相続問題は兄妹の不仲と法律への理解不足が原因で起こる。スムーズな相続には法定相続人全員の協力が必要。法定相続人がもつ権利を理解し、被相続人の生前から遺産について認識を合わせておくことが大切。いざというときにはプロの力を借りる。
「絶縁した兄妹と連絡できず、相続手続きを進められない!」
「長男だから遺産を多く欲しいと主張されて困っている…」
「相続で確実に揉めそう…」
血のつながった家族でさえ引き裂いてしまう複雑な相続問題。
遺産というお金が絡む以上、相続手続きはスムーズに進めるのが困難なものとして知られています。なかには相続分に納得がいかず、家族内で裁判沙汰になったケースも珍しくありません。
法律のスペシャリストである司法書士資格を有し、当サイトの監修者が経験に基づく事例をまとめたところ、相続問題の多くは人間関係と法律の理解不足が原因で起こるということがわかりました。
《人間関係が原因のもの》
・連絡が取れず遺産分割が進められない
・お互いに感情的になって話し合いができない
《法律の理解不足が原因のもの》
・勝手に遺品整理を始めてしまう
・遺言書の内容は絶対だと思ってしまう
・長男の相続額が一番多いと思ってしまう
・血縁関係のない人は相続できないと思ってしまう
・後妻に実家の居住権はないと思ってしまう
つまり、相続問題は、事前に親戚などの人間関係を修復し、相続関連の法律の要点を押さえておくことで予防できるといえます。
そこで本記事では、相続で起きがちなトラブルの事例から解決策、相続問題で役立つ法的知識までをギュッとまとめてご紹介いたします!
ただでさえ煩雑な手続きが多い相続。法的な知識をもとに事前対策をおこなうことで、無用なトラブルを防ぎ、スムーズな相続を実現させましょう。
今回は、法定相続人や公正証書遺言書など、相続に関する法定な知識についても詳しく説明してまいりますので、初めての相続の方も安心してお読みくださいね。
INDEX
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- まとめ
相続問題の2つの原因と事例7選
相続問題が起きる原因は主に、「人間関係」と「法律の理解不足」の2つに分けられます。
人間関係が悪いと、相続に関する手続きや連絡が滞りますし、相続関係の法理解がおろそかですと、無用な争いやいざこざを生んでしまうためです。
相続問題の2大原因である人間関係と法律の理解不足に関する事例を、よくある順番で確認していきましょう。
1.人間関係が原因
2.法律の理解不足が原因
具体的な事例をチェックしながら、自分の中の相続に対する認識をただしてみてくださいね。
人間関係が原因
過去に絶縁している、どこに住んでいるかもわからない…兄妹とこんな関係にある方は要注意です。
相続が発生すると、連絡をとるまでと連絡が取れてからの2度いざこざが起きやすくなります。
【具体的な事例】
・連絡が取れず遺産分割が進められない
・お互いに感情的になって話し合いができない
連絡が取れず遺産分割が進められない
遺言書がない場合、遺産の分割は遺産分割協議※で決められます。
※遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きのこと。法定相続人全員の出席が必要で、欠席する場合には別途法的な手続きが必要。
遺産分割協議は法定相続人全員が出席する必要がありますので、1人でも連絡が取れない相続人がいると、相続手続きが止まってしまいます。
戸籍をもとに住所を調べ、手紙を送ることも出来ますが、個人でおこなうのは時間的にも精神的にもきついですよね。
そんなときは、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士が依頼者に代わってその相続人と交渉したり、家庭裁判所に遺産分割調停・審判を申し立てたり、不在者財産管理人、失踪宣告の申し立てを行ったりすることもできます。
詳しくは「相続に関して困ったとき!3つの相談先」をご覧ください。
また、遺産分割協議書の書き方と注意点を押さえ、スムーズに処理したいという方は「 遺産分割協議書作成について7つのポイント&項目別の書き方と注意点」をご覧ください。
お互いに感情的になって話し合いができない
いざ話し合いの場に全法定相続人が揃っても、お互いに感情的になって話し合いが進まないということがあります。
原因は、遺産に対する思い入れや、被相続人の生前にどれだけ施しを受けたかによることが多いです。
例えば、遺産のひとつとして自宅がある場合、「思い出が詰まった自宅は売却したくない」という人もいれば、「活用できない不動産としての自宅は売却すべき」という人もいますよね。
兄妹であれば、兄が家を建てるときに頭金数千万を援助してもらっていたのに対し、妹は一銭も援助を受けていなかったとすれば、取り分が平等ではないという話になりそうです。
解決策として、法定相続人の相続分は、民法第900条に定められていることが挙げられます。
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1.子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
2.配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
3.配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
4.子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
引用元: Wikibooks|民法第900条
相続時には法定相続人の過去事情などはよほどの例外(犯罪など)がない限り加味されません。
詳しくは「相続時に法定相続人の背景は考慮されないのか?」をご覧ください。
法律の理解不足が原因
法律の理解不足が相続問題になることはよくあります。
「知らなかった」では済まされない事例が多くありますので、スムーズな相続にするためにも以下5点を確認しておきましょう。
【具体的な事例】
・勝手に遺品整理を始めてしまい相続が開始されてしまった
・遺言書の内容は絶対だと思ってしまう
・長男の相続額が一番多いと思ってしまう
・血縁関係のない人は相続できないと思ってしまう
・再婚相手に実家の居住権はないと思ってしまう
勝手に遺品整理を始めてしまい相続が開始されてしまった
勝手に遺品整理を始めてしまうと、相続放棄することができません。遺品整理をすることは、遺産に手を付けることになり、相続を承認したとみなされるためです。
遺産に手を付けるという意味では、下記のような行為も相続承認と取られますので注意してください。
・遺産を自分の口座に移し替える
・相続放棄できる期限の3カ月を過ぎてしまった場合
「相続放棄したかったのに、知らない間に相続していた…」と後悔をしないための知識を知りたい方は「 【相続放棄の手続きと費用】知っておくべき7つのポイントと注意点!」をご覧ください。
遺言書の内容は絶対だと思ってしまう
遺言書の内容は、場合によっては絶対ではありません。なぜならば、遺言書には2つの穴があるためです。
・遺言書としての形式を満たしているか?
・法定相続人の遺留分を侵害していないか?
遺言書の有効性を示すのが、形式を満たしているかどうかです。遺言書の種類にはいくつかありますが、公正証書遺言のみが有効性を保証されています。
それ以外の遺言書は、家庭裁判所による検認作業を経て初めて有効だとされるので注意してください。検認の結果、無効になることもあり得ます。
検認が必要 | 検認は不要 |
・自筆証書遺言
・秘密証書遺言 |
・公正証書遺言 |
遺言書の内容が確実かどうか知りたい、正しい形式で遺言書をしたためたいと言う方は「 遺言書を無効にしない!検認の流れとスムーズな相続のコツを徹底解説」をご覧ください。
また、法定相続人には一定割合の財産を確保できる「遺留分」という権利があります。
遺言書内容が遺留分を侵害していた場合、相続人は遺留分を他の相続人に請求することができます。
遺留分が請求できる条件を知っておき、相続で損をしたくない方は「 遺留分を完全解説!計算方法・侵害請求権の行使方法を紹介!」の記事もご参考ください。
長男の相続額が一番多いと思ってしまう
相続で長男、長女の相続額が一番多くなることはありません。※
※ただし、遺言書で指定された場合は従う必要があります。法定相続人は自分の遺留分が侵害されていないか確認し、されていた場合は相続人に遺留分を請求することが可能です。
かつては「家督相続(かとくそうぞく)」という法律で長男長女が有利になっていた相続ですが、昭和22年に廃止されているためです。
法定相続人全員が平等に相続の権利を持つ今、相続分は親等で決められるようになりました。
長男の相続について正しい知識を得て、損をしないようにしたい方は 遺産相続で長男は「優遇されない」!トラブルを避ける為の3つの知識をご覧ください。
血縁関係のない人は相続できないと思ってしまう
相続で重視されるのは、血縁ではなく戸籍上、法律上の関係です。
例えば、血は繋がっていないが養子縁組した子には相続権が発生します。養子にした子は実子と同じ扱いを受けると民法に規定されているためです。
被相続人の子は、相続人となる。
引用元: WIkibooks|民法第887条
一方で、どれだけ長く連れ添っていたとしても、法的なつながりのない内縁の妻、夫には相続権はありません。
内縁の妻や夫に少しでも遺産を残してやりたい方は、 内縁の妻に相続権はない!トラブルも損もナシで遺産分与する方法3つをご覧くださいね。
再婚相手に実家の居住権はないと思ってしまう
被相続人が再婚しており、被相続人の自宅に一緒に住んでいた場合、再婚相手には実家の居住権(配偶者居住権)があります。
ただし、配偶者居住権は賃貸には適用できなかったり、配偶者以外と同居している場合には適用できないなどの例外がありますので、注意してください。
【相続問題の2つの解決法】トラブルを防ぐためには「理解」と「準備」が大切
相続問題を解決したり、トラブルを防いだりするためには、理解と準備が大切です。手順に沿って見ていきましょう。
1.法律と相続の関係を理解する
2.トラブルが予想されるなら早めに専門家へ相談
法律と相続の関係を理解する
相続問題を予防、対処するのに欠かせないのが法律と相続の関係を押さえておくことです。
民法ベースで法定相続人と遺言書の権利を理解することで、相続時の損や余計なトラブルを避けることができますよ。
法定相続人とは故人の財産を相続できる人のこと
法定相続人とは、民法で定められた故人の財産を相続できる人を指し、相続できるかどうか、いくら相続できるのかは基本的に故人との血縁関係によって変わります。
民法第886条から 民法第895条までに、相続人の範囲から優先順位、受け取れる割合まで、民法で定められているのです。
法定相続人になれるのは、下記4つに該当する血縁者のみです。
1.故人の配偶者
2.第1順位(子どもおよび代襲相続人)
3.第2順位(父母や祖父母などの直系尊属)
4.第3順位(兄弟姉妹および代襲相続人)
代襲相続(だいしゅうそうぞくにん)とは、相続人が被相続人よりも早く亡くなった場合、もしくは相続権を喪失した場合に、その子どもなどが代わりに相続権を得ることを指します。
故人から見たとき、法定相続人ではないひ孫などが代襲相続の対象になることもあります。
親より子が先に亡くなったときなど、相続人が大きく変わりそうなときに役立つ代襲相続の知識を得ておきたい方は、「 代襲相続人を完全解説!相続割合・権利・範囲を紹介!」をご覧ください。
遺言書は法定相続人に対して優位である
実は、法定相続分よりも故人の遺言書の方が優先されます。
これは民法964条で規定されており、遺言書にある故人の意志が尊重されるといえますね。
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。
引用元: Wikibooks|民法第964条
さらに詳しく言いますと、故人の遺言書の次に優先されるのは遺産分割協議、次に法定相続分となります。
つまり、法定相続人とはいえ、有効な遺言書により相続を指定されていたり、遺言書がなくても遺産分割協議で相続配分を決められた場合にはそれらに従う必要があるといえますね。
遺言書に書かれた場合も、最低限の取り分である遺留分は保証されますので、自分の取り分はしっかり請求するようにしてください。
法定相続人に遺留分を請求される前にできる対策をおこない、安心して相続を迎えたいという方は 遺言書より遺留分が優先!侵害額請求をされる前にできる5つの対策法をご覧ください。
トラブルが予想されるなら早めに専門家へ相談
「何度話し合っても相続の取り分を決められない…」「絶縁した兄妹がいるが、うまく話し合える自信がない…」
このような相続トラブルが起きてしまった、または予想される状態であった場合、早めに専門家に相談するのがよいでしょう。
第三者である専門家を入れることで、話し合いがスムーズで納得できる、冷静に話し合える、プロの視点から解決法や折衷案を提案してもらえるなど、さまざまなメリットが挙げられます。
相続問題には取り返しのつかないことが多くあり、相続人が揃わないために相続税控除を受けられないなどの金銭的なダメージとなって返ってくることもあり得ます。
手遅れになる前に、今打てる予防策、対策を知り、相続で損はしないようにしたいという方は「相続に関して困ったとき!3つの相談先」をご覧ください。
生前にできる!相続問題を未然に防ぐための対策4つ
相続問題を未然に防ぐためには、4つの対策があります。手早く対処できる順にご紹介いたしますね。
1.遺言書を書いてもらう
2.家族信託を利用する
3.後見人制度を活用する
4.被相続人の生前に親戚関係を修復しておく
遺言書を書いてもらう
最も取り組みやすく、トラブルを防ぎながらの相続ができるのは『遺言書を書くこと』です。
なぜなら、法定相続分※よりも故人の遺言書の方が優先されるためです。
※法定相続人とは、民法で定められた故人の財産を相続できる人を指し、相続できるかどうか、いくら相続できるのか(法定相続分)は基本的に故人との血縁関係によって変わります。
法定相続分よりも故人の遺言書の方が優先されることは、民法964条で規定されています。
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。
引用元: Wikibooks|民法第964条
つまり、遺言書にある故人の意志が最優先されるということ。
遺言書で「財産のこれだけを誰誰に相続させる」旨を明記しておけば、遺産の取り分でもめることはないのです。
ただし、遺言書で指定したとしても遺留分を渡す必要はありますので、法定相続人の遺留分を侵害しないように注意してくださいね。
正しい書式にのっとった有効な遺言書の書き方を知りたい方は、「 遺言書の書き方を完全解説!効力・有効な遺言書の書き方を紹介!」をご覧ください。
公正証書遺言書ならば検認不要で相続できる
遺言書の検認作業をなくし、スムーズな相続にしたい方は遺言書の中でも公正証書遺言書をつくるのがオススメ。
なぜなら、公正証書遺言書は公的機関による確認と元本保管がおこなわれることで「有効な遺言書である保証」があるからです。
自筆証書遺言書など、その他の遺言書は場合によって無効になる可能性があります。
遺族に遺言書の確認で手間を取らせたくない、遺言書を確実に保管しておきたいという方は「 専門知識不要!自分で作れる公正証書遺言作成の流れと費用・必要書類 」をご覧ください。
家族信託を利用する
家族信託とは、家族に財産管理を一任する制度のこと。財産には、不動産や預貯金、土地などあらゆるものが含まれます。
家族信託を始める際には、誰が遺産を承継するか決めるのが一般的です。つまり、被相続人が生きている間に相続問題に取り掛かることができるということですね。
家族信託を利用することで、有効な遺言書や遺産分割協議を使わなくても遺産を整理することができますよ。
成年後見人制度との違いは、家庭裁判所への財産運用報告がない点にあります。
後見人制度を活用する
後見人制度は、判断能力が低下しても、生活に不利益がでないように援助してもらうための制度。
被相続人の認知能力があるときに選ぶ任意後見人と、被相続人の認知能力が低下し、裁判所が指定した法定後見人の2種類があります。
後見人には月額1~5万円程度の報酬を支払い、後見人は被相続人の財産管理について都度報告の必要があります。
家族信託との違いは、この報酬の有無と報告義務の有無、そして認知機能が低下した後にも使える(法定後見人制度のみ)というところにありますね。
成年後見人の制度について深く知り、トラブルを避けて活用したい方は 成年後見人の役割を解説!手続きと費用・メリットとデメリットも紹介をご覧ください。
被相続人の生前に親戚関係を修復しておく
最もお金がかからず、相続問題対策として有効といえるのが被相続人の生前に親戚関係を修復しておくことです。
連絡が取れない兄妹や、絶縁状態の兄妹、お金の話なんてしたこともない親戚同士…
被相続人の生前に話し合い、一度仲を取り持っておくだけで、いざ相続が始まったときのいざこざを防ぐことができる可能性があります。
相続問題でよくある質問5つ
相続問題に関する質問を、よくある順に6つご紹介いたします。
1.相続税の基本控除額を受けられないまま申告期限がくるとどうなるのか?
2.相続時に法定相続人の背景は考慮されないのか?
3.父親の愛人の子に相続権はあるのか?
4.内縁の妻、夫に相続権はあるのか?
5.被相続人を介護していたが遺産はもらえないのか?
相続税の基本控除額を受けられないまま申告期限がくるとどうなるのか?
相続する遺産には、相続税がかかります。相続人の頭数ぶんだけ控除されるのですが、相続税の基本控除額を受けられないまま申告期限がくると、相続税を控除なしで支払うことになります。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています。引用元: 国税庁|No.4205 相続税の申告と納税
相続税の基礎控除の計算式は以下の通り。
3,000万円+600万円×法定相続人※の数
※法定相続人とは、民法で定められた故人の財産を相続できる人のこと。相続できるかどうか、いくら相続できるのかは基本的に故人との血縁関係によって変わります。
例えば、法定相続人の数が3人の場合は3,000万円+600万円×3人で4,800万円となりますね。
ここでもし、法定相続人が全員揃わない場合、基礎控除できる1,800万円分(600万円×3人)を使えません。
基礎控除できるぶん法定相続人が多い方が、税金を支払う可能性が低くなるので、相続人が揃わないと相続税でも損をしてしまうといえますね。
相続時に法定相続人の背景は考慮されないのか?
相続時に法定相続人の背景は考慮されません。法律に従って分配されます。
しいて言えば、遺産分割協議にてそれぞれの住まいや家庭事情を汲んだ上で相続することはできますが、決定には相続人全員の同意が必要です。
例えば、兄が亡くなった父の生活や介護をすべて引き受け、弟は何もしなかった場合でも、遺言書が残されていなければ法定相続分に従って遺産を分配する必要があると解釈できますね。
父親の愛人の子に相続権はあるのか?
父親の愛人の子に相続権はありません。相続権があるのは法的なつながりのある人であり、血縁関係ではないからです。
ただし、父親が愛人の子を認知したり、養子縁組すれば相続させることが可能ですので注意してください。
連れ子や愛人の子に遺産を分け与えてやりたいという方は、 連れ子に相続させる方法3つ!実子と差をつける・つけないコツを解説をご覧ください。
内縁の妻、夫に相続権はあるのか?
内縁の妻、夫に相続権はありません。相続権があるのは法的なつながりのある人であり、血縁関係ではないからです。
内縁の妻や夫に遺産をゆずるには、生前贈与や遺言書などを活用する必要があります。詳しくは 内縁の妻に相続権はない!トラブルも損もナシで遺産分与する方法3つをご覧ください。
被相続人を介護していたが遺産はもらえないのか?
被相続人を介護していた場合、特別寄与料を請求できる可能性があります。
特別寄与料は、法定相続人以外でも請求することができ、請求できる人については、民法1050条で下記のように定められています。
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
引用元: Wikibooks|民法第1050条
親族とは、 民法725条で以下3つの範囲に当てはまる人を指すと決められています。
・6親等内の血族
・配偶者
・3親等内の姻族
例えば、長男の親の介護に尽力した長男の嫁は、法定相続人ではありませんが特別寄与料を請求できる人になりますね。
対して、近所に住んでいるだけの人や、昔から付き合いのあった知人などは、どれだけ介護に尽力していても特別寄与料は請求できませんので注意してください。
また、特別寄与料を請求できるのは期待される以上に貢献した特別な寄与をおこなった方のみです。
介護をする代わりに、親の家に家賃なしで住まわせてもらっていた…などでは受け取ることはできません。
「仕事を辞めて必死に介護した」など、ある程度の貢献をおこない、かつ領収書や介護日誌などで証拠として残す必要があるので注意してください。
相続に関して困ったとき!3つの相談先
「ひとりで相続手続きを進めるのは無理!」
こんな方は、相続に関する手続きをプロに相談・解決してもらうことをおすすめします。「緊急度の高い順」にご紹介しています。相談を上手に活用して、検認作業をスムーズに進めていきましょう。
1.弁護士 | 2.行政書士 | |
費用 |
25万円~ |
15万円~ |
メリット | ・各種書類の準備や申し立て作業など、相続に必要な一切の作業をまるごと依頼できる
・相続のアドバイスもしてもらえる |
・戸籍謄本などの書類を取り寄せてもらえる
・弁護士よりも依頼費用が安い |
デメリット | ・費用が高額になりやすい | ・相続に関する争いには対応できない |
いきなり、弁護士や行政書士に依頼するのは、ハードルが高い…という方は、
で、一度相談してみるのがおすすめです。
1.弁護士(相場:25万円~)
弁護士へ相続に関する相談をする場合は、以下の手順で依頼しましょう。
1.法律相談事務所へ遺産争いの内容を相談する
2.費用について弁護士から説明を受ける
3.着手金の支払い後、弁護活動を開始してもらう
必要に応じて、弁護士と都度打ち合わせが入る場合もあります。
また、弁護士へ遺産争いに関する相談をする場合は、以下の費用がかかることを覚えておきましょう。
費用の種類 | 概要 | 費用相場 |
相談料 | 遺産争いの相談にかかる費用 | 無料、もしくは約5,000円~(30分) |
着手金 | 弁護士が遺産分割や調停に着手した場合の費用 | 20~30万円 |
報酬金 | 遺産争いが解決した場合に発生する費用 | 経済的利益や着手金相場によって変動 |
実費 | 印紙代や切手代、交通費など | 1~10万円 |
日当 | 出張費用 | 約5万円 |
参考: 「相続会議」朝日新聞社
2.行政書士(相場:15万円~)
行政書士へ相続に関する相談をすると、弁護士に依頼するよりも比較的安く済ませることが可能です。
金額は15万円程度としましたが、おこなう手続きの複雑さや処理する案件の数、相続人の数によって変動します。
行政書士の中には、サービスごとに料金表を設けているところや、パック料金で一律の料金を定めているところがありますので、依頼する内容の複雑さにより使い分けましょう。
3.無料相談を利用して専門家を紹介してもらう
相続に関するお悩みに応える、 日本司法支援センター(法テラス)がおすすめです。
日本司法支援センター(法テラス)は国が設立した法的トラブルの総合解決所です。誰でも無料で相談でき、適切な支援先を紹介してもらうことができますよ。
『 やさしい相続』でも、24時間365日無料相談で承っています。電話でもメールでも行えますのでお気軽にご連絡下さい。しつこい勧誘等も行いません。
大切なことだからこそ、丁寧に・確実に進めていきましょう。
まとめ
今回は、相続問題の原因の深堀りと解決のための対策を具体例付きで解説してきました。
相続問題の多くは人間関係と法律の理解不足が原因で起こります。具体的に言えば、下記農追うな原因が考えられますね。
《人間関係が原因のもの》
・連絡が取れず遺産分割が進められない
・お互いに感情的になって話し合いができない
《法律の理解不足が原因のもの》
・勝手に遺品整理を始めてしまう
・遺言書の内容は絶対だと思ってしまう
・長男の相続額が一番多いと思ってしまう
・血縁関係のない人は相続できないと思ってしまう
・後妻に実家の居住権はないと思ってしまう
被相続人側でできる相続問題対策としては、主に以下4つが挙げられます。
1.遺言書を書いてもらう
2.家族信託を利用する
3.後見人制度を活用する
4.被相続人の生前に親戚関係を修復しておく
なかでも遺言書を書いておくことで、相続人間で相続割合を決める必要がほぼ無くなり、トラブルの種をなくすことが可能です。
また、被相続人の名を使い、生前に親戚一同を集めて遺産について話し合う機会を設けるのもよいでしょう。
相続トラブルが予想されるなら、弁護士や司法書士など相続のプロへ早めに専門家へ相談するのがおすすめです。相続で起こりがちな、取り返しのつかないミスを防ぐことができますよ。
この記事があなたにとって後悔のない相続に役立つよう祈っております。
【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール