数珠の正しい持ち方・使い方
数珠の正しい持ち方・使い方は、葬儀や法要に臨む私たちの「心の姿勢」を映し出します。形だけではなく、相手や故人を思う気持ちが伝わる所作を身につけることが、結果としてもっとも美しいマナーになります。
とはいえ、いざというとき「数珠は左手?右手?」「宗派の違いは?」「焼香のときはどう持つ?」と迷ってしまう方は少なくありません。本記事では、数珠の持ち方・使い方・宗派の違い・選び方を、初心者にも分かりやすく網羅的に解説します。あわせて、葬儀参列時の持ち物マナー(香典・袱紗・バッグ・靴・アクセサリーなど)にも触れ、読んだその日から安心して実践できるよう丁寧にお伝えします。
導入:数珠は“祈りを形にする道具”
数珠(じゅず)は、仏教で祈りの数を数えるための法具として発展してきました。108の珠は108の煩悩を象徴し、珠を繰る所作は心を鎮め、故人を偲ぶ時間を整えてくれます。現代では「持っていればOK」という誤解も見られますが、実は数珠の扱い方ひとつで、あなたの祈りの深さや丁寧さが伝わります。
本記事は、導入→課題→価値→解決策→事例→まとめの流れで構成し、一般の方にも実践しやすい形で「数珠 持ち方」「数珠 マナー」「数珠 使い方」「数珠 宗派」「数珠 選び方」の要点を整理しました。初めての参列でも、久しぶりの法要でも、迷わず美しい所作ができるように、やさしい言葉で徹底的にナビゲートします。
課題:なんとなくの“自己流”が伝えるもの
葬儀の場で多いのは「なんとなく左手に引っかけておけばよい」「焼香のときはポケットに入れてしまおう」「宗派が違っても同じ持ち方で問題ないだろう」といった自己流です。悪気はなくても、房を握りしめてブラブラさせたり、椅子や床に直置きしたりすると、仏具への敬意が伝わりません。
また、宗派によっては「親指にかける」「両手にかける」「右手にかける」など手順が異なるため、知らないままでは不安な気持ちのまま参列することになります。結果として「弔う気持ちはあるのに、自信が持てない」という状態に陥りがちです。
価値:正しい所作が“心の姿勢”を整える
数珠のマナーは、単なるルールではありません。相手への思いやりを可視化する作法です。正しい数珠の持ち方・使い方を身につけると、所作の一つひとつに無駄がなくなり、自然と動きが静かで美しくなります。それは周囲に安心感を与えるだけでなく、あなた自身の内側にも静けさをもたらします。
「形が整うと、心が整う」。その好循環が、故人への敬意をより深く、温かく伝えてくれます。初めての参列でも、久しぶりの法要でも、落ち着いて祈れる自分に出会えるはずです。
解決策:数珠の基本・宗派差・選び方・扱い方を完全ガイド
数珠の種類(本式数珠/略式数珠)
本式数珠は宗派ごとに珠数・輪の構成・房の形が定められた正式な数珠で、信仰を重んじるご家庭や僧侶が用います。略式数珠(片手数珠)は宗派を問わず使える万能タイプで、一般参列者はこれを一つ用意しておけば安心です。迷ったら、男女ともに落ち着いた色合いの木玉や水晶の略式数珠がおすすめです。
基本の持ち方・使い方(一般作法)
まずは、宗派不問で失礼にならない基本形を覚えましょう。
基本所作の4ステップ
① 左手にかける:左手は「清浄」を表すとされ、数珠は基本的に左手側で扱います。
② 合掌:両手を合わせる際、数珠を親指の間にかけ、房は下に静かに垂らします。胸の前で落ち着いて合掌しましょう。
③ 焼香:焼香台の前でも数珠は左手にかけたまま。右手で香をつまみ、左は数珠を包むように添えます。
④ 保管:式が終わったら数珠袋に入れて大切に保管。バッグの底に直入れは避けます。
宗派別:持ち方・所作のちがい
以下は主要宗派の代表的な所作です。厳密な作法は寺院や地域で差があるため、施主や僧侶の指示を最優先にしてください。
浄土宗・浄土真宗
合掌の際、両手の親指に数珠をかけ、房を下に垂らします。全国的に見られる一般的な形で、略式数珠でも違和感はありません。
真言宗
右手に数珠をかけ、左手を添える形で合掌します。修法で珠を繰る文化的背景があり、房の扱いも丁寧に行います。
天台宗
両手に数珠をかけて合掌し、房は左に垂らすのが一般的です。心を静める所作が重視されます。
