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遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介!

Aug 19 2020

相続での「遺留分」と「遺留分侵害額請求」をご存知でしょうか?本記事では遺産相続で揉めたり騒動になりがちな「遺留分」についての計算方法や請求を行える権利のある人、ない人や時効について詳しくまとめています。

2021/6/16 情報更新

どんな方でも、一度くらいは「相続」という言葉を聞いたことがあると思います。

「相続って、お金や土地をたくさん持っている人がやるものよね。」

「兄弟とか親戚とかを巻き込んで大変なことになるらしいわよ。」
そんな話を聞いたこともあるかもしれません。

ですが、相続の中で出てくるかもしれない、【遺留分】と【遺留分侵害額請求】について、知っている、聞いたことがあるという方はそう多くないと思います。

実は、相続全体はもちろん、この「遺留分」についても大きな騒動になるケースがあるのですそこで今回は、遺留分と遺留分侵害額請求とは何なのか?についてまとめました。

・自分が相続人となったときに遺留分があるのか?

・遺留分の有無を確認するにはどうしたらいいのか?

・あったときはどうやって返してもらうのか?

・争うことになったらどうすればいいのか?

などを中心にまとめて解説していきます。

遺留分とは?

遺留分とは、法定相続人が被相続人から最低限受け取ることができる財産(=遺産)のことです。

「強制相続分」または「法定相続権」という言い方をすることもあります。

・被相続人…亡くなった人のことで、相続させる財産を所有している人(=遺産を持っている人)

・法定相続人…亡くなった人の財産を遺産として相続する権利を持っている人(=遺産をもらえる人)

遺留分制度の概要

遺留分制度は、残された遺族の今後の生活を保障することと、法定相続人の保護という観点から定められたといわれています。

遺産は、もともと被相続人自身の財産なのですから、基本的には誰にあげようが寄付しようが捨ててしまおうが自由です。

しかしながら、それらがまかり通ってしまうと、相続人は「最低限の遺産すらもらえないなんてひどすぎる!!もらえた人はずるい!!」という事態になりかねません。

例え遺言があっても遺留分は侵害できない

そこで、被相続人が必要に応じて遺言を作っておけば、それにもとづいて財産を分け与えることができます。

この場合、万一被相続人が記した遺言の内容と法的解釈に食い違いがあったとしても、遺言の形式に間違いがなければ有効になります。

ですが今度は、遺言の中身が原因で「もらえるはずの遺産が計算と合わない!!思っていたよりも少ない!!」というクレームも出てくるかもしれません。

実は、民法上「遺産は遺言に基づいて自由に処分できる」となっているのですが、ただし書きで「遺留分の規定に違反できない」という一文が記されています。

これにより、どれだけ法的に有効な遺言であったとしても、遺留分を侵すことまではできないのです。

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遺留分侵害額(減殺)請求権がある人

※令和元年7月1日施行の法改正で、遺留分減殺請求の呼びかたが「遺留分侵害額請求」と変わりました。

遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求の違い

改正前の遺留分減殺請求では、遺留分の故人の遺産はそのまま請求することでした。しかし、土地や建物など、分けることが難しい資産についての問題やトラブルが多く発生していました。そこで、遺留分は資産そのものではなく「お金」で請求できるようになった為「遺留分侵害額請求」と名称が変わりました。

法定相続人とは?

遺留分侵害額請求ができるのは、法定相続人とよばれる人たちで、配偶者、子ども、親などがあてはまります。

遺留分侵害額請求とは、遺言の中に遺留分の規定に違反した内容があった場合に、遺留分の請求ができるものです。

遺言の中に遺留分の規定に違反する内容が記されていたとしても、請求権のある人(法定相続人)が何の主張もしなかった場合は、そのまま相続になってしまいます。

そうなると、最終的に不利益を被るのは相続人です。

しかし、請求権があれば、被相続人から受け取るはずだった遺産がもらえなかった時に、「わたしにも遺留分を下さい」と訴えることができるということです。

遺留分は相続人本人が請求する

遺留分は相続人が権利を主張しないといけないので、本人の代わりに第三者が請求することはできません。

ですので、遺留分があると知ったら兎にも角にも早く声を上げ、過不足のないように請求しましょう。

なお、遺留分の請求と受け取りの権限は、法定相続人の代襲にあたる人(代襲相続人…法定相続人に代わって相続や請求をおこなう権利を持っている人=代わりに遺産をもらえる人)にも与えられています。

なお、代襲相続は相続内容や被相続人との関係性によって該当する・しない場合があるので注意が必要です。

代襲相続については下記記事もご参考ください。
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遺留分侵害額(減殺)請求ができない人

兄弟姉妹とその代襲相続人

遺留分侵害額請求ができない人は、兄弟姉妹とその代襲相続人です。

相続の際の順位は子ども、親に次いで3番目となりますが、請求はできません。

被相続人との関係も薄く代襲相続もあるから、というのが主な理由といわれています。なお、甥や姪による代襲相続であっても不可です。

他にも、相続の欠格者や相続を放棄した人、包括受遺者、相続人から廃除された人などについても同様で、遺留分や侵害額の請求はできません。

相続欠格者とは?

相続欠格者とは、法的な理由で相続権がなくなってしまった人のことです。欠格には次のようなケースがあります。

・被相続人が殺されていることを知っていたのに、刑事告訴をしなかった

・被相続人や自分と同じ順位以上の相続人を殺めてしまい、有罪判決が下された

・被相続人に遺言を無理に書かせたり、もしくは訂正させたりした

・作成された遺言を隠したり、あるいは捨てたりした

このようなときは、遺留分の請求はもとより、相続自体もすることができません。

ただし、欠格についてはその人一代限りの制約です。もし代襲相続になるとしたら、代襲相続人は相続権をもち、本人に欠格に値する理由がなければ相続に参加することができます。

相続放棄した人

次に、相続を放棄した人とは、相続を放棄するにあたり法的な手続きをとった人のことです。

ただし、「わたしは遺産相続には加わりません」などと書かれた念書みたいなものがあったとしても、相続を放棄したことにはなりません。

相続を放棄する場合は、家庭裁判所における法的な手続きが必要になるからです。

そして、包括受遺者となった場合も遺留分の請求はできません。

包括受遺者とは?

包括受遺者とは、遺言書に書かれた財産の内容を特定しないで、「遺産全体の2割程度」のようなかたちで遺贈を受けた人のことです。

さらに、相続人から廃除された人についても遺留分の請求はできません。(廃除については後述します)

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相続人の遺留分割合とは?

遺留分における法定相続人の受取割合は法律で決められています。

相続人が直系尊属(ちょっけいそんぞく)のみだと1/3、それ以外は1/2になります。

なお、直系尊属をたどる必要がある場合は、親か祖父母あたりまでさかのぼるのが一般的です。 詳しく見ていきましょう。

遺留分が認められる相続人の範囲

遺留分を請求できるのは、被相続人の配偶者、直系尊属、そして直径卑属(ちょっけいひぞく)です。

なお、直系卑属の中の「子」については、代襲相続人も含まれます。

・直系尊属…祖先と直接の系列になる人(父母、祖父母、曽祖父母など)

・直系卑属…子孫と直接の系列になる人(子、孫、ひ孫など)

関係別での遺留分割合

遺留分と言いましても、大きくわけて2つあります。

関係者別でどのくらいになるのかをお伝えする前に、それぞれの割合の数字について説明します。

・総体的遺留分(【総】の部分)…全部の遺産の中でその人に与えられる分

・個別的遺留分(【個】の部分)…総体的遺留分を人数で割った分

では、個々のケースをみてみましょう。

・配偶者のみ 総…1/2  個…1/2

・子どものみ 総…1/2  個…1/2

子どもの人数が複数の場合は、個別分をさらに人数で割ります。(2人なら1/4、3人なら1/6)

・親のみもしくは祖父母のみ 総…1/3  個…1/3

2人以上の場合は、法定相続分はそれぞれ1/2なので、個別分をさらに人数で割ります。

・配偶者と子ども1人 総…1/2  個…1/4

それぞれが1/2×1/2で1/4となります。

・配偶者と子ども2人 総…1/2  個…1/4

配偶者が1/2×1/2で1/4、子どもは2人なので1/2×1/4で1/8となります。

・配偶者と親 総…1/2  個…配偶者1/3  親1人…1/6 親2人…1/12

個別分は、配偶者が1/2×2/3で1/3、親が1/2×1/3で1/6、親が2人なら1/12となります。

法定相続分が配偶者の2/3と親1/3は法定相続分の割合です。

・兄弟姉妹のみ なし


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遺留分を計算する計算式と金額例

遺留分を計算するには、はじめに被相続人の財産が全部でいくらあるのかをはっきりさせる必要があります。

遺産の計算に必要なのは、相続開始の時点で被相続人が所有していた財産に既に贈与済みの分を加えて、そこから債務を引いたものになり、後述する遺贈分も財産に含みます。
相続の対象となる財産には、一例として下記のものがあげられます。

・現金・預貯金、建物・土地

・株式(上場・非上場にかかわらず)、公債・社債・投資信託

・生命保険、死亡退職金

・死亡前3年以内の贈与、相続時精算課税による贈与

・電話加入権、ゴルフ会員権

・金地金、書画骨董、自動車

・家庭用財産、名義財産、海外財産、事業用財産

・未収金、貸付金、借入金 など

遺産全体の金額(評価額)は、相続開始日(死亡年月日)の時価で計算します。

なお、土地や建物などについては、国税庁が定めた「財産評価基本通達」を参考にして評価します。

遺留分の計算例

では、実際に遺留分を計算する際のモデルケースをみてみましょう。

事例1 配偶者のみ
遺産の総額: 3,000万円
算定の基礎となる財産: 3,000万円
遺留分: 3,000万円×1/2 なので1,500万円
事例2 配偶者と子ども1
遺産の総額: 6,000万円
算定の基礎となる財産: 6,000万円
配偶者の遺留分: 6,000万円×1/2×1/2 なので1,500万円
子どもの遺留分: 配偶者と同じ
事例3 配偶者と子ども2
遺産の総額: 8,000万円
算定の基礎となる財産: 8,000万円
配偶者の遺留分: 8,000万円×1/2×1/2 なので2,000万円
子ども全員の遺留分: 配偶者と同じ
子ども1人の遺留分: 2,000万円×1/2 なので1,000万円
事例4 子ども2
遺産の総額: 7,000万円
算定の基礎となる財産: 7,000万円
子ども全員の遺留分: 7,000万円×1/2 なので3,500万円
子ども1人につき: 3,500万円×1/2 なので1,750万円
事例5 配偶者と親1
遺産の総額: 9,000万円
算定の基礎となる財産: 9,000万円
配偶者の遺留分: 9,000万円×1/2×2/3 なので3,000万円
親の遺留分: 9,000万円×1/2×1/3 なので1,500万円
事例6 親2
遺産の総額: 6,000万円
算定の基礎となる財産: 6,000万円
親全員の遺留分: 6,000万円×1/3 なので2,000万円
親1人につき: 2,000万円×1/2 なので1,000万円
事例7 配偶者と兄弟姉妹4
遺産の総額: 8,000万円
算定の基礎となる財産: 8,000万円
配偶者の遺留分: 8,000万円×1/2 なので4,000万円
兄弟姉妹の遺留分: なし

負の遺産(債務)や贈与などが加わると下記のようになります。

事例8 配偶者と子ども4人(生前贈与と債務ありの場合)
遺産の総額: 5,000万円
生前贈与: 1,000万円
債務: 2,000万円
算定の基礎となる財産: 5,000万円+1,000万円-2,000万円=4,000万円
配偶者の遺留分 4,000万円×1/2 なので2,000万円
子ども全員の遺留分 4,000万円×1/2 なので2,000万円
子ども1人あたりの遺留分 2,000万円×1/4 なので500万円

遺留分侵害額(減殺)請求の対象

下記のようなものが遺留分侵害と判断される対象にあげられますが、相手に対して返還請求の手続きをすれば取り戻すことができます。

遺贈

遺贈とは、遺言によって遺産を分け与えることをいいます。

遺贈は、被相続人の一方的な意思で成り立ってしまうので、相続人に対して個別に事前確認する必要はありません。

もともと相続権のない友人やペット、身の回りの世話をしてくれたヘルパーさん、愛人や隠し子にも渡す、という場合もあるかもしれません。

相続人からしたら「とんでもない!!」と思われるような内容が書かれていても、これらも遺言となってしまいます。

遺贈については下記記事もご参考ください。
遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!
遺贈を完全解説!相続との違い・流れ・控除内容を紹介!

死因贈与

死因贈与とは、被相続人が亡くなった事実によって遺産を分けることをいいます。

死因贈与は一種の「契約」ですが、遺言のような厳しい要件や形式がありません。

ただし、事前に贈与者(被相続人)と受贈者(相続人)がお互いに合意する必要があるため、契約書を交わす必要性があります。

そのため「口約束だけ」のように、契約書が存在しない場合は死因贈与と認められない場合が多いです。

名称上は「贈与」ですが、実際は遺言と同じ位置づけのように考えられることが多いです。

生前贈与

生前贈与とは、被相続人が生きている間に、所有する財産を前もって相続予定者に渡しておくことをいいます。

「相続税対策のために生前贈与をする」という方は結構いらっしゃいます。

死因贈与と大きく違う点は、「被相続人の存命中に財産の所有権を移してしまう」というところです。

生前贈与は、贈与者が生きている間であればいつでもできるため、何十年も前からしている場合もあれば、亡くなる直前にする場合もあります。

相続人から見ると、生前贈与は「特別受益(とくべつじゅえき)」というカテゴリに入るため、基本的には全て遺留分の請求対象になります。

以前はどれだけさかのぼって計算してもよいとされていましたが、令和元年7月に相続法が改正されたことにより、「特別受益は相続開始より10年以内のものに限る」と変更になりました。

ただし、生前贈与の当事者が遺留分請求の権利がある人が損をすると知っていておこなった場合は、たとえ10年以上前に贈与されたものであっても、請求される可能性があります。

なお、生前贈与の案件がいくつもある場合は、贈与日の新しいものから順に請求していくのがセオリーです。

贈与については下記記事もご参考ください。
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遺留分が問題になるケース例

それでは、相続をするにあたって遺留分が問題となるのは一体どのようなものでしょうか。詳しく見ていきましょう。

親が長男にのみ全額分与した場合

子どもが複数いるにもかかわらず、親が特定の子どもにだけ遺産を渡してしまうパターンです。

現在でもよくある事例として、子どもが5人もいるのに、家を継ぐ予定の長男に対して父親が全ての遺産を渡してしまうというものです。

この場合、他の子どもたちにも各々1/6の遺留分が認められていますが、親が亡くなってから他の子どもたちが「俺たちにも遺留分をよこせ!!」と言ってくるかもしれません。

父親が愛人に遺産を分与した場合

遺言や贈与などで、愛人(場合によっては非嫡子)に遺産の一部または全部を渡すパターンです。

愛人や隠し子の存在は、家族にとって決して心穏やかでいられるものではないと思います。

にもかかわらず、父親がその人たちにたとえ一部でも遺産を渡してしまったとしたら、家族であり法定相続人でもある妻や子どもたちは当然納得できるはずもないでしょう。

この場合、妻や子どもたちが相手に遺留分侵害額の請求を起こし、さらなる争いへと発展する可能性が高くなります。

そのときは、遺留分の請求だけにとどまらず、慰謝料の請求など別の争いまで勃発するかもしれません。

結婚間もない配偶者に全額分与した場合

このパターンも、実は遺留分の分配でもめる可能性がある案件です。

夫としては、自分亡き後に遺される妻の将来を憂い、「全ての財産を妻に渡したい」という内容の遺言を行うことも考えられます。

しかしながら、親にも請求権があるので、親が妻に対して「わたしたちにも遺留分を渡しなさい!!」と請求する可能性があります。

特に、結婚後あまり日を経過せずに夫が亡くなった、普段から妻と夫の親の仲が悪い、などの場合は注意が必要です。

遺留分侵害額(減殺)請求を行う方法と手順

遺留分の請求先は、遺贈、死因贈与、生前贈与を受けた人です。請求の方法と手順を詳しく見ていきましょう。

遺留分侵害額(減殺)請求の順序

遺留分侵害額の請求には順序があります。民法では「先に遺贈分を処理して、それでも足りなかったら贈与も処分できる」と決められています。よって、

1.遺贈

2.死因贈与

3.生前贈与

の順で請求します。

先述のとおり、遺贈は遺言上で一方的に行われます。

また、死因贈与は被相続人の死亡と同時に効力が発せられるため、どちらかといえば遺贈と同じといえるかもしれません。

ですが、生前贈与は事前の当事者同士の合意によって行われるので、生前贈与が先となると、各方面への影響が多岐にわたってしまいます。

そのため、請求の順番が決まっているのです。

請求は全ての遺産の評価額の合計で計算されますが、被相続人が遺言で遺留分侵害額請求の順番を指定している場合はそれに従います。

たとえば、長男と長女への遺贈なら「先に長女に請求してそれでも足りなかったら長男へ請求してもかまわない」などと、遺言書上であらかじめ指定しておくこともできます。

請求順序を事前に決めておけば、請求者と侵害者の間に発生するトラブルを未然に防ぐことにもつながるのです。

裁判以外の請求

当事者同士で話し合って解決できるならそれが一番です。そうすれば、時間もお金必要最小限ですみます。

とはいえ、後になってから言った、言わないでもめないために、「遺留分請求」という事実を文書にしておくことが大切です。

それをするには「内容証明郵便」を使うことをおすすめします。

内容証明郵便とは?

内容証明郵便は、書かれている文章の中身を証明することはもちろん、窓口で「職員立会いの下で確認しました」という意味で当日の日付印が押されます。

請求者が相手に対して「遺留分を請求します」という通知書を作り、それを内容証明郵便で送るのです。

内容証明用紙に「遺留分を侵害されているのでそれについて請求します」というような内容を、手書きもしくはパソコンで入力したものを印刷して郵便局に持っていきます。

窓口で不備がないかを確認されたのち、問題がなければ証明のスタンプを押してくれますので、それを郵送すれば手続きは終わりです。

そして、郵送した文書の写しが自分の手元と郵便局に残ります。

後述しますが、遺留分侵害額請求には期限が決められています。

「期限内に遺留分の請求をした」という事実を明らかにする必要があるので、内容証明郵便を利用するのが大切なのです。

ちなみに、内容証明を送る際は配達証明をつけて郵送してもらうほうがいいでしょう。

配達証明は、送った郵便物がいつ相手に届いたかを証明するものです。郵便物の配達が完了すると、〇月〇日に配達したという証明書が自宅に送られてきます。

「郵便で送った」「そんなものは届いていない」というトラブル回避のため、内容証明は配達証明をつけて送るのが望ましいです。

さらに、遺留分の請求通知書が相手のもとに到達したことが確認できたら、次は遺留分をどのようにして返してもらうかを話し合うことになります。

遺留分の返還方法

遺留分を返すときは、基本的に受け取った時と同じ状態で返す必要があります。

現金や預貯金などはそのまま返してもらえるでしょうが、不動産の場合はそう簡単にはいきません。

というのも、受け取った時と同じ状態で返すということは「不動産を返す」ということになるからです。

不動産の評価額と遺留分の金額が同じということはほぼありえないので、現物で返されると本来の額より多く(少なく)なってしまう可能性が多いです。

そのような時は、原則として「共有する」ということになるのですが、それは現実的ではありませんよね。

遺留分を請求する側とされる側の間には、心情的に対立していることが多く、共有という方法は考えにくいからです。

このような場合は、不動産を金銭的に換算して返してもらうことで問題は解消できるでしょう。

不動産自体は相手の手元に残り、遺留分はお金で返してもらうことができるので、割とすんなり解決することが可能になります。

調停での請求

話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所での調停となります。

「請求書を送ったにもかかわらず無視されている」「話し合いはしたけど支払いを拒否された」などの場合は、調停にすすむ確率が高くなります。

調停の際は、請求する側とされる側との間に調停委員が入って話し合いを進めるので、お互いが直接対峙しなくてすむという利点があります。

そのため、感傷的にならず話し合いが進み、解決に向けて合意する可能性が見えてくるかもしれません。

調停での請求手順

調停で遺留分侵害額の請求を行う手順は下記の通りです。

まずは必要となる書類を用意します。主な必要書類は、

・被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人全員の住民票、または戸籍附票

・遺言書の写し、または遺言書の検認調書の写し

・遺産に関する各種証明書(残高証明書や預貯金通帳、有価証券などの写し、不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書など)

です。

なお、代襲相続になる場合は、本来の法定相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本なども必要になる場合がありますが、その時は裁判所から連絡があるので指示された書類を用意して下さい。

>>代襲相続を完全解説!範囲・割合・相続放棄のルールを紹介!

書類が準備できたら、相手が住んでいる地域を管轄している家庭裁判所へ調停申立書と必要書類を提出して、調停の申立をします。

この時に、申立費用として収入印紙1,200円分と、裁判所との連絡用に使う郵便切手を一緒に添えて提出します。(切手代は各家庭裁判所に問い合わせすれば教えてもらえます)

調停の申立をすると、指定された日に1回目の調停が行われます。調停の際は、申立人(請求する側)と相手は別々の部屋で待機した状態で事情を聴かれるので、顔を合わせることはありません。

お互いの言い分は、調停委員を通じて相手に伝えてもらうことができ、はじめての調停で合意できない場合は、2回、3回と調停を繰り返します。

調停のペースですが、平均で月に1回行われ、所要時間は1回につき2~3時間くらいが目安です。

なお、調停の時間帯は平日の午前か午後のどちらかになります。

調停委員を介した話し合いでお互いが合意できれば調停成立となり、調停調書が作られその内容にもとづいて遺留分の受け取りもしくは支払いをします。

訴訟・裁判での請求

調停を行っても解決に至らない場合は調停不成立となり、遺留分侵害額訴訟になります。

調停はあくまでも「手続きと話し合いの場」なので、調停委員が当事者に対して解決に向けた合意を強制することはできません。

遺留分侵害額訴訟とは?

訴訟は、話し合いで解決へと導く調停とは違って、裁判官や弁護士立会いの下で判決が下される「裁判」ということになります。

訴訟は「自分に遺留分があり、それが相手に侵害されている」ということを証明しなければならないので、的確な主張を行うためにはそれを裏付けられるだけの明確な証拠が必要です。

もしも訴訟へと発展するときは、申立を行う前にひとつでもより多く証拠を集めることが大切です。

遺留分の請求金額が140万円であれば、簡易裁判所で訴訟の手続きができます。

基本的には被相続人の最後の所在地を管轄している裁判所に申立をするのですが、相手の住所地を管轄する裁判所でも構いません。

また、不動産がらみの遺留分請求の場合は、不動産の所在地を管轄している裁判所への申立も可能とされています。

実際の訴訟は、裁判所でお互いの主張と証拠の提出を繰り返して、全てのやり取りが終了した段階で裁判が終わり(結審)、判決が下されます。

判決では、遺留分の侵害を認めるか否か、認める場合はどのような内容なのか、などが伝えられます。

ちなみに、裁判中に和解することは可能です。

和解とは?

和解とは、判決が出るのを待たずにお互いが話し合いで問題を解決するやり方で、和解をする際は裁判官が間に入って話を進めてくれます。

調停と似ている感じがしますが、調停は解決できなければそこで話し合いが終了するのに対し、裁判は和解できない場合は判決が下されることになります。

話し合いによって和解が成立した場合は和解調書が作成され、調書にもとづいた返還がおこなわれます。

和解調書とは?

なお、調停調書も和解調書も「強制執行力」というものを持っています。

調停もしくは判決確定後に相手が調書内容にそった返還を行わない場合は、請求者は相手の財産の差押や、調書にもとづいた不動産登記などを行うことが可能になります。

話し合いも調停も訴訟も、解決に至るまでには長期戦になることが予想されます。

そうなると、話し合いの場や裁判所へ行く回数が多くなって時間もお金もたくさんかかるため、心身ともに疲れきってしまうことでしょう。

できる限り話し合いの段階で解決するのが望ましいですが、どうしてもダメな場合は調停もしくは裁判で和解の道を選択するのがいいでしょう。

遺留分をはじめ相続についてのご相談はやさしい相続でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。

遺留分侵害額請求の時効

前述のように、遺留分の請求には「時効」があるので注意が必要です。

時効は、遺留分を侵害されていることを知った時から1年間で、相続の開始から10年をすぎた場合も同様になります。

期限の中で請求しなかった(できなかった)場合は、たとえ遺留分があったとしてもその後の請求は一切できません。

この期限を過ぎてしまうと、調停も訴訟を起こすこともできなくなります。

そのため、被相続人が亡くなったことを知った段階で、自分がその対象であるかを調べて、該当する場合はすぐに詳細を調べて下さい。

(遺言書や贈与の事実など)そして、遺留分が侵害されている場合は、早急に遺留分侵害額請求に関する通知書を相手に送りましょう。

遺留分侵害額請求のやり方については、法律上特に規定は設けられていません。

理屈では口頭での通知も有効ですが、言った、言わないのトラブルを避けるため、前述の内容証明郵便を用いて通知することをおすすめします。

遺留分の放棄

ここまで、遺留分は法に則った請求ができるとお伝えしてきましたが、遺留分を受け取らずに放棄することも可能です。

遺留分の放棄は、被相続人の存命中か死後に行うのかによって、手続きに大きな違いがあります。

遺留分を放棄する方法

被相続人が生きている間に放棄する場合は、家庭裁判所の許可が必要になります。

「遺留分は放棄します、でも相続分はきちんといただきます」となると、被相続人や相続予定者にあたる人たちから理不尽な対応をされる可能性があります。

それを回避するために裁判所の許可が必要とされているのです。

手続きの方法は、被相続人が居住する地域を管轄する家庭裁判所に、遺留分を放棄する旨の申立をします。

申立に必要なものは、被相続人と相続人の戸籍謄本、800円分の印紙、遺留分放棄の申立書です。

遺留分放棄の判断基準

申立を行うと、家庭裁判所で審判が行われます。なお、遺留分の放棄にあたるかどうかの判断基準は、

・遺留分権利者の自由意思の下に行われているか

・理由に合理性はあるか

・放棄の代償は支払われているか

の3つです。この基準にそって審判を進め、問題がなければ放棄が認められます。

放棄の申立てができる人

ちなみに、放棄の申立ができるのは遺留分請求の権利を持つ相続人のみで、被相続人や他の相続予定者などからの申立はできません。

これとは逆に、被相続人が亡くなった後に遺留分を放棄する場合は簡単です。

他の相続人との話し合いの席上において「遺留分請求をしない」という意思確認をお互いにとれればよく、家庭裁判所の許可などは必要ありません。

口頭の確認でも問題ありませんが、その後のトラブル回避のため「遺留分を放棄する」という内容が書かれた念書などを取り交わしたほうが無難でしょう。

なお、遺留分を放棄した場合は、後日遺留分を請求するということはできません。代襲相続者も然りです。

なお、この場合の放棄とは、相続のすべてを放棄するのではなく、あくまでも遺留分だけの放棄です。

相続権は残りますから、相続できる遺産があるときは遺産分割の協議に参加して遺産を受け取ることができます。

遺留分制度と権利行使の自由

遺留分制度は相続人の保護と救済を目的としているので、請求するかしないかは本人の自由意思にまかされます。

いずれの決定も本人がすることですから、被相続人や他の相続関係者が強制することはできません。

相続放棄との違い

相続放棄とは?

相続放棄とは、遺産を一切相続しないということです。

この場合、現金や預貯金、不動産などのプラスになる遺産だけでなく、借金などのマイナスになる遺産も相続しないことになります。

遺産の合計額がマイナスになる時に相続放棄されるパターンは比較的多く見受けられます。

相続を放棄する時に注意しなければいけないのが、「放棄するには期限がある」ということです。

相続放棄の期限

相続放棄の期限は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。なお、相続を放棄する場合は家庭裁判所の許可が必要になります。

ここで重要なのが、「相続放棄は被相続人が生きている間はできない(=亡くなった後ならできる)」ということです。ここが遺留分請求の放棄と大きく違うところです。

相続放棄に必要なもの

相続放棄の申述に必要となる主なものは下記の通りです。

・相続放棄の申述書

・収入印紙800円分(申述人1人につき)

・連絡用の郵便切手(どのくらい必要になるかは各裁判所に確認すれば教えてもらえます)

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・被相続人の住民票除票または戸籍附票

・申述人(放棄する人)の戸籍謄本

ケースによっては他の書類が必要になることもありますが、その時は裁判所から指示がありますのでそれに従って用意しましょう。

家庭裁判所での申述の結果、相続放棄の許可が下りれば、申述人は最初から相続人ではないということになります。

したがって、相続権を失い遺留分の請求も認められなくなります。また、代襲相続も発生しないので、代襲相続人による遺留分請求もできません。

相続放棄については下記記事もご参考ください。
親の借金を相続しないための方法を完全解説!
代襲相続を完全解説!範囲・割合・相続放棄のルールを紹介!

