家(不動産)というのは大切な財産です。所有者が死亡し相続となったり売買した場合には名義変更が必要です。家の名義変更に期限はありませんが、しないことでのデメリットもあります。本記事では家の名義変更の流れや費用についてご紹介します。
家(不動産)というのは大切な財産です。
自分で住むのはもちろん、場合によっては賃貸に出したり売却することによって大きな利益をもたらすこともできます。
そうしたことを自由に行うためには、所有物である旨を正当に主張するために「名義変更」が必要です。
特に変更期限等はないものですが、しておかないと損をすることもたくさんあります。
そのため、名義変更が必要なケースや必要な費用などをしっかり抑えて、いざという時にスムーズな手続きができるように心がけましょう。
INDEX
家(不動産)の名義変更とは?
「家(不動産)の名義変更」とは、家(不動産)の現在の名義人を新しい名義人に変更する行為のことです。
名義変更は「所有権移転登記」とも呼ばれる
法務局に必要な書類を提出することで完了するものであり、「所有権移転登記」とも呼ばれています。
家(不動産)を正式に自分の所有物とするためには、必ずこの名義人を自分の名前にしなければなりません。
例え相続したものであっても、名義人の名前が違ければ所有物としては認められないのです。
登記識別情報(登記済権利証)とは?
名義変更を行うと「登記識別情報(登記済権利証)」というものが法務局によって発行されます。
登記識別情報とは、いわば家(不動産)の権利証です。これがあることで所有者が誰であるかを証明してくれます。
家(不動産)の売買などの際に必要となる権利証のため、必ず保管しておきましょう。
権利証が無くても売買手続きは可能
万が一紛失した場合でも、司法書士あるいは公証人が作成した本人確認情報があれば売買手続き自体は行えます。
名義変更については下記記事もご参考ください。
・不動産名義変更を完全解説!流れ・費用・必要書類・期間を紹介!
・家の名義変更を親から子にする際の節税方法を完全解説!贈与税を非課税にするには?
家(不動産)の名義変更が必要なタイミング
それでは家(不動産)の名義変更はどのようなタイミングで必要になるのでしょうか?
基本的には「遺産相続」「生前贈与」「財産分与」「不動産売買」という4つのケースで必要になります。
この名義変更に関しては、変更しなかったからといって特に罰則があるわけではありません。
しかし、変更しないことによるデメリットもたくさんあります。
詳しいことは後述しますが、将来的に自分の首を締めることになるためきちんと行っておいた方が良いでしょう。
遺産相続
その家(不動産)の所有者が亡くなると遺産相続が発生するため、そのタイミングで名義変更を行います。
基本的には相続した相続人本人が手続きを行うというのが一般的です。
相続での名義変更は「相続登記」
なお、相続によって発生した名義変更のことを「相続登記」とも言います。
また、そこまでケースとしては多くありませんが、そもそも被相続人が名義変更をしておらずそれより以前の名義人のままになっていることもあります。
その場合は他の相続人の同意がなければ名義変更できないので注意しましょう。
遺産相続については下記記事もご参考ください。
・遺産相続を完全解説!手続き・流れ・注意点を紹介!
・遺産相続の兄弟の割合・トラブル・手続きを完全解説!
・遺産相続を孫にする方法を完全解説!3つの方法と税金と割合を紹介!
生前贈与
贈与者が存命の間に家(不動産)を引き継ぐ「生前贈与」を行う際に名義変更が必要です。
基本的に贈与を行う場合は、「現在の名義人」「新しい名義人」が共同で名義変更をします。
生前贈与には贈与税がかかる
生前贈与には贈与税がかかるので要注意です。税率は贈与した金額によって異なりますが最高で55%にもなります。
実に半分以上も税金として納めることになります。
そのため「年間110万円以内の贈与であれば税金がかからない」という基礎控除を活用しながら、上手に税金を抑えていくと良いでしょう。
配偶者控除を受けることもできる
さらに不動産を住宅として利用している場合、夫婦の婚姻期間が20年を超えていれば、その夫婦間での贈与に対して「最大2,000万円まで」の配偶者控除も受けることが可能です。
これは基礎控除とも併用できます。
贈与については下記記事もご参考ください。
・遺贈とは?相続と贈与との違い・注意点を完全解説!
・家の名義変更を親から子にする際の節税方法を完全解説!贈与税を非課税にするには?
財産分与
離婚などの様々な事情により家(不動産)を夫婦のうちどちらかが所有する場合に名義変更が必要です。
この名義変更には「夫→妻への名義変更」「共有名義→夫のみへの名義変更」などのパターンがあります。
財産分与における名義変更も基本的には共同で行うことが多いです。
財産分与での注意点
賃貸物件の場合は、財産分与だけでなく同居の解消によっても名義変更をする必要があります。
もしここでしっかり名義変更をしておかないと、「離れてから勝手に家(不動産)を売却された」というような事態にもなりかねません。
また、固定資産税の請求が届かず滞納してしまう場合もあるので注意しましょう。
不動産売買
家(不動産)の売買をした場合は、売主から買主への名義変更を行いましょう。
これも共同で行うのが一般的です。この売買による名義変更は決済日当日に行います。
もし賃貸物件の売買によって所有者が変わった場合、きちんと名義変更を済ませておかないと賃借人が新たな家賃の払い先が分からず混乱してしまうので注意しましょう。
とはいえ、基本的には決済日に共同で手続きをするのが一般的なため、「名義変更がされてない」という事態はほとんどないと考えて良いのかもしれません。
相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
家(不動産)の名義変更の流れ・期間
それでは具体的に「家(不動産)の名義変更の流れ」及び「必要な期間」について確認していきましょう。
法務局の場所を確認する
まずは準備を始める前に、家(不動産)の名義変更を行う法務局の場所を確認しておきます。
申請を行う法務局はどこでも良いわけではありません。必ず「対象の家(不動産)が所在する地域を管理している法務局」で申請を行います。
対象の家(不動産)がある場合を除いて、最寄りの法務局で手続きできるわけではないため注意してください。
名義変更の申請方法
申請方法は「窓口」「郵送」「オンライン」の3種類です。
基本的には、揃えた必要書類を上記3つのうちいずれかの方法で法務局に提出します。
法務局は必ずしも自分の最寄りの地域にあるとは限らないので、遠方の場合は郵送などで手続きすると良いでしょう。
必要書類の用意
法務局を確認したら次に必要書類を用意します。この必要書類は、名義変更のケースごとに多少異なるのでその都度しっかり確認しておきましょう。
具体的に必要な書類については、次でケースごとに説明します。
登記の申請書
揃える書類の一つとして「登記の申請書」も必要です。
この申請書は、「登記事項証明書(登記簿謄本)」というものを用意し、そこに記載されている家(不動産)に関する情報を参考にしながら作成します。
なお、この登記事項証明書は法務局で取得可能です。
現在はオンライン化されているため、登記事項証明書の取得だけであれば管轄外の法務局からアクセスすることもできます。
名義変更の手続きは両者間が共同で行う
基本的に登記の申請書を含めて、名義変更の手続きは(お互いに存命である場合は)両者間が共同で行うというのが一般的です。
そのため、生前贈与や売買契約であればそこまで難しくはありませんが、離婚による財産分与などの場合は調整に時間がかかることもあります。
なぜなら、事情が事情なだけに顔を合わせるのが気まずいということも多く、それぞれが個別で専門家と会って手続きを進めるということも珍しくないためです。
相続では遺産分割協議書を作成する
相続の場合はこのような気まずさはありません。
しかし、相続人全員の同意を取った上で遺産分割協議書を作成しなければならない上に、相続人全員分の印鑑証明書や住民票などを用意しなければならず、かなり手間がかかります。
そもそも全員分の同意がなければ話し合いに時間を取られてしまうでしょう。
このようにケースごとで手続きの手間が増える可能性はあるので十分に注意してください。
法務局へ提出
必要書類を揃えて相続や売買などの手続きも完了したら、それらを法務局に提出します。
窓口申請の場合は、法務局の運営時間である「平日8時30分〜17時15分」の間で行なってください。
平均では10日間程で完了する
上記が名義変更に関する基本的な手続きの流れです。特に書類の不備等がなければ、1週間〜10日程度で変更作業は完了となります。
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家(不動産)の名義変更での必要書類
それでは、上記の変更手続きで必要な書類をケースごとに詳しくご説明します。
相続の場合
相続の場合に必要な書類は以下の通りです。
・固定資産税証明書
・登記申請書
・登記識別情報(あるいは登記済権利証)
・登記原因証明情報
・発行日から3ヶ月以内の印鑑証明書
・被相続人の全ての戸籍謄本、除票
・相続人の戸籍謄本、住民票
・相続関係説明図
・(必要に応じて)遺産分割協議書
・(必要に応じて)遺言書
相続については下記記事もご参考ください。
・相続遺留分とは?割合・取り戻す方法・費用を紹介!
・相続権を完全解説!優先順位・割合を紹介!
・相続を完全解説!相続の方法・手続き・費用・流れを紹介!
売買の場合
ここでは「売主」「買主」それぞれで必要な書類をご紹介します。
もしわからないものがあれば、契約した不動産会社にアドバイスをもらうと良いでしょう。
◎売主が用意する書類
・固定資産税証明書
・登記申請書
・発行日から3ヶ月以内の印鑑証明書
・登記識別情報(あるいは登記済権利証)
・不動産売買契約書
・住民票
・(売主が買主に手続きを委任する場合)委任状
◎買主が用意する書類
・発行日から3ヶ月以内の印鑑証明書
・不動産売買契約書
・住民票
生前贈与の場合
ここでは「贈与者」「受贈者」それぞれで必要な書類をご紹介します。
◎贈与者
・贈与証書
・贈与契約書
・固定資産税証明書
・登記識別情報(あるいは登記済権利証)
・発行日から3ヶ月以内の印鑑証明書
◎受贈者
・贈与証書
・贈与契約書
・住民票
財産分与の場合
ここでは「現在の名義人」「新しい名義人」それぞれで必要な書類をご紹介します。
◎現在の名義人
・財産分与契約書
・離婚協議書
・戸籍謄本
・登記識別情報(あるいは登記済権利証)
・固定資産税証明書
・発行日から3ヶ月以内の印鑑証明書
◎新しい名義人
・財産分与契約書
・離婚協議書
・戸籍謄本
・住民票
名義変更については下記記事もご参考ください。
・不動産名義変更を完全解説!流れ・費用・必要書類・期間を紹介!
・家の名義変更を親から子にする際の節税方法を完全解説!贈与税を非課税にするには?
家(不動産)の名義変更でかかる税金
家(不動産)の名義変更には各種税金がかかります。それでは具体的にケース別に確認していきましょう。
売買の場合
◎登録免許税
これはどのケースであっても、名義変更の際には必ずかかります。ただし税率は異なるので注意しましょう。
売買の場合は「固定資産税評価額×20/1,000(2021年3月31日までは15/1,000)」が税額です。
◎譲渡所得税
家(不動産)などを売却した際に発生する税金です。売主側が負担します。
「所有期間が5年を超える長期譲渡所得なのか、あるいは5年以下である短期譲渡所得なのか?」「売却したものはマイホームか?」など様々な条件によって控除額や税率が違うためしっかり確認しておきましょう。
◎不動産取得税
相続では非課税となる税金であり、売買や贈与で手に入れた家(不動産)を名義変更する際にかかります。
買主側が負担するものであり、「固定資産税評価額×40/1,000」が税額です。
贈与・財産分与の場合
◎登録免許税
贈与や財産分与の場合は「固定資産税評価額×20/1,000」が税額です。
◎贈与税
家(不動産)を贈与された人物が負担する税金です。税率は財産額によって異なり、最大で55%にもなります。
かなり高額になる場合もあるため、「贈与額が年間110万円以下であれば贈与税がかからない」という基礎控除を活用しながら上手に削減しましょう。
◎不動産取得税
家(不動産)を贈与された人物が負担する税金です。
相続・共有物分割の場合
◎登録免許税
相続や共有物分割の場合は「固定資産税評価額×4/1,000」が税額です。
◎相続税
土地を相続した人物にかかる税金であり、税額は「(相続財産額の合計ー基礎控除額)×相続税率」で決まります。
ちなみに基礎控除額を求める計算式は「3,000万+(相続人の数×600万)」です。
相続税については下記記事もご参考ください。
・葬儀費用で相続税控除できる?葬儀費用に関わる相続税の考え方を完全解説!
・死亡退職金を完全解説!相続税の課税対象になる?
・相続税理士の選び方を完全解説!依頼の流れ・費用・期間を紹介!
家(不動産)の名義変更にかかる費用
上記の税金以外にも名義変更の際には必要となる費用があります。それでは「所有物件」「賃貸物件」ごとに確認していきましょう。
所有物件の場合(手続きにかかる費用)
まず、名義変更に必要な書類を揃える費用がかかります。名義変更理由によっても費用は異なりますが、だいたい数千円程度かかることが多いです。
ただし相続のように揃える書類の数が多いケースではもう少し費用が増える可能性があるので注意しましょう。
そしてここに上記の登録免許税や譲渡所得税などが加わるだけでなく、印紙税という税金もかかることがあります。
所有物件の場合(仲介業者にかかる費用)
仲介業者に支払う場合
まず、仲介業者に支払う手数料が必要になります。この金額は「売却価格×規定の税率」となるのが一般的です。
詳しい金額は業者ときちんと話し合っておくと良いでしょう。
司法書士などの専門家に支払う場合
また、司法書士などの専門家に手続きを代行してもらう場合はその費用もかかります。
これも事務所によってバラつきがありますが、数万円〜数十万円前後になることもあるので気をつけましょう。
事務所によっては、全ての手続きを一括で代行してくれるとこともあれば、手続きの内容ごとに料金設定されているところもあります。
そのため自分がどのように手続きを任せたいかによって選ぶと良いでしょう。
賃貸物件の場合(手続きにかかる費用)
賃貸物件の場合は、基本的には大家あるいは仲介業者に支払う事務手数料が必要です。
この手数料は、契約変更に伴う手続きに対して支払っているものになります。
費用は「1万円〜家賃1ヶ月分」とこちらもかなりバラつきがあるので確認しておきましょう。
賃貸物件の場合(仲介業者にかかる費用)
名義変更に伴う契約変更ができず新規契約扱いになることもあります。
その場合は「仲介手数料」「敷金」「礼金」などを改めて支払わなくてはなりません。
家(不動産)の名義変更で専門家にかかる費用
名義変更手続きを専門家に依頼する場合はどのくらいの費用がかかるのでしょうか?それぞれの専門家が対応できる業務範囲も含めてご紹介します。
司法書士
依頼にかかる費用は「3万〜15万円程度」であることが多いです。
かなり幅がありますが、主に「名義変更に関する手続き全て」を代行してくれるようなパック料金だと「6万円〜」になる傾向があります。
対応できる業務範囲は「家(不動産)の登記全体に関すること」です。他の専門家と比べると最も依頼しやすいと言えるでしょう。
土地家屋調査士
土地家屋調査士とは?
「土地家屋調査士」は、家(不動産)の表示に関する専門家のこと。必要に応じて家(不動産)の場所や現在の状況などについての調査を行い、登記申請だけでなく図面作成も請け負っています。
土地家屋調査士への依頼費用
この土地家屋調査士への依頼費用は、代行してほしいことの内容によって大きく差が出ることが多いです。
一番費用の差があるのが「境界確定測量」というものであり「25万〜60万円程度」の幅で変動します。
最も費用が高くなる可能性があるのが「分筆登記申請」「土地地積構成登記申請」というもの。
最低でも「40万円程度」かかる可能性があります。反対に最も費用が低くなる可能性があるのが「合筆登記申請」というもので、「7万円〜」になることが多いです。
「現況測量」に関しても「10万〜20万円程度」の幅で変動するので費用が低くなることもあるでしょう。
ただし、土地家屋調査士に依頼できるのは、基本的に「家(不動産)の表示に関する登記のみ」です。
さらに保存登記や所有権移転登記などは対応不可であり、上記のような調査をお願いする状況自体があまりないので、依頼することはあまりないでしょう。
弁護士
弁護士への依頼費用は、依頼する内容や家(不動産)で発生する利益等によって異なります。
弁護士への依頼費用
目安としては、まず着手金が「10万円〜」かかることが多いです。
具体的な内容ごとの費用としては、賃料請求が「40万円〜」であり、家(不動産)の明け渡し請求が「60万円〜程度」になると考えておきましょう。
弁護士なので法律問題全般の相談が可能です。
登記に関しても依頼できますが、法律問題と比べるとやや精通していないこともあるので、事務所の実績などを確認し自分に合ったところへ依頼しましょう。
税理士
税理士への依頼費用
税理士の場合は、確定申告代行のみであれば「3万〜10万円程度」の費用で済みます。
ただし、資料集めや名義変更等を含め登記に関する全ての手続きを任せる場合は「50万円〜程度」になることも多いです。
税理士であれば、確定申告に関する相談や各種税金の計算などを安心して任せることができます。
お金に関することで間違いがあると支払額などで損をすることもあるので、できれば税理士に依頼するのが一番でしょう。
登記手続きは基本的に受け付けていませんが、他の専門家との連携をすることでパック料金の中に組み込んでいる事務所もあります。
家(不動産)の名義変更を専門家に依頼するかの判断基準
家(不動産)の名義変更は自分で行うこともできます。とはいえ、何の知識も無い状態で手続きをしても失敗する可能性は高いでしょう。
そこで「名義変更を専門家に依頼するかどうかの基準」についてご紹介します。基本的には、以下の4つの観点から判断するのがオススメです。
名義変更の理由
先述の通り、名義変更の理由としては主に「相続・売買・生前贈与・財産分与」が挙げられます。
そのため「自分はこの中のどの理由によって名義変更を行うのか?」ということを考慮しましょう。
「売買」では仲介業者を利用される方が多い
「売買」であれば基本的に仲介業者を利用している方も多いです。
そのため、そもそも仲介業者のプランの中に「名義変更手続き」が含まれていることもあり、その場合はわざわざ自分で行う必要はありません。
もちろん仲介業者を利用していない場合もあるので、その時は専門家に依頼するのも良いでしょう。
一方で「相続・生前贈与・財産分与」の場合はそうした仲介業者がおらず、分配割合なども自分たちで決めなければなりません。
その上、書類も戸籍謄本や各種協議書など複雑な物が必要になるため、仲介業者が入ってくれる売買よりも手続きのハードルは高いと言えるでしょう。
特に登記申請書に関しては、複数人で共有している場合の記載方法がやや難しくなります。
手続きする不動産の数
基本的には不動産の数が増えればその分手続きの手間も増えてしまいます。
不動産が1つだけなら何とか自分で名義変更できるかもしれません。
しかし、経験したことのないことを複数も行うというのはなかなか厳しいものがあるでしょう。
手続きが複雑になればそれだけミスの可能性も増えるので、そのような場合は無理せず専門家に依頼した方が良いかもしれません。
ただし複数の不動産がある場合でも、それぞれの所有権が家族などの親しい間柄の人物のみの場合は、仮に手続きに手間取っても親しい間柄ゆえそこまで大きな問題になることはないと推測されます。
そのような場合は、費用を節約する意味でもサポートをしてもらいつつ自分で手続きしてみても良いでしょう。
手続内容
もしも手続き内容がシンプルな名義変更だけであれば、自力で行うことも不可能ではありません。
名義変更以外の手続きも必要になる
しかし場合によっては名義変更以外の手続きも必要になることがあります。
例えば「抵当権抹消登記」「不動産の処分利益発生に伴う確定申告」「文筆登記」などの手続きです。
これらの手続きは専門知識が無いとなかなか難しく、ミスをしてしまう可能性が高くなります。
法務局は平日のみ開いている
特に法務局の窓口業務は平日しか開いていないため、一度失敗してしまうとまた平日休みを取らなければなりません。
平日日中に働く方が多いことを考えるとそれはなかなか厳しいでしょう。
そうしたリスクを避けるためにも、複雑な手続きが必要になりそうなら専門家に依頼するのもオススメです。
費用
「名義変更にかかる費用をなるべく削りたい」という方なら確実に自分で手続きすることをオススメします。
名義変更には「登録免許税」「必要書類を揃えるための費用」などが必ずかかるため、こうしたものは削減できません。
しかし自分で手続きすることで、専門家への依頼費用など削ることができます。
もちろん自分で手続きするとミスをする可能性も上がるので、あまりにも時間に余裕がない場合は、費用を削りたい気持ちを抑えつつ最初から専門家に依頼した方が良いでしょう。
(相続の場合は)相続人の数
相続で名義変更を行う場合は、相続人の人数が多く複雑であるのであれば、専門家に依頼した方がよいでしょう。自分で名義変更を行ってしまうと、後々相続人たちとのトラブルにもなりかねません。
家(不動産)の名義変更を行わないデメリット
このように、名義変更に関しては様々な手続きや書類、費用が必要になります。
こういった手間を考えると「名義変更をしたくない」と考える方もいるでしょう。
しかし、名義変更をしないことで様々な弊害が生まれます。将来的に家(不動産)を自分の思うように運用したいとなった時の妨げとなることもあるので、名義変更はきちんと行うべきです。
では具体的に、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
所有権を第三者に対して主張できない
引き継いだ家(不動産)を売却したり賃貸に出したりすることができるのは、所有権を持つ所有者のみ。
そしてその「所有権を持っている」と認定されるためには名義人であることが必須です。
そのため「相続したのだから自分の所有物である」とどれだけ主張しても、名義変更が行われていなければそれは意味の無い主張になります。
売却や処分も行えない
法的に所有者として認められていなければ、例えば家を担保にしたローンを組めないですし、売却や処分などを行うこともできません。
さらに名義をそのままにしておくと、他の相続人にも家(不動産)に関する権利が残っているということなので、場合によっては「借金の返済が難しいため勝手に差し押さえの対象とした」となる可能性もあります。
いくら家族間でもこうしたトラブルが絶対に起きないとは限りません。
そのため、いざという時に外部の人間に所有権を主張できるように必ず名義変更をしておきましょう。
相続トラブル
もし「被相続人であるAから家(不動産)を相続したBが、A→Bへの名義変更をしないまま亡くなってしまった」というようなことが発生した場合、大きなトラブルとなります。
なぜならこの場合では、本来Bにとっての相続人についてだけ決めれば済むところを、Aにとっての相続人まで遡る必要があるからです。
人数が増えるほど遺産分割協議がまとまりにくくなりますし、本来相続を受けられるBにとっての相続人の手にスムーズに引き継がれなくなります。
こうしたややこしい事態を防ぐためにも、名義変更は必ず行っておきましょう。
相続については下記記事もご参考ください。
・相続弁護士の選び方を完全解説!依頼の流れ・費用・期間を紹介!
・相続権を完全解説!優先順位・割合を紹介!
・死亡退職金を完全解説!相続税の課税対象になる?
名義人は固定資産税の支払い義務がある
不動産を持っている場合、毎年固定資産税を支払う必要があります。この固定資産税の支払いは基本的には不動産の名義人が支払う必要があります。その為、所有者で無いにも関わらず名義変更を行わないと固定資産税の支払い義務が発生する可能性があるのです。
相続についてのご相談は『やさしい相続』でも無料で承っていますので、お気軽にご連絡下さい。24時間365日無料で専門オペレーターが対応致します。
家(不動産)の名義変更を行う際の注意点
それでは、これまでご紹介した以外にも家(不動産)の名義変更に関する注意点としてはどのようなものがあるのでしょうか?
名義変更をする理由によって期限が異なる
名義変更自体に手続き期限はなく、しなかったからといって特に罰則があるわけでもありません。
ただしそれを差し引いても「この時期までには済ませておいた方が良い」という目安があります。その目安とは以下の通りです。
◎相続の場合
目安は「所有者が亡くなってから1年以内」です。相続人の中には、相続した家(不動産)を売却して利益を生みたいと考えている方もいるでしょう。
実は、相続してから3年10ヶ月以内に売却することで「取得加算の特例」を利用できる場合があります。
これは、定められた期間内に譲渡や売却などを行うことで減税措置を受けられるというもの。
これを適用することは利益を増やすことに繋がるため、1年以内に名義変更を行い売却のために十分な時間を確保すると良いでしょう。
◎生前贈与の場合
目安は「所有者が亡くなるまでに変更する」です。もし所有者が亡くなってから名義変更を行うと、それは贈与ではなく相続になります。
そうなると受けられる控除なども変わるため場合によっては損をすることもあるでしょう。
そのため、生前贈与で控除などを考えている方は早めに名義変更しておくべきです。
また、ただ単純に「亡くなるまでに変更できれば良い」というわけでもありません。
存命中であっても、認知症などを患ってしまい正常な判断が困難になれば手続き自体が難しくなります。
そのため、所有者が健康なうちに名義変更は済ませておきましょう。
◎売買の場合
目安は「家(不動産)の受け渡し日当日」です。
当日に買主が支払いを済ませることで必要な書類が揃うため、基本的にはそのまま名義変更を行い完了となります。
◎財産分与の場合
目安は「(離婚の場合は)離婚してから2年以内」です。そもそも離婚による財産分与の期限は2年間となります。
この期限内であれば財産分与の請求ができるため、これが過ぎるまでに名義変更は済ませておきましょう。
もちろん期限内であっても時間が経つほど連絡は取りにくくなるため、離婚してお互い確実に連絡が取れている状態の時に手続きしておくのがオススメです。
なお、もし正式に離婚が成立する前に名義変更してしまうと、財産分与ではなく贈与とみなされてしまい贈与税がかかります。
財産分与であればそうした税金はかからないため、その点も注意しておきましょう。
家の名義変更は2つ行う場合がある
場合によっては、名義変更に関する申請を「2回」行うケースもあります。
それはどのようなケースかというと、引き継いだものが「土地付きの家(不動産)」であるときです。
土地付きの家(不動産)に関しては、「土地」と「家」それぞれで登記が行われています。そのため名義変更もそれぞれで手続きを行う必要があるのです。
ただし「土地→息子・家→娘」のような形で引き継いだ場合は、それぞれ通常通り1回の名義変更で問題ありません。
2回手続きするのはあくまでも両方引き継いだ場合のみです。
遠方の役所に行く必要がある
先述の通り、名義変更の手続き申請は「名義変更の対象となる家(不動産)がある地域を管轄している法務局」で行います。
そのため必ず地元で申請できるとも限らず、遠出をしなくてはいけないケースもあるのです。
法務局は平日しか開いていないため、そのためにわざわざ仕事を休むというのは手間ですよね。
郵送では修正に時間がかかる可能性がある
一応郵送でも申請を受け付けていますが、もし不備があってもその場ですぐに指摘してもらうことができません。
そのため結果的に窓口へ行くよりも時間がかかってしまうということも想定されます。
戸籍謄本を用意する必要もある
さらに場合によっては戸籍謄本も取得する必要もあるのですが、これは「本籍地にある役所」でしか手に入りません。
特に被相続人の戸籍謄本に関しては出生から死亡までを全て揃える必要があるため、本籍地をいくつも調べなくてはいけない可能性もあります。
このように、遠方の役所とやりとりする場合はかなり時間がかかってしまうでしょう。
家(不動産)の名義変更についてのまとめ
以上が家(不動産)の名義変更に関する基礎知識や注意点などについてです。最後に改めて今回の内容をまとめて確認しておきましょう。
◎「家(不動産)の名義変更」とは、家(不動産)の現在の名義人を新しい名義人に変更する行為のこと。
「所有権移転登記」とも呼ばれている。家(不動産)を正式に自分の所有物とするためには、必ずこの名義人を自分の名前にしなければならない。
◎家(不動産)の名義変更が必要になるタイミングは、基本的には「遺産相続」「生前贈与」「財産分与」「不動産売買」という4つのケース。
・遺産相続
家(不動産)の所有者が亡くなり遺産相続が発生したタイミングで名義変更を行う。
・生前贈与
贈与者が存命の間に家(不動産)を引き継ぐ「生前贈与」を行う際に名義変更が必要。
基本的に贈与を行う場合は、「現在の名義人」「新しい名義人」が共同で名義変更をする。
基礎控除や配偶者控除も活用しながら税金を上手に抑えることが大切である。
・財産分与
離婚などの様々な事情により家(不動産)を夫婦のうちどちらかが所有する場合に名義変更が必要。
名義変更パターンには「夫→妻への名義変更」「共有名義→夫のみへの名義変更」などがある。
・不動産売買
家(不動産)の売買をした場合は、売主から買主への名義変更が必要。売買による名義変更は決済日当日に行うのが一般的である。
◎具体的に「家(不動産)の名義変更の流れ」及び「必要な期間」については以下の通り。
まずは準備を始める前に、家(不動産)の名義変更を行う法務局の場所を確認しておく。
必ず「対象の家(不動産)が所在する地域を管理している法務局」で申請を行う必要があるため注意。
申請方法としては「窓口」「郵送」「オンライン」の3種類がある。
法務局を確認したら次に必要書類を用意する。この必要書類は、名義変更のケースごとに多少異なるのでその都度しっかり確認しておく。
必要書類を揃えて相続や売買などの手続きも完了したら、それらを法務局に提出する。
窓口申請の場合は、法務局の運営時間である「平日8時30分〜17時15分」の間で行う。
特に書類の不備等がなければ、上記の手続きは1週間〜10日程度で完了する。
◎名義変更手続きで必要な書類は、「相続」「売買」「生前贈与」「財産分与」というケースごとで異なる。
基本的には、現在の名義人と新しい名義人がどちらも存命であるケースでは共同で書類を準備し、手続きを行う。
◎家(不動産)の名義変更には各種税金が必要である。「登録免許税」はどのようなケースであってもかかるが税率は異なる。
他にもケースごとの税金では様々な控除があるため、それらを上手に活用することで税金を抑えることが大切。
◎税金以外にも名義変更の際に必要となる費用がある。それは「所有物件」「賃貸物件」ごとに異なる。
◎名義変更手続きを専門家に依頼する場合にも費用がかかる。その目安の費用は具体的に以下の通り。
・司法書士
依頼にかかる費用は「3万〜15万円程度」であることが多い。パック料金の場合もある。
対応できる業務範囲は「家(不動産)の登記全体に関すること」である。
・土地家屋調査士
土地家屋調査士への依頼費用は、代行してほしいことの内容によって大きく差が出る。
それぞれ「境界確定測量→25万〜60万円程度」「分筆登記申請・土地地積構成登記申請→最低でも40万円程度」「合筆登記申請→7万円〜程度」「現況測量→10万〜20万円程度」である。
土地家屋調査士に依頼できるのは、基本的に「家(不動産)の表示に関する登記」のみ。
・弁護士
弁護士への依頼費用は、依頼する内容や家(不動産)で発生する利益等によって異なる。
具体的に「着手金→10万円〜程度」「賃料請求→40万円〜程度」「家(不動産)の明け渡し請求→60万円〜程度」である。弁護士なので法律問題全般の相談が可能。
・税理士
「確定申告代行のみ→3万〜10万円程度」「登記に関する全ての手続き→50万円〜程度」である。
税理士であれば、確定申告に関する相談や各種税金の計算などを安心して任せることができる。
◎「名義変更を専門家に依頼するかどうかの基準」については、以下の4つの観点から判断すると良い。
・名義変更の理由
名義変更の理由が「相続・売買・生前贈与・財産分与」かによって、専門家に依頼するかどうかを決める。
なお、「売買」であれば仲介業者のプランの中に「名義変更手続き」が含まれていることもあるため、その場合はわざわざ自分で行う必要はない。
・手続きする不動産の数
経験したことのないことを複数も行うというのはなかなか厳しいため、そのような場合は無理せず専門家に依頼した方が良い。
・手続内容
手続き内容がシンプルな名義変更だけであれば、自力で行うことも不可能ではない。
・費用
「名義変更にかかる費用をなるべく削りたい」という場合は確実に自分で手続きした方が良い。
◎名義変更をしないことによるデメリットは以下の通りである。
・所有権を第三者に対して主張できない
引き継いだ家(不動産)を売却したり賃貸に出したりすることができるのは、所有権を持つ所有者のみ。
そしてその「所有権を持っている」と認定されるためには名義人であることが必須である。
・相続トラブル
もし「被相続人であるAから家(不動産)を相続したBが、A→Bへの名義変更をしないまま亡くなってしまった」というようなことが発生した場合、大きなトラブルとなる。
なぜならこの場合では、本来相続を受けられるBにとっての相続人の手にスムーズに引き継がれなくなるため。
◎これまでご紹介した以外の「家(不動産)の名義変更に関する注意点」は以下の通りである。
・名義変更をする理由によって期限が異なる
名義変更自体に手続き期限はなく、しなかったからといって特に罰則があるわけでもない。
ただし「この時期までには済ませておいた方が良い」という目安はある。
「相続の場合→所有者が亡くなってから1年以内」
「生前贈与の場合→所有者が亡くなるまでに変更する」
「売買の場合→家(不動産)の受け渡し日当日」
「財産分与の場合→(離婚の場合は)離婚してから2年以内」
・家の名義変更は2つ行う場合がある
引き継いだものが「土地付きの家(不動産)」である場合、それぞれで名義変更を行わなくてはならないため「2回」の申請が必要。
・遠方の役所に行く必要がある
名義変更の手続き申請は「名義変更の対象となる家(不動産)がある地域を管轄している法務局」で行うため、必ず地元で申請できるとは限らない。
家(不動産)の名義変更は、自分の所有物であることを証明するための大変重要な手続きです。
確かに手間やコストを考えると面倒に感じるかもしれません。
しかし将来的なことを考えると、名義変更をしておかないことのリスク方が大きくなるでしょう。
いざという時に法的な問題が障壁とならないよう、手続きの流れや重要事項をしっかり確認しておきましょう。
【『やさしいお葬式』・『やさしい相続』では相続に特化した専門家をご紹介させて頂いております。いつでもご相談ください】
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール