どんな葬儀にも、大なり小なりのメリットやデメリットがあります。海洋葬といえども例外ではありません。

では、海洋葬のメリットやデメリットとは一体何なのでしょうか。それらを見ていきましょう。 

海洋葬のメリット

海洋葬のメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

①生命の根源と例えられる海に故人を還すことができる

全ての生命は海で産声を上げ、複雑な進化を遂げて現在に至ったと考えられています。

自然に還るという観点から見れば、海洋葬はまさにぴったりといえるでしょう。

海が好きだった人はもちろん、仕事やマリンスポーツなどで海に携わっていた人であれば、海への散骨はある意味本望かもしれません。

②故人の気持ちを尊重できる

日本の葬儀の約9割は仏式といわれており、従来の葬儀や供養のやりかたでは故人の気持ちに寄り添えない、という矛盾が生じる可能性があります。

故人が生前に海洋葬を希望してそれを行うことができれば、故人の遺志を尊重することにもつながります。 

③葬送の形式が自由である

日本のお葬式といえば、参列者が喪服を着て、お坊さんがお経をあげてから焼香して…という仏式の形が一般的ですが、海洋葬は葬送の形についての決まりがありません。

葬儀のスタイルも、参列者の服装も、故人や遺族の意向で自由に決めることができます。

喪服の代わりにアロハシャツ、読経の代わりにハワイアンミュージックを流す、などという方法も可能なわけです。

昔ながらの葬儀に馴染みのある方々には反発されるかもしれませんが、形式にこだわらない自由なスタイルを好む若年層なら、一定の理解を得られるかもしれません。

④供養の費用が抑えられる

亡くなった人を供養するには、位牌や遺影のほかにお墓や仏壇、それらに付随する様々な道具が必要になります。

また、それらにかかるメンテナンスの料金もバカになりません。

海洋葬の場合は、基本的に墓石等の設備は不要ですので、それらにかかる費用はかなり抑えられると思われます。

⑤墓守がいなくても問題ない

お墓を建てて故人やご先祖様を供養する場合は、代替わりのたびにお墓のお世話をする「墓守」の存在が必要です。墓守になった人は、年忌法要のほか、盆や彼岸、月命日などのたびに、お墓の掃除や参拝をしなくてはならなくなります。

海洋葬の場合は海そのものがお墓になるため、墓守として誰かを立てる必要はなくなります。

海洋葬のデメリット

反対に、海洋葬のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

①遺骨を粉状にする必要がある

海洋葬で散骨する場合は、遺骨を粉状にしてから散骨しなければなりません。法律でも定められていることなので、あらかじめ準備しておく必要があります。 

②葬儀参列者の人数制限がある

海洋葬当日は、船をチャーターして沖合で散骨します。

一般的にはクルーザーを使用することが多いですが、乗船定員が定められています。

そのため、通常の葬儀よりもはるかに少ない人数で故人を見送ることになります。 

③お墓という目印がない

海洋葬は、散骨場所の目安(ポイント)となる地点はあるものの、そこにお墓が建っているわけではありません。

故人を偲び想いを寄せるものがないため、漠然とした供養になってしまう可能性があります。 

④お墓参りがしにくい

葬儀が終わると、お盆やお彼岸、命日など、故人を供養するためにお墓参りをすることが多くなります。

海洋葬の場合、故人が眠る場所は海ですので、お墓参りをしたいと思ったら船をチャーターする必要があります。

費用がかかることはもちろん、お線香を手向けたりお花を供えたりすることもできないため、従来のようなお墓参りは難しくなると思われます。 

⑤マナーやモラルに注意する

海洋葬はれっきとした「お葬式」です。比較的自由度は高いですが、クルーの指示に従う、船上でどんちゃん騒ぎしないなど、海洋葬ならではのマナーやモラルは存在します。

また、遺族親族の中には遺骨を海に散骨すること自体に難色を示す人もいますので、事前に海洋葬であることを伝え、理解してもらう努力をする必要が出てくるかもしれません。 

海洋葬の種類と費用相場

海洋葬にはいくつかのやり方があります。以下に、どのような方法があるのか、その相場はどのくらいなのかをまとめました。 

個別(チャーター)散骨(海洋葬)

遺族と少数の友人のみで乗船し、沖合に出て散骨するやり方です。

船の上で家族葬を行う、といえば何となくイメージしやすいかと思います。

身内でだけの葬儀となるため費用はそれなりにかかりますが、日程や時間、葬儀内容などを自由に設定することができます。15万円~40万円程度が相場です。 

合同散骨(海洋葬)

1つの船に複数の遺族が乗船し、同じ場所で散骨するやり方です。

個別散骨よりは費用がかかりませんが、その分自由度は限られてしまいます。

他の遺族も乗船するため、故人が好きだった音楽を流すなどのオプションができない可能性が高いです。10万円~20万円程度が相場です。

代行(委託)散骨(海洋葬)

