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遺留分侵害額(減殺)請求を成功させる全情報!手続き~割合・注意

Sep 02 2020

遺留分侵害請求は確実にもらえる遺産割合。法定相続分からの割合は直系尊属(父母や祖父母)1/3、それ以外は1/2です。時効は10年です。スムーズな請求を行うには事前に手続きや注意点を把握しておくことが一番の近道。プロが分かりやすく解説します!

2021/6/15 情報更新

皆さんは「遺留分」という言葉をご存知でしょうか。遺留分とは法定相続人が絶対に相続することができる遺産の割合を定めたものです。

つまり、遺言書で自分の相続分が侵害されていた場合、遺留分で定められた分を請求することができるのです。 

そこでこの記事では、遺留分についての詳しい説明と遺留分を侵害された時に行う遺留分侵害額(減殺)請求について解説となります。

遺留分についての疑問がある方は是非参考にしてみてください。

INDEX

01
遺留分とは?
02
遺留分侵害額請求権とは?
03
法定相続分と遺留分の割合
04
遺留分侵害額(減殺)請求にあたっての注意点
05
遺留分算定の基礎となる財産の価額に加えることができる贈与
06
請求先の優先順位
07
遺留分侵害額(減殺)請求で取り戻せる遺留分割合の計算方法 
08
遺留分侵害額(減殺)請求を行う方法と手順
09
遺留分侵害額(減殺)請求調停に必要な書類と費用
10
遺留分侵害額(減殺)請求を弁護士に依頼するメリット
11
遺留分侵害額(減殺)請求についてのまとめ

遺留分とは?

遺留分とは、法定相続人が必ず相続できる遺産の割合について定められているものです。

例えば被相続人が遺言状で「法定相続人以外の人物に財産を譲渡する」と記載していたり、遺贈をしていた場合に、法定相続人が相続できるはずだった遺産が本来よりも少ない額になってしまうようなことがあります。 

そのような場合、遺留分が侵害されたとして相続を受け取った人物に対して遺留分侵害額(減殺)請求を行うことができます。

つまり、遺留分は法定相続人の権利を守るための制度になります。では、遺留分制度の概要についてみていきましょう。 

遺留分制度の概要

遺留分制度とは?

遺留分制度とは、法定相続人の権利を保護するための制度で、相続できる遺産の割合を定めたものです。

ただし、遺留分については請求できる人とできない人がいたり、被相続人との関係性によって割合が異なります。

また、遺留分を侵害された場合には、侵害している相手に対して侵害額(減殺)請求を行うことができます。 

基本的には当事者同士の話し合いで請求を進めることになりますが、もし話し合いで解決できなかった場合には朝廷や訴訟まで発展することもあります。

そのような場合には弁護士や税理士などの専門家に依頼をすることも可能です。

侵害額(減殺)請求の時効

また、侵害額(減殺)請求には時効があり、「遺留分が侵害されていると判明した時から1年間で、知らなかった場合には10年」です。

もし時効を迎えた場合には遺留分の権利を行使することができないので注意しましょう。 

遺留分については下記記事もご参考ください。
遺留分を完全解説!計算方法・侵害請求権の行使方法を紹介!
相続遺留分とは?割合・取り戻す方法・費用を紹介!

遺留分侵害額請求権とは?

遺留分侵害額請求権とは、遺留分が誰かによって侵害されていた場合に侵害している相手に対して遺留分の請求を行うことができる権利のことです。

ただし、遺留分侵害額請求権には時効があり、時効になると権利を行使することができなくなるため注意が必要です。

また、遺産分割協議によって自分の遺留分未満の遺産を相続すると自身が同意した場合には、遺留分の請求を行うことはできません。

遺留分減殺請求との違い

遺留分侵害額請求権と遺留分減殺請求の違いについて解説します。

遺留分減殺請求は侵害している分の財産を請求する行為

遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害されている法定相続人が、侵害している相手に対して侵害している分の財産の変換を請求する行為です。

もし侵害している側の取得した財産が建物と現金だった場合、建物と現金のそれぞれについて侵害している割合の分だけ返還することになります。 

つまり、侵害している割合が3分の1だった場合、建物と現金を3分の1ずつ返還することになります。

現金の場合の返還は単純ですが、建物などの不動産の場合は共有で名義を持つことになってしまうため、所有権が複雑になってしまいます。 

このような事態を避けるために、2019年に法改正がなされ、遺留分減殺請求権は遺留分侵害額請求権と変更となり、遺留分を侵害された側は現金での返還を求めることが可能になりました。

遺留分減殺請求権については下記記事もご参考ください。
遺留分を完全解説!関係別の割合・金額例・取り戻し方を紹介! 

法定相続分と遺留分の割合

法定相続分と遺留分の割合は、被相続人との関係性や相続人の数によって異なります。

関係性とは、子ども、親、兄弟などのことを指します。また、それぞれについては民法で定められています。

では、具体的に誰がどの割合で相続できるのか、遺留分があるのかについて見ていきましょう。 

関係別法定相続分

法定相続人の順位

法定相続人の順位は下記のようになります。 

第一順位:被相続人の子供(死亡している場合には孫)

第二順位:被相続人の父母(死亡している場合には祖父母)

第三順位:被相続人の兄弟姉妹(死亡している場合には兄弟姉妹の子供)

高順位の人物が最優先で遺産を相続することになります。

つまり、第一順位の人物が居れば第二順位の人物は相続することはできません。ただし、配偶者がいる場合には配偶者は必ず相続人になります。

その場合には配偶者と高順位の人物が相続人となります。 

法定相続分の割合

では、法定相続分の割合について見ていきましょう。

配偶者がいる場合、第一順位と配偶者はそれぞれ2分の1ずつになります。

第二順位と配偶者の場合、第二順位は3分の1、配偶者は3分の2になります。

第三順位と配偶者の場合、第三順位は4分の1、配偶者は4分の3となります。

では、配偶者と被相続人の子供が3人いた場合について見ていきます。

配偶者の相続分は2分の1と変わりません。子供は残りの2分の1を3分割するため、子供1人当たりの相続分は6分の1となります。

また、配偶者がいない場合には、法定相続人の人数で遺産の総額を均等に分割することになります。 

関係別遺留分

遺留分の割合については、

「父母などの直系尊属が法定相続人の場合は法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1」となります。

では、具体的に見てみましょう。

例えば遺産の金額が2,000万円で法定相続人が配偶者と子供1人だった場合、それぞれの遺留分は「2,000万円×2分の1×2分の1=500万円」となります。

相続についてのご相談はやさしい相続でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。

法定相続については下記記事もご参考ください。
法定相続を完全解説!範囲・割合を紹介!
法定相続分を完全解説!範囲・割合を紹介!

遺留分侵害額(減殺)請求にあたっての注意点

遺留分侵害額(減殺)請求にあたっての注意点として、遺留分を請求できる権利を持っているか、請求を拒否された場合の対応はどうすれば良いのか、請求をするにあたって時効や期限があるのかなどが挙げられます。

それぞれのパターンについて見ていきましょう。 

遺留分侵害額(減殺)請求権ができる人

遺留分権利者とは?

遺留分侵害額(減殺)請求ができる人は、あらかじめ定められており、被相続人の配偶者、子ども、父母、祖父母になります。

この遺留分を請求できる人たちのことを「遺留分権利者」と言います。

また、遺留分においても代襲相続が認められており、遺留分権利者が死亡もしくは相続廃除などによって相続権を失った場合、その子供が代わって相続権を得ることができ、遺留分権利者となり得ます。 

遺留分侵害額(減殺)請求ができない人

逆に遺留分侵害額(減殺)請求ができない人は、被相続人の兄弟姉妹、相続欠格者、相続人廃除を受けた人、相続放棄をした人などが当てはまります。

兄弟姉妹は法定相続人として認定されていますが、遺留分の侵害請求はできないため注意しましょう。 

相続欠格者とは、被相続人あるいは他の相続人を殺害した、遺言書の内容を脅迫などの行為により変更させた場合に該当します。

相続人廃除とは、被相続人に対して著しい非行をした場合や過去に犯罪行為を行なって有罪判決が下されている場合などに該当します。

相続放棄については相続に関わる全ての権利を放棄していることになるため、遺留分の請求は行うことができません。

遺留分侵害額(減殺)請求を拒否されたら

では、もし自分が遺留分を侵害されていて、遺留分侵害額(減殺)請求を行なった際に相手から拒否されてしまったらどうすれば良いのでしょうか。

結論から言うと、遺留分侵害額(減殺)請求は法的に拒否することはできません。

ただし、相手方が応じてくれないことは可能性として考えられます。

もし相手方が一切対応してくれなかった場合には、後ほど詳しくご紹介する遺留分侵害額(減殺)請求調停や遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を起こすことになります。

相続人の一人が遺留分を放棄しても他相続人の割合が変わらない

遺留分は申し立てを行うことで放棄することが可能です。

ただし、遺留分の放棄は被相続人が死亡する前、相続が発生する前にしか行うことができず、かつ家庭裁判所に許可されないと行うことができません。

遺留分の放棄は裁判所に申し立てる

遺留分の放棄をする場合、まずは遺留分権利者本人が被相続人の住所の管轄の家庭裁判所に申し立てを行います。

用意する書類は申立書、被相続人の戸籍謄本、申立人の戸籍謄本です。

必要書類を提出したら、後日裁判所から審問の期日についての連絡が来ます。

そして審問が行われ、申立人本人の意思により放棄すると判断された場合、後日放棄の可否について連絡が来ます。 

では相続人のうちの誰かが遺留分の放棄を行なった場合、残りの相続人の遺留分の割合が変わるのかと言うと、変わりません。

この内容については民法1043条で定められています。

ただし、相続人のうち誰かが相続放棄を行なった場合には、結果として遺留分は増えることになります。

遺留分侵害額(減殺)請求の時効と期限

遺留分侵害額(減殺)請求には時効が存在し、その要件は「相続が発生した時、または遺贈か贈与が行われていると知った時から1年間行使しなかった場合」もしくは「相続が発生した時点から10年」です。

つまり、相続が発生した時、または遺贈か贈与が行われていると知った時から1年の間に相手方に対して請求を行うことでカウントがリセットされることになります。

相続や遺贈・贈与の有無を知ってから10ヶ月以内に請求を行えば、その時点で事項はリセットされることになります。

ただし、相続が発生した時点から10年経過すると完全に遺留分侵害額(減殺)請求はできなくなるため注意しましょう。

1年の時効期限が迫ってきたら

遺留分侵害額(減殺)請求の1年の時効が近づいてきたら、口頭や手紙、内容証明郵便でも良いので「自分は遺留分請求を行いたい」という意思表示を示しましょう。

一番確実なのは、弁護士など専門家に依頼することです。

遺留分がなくなる場合

遺留分がなくなる場合は、自分の意思で遺留分放棄を行なった場合、もしくは相続廃除を受けた場合です。

相続については下記記事もご参考ください。
代襲相続人を完全解説!相続割合・権利・範囲を紹介!
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遺留分算定の基礎となる財産の価額に加えることができる贈与

遺留分算定の基礎となる財産は、「(相続発生時に被相続人が所持していた財産+相続発生から遡って1年以内の贈与財産)-債務」で求めることができます。

この式の中の「相続発生から遡って1年以内の贈与財産」ですが、それ以前に行われた贈与に対しては原則として遺留分の算定に含まれることはありません。

しかし、例外があり

「贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知っておこなった贈与」と

「贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知っておこなった不相当な対価による有償行為」と

「相続人への特別受益に当たる贈与」に関しては、相続発生から遡って1年以内の条件に当てはまりません。

では、それぞれについての詳しい条件について見てきましょう。

相続開始前1年以内になされた贈与

相続開始前1年以内になされた贈与に関しては、基本的に全て遺留分の算定基礎財産に加えて計算する必要があります。

この縛りがある理由としては、遺留分を守るためです。例えば、被相続人が体調を崩して死亡する一、二ヶ月前に全ての遺産を贈与してしまったら、法定相続人がもらえるはずの遺留分の対象となる遺産が全て無くなってしまうからです。

この縛りは民法の1030条にて定められています。

贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知っておこなった贈与

贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知っておこなった贈与とは、具体的にどういったことなのかについて見ていきましょう。

これは、「行う贈与が遺留分を侵害するという認識がある」という部分に焦点が当てられます。 

贈与者と受遺者がそれぞれ法律の知識があるかどうかについては関係がなく、客観的に遺留分を侵害していると捉えることができれば足りるとされています。

また、そのほかにも贈与を行なった時期や年齢、健康状態などが加味されて判断されることになります。

ただし、遺留分権利者に損害を与えることを知って行なった贈与なのかどうかについては、遺留分請求を行う当事者が立証しなければいけません。

贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知っておこなった不相当な対価による有償行為

遺留分権利者に損害を与えることを知っておこなった不相当な対価による有償行為とは、例えば適正な価格ではなく通常の価格よりも安くマンションなどの賃貸や不動産の売買を行うような行為です。

本来家賃が10万円のマンションを1万円で貸し与えたり、その時の評価額が5,000万円の不動産を500万円で売却したりする行為です。 

このような行為が行われた場合、遺留分の算定として含まれるのは行為が行われた時点での評価額から支払った金額を引いたものです。

例えば先ほどの不動産売却の例ですと「5,000万円-500万円=4,500万円」が遺留分の算定に加える金額になります。 

相続人への特別受益に当たる贈与

生前贈与や遺贈の中でも「婚姻・養子縁組・生計の資本」に当たるものは、特別受益という扱いになります(民法903条)。

この特別受益を受けた人物のことを「特別受益者」と言います。

婚姻・養子縁組の特別受益に該当すると見なされる財産としては、持参金や支度金が挙げられます。

結婚式の費用や結納については特別受益とみなされないのが一般的です。

生計の資本として特別受益とみなされる財産は、不動産の贈与や有価証券、会社の運営資金などが挙げられます。

特別受益に該当しないとみなされるものの財産には、生命保険金や死亡退職金が含まれます。

また、特別受益の評価については相続が開始された時点での評価額で行われることが一般的です。

贈与については下記記事もご参考ください。
家の名義変更を親から子にする際の節税方法を完全解説!贈与税を非課税にするには?
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請求先の優先順位

遺留分侵害額(減殺)請求の対象は、遺贈、死因贈与、生前贈与の3種類です。

遺贈とは?

遺贈とは遺言書によって指定された人物に財産を譲渡させるものです。

そのため、遺贈者が死亡しない限りは発生しません。贈与とは受遺者(贈与を受け取る人)と遺贈者(贈与を贈る人)がお互いに同意した上で行われる契約行為になります。

受遺者は個人でも法人でもなることができるため、法人に対する寄付などにも行われます。

死因贈与とは?

死因贈与は度々負担付死因贈与とされ、自分が死亡したら財産を渡す代わりに、身の回りの世話や介護などを行なってもらうことができます。

生前贈与とは?

生前贈与は相続が発生する前に財産の総額を減らすことで、相続税を減らし節税を行うために行わることが多いです。 

遺留分侵害額(減殺)請求の優先順位は、遺贈>贈与と法律で定められています。

もし遺贈が複数行われていた場合、それぞれの遺贈の額の割合に合わせて請求することになります。

例えば、受遺者1が3,000万円、受遺者2が1,500万円の遺贈を受けていた場合、遺留分を請求すると受遺者1:受遺者2=2:1の割合で請求されることになります。

しかし、もし遺言書によって「受遺者2から請求すること」のように請求先が指定されている場合はそれに従います。

生前贈与が複数行われていた場合には、後から行われた贈与から遡って請求されることになります。

遺言については下記記事もご参考ください。
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遺留分侵害額(減殺)請求で取り戻せる遺留分割合の計算方法 

続いては、遺留分侵害額(減殺)請求で取り戻せる遺留分割合の計算方法について見ていきましょう。

遺留分の計算については、相続人が多ければ多いほど複雑になるため、実際の計算実例についても解説します。

また、計算する上での注意点にも触れていくので、計算する際の参考にして見てください。

計算方法

まずは遺留分の割合について見ていきます。

遺留分の割合は、「父母などの直系尊属が法定相続人の場合は法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1」となります。

では、法定相続人が配偶者と子供1人だった場合、遺留分の割合にはどうなるでしょうか。

この場合は全体の遺留分は2分の1となります。そして、配偶者と子供の法定相続分はそれぞれ2分の1となるため、それぞれの遺留分は4分の1となります。

父母が相続人だった場合、全体の遺留分は3分の1になります。

父母の法定相続分は2分の1のため、それぞれの遺留分は6分の1ずつとなります。次の項では実際に数字を当てはめて計算してみます。

計算実例

遺留分の計算方法について、計算実例を用いて行なってみましょう。

奥さんと子どもAと子どもBの法定相続人が3人いる男性が遺産を8,000万円残して亡くなりました。

その男性が残した遺言状には、「愛人Aに遺産を全て譲渡する」と記載されていました。

この場合の奥さんと子ども2人が愛人Aに請求できる遺留分の金額はいくらになるでしょうか。

奥さんと子どもの法定相続分はそれぞれ2分の1ずつになります。そのため遺留分は奥さんが4分の1、子どもAが8分の1、子どもBが8分の1となります。

そのため、8,000万円×4分の1=2,000万円が奥さんの遺留分になります。

8,000万円×8分の1=1,000万円が子どもAと子どもBがそれぞれ請求できる遺留分となります。

パターン2として、法定相続人が奥さんと父親の2人の場合で遺産が9,000万円だった場合はそれぞれの遺留分はどうなるでしょうか。

奥さんの遺留分は9,000万円×2分の1×3分の2=3,000万円となります。父親の遺留分は9,000万円×2分の1×3分の1=1,500万円となります。 

遺留分の計算をする際の注意点

遺留分の計算をする際の注意点として、「遺留分算定の基礎となる財産額」の評価方法や評価の時期、範囲についてです。

この遺留分算定の基礎となる財産額の中には、被相続人が生前贈与した財産や債務、特別受益に当たるものなどが含まれます。 

つまり、どの財産が特別受益に該当するのか、財産の評価額は正当なものなのかなどが注目するべきポイントになります。

不動産の評価方法

そのほかに遺産の中に不動産がある場合には不動産の金額を算定することになりますが、不動産の評価方法には、路線価、固定資産税評価額、公示価格の3種類があります。

それぞれの評価によって金額が異なり、路線価は時価の8割前後、固定資産税評価額の7割前後、公示価格はほぼ時価と同額です。

不動産は単価が高いため、どの評価方法にするかによって大きく金額が異なることになります。

評価方法については遺産分割協議によって定めるため、遺留分が侵害されているような場合にはどの評価方法が自分にとって有利なのかなどを検討しておくと良いでしょう。 

また、法定相続人が多い場合や養子や被相続人に認知していた子どもがいるような場合には、計算が複雑となるため自分で計算する際には金額に誤差がないように注意しましょう。

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遺留分侵害額(減殺)請求を行う方法と手順

遺留分侵害額(減殺)請求を行う場合、内容証明郵便での意思表示、遺留分侵害額(減殺)請求調停、遺留分侵害額(減殺)請求訴訟の順で行われます。

もし一つ目で解決できた場合には、それ以降の手順は発生しません。

また、基本的に遺留分の請求については遺留分権利者と遺留分を侵害している人物の当事者同士の話し合いでの解決が求められます。

ただし、相手が全く対応をしてくれない場合や自分が自信がないという場合には弁護士などに遺留分の請求は一任することが可能です。

内容証明郵便での意思表示

遺留分侵害額(減殺)請求を行う場合、まずは内容証明郵便を相手に送付することで遺留分の請求を行いますという意思表示を行います。

内容証明郵便とは?

内容証明郵便とは、いつ誰に誰から手紙を送ったのかを郵便局が証明する制度です。

内容証明郵便を送ることによって、遺留分の時効をストップさせることにもつながります。

この時、配達証明という配達を証明するオプションも同時に付けておくと安心です。 

内容証明郵便を送ったら、相手と直接やりとりを行うことになります。

やりとりでは主に話し合いを行い、いつまでに・どうやって遺留分を返還するのかについて決めていきます。

この時、遺産が全て現金であればそのまま返還してもらえば良いですが、もし不動産などが含まれていた場合には、一度売却して現金化するのか、不動産の評価を行いその分の金額を支払ってもらうかなど決める必要があります。

決着がついた場合

ここでもし決着が着けば、話し合いの内容に相違が無いかを双方で確認し、「合意書(和解書)」を作成します。この合意書は後のトラブルを回避するためにも「公正証書」としてまとめて記載するのが良いでしょう。 

公正証書とは?

公正証書とは、公証人によって作成される「法的効力を有した」書類です。

公正証書を作成しておけば、もし相手方が約束を破って期限通りに金銭の返還を行わなかった際に、口座の差し押さえなどの強制力を執行することが可能になります。

原本は公証役場で保管されるため、あとで改ざんされる心配や紛失するといった恐れはありません。

内容証明郵便の文例

内容証明郵便の書式に特に決まったルールはありませんので、比較的自由に記載することが可能です。

しかし、最低限記載しておかなければならない項目としては、下記が挙げられます。 

・被相続人の名前

・内容証明郵便を送る人物の名前

・遺留分侵害額(減殺)請求を行使するといった文言

・遺留分を侵害している内容(遺言状により遺留分を侵害など)

では具体的な文例をご紹介するので、参考にしてみてください。 

「被相続人○○○○の令和○年○月○日付○○遺言の遺言内容は、私の遺留分を侵害しているものです。したがって、私○○○○は貴殿に対し、遺留分侵害額の請求をします。」 

遺留分侵害額(減殺)請求調停での請求

内容証明郵便を送付し、話し合いを行った際に解決できなかった、もしくは相手方に何かしらの対応が見込まれない場合、遺留分侵害額(減殺)請求調停を起こすことになります。

遺留分侵害額(減殺)請求調停とは?

遺留分侵害額(減殺)請求調停とは、調停人と裁判官が仲介として間に入り、当事者同士の話し合いを円滑に進めてくれます。

調停を行うには、遺留分を請求する申立人が裁判所に対して申立を行う必要があります。 

具体的に調停はどのように進むかについて、流れを見ていきましょう。提出する書類が全て揃ったら、家庭裁判所へ提出します。

裁判所側が申立を受理したら、第1回の調停の期日の連絡が申立人と相手方へ連絡がきます。

調停の場では当事者同士が直接話すわけではなく、それぞれ個室で調停委員に主張を伝えます。第1回の調停で和解ができなかった場合、第2回・第3回と調停を続けます。

和解出来ない場合は、遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を起こす

もし調停では和解ができないと判断された場合には、遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を起こすこととなります。 

調停で和解が成立した場合、家庭裁判所が調停調書を作成します。

調停調書は公正証書と同様に法的効力を有するため、もし相手が調整調書に記載した内容を破った場合には、財産の尺お酒などが可能です。 

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟

遺留分侵害額(減殺)請求調停で和解が成立しなかった場合には、遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を起こす必要があります。

訴訟という言葉通り、裁判を起こすことになるのですが、裁判を起こす裁判所は請求する遺留分によって担当が変わるので注意しましょう。

遺留分によって担当裁判所が違う

遺留分額が1,400,000円以下の場合には簡易裁判所、1,400,000円を超える場合には地方裁判所で行います。

どちらも被相続人の最終住所の管轄の裁判所になります。

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟に必要な書類

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を行うためには、下記の書類が必要となります。

遺言書の内容や相手の対応によって必要なものが変わる可能性があるため、心配な方は弁護士に相談することをおすすめします。 

・訴状

・内容証明郵便

・被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本

・相続人全員の戸籍謄本

・遺言書の写し(あれば) 

必要書類が裁判所に正式に受理されると、後日あらためて裁判所からお互いに期日の連絡がきます。

裁判の当日にはお互い出頭し、主張を述べて書類などによる証拠をもとに立証し、判決が下されます。 

ただし、判決が下されるまでの間に和解期日を設けられることが一般的で、そこで和解が成立すれば判決が下されることなく「和解調書」が作成されることになります。

和解調書は調停調書と同様に法的効力を有するため、相手方が反故にしたとしても強制執行を行えます。

和解が成立せず判決が下されると、その判決に対して不服がある場合には控訴・上告を行うことができます。

遺留分侵害額(減殺)請求調停に必要な書類と費用

遺留分侵害額(減殺)請求調停に必要な書類と費用はどのようなものになるかについて、ここでは解説していきます。

必要な書類

遺留分侵害額(減殺)請求調停で必要な書類は下記になります。

・申立書

・遺言書のコピー

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

・相続人全員分の戸籍謄本

・遺産目録

・遺産の証明となる書類(登記簿謄本、固定資産評価証明書、通帳のコピーなど) 

申立書のフォーマットは裁判所のホームページでダウンロードすることができます。申立書に記入する内容は、下記が挙げられます。

・申立人の氏名、住所

・申立の趣旨(求める解決方法など)

・申立の内容(遺留分がどの程度侵害されているのかなど) 

費用の目安

調停の申し立てでかかる費用は、全て自分で行う場合は切手代と1,200円分の収入印紙です。

切手代は裁判所によって異なるため、確認してください。もし弁護士に依頼するという場合には、法律相談料、着手金、報酬金、日当などが必要です。

法律相談所の費用

法律相談料は無料のところもありますが、1時間で5,000円などのように時間で設定している場合もあります。

着手金は弁護士に依頼する場合に必ずかかる費用で、150,000円から300,000円程度です。

成功報酬は遺留分の請求額の20%前後であることが多いです。

遺留分侵害額(減殺)請求を弁護士に依頼するメリット

今まで説明してきた通り、遺留分侵害額(減殺)請求を行うには様々な書類や法的知識が必要となってきます。

内容証明郵便を送付し、当事者同士の話し合いで解決できれば問題ありませんが、もし調停や訴訟まで話がもつれ込んだ場合には、弁護士に依頼をして請求を行ってもらうことを検討してみると良いでしょう。

もし相手方との仲が険悪な場合には、弁護士に代わりに交渉を行ってもらうことも可能です。

また、調停などに必要な戸籍謄本などについては全て自分で集めるのに時間と労力がかかります。

特に平日の昼間に働いているような人はまとまった時間が作りにくいため、書類の作成や収集に関して依頼できることは大きなメリットと言えるでしょう。

遺留分侵害額(減殺)請求についてのまとめ

ここまで遺留分の基礎的な知識から遺留分侵害額(減殺)請求の方法や手順について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

ここでは簡単に今までの内容を箇条書きでまとめていきます。 

・遺留分とは、法定相続人が必ず相続することができる遺産の割合のことである。

・遺留分侵害額請求権と遺留分減殺請求との違いは、遺留分を請求した場合に、金銭での返還か現物での返還か違いである。

・法定相続分と遺留分については、被相続人との関係性によって割合が異なる。

・遺留分侵害額(減殺)請求にあたっての注意点として、時効と請求権を有している人物火葬でないか、遺留分請求を拒否された場合の対応についてが挙げられる。

・遺留分算定の基礎となる財産の価額に加えることができる贈与は、原則として相続発生から遡って1年以内の贈与である。

ただし、「贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知っておこなった贈与」、

「贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知っておこなった不相当な対価による有償行為」、

「相続人への特別受益に当たる贈与」は例外である。

・請求先の優先順位は遺贈>贈与と法律で定められている。

・遺留分の割合は、「父母などの直系尊属が法定相続人の場合は法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1」と定められている。

・遺留分侵害額(減殺)請求を行う方法は、「内容証明郵便の送付と話し合い」、「遺留分侵害額(減殺)請求調停」、「遺留分侵害額(減殺)請求訴訟」の順番で行われる。

・もし時間的余裕がない場合や、相手方との仲が険悪でやりとりを行いたくない場合には、弁護士に依頼することもできる。

このように、遺留分が侵害されていると分かっても、請求するまでに様々な手続きや書類の収集、作成を行わなければなりません。

また、調停や訴訟を行う場合には、弁護士を雇ったり出頭しなければならず時間的拘束も長くなります。

そのため、遺留分侵害額(減殺)請求を行う場合には、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)

略歴
栗本喬一(くりもと きょういち)
1977年生まれ
出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)

株式会社東京セレモニー 取締役

ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
株式会社おぼうさんどっとこむ 
常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
株式会社ティア 
葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。

著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)

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