少子高齢化の日本では供養する人がいなく無縁仏となることも珍しくありません。また、昨今では宗教感の価値観の多様性から「無縁仏になりたい」とう人もいます。本記事ではお墓が無縁仏となったらどうなるか?永代供養や散骨についてなどもご紹介します。
少子高齢化が進んでいる日本では、「自分も無縁仏になってしまうのでは」「このままでは先祖の墓が無縁仏になってしまう」と不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。そこで今回の記事では、そもそも無縁仏とは何なのかという素朴な疑問に答えたうえで、無縁仏が増えている理由や無縁仏にならないためにできる対策などについて解説していきます。
INDEX
無縁仏(むえんぼとけ)とされるもの
無縁仏という言葉は、遺体だけでなく墓に対しても使われているのをご存知でしょうか。この段落では無縁仏の概要について遺体と墓の2種類に分けて解説します。
ご遺体
弔ってくれる縁者がいない故人
弔ってくれる縁者がいない故人を「無縁仏」と言い、子孫や親類縁者に引き取りを拒否された遺体も含まれます。葬式を挙げてくれたり年忌法要といった供養をしてくれたりする子孫や親類縁者がいない遺体、と言った方がイメージしやすいかもしれません。
年忌法要については下記記事もご参考ください。
・法事はいつまで行うの?亡くなった方の法事・法要は「いつまで」行うことが多いのか
・法事・法要を完全解説!法事の種類・数え方・マナーを紹介
無縁仏は各自治体が預かる
無縁仏が法律的に「行旅死亡人」として扱われるのは、明治32年に行き倒れを想定して作られた「行旅病人及行旅死亡人取扱法」が根拠になっているからです。法律的に「行旅死亡人」とみなされた遺体は、死亡地の自治体が預かる仕組みになっています。一方、仏教では霊魂がさまよっているという考えから「遊魂(ゆこん)」とも呼ばれています。無縁仏の霊魂は安らかな死が迎えられなかったうえに供養されないことで常に空腹を感じているため、祟りを起こす恐れがあると解釈されているのです。
最終的には無縁墓地や無縁塚に埋葬される
無縁仏の場合、発見時にはすでに腐敗しているケースも珍しくありません。そのため、まずは遺体を火葬してから遺骨の状態で自治体が一定期間預かるのが一般的です。もちろん、無縁仏を預かっている自治体では公告や職員の調査などによって親族や引き取り手の捜索が行われます。弔ってくれる人が見つからなかった場合は、無縁仏を引き取ってくれる寺院もしくは行政が管理する霊園などに遺骨を一時的に移しますが、最終的には無縁墓地や無縁塚などに埋葬されるのが一般的です。
墓
継承者がいない墓が無縁仏となる
誰からも供養や管理をされていない墓も無縁仏の一種です。そもそも継承者がいないという場合はもちろん、たとえ継承者がいても管理料が支払われていない、長期間にわたって墓参りに来ていないなどの理由から無縁仏と判断される墓も増えています。
法律のが改定後、無縁仏が増えた
特に「墓地、埋葬等に関する法律」が改訂された平成11年3月以降は、無縁仏の増加が際立っているようです。改定後、管理業者には一定期間にわたって管理料が支払われていない墓に対して契約を解除する権利が認められ、墓地を整理できるようになりました。とはいえ、問答無用で墓地が整理できるという訳ではありません。管理者には契約を解除する前に当該墓地の目立つ場所に立札を1年間設置する、管理料が未払いになっていると官報に掲載するという2つの義務が課せられているのです。
墓地使用権の消滅期間は管理業者で異なる
ちなみに、ここで言う契約とは墓地管理使用規則に記載されている墓地使用権を指しています。ただし、管理料がどれくらいの期間支払われなければ墓地使用権が消滅するのかについては、管理業者ごとに異なりますので確認が必要です。契約が解除されると墓の持ち主が持っていた墓地使用権が消滅しますので、管理業者によって墓石の撤去や墓地の整地が行われます。納骨されていた遺骨は無縁墓や無縁塚などへ移されますが、スペースが限られているため骨壺から出されて他人の遺骨と一緒に土へ還されるのが一般的です。
納骨については下記記事もご参考ください。
・納骨にかかる費用を完全解説!相場・内訳・流れ・準備物を紹介!
・納骨とは?納骨式の時期と準備・流れと費用を完全解説!
・合祀とは?納骨堂の違いからメリット・デメリットまで徹底解説!
無縁仏が増えている理由
ここでは、無縁仏が増えている3つの代表的な理由について取り挙げてみましょう。
理由①移動化社会の為
第一に、進学や就職に伴って生まれ育った土地から離れたところに定住する「移動化社会」が挙げられます。親族が遠く離れた場所で暮らしていることが多いため、先祖の墓まで供養に出かけるのが難しくなっているのです。
理由②少子高齢化の為
第二に挙げる「少子高齢化」も無縁仏が増えている主要因と考えられます。そもそも親や先祖を供養する子供の絶対数が減っているのですから、無縁仏が増加するのも当然でしょう。中でも、社会問題となっている身寄りのないお年寄りの孤独死は無縁仏として埋葬されるケースが多いのです。
理由③ご遺体の引き取りを拒否する縁者が増えた為
加えて、遺体の引き取りを拒否する子孫や親類縁者が増えているのも、無縁仏の増加に大きく影響しています。
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無縁仏にならないための対策
事前に対策を講じておくことで、自分が死んだ後に無縁仏になるリスクを軽減することができます。
対策①生前契約を活用する
特に、葬儀や供養を任せられる相手がいないという人にオススメなのが「生前契約」を活用する方法です。たとえ親類縁者や親しい友人がいなくても、葬儀社や寺院と直に生前契約を交わしておけば葬儀や永代供養が行われます。
対策②死後事務委任契約をおこなう
一方、家族はいないが親しい友人ならいるという人に注目されているのが、死後に契約内容を履行してもらえる「死後事務委任契約」という方法です。弁護士など法律の専門家にも依頼できるので、友人や知人が見つからない人や親しいからこそ手を煩わせたくないという人にとっても有効な手段と言えるでしょう。
対策③「エンディングサポート制度」を活用する
また、自治体で運営している「エンディングサポート制度」を活用するのも賢い方法です。葬儀社と交わす生前契約の仲介をはじめ孤独死を防止する定期巡回など、自治体によって内容に特色がみられますので問い合わせてみましょう。
生前準備については下記記事もご参考ください。
・生前整理とは?意外と大事な生前整理の方法やコツ、行うべきタイミングを完全解説!
・生前葬のメリット・デメリットとは?併せて検討したい供養方法も紹介
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先祖の墓を無縁仏にしないための対策
先祖の墓から遠く離れた地域に住んでいる、もしくは子供がいなくて自分が最後の管理者になりそうだと感じているなら、墓の将来についても早めに考えておくべきでしょう。ここからは、先祖の墓を無縁仏にしないための対策方法を4つご紹介します。
対策①改葬する
墓地から遠い地域に引っ越した、墓地を管理していた田舎の家族が亡くなったという場合は、墓を別の場所に移す「改葬」によって先祖代々の墓が無縁仏になるのを防止できます。
改装は自治体ごとのルールに従っておこなう
改葬は自治体ごとに定められているルールに従って行う必要がありますが、自宅から通いやすいエリアに改葬できれば墓参りが容易になるのはもちろん、管理不行き届きで無縁仏と見なされる心配もありません。
改装には「閉眼供養」と「開眼供養」が必要
ただし、改葬には既存の墓地で魂を墓石から切り離す「閉眼供養」や新規の墓地で魂を墓石に宿らせる「開眼供養」といった法要が必要です。既存の墓地を管理している寺院と新規の墓地を管理している寺院、両方に相談してみましょう。
対策②永代供養を依頼する
永代供養とは?
「永代供養」は墓を無縁仏にさせないための一般的な方法として広く知られています。墓が建っている霊園や寺院に依頼して永代まで遺骨を管理・供養してもらう制度を永代供養と言います。だからと言って個別の法要が数百年にわたって行われるという意味ではありません。
永代供養はその後、合祀(ごうし)される
そもそも、永代供養の内容は霊園や寺院によって異なるうえ種類も豊富です。さまざまな種類の中から選べるようになっていますが、どのプランを選んでも最終的には他の遺骨と一緒に合祀墓へ埋葬されてしまいます。とはいえ、傾向としては33回忌までは遺骨の安置と供養が個別に行われるのが一般的なので、目安にすると良いでしょう。
>>33回忌(三十三回忌)とは?弔い上げの意味から33回忌に注意したいマナーまで完全解説!
永代供養と永代使用の違い
永代使用とはお墓の使用者が使用料を支払い、お墓の区画使用権を購入することです。
永代供養については下記記事もご参考ください。
・永代供養とは?永代使用との違いから永代供養の種類・メリットデメリットまで徹底解説!
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対策③散骨する
そもそも墓に必要性を感じない、子供に引き継がせたくないという人に注目されているのが「散骨」という対策法です。
散骨とは?
散骨とは葬送方式の一種で、粉末状にした遺骨を海や山などに撒いて故人を自然の中に還すという意味が込められています。海に散骨する方法を海洋散骨。シンボルの木の下に埋葬することを樹木葬といいます。
海洋散骨を行う際の注意点
中には思い出の場所に散骨したいという人も多いようですが、どこにでも散骨できるという訳ではありません。確かに法的には散骨に関する明確な記載はありませんし、法務省も違法ではないという見解を示しています。その反面、条例で散骨する陸地エリアを規制している市町村もありますので、環境汚染を避けるのはもちろん漁業関係者など周囲に迷惑が掛からないよう、細心の配慮が欠かせません。ちなみに、散骨するには遺骨を1~2mm程度に細かく砕く必要がありますが、素人の手作業では難しいため業者に依頼するのが一般的です。散骨する場所を探しているなら、遺骨を砕いてくれる業者に相談してみるのも良いでしょう。
海洋散骨については『やさしい海洋散骨』でもご相談を受け付けております。ご家族に代わり散骨する「代理プラン」、少人数で散骨をする「合同プラン」、船を貸切る「貸切プラン」や「ペット散骨」などからお選びいただけます。オプションでは手元供養のお骨壺や遺骨リングなども作成可能です。
海洋散骨については下記記事もご参考ください。
・海洋散骨を徹底解説!注意点・マナーや費用相場、提供事業者まで一気に解説!
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対策④墓じまいをする
墓じまいとは現在あるお墓を撤去してお墓を閉じることを指します。上記にご紹介した改葬と似ていますが、改葬の場合はお墓を移すことですが、墓じまいはお墓を処分することです。墓じまい後に亡くなった後は、初めから永代供養墓や合祀墓に埋葬されたり、散骨を利用する人もいます。
墓じまいについては下記記事もご参考ください。
・墓じまいから永代供養にするまでの流れ、永代供養墓の種類・選び方から注意点まで徹底解説
・墓じまいをスムーズに行うために。墓じまいの手続きと流れを完全解説!
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無縁仏になりたい人は?
最近では、宗教の価値観に疑問を頂きあえて無縁仏を希望する人もいます。また家族との不仲から「一緒のお墓には入りたくない」という方もいます。また金銭的な事情から無縁仏を希望するケースも多いです。
無縁仏になるのは難しい
例え「自分の死後は無縁仏にして欲しい」と遺言を残しても、倫理的・道徳的にも無縁仏となるのはかなり難しいでしょう。例え遺族がご遺体の引き取りを拒否したとしても、自治体が引き取り永代供養墓や合祀となるからです。
埋葬方法を指定することは可能
希望して無縁仏になることは難しいですが、埋葬方法を指定することはできます。家族と同じ墓を希望しない場合は、自分だけのお墓を建てそこに埋葬してもらったり、初めから散骨を希望しておくということも可能です。
その為にはあらかじめ、エンディングノートや遺言書などに自分の埋葬方法を指定しておいたり、近しい家族に依頼しておくよいでしょう。
遺言については下記記事もご参考ください。
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相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
まとめ:無縁仏の対策は早めにしておこう
「無縁仏」について特に重要となるポイントを下記にまとめました。
【無縁仏(むえんぼとけ)とされるもの】
●弔ってくれる縁者がいない、子孫や親類縁者に引き取りを拒否されたご遺体
●誰からも供養や管理をされていない墓
【無縁仏になるとどうなるか?】
●ご遺体の場合
-無縁仏は各自治体が預かる
-弔ってくれる人が見つからなかった場合は、無縁仏を引き取ってくれる寺院もしくは行政が管理する霊園などに遺骨を一時的に移しますが、最終的には無縁墓地や無縁塚などに埋葬されるのが一般的です。
●お墓の場合
-契約が解除されると墓の持ち主が持っていた墓地使用権が消滅しますので、管理業者によって墓石の撤去や墓地の整地が行われます。納骨されていた遺骨は無縁墓や無縁塚などへ移されますが、スペースが限られているため骨壺から出されて他人の遺骨と一緒に土へ還されるのが一般的
【無縁仏が増えている理由】
●進学や就職に伴って生まれ育った土地から離れたところに定住する「移動化社会」の為
●「少子高齢化」の為
●ご遺体の引き取りを拒否する縁者が増えた為
【無縁仏にならないための対策】
対策①生前契約を活用する
対策②死後事務委任契約をおこなう
対策③「エンディングサポート制度」を活用する
【先祖の墓を無縁仏にしないための対策】
対策①改葬する
対策②永代供養を依頼する
対策③散骨する
対策④墓じまいをする
【無縁仏になりたい人は?】
●希望して無縁仏になることは難しい
●自分だけのお墓を建てそこに埋葬してもらったり、初めから散骨を希望しておくということは可能
身寄りがない遺体や荒れ果てた墓は無縁仏と呼ばれ、もはや他人事とは言えないほど身近な社会問題となっています。大切なのは生前契約などの対策をどれだけ早くスタートさせられるかどうかです。自分の終活としてはもちろん、先祖の墓についても早めに改葬や永代供養などの対策を講じて、無縁仏になってしまわないように予防しておきましょう。
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
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