遺留分の注意点

これまでお伝えしてきたように、遺留分侵害額請求権は、相続人にとって非常に強い権利です。

受取額の上限や請求できる期日に定めがあるなどの制約はありますが、ある意味遺言書を凌ぐほどの効力を発揮します。

ですので、被相続人は相続で争いが起きないように、生前から対策を考えていくことがとても大切です。

また、遺留分の計算方法はとても複雑なので、可能であれば専門家に依頼するほうが、後になってもめることもなくスムーズに話が進むかもしれません。

これらの注意点について詳しく解説します。

遺言書による効力

遺言書とは、自分が亡くなった後に財産をどのように処分するかを決め、その内容を相続人に示すために作成するものです。

「誰にいくら渡す」という内容の他に、「〇〇には渡さない」「△△(法定相続人以外の第三者)に相続させる」というような内容を記すこともできます。

ですが、どのような内容であっても、法に沿った書式でなければ遺言書自体が無効になってしまうおそれがあります。

遺言書の不備について

よくあるのが、手書きで作成した際に不備があるケースです。

自筆の遺言書を残すには、遺言者が全文と氏名、作成した日付を記入し、印鑑が押されてなければなりません。

この中の一部に不備があることが多いのです。(押印がない、日付の記載がないなど)ちなみに、パソコンで書いたものやICレコーダーなどで録音したものは遺言書として認められません。(財産目録についてはパソコンで作成しても大丈夫です)

また、本人以外の者が代筆することや、何人かでまとまって書いた遺言書なども認められません。

確実なのは公正証書で遺言書を作ること

法的に有効な遺言書を作る自信のない方は、公正証書で遺言書を残すことをおすすめします。

これは、公証人役場で作ることができます。前述の内容証明郵便と同じように、自分の手元と公証人役場に遺言書の写しが残るので、偽造防止などにもつながります。

なお、被相続人が亡くなった後に遺言書が発見された場合、見つけた人がその場で勝手に開けてしまうと過料に科せられる可能性がありますので注意してください。

ですので、遺言書を見る時は、全ての法定相続人と専門家立会いの下で開封するようにしましょう。

遺言書がある場合は、基本的にその内容にそって遺産分割が行われますが、遺留分を侵害するような記載がある、相続人から遺留分侵害額請求があった場合は、たとえ法的に有効な遺言書であっても遺言書通りの相続をすることはできません。

相続人の廃除ができるケース

相続人の廃除とは、著しい非行などが原因でその人から法的に相続権を奪うことです。

相続人として廃除された人は、遺留分の請求はできません。

相続人廃除の理由

相続人廃除の理由としては、

・相続人が被相続人に対して虐待した、重大な侮辱をした

・推定相続人に著しい非行があった

などがあげられます。一例として、

・被相続人に暴力を振るう、侮辱する

・借金やお金の無駄遣いなどで大きな負担や迷惑をかけた

・自分自身が犯罪を起こして刑罰を受けた

などの理由がある場合は、相続人の廃除が認められる可能性があります。

ですが、理由さえあれば廃除が認められるというものではなく、被相続人自身が「この人を相続人から廃除します」という意思表示をしておかなければなりません。

そして、その人を相続人から廃除するための明確な理由があることを証明しなくてはなりません。

相続人廃除の意思表示の方法

相続人廃除の意思表示には2つの方法があります。

●家庭裁判所に「推定相続人廃除の申立」をする

ひとつは、家庭裁判所に「推定相続人廃除の申立」をすることです。

審判の申立をすると、廃除の理由があるか、廃除してもいいかどうかの審理がなされ、廃除に値すると判断されれば該当する相続人の相続権が剥奪されます。

申立の結果廃除が認められると、家庭裁判所から審判書が送られてきますので、それを役所に持っていって相続人廃除の手続きを行うことで、はじめて相続人の廃除手続きが完了するのです。

なお、廃除の届出は審判確定の日から10日以内に行わなければならないと決められています。

●遺言の中に相続人廃除に関する記載をする

もうひとつは、遺言の中に相続人廃除に関する記載をすることです。

遺言で相続人廃除をする場合は、事前に遺言執行者を決めておき、被相続人が亡くなった後で遺言執行者に相続人廃除の申立をしてもらうのです。

相続人廃除の手続きを行うと、相続人の戸籍には「廃除」と記載され、廃除された相続人は相続権を失い、遺留分の主張もできなくなります。

相続人廃除の取り消し

ちなみに、廃除は取り消しすることも可能です。その際は、取消手続き後に相続権が復活するので、遺留分の請求をすることも可能になります。

なお、被相続人が生前に相続人の廃除を行っていた場合は、遺言でその取消をすることもできます。

遺言で廃除を取り消しする旨の記載があった場合は、遺留分の請求ができる可能性があります。

ただし、相続人廃除には慎重な判断が下されることが多く、実際に廃除が認められるケースは少ないです。

また、遺言による廃除は、対象となる相続人が異議申し立てを行った場合、廃除が認められないことが多いです。

ですので、本人からの異議申し立てがない、本人が刑務所に入っているなど、特段の理由がなければ相続権を奪われることはないようです。

相続人廃除の申立は個人で行うこともできますが、裁判と同じような手続きを行わなければならないのと、案件によっては難航することも考えられるため、専門家に相談することをおすすめします。

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場合によっては相続対策が必要

遺留分を請求があるままに支払い続けると、場合によってはせっかく相続した財産をほとんど失ってしまうことにもなりかねません。特に自営業を営んでいる場合には、死活問題にもなるでしょう。

そうしたケースを防ぐためには、あらかじめ計画的な相続対策が必要となります。相続に対しての不明点や疑問点はやさしい相続でもご相談を受け付けています。

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遺留分についてのまとめ

「遺留分」について特に重要となるポイントを下記にまとめました。

 

【遺留分とは?】
●遺留分とは、法定相続人が被相続人から最低限受け取ることができる財産(=遺産)のこと
●「強制相続分」または「法定相続権」という言い方をすることもある

【遺留分制度とは?】
●遺留分制度は、残された遺族の今後の生活を保障することと、法定相続人の保護という観点から定められたといわれている
●民法上「遺産は遺言に基づいて自由に処分できる」となっているのですが、ただし書きで「遺留分の規定に違反できない」という一文が記されている

【遺留分侵害額(減殺)請求権がある人】
●遺留分侵害額請求ができるのは、法定相続人とよばれる人たちで、配偶者、子ども、親などがあてはまる

【遺留分侵害額(減殺)請求権がない人】
●兄弟姉妹とその代襲相続人には請求権がない
●その他、法的な理由で相続権がなくなってしまった相続欠格者
●相続放棄した人
●遺言書に書かれた財産の内容を特定せずに遺贈を受けた包括受遺者
●相続人から廃除された人

【相続人の遺留分割合と範囲】
●相続人が直系尊属(ちょっけいそんぞく)のみだと1/3、それ以外は1/2
●遺留分を請求できるのは、被相続人の配偶者、直系尊属、そして直径卑属(ちょっけいひぞく)

【遺留分侵害額(減殺)請求の対象】
●遺贈
●死因贈与
●生前贈与

【遺留分侵害額(減殺)請求を行う方法と手順】
●遺留分侵害額(減殺)請求の順序
 ①遺贈
 ②死因贈与
 ③生前贈与
●和解した場合は、内容証明郵便に残しておく
●遺留分を返すときは、基本的に受け取った時と同じ状態で返す必要がある
●話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所での調停となる
●調停を行っても解決に至らない場合は調停不成立となり、遺留分侵害額訴訟をおこなう

【遺留分侵害額請求の時効】
●時効は、遺留分を侵害されていることを知った時から1年間で、相続の開始から10年をすぎた場合も同様にとなる
●(遺言書や贈与の事実など)そして、遺留分が侵害されている場合は、早急に遺留分侵害額請求に関する通知書を相手に送る必要がある

【遺留分の放棄】
●被相続人が生きている間に放棄する場合は、家庭裁判所の許可が必要になる

遺留分の請求も相続も、法定相続人に認められた立派な「権利」ですので、第三者が拒否や強制をすることはできません。

権利は主張してはじめて効力を発揮するものですから、堂々と請求をしていいのです。

ただし、遺留分侵害額請求や相続の放棄には期限があるため、折り合いがつかず争いに発展しそうな場合は、弁護士などの専門家に頼るのもひとつの方法です。

また、被相続人の死亡から始まる遺留分の請求や相続も、遺言書の内容や相手の反応によってはすんなりいかない場合もあります。

自分が亡くなった後では、たとえ遺言を残していたとしても、手を差し伸べることも口を出すこともできません。

遺留分を含む相続でもめないためには、普段から良好な縁戚関係を保つことと、事前準備の段階で法律に基づいた遺言書を作成しておくことが、争いを未然に防ぐのかもしれません。

相続は「争続」と揶揄されることもありますが、できることなら争いではなく、お互いを想い合う「想続」となるようにしたいものです。

やさしいお葬式では「相続に特化した専門家」と連携しております。お気軽にお問い合わせくださいませ。

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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)

略歴
栗本喬一(くりもと きょういち)
1977年生まれ
出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)

株式会社東京セレモニー 取締役

ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
株式会社おぼうさんどっとこむ 
常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
株式会社ティア 
葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。

著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)

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