事前に遺骨を葬儀業者に預け、スタッフが代わりに散骨するやり方です。

遺族は乗船しませんが、散骨当日の様子をビデオに収めたり、写真を撮って郵送してくれるサービスを行う業者もあります。

海洋葬の中で一番費用負担を抑えられる方法で、3万円~10万円程度が相場です。

海洋葬の流れ

では、一般的な海洋葬はどのように行われるのか、その流れについて見ていきましょう。 

申し込み・契約

まずは海洋葬を取り扱う業者を決めて申し込みします。申し込み後に業者へ遺骨を預け、散骨できるレベルまで粉砕処理をしてもらいます。

出航

個人葬や合同葬の場合は、指定された場所に集合します。受付を済ませて乗船し、港を出航します。

散骨

出航してしばらくすると、散骨場所に到着します。係員の指示に従って、遺骨を海へと流します。 

献花・献酒・献水・黙祷

散骨が終わったら、お酒やお水、お花などを海へ放ち、黙祷します。

帰港

散骨場所を船で周回したり、汽笛を鳴らしたりしてお別れのセレモニーを行った後、港に戻って散会となります。

オプションとして、散骨したことを示す証明書や、葬儀の様子を撮影したアルバムなどを依頼することもできますが、希望する場合は事前予約が必要なところが多いです。 

海洋葬のマナー

海洋葬の会場は「海」で、そこが故人のお墓となります。そのため、マナーやモラルを遵守することがとても大切です。

海洋葬では、遺骨やお花、思い出の品などを海に放つことができますが、事前に海へ投下しても問題ない素材や大きさであるかを確認しましょう。

近年「海洋プラスチック問題」が取り沙汰されていますが、セレモニーで放ったものが海の生きものたちの生命を脅かすことがあっては絶対になりません。

故人が美しい海で生きものたちに見守られながら永遠の眠りにつけるよう、参列者は最大限の敬意と注意を払う必要があります。 

海洋葬を行う際の注意点

海洋葬自体は、従来の葬儀に比べるとかなり自由なスタイルで行うことができますが、法的に様々な制約があるのも事実です。

以下に、主な注意点について述べたいと思います。

①遺骨を粉砕して2㎜以下の粉状にする

海洋葬で散骨する場合は、遺骨を粉砕して2㎜以下の粉状にする必要があります。

遺骨のままで海に散骨することは法律上できません。また、業者によっては火葬証明書の写しが必要な場合もありますので、事前にコピーを取っておくと安心です。

②散骨禁止の場所で行わない

散骨には、沿岸散骨と海洋散骨の2種類がありますが、特に注意が必要なのは沿岸散骨です。

近くに海水浴場や養殖場などがある場所で散骨を行うと、その地域の風評被害につながるので絶対にやめましょう。

場所によっては、散骨禁止のガイドラインを出している自治体もあるくらいです。海洋葬をするなら、船で沖に出て行う海洋散骨をおすすめします。

③散骨を行う業者の選び方

散骨を行う業者の選び方についても注意が必要です。散骨を事業として行う場合は、「内航不定期航路事業」の届け出を行って許可を得なければできません。

この許可を得ていない業者の場合は違法操業になりますので、国土交通省からの許可証が発行されているかを確認してください。

海洋葬についてのまとめ

海洋葬は、故人の意思を尊重し、比較的自由な流れでアレンジも可能な新しい葬儀スタイルです。

業者の指示に従い、マナーを守って行えばメリットも多いでしょう。ですが、葬儀としてはまだまだマイナーな面もありますので、関係者から反感を買うようなことが起こらないとも限りません。

故人が安心して旅立ち、記録にも記憶にも残る温かい見送りができるよう、海洋葬についての見識を深め理解を得ることが必要であり、それが故人に対する供養のひとつになるのです。

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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)

略歴
栗本喬一(くりもと きょういち)
1977年生まれ
出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)

株式会社東京セレモニー 取締役

ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
株式会社おぼうさんどっとこむ 
常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
株式会社ティア 
葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。

著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)

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お葬式セミナー講師
エンディングコンサルタント
栗本 喬一(くりもときょういち)
1977年 東京生まれ(名古屋育ち)
略歴
母の死をきっかけに葬儀業界に興味を持ち、大学卒業後、大手葬儀社へ入社、家族葬から大規模葬儀まで、幅広くお葬式を葬儀担当者(セレモニーディレクター)として活躍。その後、葬儀会館の店長、新規開拓を歴任。お客様からの「ありがとう」という言葉をいただけることを仕事のやりがいとし、これまでに10年以上、5,000件以上の葬儀現場に立ち会う。
資格等
株式会社GSI グリーフサポート アドバンスコース修了。