曹洞宗・臨済宗(禅宗)
数珠を両手にかけ、親指で軽く押さえるように合掌します。派手な動きは避け、簡素で静かな振る舞いを大切にします。
日蓮宗
四房の独特な本式数珠を用い、房の位置に意味があります。題目を唱える際に珠を繰るなどの所作が伴います。
数珠の選び方:素材・色・サイズ
数珠選びは「誰のために、どんな場で、どんな心で祈るか」を映します。以下を目安にしましょう。
素材:
・黒檀・白檀…落ち着いた色合いと香り。男女問わず長く使える。
・水晶…清浄・浄化の象徴。宗派不問で万能。
・菩提樹…お釈迦さまゆかり。伝統と敬虔さを大切にしたい方に。
・天然石(紫水晶・瑪瑙など)…上品で柔らかな印象。女性にも人気。
色:黒・茶・白・透明系は弔事に馴染み、服装とも調和しやすい。派手な色や金属光沢が強いものは避けるのが無難です。
サイズ:手に収まり、合掌時に房が邪魔にならない大きさを。店頭で手に取り、珠の感触や房の長さを確かめると安心です。
やってはいけないNGマナー
・房を握ってブラブラさせる/振り回す
・椅子・床に直置きする/他の荷物の下敷きにする
・アクセサリーのように首や手首に巻く
・他人と貸し借りする(心情・信仰上NGとされることが多い)
・ポケットやバッグの底に無造作に入れる
数珠は仏具です。「静かに、丁寧に」を合言葉に扱いましょう。
+α:葬儀参列の「持ち物」マナーも押さえよう
数珠のマナーと合わせて、当日の持ち物を整えると、いっそう安心して参列できます。
香典・袱紗(ふくさ)
香典袋は宗派に合わせて表書きを選び、紙幣は新札を避け折り目のあるものを。中袋の氏名・住所・金額は読みやすく丁寧に。受付では袱紗から香典袋を出して相手に向けて差し出します。袱紗は紫が一枚あると慶弔どちらにも使えて便利です。
バッグ・靴・アクセサリー
バッグは黒の布製またはツヤのない革製で、金具や装飾の目立つものは避けます。靴は黒のプレーントゥ(紐・ローファー)やプレーンパンプスを。ヒールは控えめで音が響かないものが理想。アクセサリーは結婚指輪を除き、基本的に外しましょう。髪留めや時計も光沢控えめを選ぶと落ち着きが出ます。
ハンカチ・数珠袋・筆記具
ハンカチは白・黒・グレーの無地が無難。数珠袋は数珠と色味を合わせると見映えがよく、仏具への敬意が伝わります。受付で芳名帳に記入することがあるため、インクが濃く滲みにくい筆記具を一本入れておくと安心です。
香り・スマホ・雨具の扱い
強い香水は避け、喪服に防虫剤や柔軟剤のにおいが残らないようにしましょう。スマホは式前にマナーモードではなく電源オフに。雨天時の傘は黒・紺・濃いグレーがおすすめ。式場内では水滴をよく払ってから入ると美しい所作になります。
実践チェックリスト(直前5分で最終確認)
・数珠は左手にかける/合掌時は親指の間に
・焼香時も左手キープ、右手で香をつまむ
・数珠袋・袱紗・香典袋の順に取り出せる配置か
・バッグ・靴は光沢控えめ、アクセサリーは最小限
・スマホ電源オフ、ハンカチ・筆記具OK、傘の扱いに配慮
事例:所作を整えた人の“心の変化”
事例①:初参列でも落ち着けた20代Aさん
祖母の葬儀で緊張していたAさんは、前夜に「左手・親指・房は下」を3回声に出して練習。当日、迷いなく合掌でき、親族から「所作がきれい」と声をかけられました。「ちゃんと祈れた」という実感が自信へと変わり、以後の法要でも落ち着いて参列できるようになったといいます。
事例②:宗派差の理解で尊重の空気が生まれたBさん
真言宗と浄土真宗の親族が集まる法要で、Bさんは「右手にかける」「親指にかける」などの違いを事前に共有。誰かの所作を正すのではなく、お互いの作法を尊重し合う雰囲気が生まれ、式が穏やかに進みました。
事例③:数珠が“心のスイッチ”になったCさん
仕事の多忙で心が落ち着かないCさんは、寝室の一角に数珠と小さな香炉を置き、毎晩30秒だけ合掌。「珠に触れると呼吸が深くなる」と語り、数珠が日常の中の静けさを取り戻すスイッチになっています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 宗派が分からないときはどうすればいい?
略式数珠を左手にかけ、合掌時は親指の間にかける一般作法で問題ありません。施主や僧侶の指示があればそれに従いましょう。
Q2. 数珠は家族間で共有してよい?
避けたほうが無難です。仏具は個人の祈りを預かるもの。どうしても間に合わせるなら清潔に扱い、早めに自分の一本を用意しましょう。
Q3. 左利きの場合は?
左手にかけるのが基本です。利き手とは関係なく「清浄の手」とされる左を選びます。
Q4. 房がほつれたら?
軽く整える程度はOKですが、引っ張るとさらに乱れます。仏具店で房交換が可能な場合も多いため、早めに相談しましょう。
Q5. 通夜・葬儀・法要で持ち方の違いはある?
基本は同じです。左手保持・親指の間・房は下。焼香作法は宗派や式次第に合わせて静かに従いましょう。
ミニ実践:30秒で身につく「合掌ルーティン」
(1)数珠を左手にかけ、肩・肘・手首の力を抜く。
(2)胸の前で手を合わせ、親指の間に数珠を通す。房は自然に下へ。
(3)目を閉じ、3呼吸。吸う1・2・3、吐く1・2・3。
(4)心の中で「ありがとう」を一度だけ静かにとなえる。
(5)そっと頭を下げ、数珠を数珠袋へ。
この短い流れを一度身につけると、どんな場でも迷わず所作が整います。
持ち物マナーの詳細:当日の動線で考える
自宅出発前
・香典袋<袱紗>・数珠袋・ハンカチ・筆記具・身分証・交通系ICを一つのポーチに。
・スマホは電源オフを想定し、待ち合わせは事前に明確化。
・雨具・替えマスク(無地)・小さめの絆創膏があると安心。
式場到着〜受付
・入口で一礼し、袖口や裾を整える。
・受付では袱紗から香典袋を出して相手向きに置く。
・芳名帳は読みやすい字で。書き終えたら一礼。
式中〜焼香
・スマホ電源オフ。
・焼香の順番に合わせて静かに立ち、数珠は左手キープ。
・合掌は胸の前で、深呼吸をひとつ。
退席〜帰路
・遺族・僧侶に一礼。
・入口で再度一礼して退室。
・屋外で傘を開き、水滴を払ってから持ち歩く。
コラム:数珠と向き合う“小さな習慣”
数珠は、葬儀や法要だけの道具ではありません。仏壇の前や静かな時間に、珠を一つなぞりながら深呼吸するだけでも、心が落ち着きます。忙しさで凝り固まった思考をほどく「小さな瞑想」として、日々の暮らしにもやさしく寄り添ってくれます。
まとめ:形が整えば、心が整う。数珠は“礼と優しさ”を結ぶ輪
本記事のポイントを最後に振り返ります。
・数珠は左手にかけ、合掌時は親指の間へ。房は下に静かに垂らす
・焼香時も左手キープ、右手で香をつまむのが基本
・宗派で所作が異なるが、略式数珠なら多くの場で違和感がない
・素材は黒檀・白檀・水晶・菩提樹など。手に馴染み心が落ち着く一本を
・房を振り回さない・直置きしない・貸し借りしない
・香典・袱紗・バッグ・靴・アクセサリーのマナーも合わせて整える
マナーは誰かに見せるためではなく、故人を思う心を美しく届けるための型です。数珠の持ち方・使い方を整えることは、相手への礼と自分への優しさを同時に育てること。今日からの小さな一歩が、あなたの祈りをより深く、あたたかくしてくれるはずです。
葬儀や法要について不安な点があれば、事前に家族で共有し、当日は「静かに、丁寧に」。それだけで、所作は十分に美しく整います。
_1.png)