「無縁仏」とは葬儀を行うべき人がいない故人を指し、「無縁墓」は管理する人が誰もいなくなったお墓のことです。どちらも、対応は行政に委ねられ多くの場合、まとめて埋葬する「合祀(ごうし)」となります。本記事で原因や流れ、費用についてご紹介します。
本来であれば、故人の供養は親族によって行われることが理想です。しかし近年ではそれが難しく「無縁仏」となってしまうケースも少なくありません。今回はそんな無縁仏に関する基本的な知識や、どうすれば防げるのかなどについてご紹介します。
INDEX
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- 無縁仏についてのまとめ
無縁仏とは?
それではまず、無縁仏に関する基本的な内容を押さえておきましょう。
無縁仏とはなにか?
そもそも無縁仏とは、様々な事情によって誰にも葬儀を行ってもらえない故人や誰にも管理されないお墓のことです。現在、核家族の増加や少子高齢化の進行によって後継者がいない故人が増えているため、無縁仏の数も増加していると言われています。
無縁仏になる場合
ここからは、無縁仏になってしまう具体的な理由についてご紹介します。無縁仏になる理由としては以下の4パターンが主流です。
故人に親類がおらず、お墓を用意していなかった場合
まず、故人に親類が誰もいないと無縁仏になる可能性が高いです。
結婚をして配偶者や子孫がいれば故人の葬儀などは遺された親族で行いますが、そうでなければ誰も供養ができません。もちろんこのような状態になるとお墓も用意されていないことがほとんどです。
仮にそうした身寄りになる親類がいなくても、故人が生前に納骨先を準備していれば完全な無縁仏になることは避けられるでしょう。しかし実際はそこまでの手配をする方は少ないのが現状です。
また、もし身寄りがいたとしても長い間離れて暮らしていたため居場所が分からず、連絡も取れないまま結果的に無縁仏になることもあります。
親類に引き取りを拒否された場合
配偶者や子孫がいても、ご遺体や遺骨の受け取りを拒否されれば無縁仏となります。例えば、故人が生前に親類とトラブルになり絶縁していた場合は引き取り拒否をされるかもしれません。
また、絶縁状態とまではいかなくても親類との付き合いがほとんどないため引き取り拒否をされることもあります。お墓の管理や葬儀はそれなりの費用がかかるもの。生前ほとんど関わりが無かった故人に、それだけの手間や費用をかけたくはないと考える方がいても不思議ではないでしょう。
お墓の管理者がいなくなった場合
故人に子孫などがいても、その後継者がきちんとお墓を管理しないと無縁仏になります。
このお墓の管理とは、定期的なお参りや掃除、寺院主催の法要への参加などが該当します。本来であれば後継者がこうした管理をする必要があるのですが、近年では家族関係の希薄化などによりお墓が放置される場合もあるのです。この状態が続けば、仮に後継者がいたとしてもそれは無縁仏に該当します。
お墓の管理費用を滞納してしまった場合
お墓を維持にするためには、寺院や霊園に管理費用を支払う必要があります。基本的には年に1回の支払いなのでそこまで重い負担ではないことが多いです。しかし、それを滞納し続けてしまうと管理されなくなり無縁仏扱いされてしまいます。
管理費用を滞納する理由
滞納してしまう理由としては、
・距離が遠いので支払いが面倒
というものが多いです。また、寺院によっては管理費用の支払いに加えて行事に参加しなければいけないこともあります。そうした手間も管理費用を滞納してしまう要因かもしれません。
滞納した場合は1年間告知される
もちろん滞納したからといって即座に無縁仏扱いされてしまうわけではありません。滞納している方に対して1年以上その旨を告知する義務が法律で定められています。しかしそれでも対応しなければ無縁仏として処分されてしまうでしょう。
どうしても「お墓の管理をしたくない」ということであれば、墓じまいなどの正式な手続きを経た方が良いです。
お墓の管理費については「意外とお葬式以上にお金が掛かる「お墓に関する費用」」の記事もご参考ください。
無縁仏の葬儀について
無縁仏であってもそのまま放置するわけにもいきません。下記のような手続きを踏んで故人を供養します。
親類がいない場合や親類が引き取らない場合の葬儀や供養
以前は、身寄りがおらず(あるいは引き取り拒否のため)無縁仏となったご遺体は「投げ込み寺」という場所に持ち込まれるのが一般的でした。持ち込まれたご遺体は寺院によって供養されます。
しかし現在そうした場所はありません。引き取り手がいないご遺体は自治体によって引き取られ供養されることになります。
その際の葬儀等は税金によって行われるため、規模は必要最低限です。火葬を行なった後に、自治体から委託された寺院や霊園が他の故人の遺骨と一緒に「合葬」を行うことで完了します。
その後の遺骨の管理も、委託された寺院や霊園によって行われるのが一般的です。遺骨は無縁墓などのに「合祀」されます。
ごく稀に合祀した後に引き取り手が現れますが、合祀では他の遺骨と分けて埋葬することはほとんどしません。そのため引き取り手の方に遺骨が戻ることはないと考えておきましょう。
管理者がいない場合や料金滞納の場合
このような場合は、先述の通りまずは一定期間未払いである旨などを告知します。方法としては、官報に現在の状況を記載しお墓にも掲示札を立てることで通知をするのが一般的です。
それをした上で連絡が取れず滞納も解消されない場合は、管理者側の権限でお墓を整理します。埋葬されていた遺骨は先ほどと同じように合祀されることがほとんどですが、一部合祀をして残りは産業廃棄物として処分することも多いです。
無縁仏にかかる費用
それでは具体的に、無縁仏の供養に必要な費用についてご紹介します。
無縁仏の管理は「行政」が行う
まず先述の通り、無縁仏の管理は行政によって行われます。そして、そこから委託している寺院や霊園に移された上で供養されるというのが一般的です。
もちろん寺院や霊園に移っても本来管理費用を負担するべき者はいないため、この辺りは行政の負担となります。この管理費用は寺院や霊園にもよるので一概にはいえません。しかし、一般的には「年間で数千円台〜1万円前後」の幅になることが多いようです。
この金額だけを見ればそこまで大きな負担には見えませんよね。しかし近年では少子高齢化の影響もあり無縁仏が増加している傾向にあります。積み重なると大きな負担にはなるでしょう。
また、これだけでなく火葬や合同法要にかかる費用も必要です。こちらも一概にいくらくらいということは言えません。しかし一般的な火葬であれば、場所にもよりますが「5万〜10万円前後」かかると言われています。そのため、そのくらいの費用に法要の費用がプラスされるというように考えておきましょう。
葬儀や火葬についての費用は「葬式の金額は?一般的な葬儀費用の平均から、葬儀費用の内訳、費用を抑える工夫まで徹底解説!」「火葬(直葬)の費用を完全解説!相場・内訳・費用を抑える方法を紹介!」
無縁仏の殆どは合祀(ごうし)墓に移される
もちろんずっとお墓で管理しているわけではありません。いつまでも保管しておいても誰かが引き取りに来ることはないため、基本的には「合祀墓」に納められます。合祀墓とは、他の無縁仏の遺骨と一緒に埋葬するお墓のこと。費用はだいたい「10万〜30万円前後」になることが多いです。
合祀墓によって供養された遺骨が元々納められていたお墓があった場所には、墓石を撤去した上で新しいお墓が建立されます。
合祀については「合祀とは?納骨堂の違いからメリット・デメリットまで徹底解説!」の記事もご参考ください。
無縁仏にならないためにできること
日本では無縁仏になったとしても行政によってしっかりと供養はしてもらえます。しかしだからといって、無縁仏を増やして良いわけではありません。費用もかかりますし、お墓の管理者や遺骨の引き取り手を探す手間もかかってしまいます。
そうならないように、生前のうちから無縁仏にならないように対策を立てておくことが大切です。具体的には、以下のような方法を使うと良いでしょう。
生前に永代供養契約を据える
自分のお墓を管理する方や遺骨を引き取ってくれる方がいないということがあらかじめ分かっていれば「永代供養契約」を結ぶと良いでしょう。
永代供養とは?
永代供養とは、寺院や霊園によって自分のお墓を管理してもらえる契約のこと。この方法であれば引き取り手などを探す手間もありません、また、生前に支払いを済ませておけばその後の負担は基本的に無いので「子孫にお墓の管理の手間をかけたくない」という方にもぴったりです。
永代供養では、個別のお墓で供養してもらうこともできますし、他の遺骨と合同で供養してもらうこともできます。この方法に関しては寺院や霊園ごとに異なるので相談すると良いでしょう。ただし、いずれの場合でも時が経てば最終的に合祀墓という形で供養されます。
永代供養については下記の記事もご参考ください。
・墓じまいから永代供養にするまでの流れ、永代供養墓の種類・選び方から注意点まで徹底解説
親類と死後処理の契約をする
少しでも交流のある親類がいれば、生前の間に「死後事務委任契約」という死後処理の契約を結ぶのも効果的です。
死後事務委任契約とは?
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に発生する「葬儀・埋葬・行政上の手続き」などの事務的処理について委任しておく契約のこと。委任をする相手に特に制限はありません。そのためもし親類がいなければ、弁護士・行政書士・司法書士などの専門家に依頼すると良いでしょう。
死後事務委任契約の事務手続き
委任する事務手続きは、生前にあらかじめ取り決める必要があります。基本的には以下のような事務手続き等を委任することが多いです。
・死亡届の提出
・保険関係の喪失手続き
・遺品の整理や生活用品の処理
・退職手続き
・訃報の連絡
・住居の明け渡しに関する手続き
・免許証の返納
・納税手続き
・各種サービスの退会処理
・パソコンデータの消去
他にも必要に応じて様々な事務手続き等を依頼することがあります。細かいことは当人同士でしっかり話し合っておきましょう。
なお、この死後事務委任契約は遺言とは異なるので「財産分与に関すること」は決められません。無縁仏であれば財産分与をする相手がいない可能性も高いですが、もしあるとすれば別で遺言を作成しておきましょう。
墓じまいをして散骨してもらう
墓じまいとは、すでにあるお墓を撤去しその土地を管理者に返上する行為のこと。自分の代でお墓を受け継ぐ人がいないのであれば、思い切ってお墓を撤去してしまうのも一つの手でしょう。生前の間に墓じまいをしてしまえば、死後に無縁仏となり行政側に余計な費用負担をかける心配がありません。
また、墓じまいは遺骨のお引越しという意味合いで行われることが多いです。しかし身寄りがいないのであれば遺骨の引き取り手もいないので、そのまま散骨をしてもらえばその後の管理が必要ありません。海や山などの自然が好きであれば、そうした場所に散骨をしてもらうと良いでしょう。
墓じまいについては下記記事もご参考ください。
・お墓についての一番の悩み:墓じまいを完全解説
・墓じまいに関するお金の疑問を解消!墓じまいにかかるお金の相場を徹底解説!
・墓じまいをスムーズに行うために。墓じまいの手続きと流れを完全解説!
自治体のサポート制度を利用する
もちろん一番良いのは、無縁仏にならないような状況にしておくことです。そのために、生前の間から自治体のサポートを活用すると良いでしょう。
自治体の中には積極的に高齢者の「終活課題」に取り組むところもあります。例えば以下のような活動です。
・本人と葬儀社の間に入り葬儀の生前契約のサポートする
・遺言場所の所在についてなど、自分の死後必要になりそうな情報をあらかじめ登録しておく
こうした官民連携によって高齢者が死後無縁仏になることを防ごうとしています。先駆けとなったのは、神奈川県横須賀市の「エンディングプラン・サポート事業」です。ここから千葉県、兵庫県などに広まりを見せています。
墓じまいをはじめ、弔事の不明点や疑問は『やさしいお葬式』から24時間365日無料相談も承っています。電話でもメールでも行えますのでお気軽にご連絡下さい。やさしいお葬式では葬儀の見積もり、遺影写真、参列者のリストアップなど事前準備をおすすめしています。
無縁仏にならない方法については「無縁仏にならないために!無縁仏の意味や対策方法について解説」をご覧ください。
無縁仏についてのまとめ
以上が無縁仏に関して押さえておくべき知識です。最後に今回ご紹介した内容を簡単に振り返りましょう。
【無縁仏とは?】
・無縁仏とは、様々な事情によって誰にも葬儀を行ってもらえない故人や誰にも管理されないお墓のこと。
【無縁仏になってしまう主な理由】
・故人に親類がおらず、お墓を用意していなかった場合
・親類に引き取りを拒否された場合
・お墓の管理者がいなくなった場合
・お墓の管理費用を滞納してしまった場合
【無縁仏の葬儀や供養】
・自治体によって行われる
・その後の遺骨の管理は、委託された寺院や霊園によって行われるのが一般的。
【お墓の管理者がいない場合や料金滞納の場合】
・一定期間未払いである旨などを告知する。
・それでも連絡が取れない場合は管理者側の権限でお墓を整理する。
【無縁仏にかかる費用】
・お墓の管理費用は寺院や霊園にもよるので一概にはいえないが、年間で「数千円台〜1万円前後」の幅になることが多い。
・そこに火葬や合同法要にかかる費用も必要になる。
・合祀墓の費用はだいたい「10万〜30万円前後」になることが多い。
【無縁仏にならないためには?】
・生前に永代供養契約を据える
・親類と死後処理の契約(死後事務委任契約)をする
・墓じまいをして散骨してもらう
・自治体のサポート制度を利用する
自分の死後はできれば誰かに弔ってほしいもの。しかし少子高齢化の進行や核家族の増加などによってそれが難しい方も増えているでしょう。
もし無縁仏となってしまうと様々な手間もかかってしまいます。そうしたことを少しでも減らすために、生前のうちから積極的に自治体の制度を活用したりお墓の管理をどうするかについて考えておくと良いでしょう。
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
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