神式葬儀の流れとは?仏式との違いや基本的なマナーについても解説
日本で一般的に行われている葬儀は仏式であるため、神式の葬儀については詳しく知らないという人も多いでしょう。
しかし、何も知らずに神式の葬儀に参加してしまうと、知らず知らずのうちに失礼なことをしてしまう恐れがあります。
この記事では神式葬儀の概要や仏式との違いをはじめ、式の流れや参加時のマナーなどについて解説していきます。
神式葬儀とは?
そもそも神式葬儀とはどのような葬儀のことを指しているのか知っているでしょうか。神式葬儀とは、神道の形式に従って執り行われる葬儀のことを指し、神式葬儀の他に神葬祭とも呼ばれることがあります。
神道とは日本固有の民族宗教であり、日本の文化や国の在り方に大きな影響を与えてきたとされている宗教です。
神道の概念自体は何千年も前から日本に根付いていたと言われていますが、神道という言葉自体が生まれたのは6世紀以降で、海外から入ってきた仏教と区別するために作られたと考えられています。
神道では祖先を氏神(うじがみ)、すなわち守り神として崇める習慣があります。そのため神式葬儀が行われる目的は、仏教のように故人の魂が成仏できるようにというよりは、故人の魂を家にとどめおいて守護神になってもらうことにあります。
また、仏式葬儀では寺院で葬儀を行うこともありますが、神式葬儀では神社で葬儀が執り行われるということはまずありません。
これは、死は穢れであるという神道の考えに由来するもので、神聖である神社には穢れである死を持ち込むことは良くないと考えられているからです。そのため、神式では故人の家や借りた会場で葬儀を行うのが一般的です。
神式と仏式の主な違い
神式葬儀と仏式葬儀の大きな違いは宗教にあります。神式葬儀は神道に、仏式葬儀は仏教にのっとって行われますが、そもそも神道と仏教では宗教の種類が全く異なります。
神道には明確な教えや経典というものがない日本独自の「民族宗教」であるのに対し、仏教はキリスト教などと同じように明確な教えや経典が存在する「普遍宗教」です。
神道では死を穢れと捉えますが、仏教にはそうした考えがないため、寺院での葬儀も可能となります。
神式と仏式では葬儀中に宗教者が唱える言葉の意味合いも全く異なります。神式では神主が祝詞(のりと)を唱えて故人とともに子孫の繁栄を祈るのに対し、仏式では僧侶が経を読んで故人の冥福のみを祈ります。
また、神式では玉串と呼ばれる木を神前に捧げる玉串奉奠(たまぐしほうてん)が行われるのに対し、仏式では線香の煙とともに焼香をするという違いもあります。仏式葬儀で焼香が行われるのは、線香の煙で故人を天に導くためだと言われています。
しかし、神式葬儀は故人にそのまま家にとどまって守護神になってもらうのが目的のため、天へと導く煙は不要になります。
その他にも、仏式では故人に戒名を与えられるのが一般的ですが、神式では故人の名がそのまま魂の名として引き継がれるという違いがあります。
さらに葬儀後、神式では十日ごとに霊祭という法事を行って五十日で忌明けとなるのに対し、仏式では七日ごとに法要を行って四十九日で忌明けとなるという違いもあります。
神式葬儀特有の儀式について
神式葬儀には、「玉串奉奠」「神棚封じ」「手水の儀」という独自の儀式が存在します。これらの神式葬儀特有の儀式について見ていきましょう。
玉串とは紙垂(しで)という白い紙を榊(さかき)の枝につけたもののことで、米や酒のような神への供え物と同様の意味があると考えられています。
この玉串を神に捧げるのが玉串奉奠で、自分の心を玉串にのせて捧げることで故人の霊を慰めることを目的とした儀式です。
先述した通り、神道では死を穢れと考えています。そのため、家にいる神に死の穢れが近づかないよう、神棚を封じる儀式のことを神棚封じと言います。神々に家族が亡くなったことを報告する帰幽奉告の際に、神棚や祖霊舎の扉を閉じて白い紙を貼り、神棚封じをします。
神社へ訪れるときは身を清めるため手水を行うように、神式葬儀でも通夜祭などの祭事に入る前には手水の儀で身の穢れを落とします。
手水の儀のやり方は神社で手水を行うときとほぼ同じで、ひしゃくにくんだ桶の水で左手、右手の順に清め、左手にためた水を口に含んで口も清めたら、もう一度左手を清めて和紙で手と口を拭きます。
神式葬儀の流れ
神式葬儀の流れは大きく分けて「臨終から納棺まで」「通夜祭・遷霊祭」「葬場祭から帰家祭まで」の3つに分けることができます。ここからはそれぞれのパートごとに流れを紹介していきます。
臨終から納棺まで
臨終を迎えたら、まずは神棚に家族が亡くなったことを報告する帰幽奉告を行い、穢れが神棚に入り込まないよう神棚封じをします。これと同時に、故人が自宅で亡くなった場合には、息を引き取った部屋にしめ縄を張っておきます。
次は仏式と同様に枕直しの儀を行います。死に水や遺体の清め、死化粧を行ったうえで白の小袖を着せて、北枕に寝かせます。
なお、故人が気に入っていた服などがある場合は、その服を着せてから小袖をかけることも多いです。前面に祭壇を設けて、玉串や灯明、洗米、塩などを供えて枕飾りとします。
枕直しの儀が済んだら、納棺の儀へと移ります。遺体を棺に納めたら、棺に蓋をして白い布で覆い、全員で礼拝を行います。その後、祭壇の前に棺を安置します。
通夜祭・遷霊祭
通夜祭は仏式でいうところの通夜にあたる儀式です。神官である斎主をはじめとして、参列者全員が「手水の儀」を行ったうえで祭壇の前に着席します。まずは喪主が一礼をし、それにつづいて全員が一礼をします。
その後、斎主が祭詞を唱えてから楽員によって誄歌(しのびの歌)が演奏されます。次に玉串奉奠へと移ります。まずは斎主が玉串奉奠をし、つづいて参列者も喪主から順に玉串奉奠を行って、通夜祭は一通り終了です。
遷霊祭は、仏式でいうところの位牌にあたる霊璽(れいじ)と呼ばれるものに、故人の魂を写すための儀式で、「御霊移し(みたまうつし)」とも呼ばれています。「御霊移し」の儀式は暗闇の中で行われるものなので、まずは家中の明かりを消します。
「御霊移し」の儀式が終わったら、祭壇に安置された仮霊舎(かりのみたまや)に霊璽を納め、部屋の明かりをつけて一同は仮霊舎の前に着席します。
斎主が洗米や塩などを供え、遷霊詞(せんれいし)を奏上し、最後に玉串を捧げてから拝礼したら遷霊祭は終わりです。遷霊祭によって、故人の魂はその家の守護神となります。
通夜祭と遷霊祭は別々の儀式ではありますが、近年は遷霊祭を通夜祭のうちの1つの儀式として、通して行われることも多いです。
葬場祭から帰家祭まで
葬儀祭は仏式でいうところの告別式にあたる儀式です。神式葬儀におけるメインの祭儀であり、弔電紹介や玉串拝礼などが行われます。この葬儀祭が故人に別れを告げる最後の機会とも言えるでしょう。
葬場祭が終わればいよいよ火葬となりますが、火葬の前にも火葬祭という儀式が行われます。火葬場で遺体が火葬される前に、斎主が祭詞を奏上し、参列者は玉串拝礼を行います。この儀式後に出棺となります。
火葬が完了したら、遺骨を埋葬するために埋葬祭という儀式を行います。昔は火葬場から墓地へ直接移動して埋葬祭、埋葬をしていましたが、最近は火葬直後ではなく五十日祭の忌明けに行われることが多くなっています。
火葬や埋葬が終わったら、自宅に戻って塩や手水で身を清めます。そして、神式葬儀が無事に終わったことを報告して帰家祭とします。この後は神職などのお世話になった人を招いて、「直会(なおらい)の儀」という宴で労をねぎらうのが一般的です。
神式葬儀参加時のマナー
神式葬儀に参加するときには、いくつか気をつけておきたいマナーがあります。相手方に失礼のないよう、事前にしっかりと把握しておきましょう。
不祝儀袋を選ぶときには、蓮の花が入っていないものを選びましょう。蓮の花は仏教に関係のある花なので、神式葬儀に参加するときには不向きです。また、表書きには「御霊前」「御玉串料」などの言葉を選ぶのがベストです。
遺族に挨拶をするときは、「冥福」「成仏」「供養」という言葉を使ってはいけません。これらの言葉はすべて仏教用語です。神式葬儀で言葉をかけるときは「御霊のご平安をお祈りします」が一般的です。
葬儀には数珠が必要と考えがちですが、数珠は本来僧侶が読んだ経の数を数えるためのものでした。したがって、神式では数珠は持っていきません。服装に関しては、仏式の場合と同様に一般的な喪服で問題ありません。
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神式葬儀に参加するときは仏式との違いを理解しておこう
日本古来の宗教である神道にのっとって行われる神式葬儀では、一般的な仏式葬儀とは形式も違えば葬儀を行う目的自体も異なります。そのため、仏式での常識やマナーは神式では通用しません。
故人との最後のお別れをより良いものとするためにも、焼香の代わりに玉串奉奠を行うことや、仏教用語がタブーになっていることなど、基本的な知識をしっかりと身につけた上で神式葬儀に参加するようにしましょう。
【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール