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親が認知症になったら早めの相続手続きが重要!対策までやさしく解説

Mar 06 2023

親が認知症になり相続を考えた時、軽症であれば4種類の手続きが有効になりやすく、反対に症状が進んでしまうと手続きは1種類のみに限られてしまいます。今回は軽い症状のうちに進めるべき準備〜進んでしまった場合の対策までわかりやすく解説します!

「親が認知症と診断されたが相続について何もしていないので不安...」

「相続トラブルになりそうで対策したいけど認知症だと出来ないのかな?」

認知症の親の財産を相続するために重要なのは、認知症であっても自分の「どの財産を」「誰に」「どうするか」が理解できているかどうかになります。

つまり、自分の名前や住所が言えない状態では、相続の内容を理解できているとは言えないので、相続手続きを行うことは出来ないのです。

認知症が重症化してしまうと手続きは無効となってしまうため、預金口座や不動産取引、遺言書の作成や生前贈与、さらには生命保険などの手続きをすることができなくなってしまうのです。

認知症の方の介護などにはお金も必要となるので、親の財産を使えなくなくなってしまうと、金銭的な負担も大きくなってしまいますよね。

症状が軽く相続の内容を把握できている状態であれば、下記の4種類の手続きが有効となり、対策しておくことで相続トラブルを防ぐことができます。

順不同でご紹介しますので、ご自身に合ったものを検討すると良いでしょう。

  遺言書 任意後見人 生前贈与 家族信託
内容 認知症の方の死去後にどの資産を誰にどう分けるか、遺言を誰に執行してもらうかなどの希望を指定しておくもの 認知症になったときに「誰に」「何をお願いするか」をお願いする人と一緒に決めておくこと 生きている間に資産を信頼できる親族に譲ること 認知症で資産が凍結されるのを防ぐために家族に資産を託しておくもの
できること 遺言者の希望通りに資産を分けたり、手続きをする人を指定することができる 認知症の方が希望した内容に含まれているものはすべて可能(ただし認知症の方の死後は一切の権利がない) 譲り受けた資産は自由に管理することができる 資産はあくまでも託されたものなので、運用、管理することができるが利益が出たら自分に託している認知症の方のために使う
効力があるタイミング 死去後 認知症の症状がはっきり出てきて家庭裁判所への申立て後 譲る人と両者の同意が取れた生前の好きなタイミング 自由に決めることができる
こんな人にオススメ 財産を誰がどう相続するかのトラブルが起こりそうな方 認知症の方が亡くなる前の財産管理するべき人や内容を決めておきたい方 好きなタイミングで希望する人に譲ることで、相続のトラブルを防ぎたい方 不動産などすでにある財産を運用してほしい方

今回はこれらの詳細や手続き方法はもちろん、もしも重症化してしまった場合にできる対策方法までをわかりやすく解説します。

「認知症の親の財産をトラブルなく相続するための対策が知りたい」という方は是非最後までご覧ください。

認知症が重症化する前にできる4種類の対策とオススメの人

認知症が重症化する前であれば、相続に関しての4種類の対策を考えることが可能です。

効力を発揮するタイミングやできることがそれぞれ違い、亡くなった後のことを対策しておきたいケースや、生きている間に託してしまうケースがあるので、自分たちに合ったものを選べると良いでしょう。

理解できるうちに、一度親と一緒に対策を考えておきたいですね。

順不同でご紹介します。

  遺言書 任意後見人 生前贈与 家族信託
こんな人にオススメ 認知症の方が亡くなった後、誰がどう相続するかのトラブルが起こりそうな方 認知症になった場合の財産管理が不安な方 好きなタイミングで希望する人に譲ることで、相続のトラブルを防ぎたい方 不動産などすでにある財産を運用してほしい方
内容 死去後にどの資産を誰にどう分けるか、遺言を誰に執行してもらうかなどの希望を指定しておくもの 認知症になったときに「誰に」「何をお願いするか」をお願いする人とともに決めておくこと 生きている間に資産を信頼できる親族に譲ること 認知症により資産が凍結されるのを防ぐために家族に資産を託しておくもの
効力があるタイミング 死去後 認知症の症状がはっきり出てきて家庭裁判所への申立て後 譲る人と両者の同意が取れた生前の好きなタイミング 自由に決めることができる
誰に託すかの目安 公証役場か法務局を含め作成した人が管理する 子供や親族など信頼できる人への依頼はもちろん、弁護士や司法書士、社会福祉士、税理士などの専門職の人や、社会福祉協議会やNPO法人などへの依頼も可能 信頼できる親族 家族の範囲を含めて受け取る人に一切決まりはないが未成年者、精神や健康的に自分で判断が難しい人は不可
できること 遺言者の希望通りに資産を分けたり、手続きをする人を指定することができる 認知症の方が希望した内容に含まれているものはすべて可能(ただし認知症の方の死後は一切の権利がない) 譲り受けた資産は自由に管理することができる 資産はあくまでも託されたものなので、運用、管理することができるが利益が出たら自分に託している認知症の方のために使う

遺言書

遺言書とは亡くなった後、「どの資産を」「誰に」「どうするか」「遺言を誰に執行してもらうか」などの希望を法律的に有効なものとして指定しておくためのもので、大きく3種類に分かれます。

認知症の方が遺言書を残しておく場合には、3種類の中で遺書を開封した後に無効になる可能性が一番低い「公正証書遺言」がオススメです。

それぞれのメリットや注意点を含めて違いを見ていきましょう。

種類 公正証書遺言 自筆証書遺言 秘密証書遺言
概要 公証人が作成、公証役場で保管してくれるため無効になることが少なく、安心できる 自分で作成することができるが、ルールに沿っている必要があり、遺言執行時の開封時までは有効となるかわからない 自分で作った遺言書を公証人に確認してもらえるが、内容は確認できないため遺言執行時まで有効となるかわからない
作成方法 全国にある公証役場にて自分で手配した証人2名立ち会いのもとに公証人が面談して作成 遺言者が全文を自筆

※財産目録はパソコン可

遺言内容を遺言者が記載し、封をして公証役場で証人2名と公証人立ち会いのもと確認、署名、押印する
作成場所 公証役場(全国にあり好きな場所を自由に選ぶことが可能) 自宅など遺言者の好きな場所 自宅など遺言者の好きな場所
保管場所 公証役場 遺言者か 法務局で管理 遺言者で管理
遺言書の有無のお知らせ 無し(公証役場にて有無の検索が可能) 無し 無し
費用 遺産を受け取る人1人あたり遺産金額に応じた金額を支払う(相場:約5万円) 不要 1.1万円
無効になる可能性 公証人が作成するため低い あり あり
改ざんリスク ない あり あり
代筆 不可 不可
遺言執行時 すぐに手続き可能 家庭裁判所で相続人等立会いのもと、開封して確認する検認が必要 家庭裁判所で検認が必要
メリット ・遺言者の内容を元に公証人が作成するため無効になりにくい

・自分で入力や直筆で書く必要がない

・パソコンからの入力でも可能

・証人がいらない

・思いついた時にすぐ書ける

・内容を誰にも知られなくて済む

・パソコンからの入力でも可能

・思いついた時にすぐ書ける

注意点 ・費用と手間、時間が必要

・証人が必要なので証人と公証人に遺言内容を知られる

・遺言に対してのアドバイスはない

・発見されない場合や捨てられる場合もある

・偽造リスクもある

・書かれている内容があやふやな場合や漏れがある場合、法律に沿っていない場合は発見されても無効となる

・秘密証書遺言にした理由を公証人に聞かれる

・証人2名の手配が必要

・発見されない場合や捨てられる場合もある

・書かれている内容があやふやな場合や漏れがある場合、法律に沿っていない場合は発見されても無効となる

・公証人への手続き時に遺言書の筆者の住所と氏名を述べる必要がある

※項目をクリックすると、詳細記事が開きますので合わせてご参考ください。

公正証書遺言の作成は「公証役場」というところで「公証人」に依頼します。

そして「公証人」「遺言者」「証人2名」が立ち会いのもと、遺言する意思(法律用語では遺言能力といいます)があるかどうかを見極めて、遺言書を作成し、保管されるのです。

他の2種類に比べ手間や費用もかかりますが、公証人が作成してくれるため無効になりにくく、万が一のときにも公証役場から遺言書の有無を検索し、見つかり次第相続手続きをすることができます。

遺言書は代理で作成することができないため、遺言する本人が遺言内容を理解して公証人に伝えられるということが条件となりますので注意しましょう。

自筆証書遺言を検討する場合は法則に沿ったものでないと無効となってしまいます。 「【文例付き】相続プロが教える!有効な遺言書の書き方完全マニュアル」では詳しい書き方やチェックポイント、更には文例までご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

任意後見人

認知症になったときに「誰に」「何を」お願いするかを、依頼したい人と一緒に決めておくことを「任意後見人」と言い、認知症の方の財産を守るための制度です。

子供や親族などの信頼できる身内への依頼はもちろんですが、弁護士や司法書士、社会福祉士、税理士などの専門職、社会福祉協議会やNPO法人などへの依頼も可能です。

認知症の方に症状が出てきた際に家庭裁判所へ申立てを行うことでこの制度が開始となりますが、開始とともに家庭裁判所が選んだ「後見監督人」という第三者の人間がしっかりと後見人の仕事内容を監督してくれます。

もしも監督人をお願いしない場合、実際に財産の横領なども起きていますので必ずチェックしてもらうようにしましょう。

手続きは認知症の方本人と、お願いする人と一緒に公証役場にて公正証書を作成する必要があり、

・基本手数料 11,000円

・登記嘱託手数料 1,400円

・法務局への印紙代 2,600円

・制度開始時に後見人や後見監督人への報酬や事務費

の費用が発生します。

ただし、任意後見人はお願いした内容以外の手続きをすることはできないので内容も慎重に決定する必要がありますが、認知症の症状がひどくなった場合の財産管理が不安な方は検討すると良いでしょう。

任意後見人になるためには約1ヶ月の期間を要し、最終的には法務局への登記依頼が必要となります。「 【成年後見人の手続き】流れから必要書類・期間・費用・注意を全解説」では手続きの流れや必要書類に関してなどを詳しくご紹介しておりますのであわせてご覧ください。

生前贈与

生きている間に認知症となってしまった方の財産を、信頼できる親族が譲り受けることを「生前贈与」といい、亡くなってから財産を受け取ることは「相続」と言います。

譲るタイミング、相手、何をなどの詳細は自由に決めることができますが、財産を譲り受けた人は贈与税の支払いが必要です。

財産を渡す人と受け取る人両者の同意が必要となり、「贈与契約書」を書いておくことでトラブルを防ぐことができるので安心です。

この書類は基本的には書き方にルールはありませんが、「誰が」「誰に」「いつ」「何を」「どう譲るか」などを書く必要があり注意が必要なので、弁護士や行政書士などの専門家に相談すると良いでしょう。

亡くなった後のトラブルを最小限におさめたいという方は検討したいですね。

家族信託

認知症の症状が重くなると財産を不正利用防止のために認知症の方の財産が凍結されてしまうため、重症化する前に信頼できる家族に財産の運用を託しておく制度を「家族信託」と言います。

託す相手に一切決まりはありませんが、未成年者や精神的、健康的に自分で判断することが難しい方へは託すことができません。

そして、託された場合でも財産はあくまでも「譲られた」ではなく「託された」だけですので、運用する中で利益が出た場合は財産の持ち主である認知症の方のために使う必要があります。

不動産など運用している財産があって、運用を託したいという方は家族信託を検討しましょう。

家族信託は近年注目を浴びている財産管理方法のひとつです。 「家族信託を完全解説!手続き・費用・認知症対策を紹介!」ではメリットはもちろん、デメリットや注意すべき点、そして費用まで解説しておりますので、家族信託を検討している方は是非あわせてご覧ください。

認知症が重症化すると無効になってしまう5種類の取引

認知症が重症化してしまい、理解することや判断が難しくなってしまうと下記5種類のことが無効となってしまいます。

順不同でご紹介しますので是非ご覧ください。

1.口座取引

2.不動産取引

3.遺言書作成

4.生前贈与

5.保険の手続き

重症化しているのかどうかの判断基準である「意思能力」については 「相続手続きに必要な条件は『意思能力の有無』」での詳しい解説をご覧ください。

口座取引

認知症の方が本人が銀行へ行った際に、意思決定能力がないと判断されたり、家族が銀行へ認知症を伝えた場合に口座が凍結され、本人の財産が不正利用などから守られます。

ただし凍結されると引き出すことはもちろん、振り込みなどの一切の手続きができないため、もしも家族が認知症の方の介護費用などの支払いに使いたい場合でも使うことができません。

認知症の方が生きている間に凍結されてしまった口座を利用する場合には 「任意後見人」を対策しておくことで解除することが可能です。

もしも口座が凍結されてしまった場合でも預金を払い戻す方法や、凍結解除と相続方法を含めて詳しくは 「口座凍結で抑えるべきポイント7つ!解除と相続の手順&対処法を解説」をご覧ください。

不動産取引

認知症で症状が重くなった場合、不動産取引として新たに契約を結ぶことはもちろん、売ることも貸すことも一切無効となります。

代理人をたてる場合でも「この人に代理人をお願いする」という本人の意思が確認できない限り無効となりますので注意しましょう。

不動産取引も 「任意後見人」を対策しておくことで、もしも金銭的に家族が困った際に後見人が不動産を売って介護にあてるなどをすることができます。

遺言書作成

「遺言書」でもご紹介しましたが、財産など相続に関係する内容を遺言書として有効にするためには、遺言する本人が遺言内容を理解していることが必須条件です。

「どの資産を」「誰に」「どうするか」「遺言を誰に執行してもらうか」を伝えることができない場合、法律的に有効な形として作成することができません。

出来るだけ早い段階で遺言書を作成しておくことが重要です。

生前贈与

生前贈与は財産を「贈る人」と「受け取る人」との契約となりますので、「この人に財産を譲る」という本人の意思能力がなければ無効となってしまいます。

さらに 「任意後見人」制度を利用していても、生前贈与は認知症の方の財産を減らす行為となるため、財産を守るための「任意後見人」では生前贈与の手続きを進めることはできないのです。

保険の手続き

保険の解約は契約者本人がすることが条件ですので、自分の親が認知症になってしまった場合、例え子供であっても親が加入している保険の解約をすることはできません。

ただし配偶者か、いない場合は契約者本人と生計を共にする親族であれば保険の内容の確認や照会をすることは可能です。

「任意後見人」制度であれば保険の解約や給付金がある場合の申請を進めることができます。

万が一親がどの保険に入っているかわからない場合は下記のような方法で探すと良いでしょう。

1.親が契約している保険証書を探して管理する

2.保険会社からの郵便物などを探し、保険会社で照会する

3.口座履歴を確認して保険会社との記録を探す

 

それでもわからない場合には親が入っている生命保険の有無を調べてくれる「 生命保険契約照会制度」がありますので是非検討してみましょう。


画像引用元: 生命保険契約照会制度(認知判断能力の低下)

ただし、保険の種類や請求などに関しての手続きの代行はしないのと、利用にあたっては本人確認書類や診断書など必要書類が厳しく設定されています。

相続手続きに必要な条件は『意思能力の有無』

相続手続きに必要な条件として「意思能力」をご紹介してきましたが、意思能力は自分がする手続きの内容として「何を」「誰に」「どのくらい」「どうするか」を理解できているかとなります。

判断基準として一番有効なものは医師の診断書ですが、1つの判断基準として「長谷川式認知症スケール」という簡易的な知能検査で認知症のレベルを測るケースが一般的です。

30点満点中20点以下の場合は認知症が疑われ、遺言能力が低いとされる可能性が高く、点数が低いほど無効となります。

ただしあくまでも簡易的な検査となるため、これらを総合的に見て判断されるのです。

参考)「長谷川式認知症スケール」実際の問題


画像引用先: ABC-DS(ABC認知症スケール)|日本老年医学会

相続対策を考えたら、できるだけ早く医師の診断書を受け取っておくようにしましょう。

重症化してしまった時の手続きは成年後見制度のみ

もしも何も対策をしていない中で認知症が重症化してしまっている場合にできる対策は「成年後見制度」のみとなります。

「認知症が重症化する前にできる4種類の対策と選ぶ目安」でご紹介した内容は症状が軽く、内容を理解できている場合のみ有効となり、何の対策もしていない場合は代理人が手続きすることもできません。

それ以外は、亡くなった後に遺産分割協議という遺族間での話し合いで財産をどう分けるかを決定することとなりますので注意しましょう。

成年後見制度とは

認知症の方はもちろん、高齢者の方の財産を守る制度を「成年後見制度」といい、本人に代わり親族や弁護士などの「後見人」が、財産や資産管理を支援してくれます。

「任意後見人」と違い、成年後見制度での後見人は家庭裁判所が選ぶこととなり、家庭裁判所へ申立てを行ってから後見人が選ばれるまで3~5ヶ月かかるのも注意すべきポイントです。

成年後見制度には「後見」「補佐」「補助」の3種類があり、認知症の方の症状の重さによって、後見人に与えられる権限が代わります。

費用相場は6~10万円で、さらに後見人への報酬が必要となりますが、親族が後見人である場合には支払われないこともあるのです。

手続きは家庭裁判所以外でも市区町村の高齢者福祉課、社会福祉協議会や地域包括支援センターなどでも可能ですので覚えておきましょう。

亡くなった後は遺産分割協議のみ

相続対策はもちろん、後見人制度も利用しなかった場合には、亡くなった後相続人同士で故人の財産をどう分割するかについて話し合う「遺産分割協議」で詳細を決定します。

遺産分割協議は相続人全員の参加が必須条件となるため、遠方だったり都合がつきにくい場合はweb会議なども利用して話し合う必要があるのです。

そしてどの財産を誰がどのくらい相続するのか決定したものを「遺産分割協議書」という書面で残します。

遺産分割協議書には書式などの決まりはありませんので、「どの財産を」「誰が」「どのくらい」相続するのかを明確に示し、相続人全員の署名と実印での押印をして作成します。

不動産や預貯金、相続税や株、自動車の名義変更など、相続手続きの内容によっては「遺産分割協議書」の提出を求められることがあることを覚えておきましょう。

遺産分割協議書作成へ向けて大切なのは「相続人の確定」「財産の洗い出し」「分割内容の協議」のステップです。

どんな形で作成すればよいのか、相続の際の注意点も一緒に 「遺産分割協議書作成について7つのポイント&項目別の書き方と注意点」でご紹介しますので是非あわせてご覧ください。

困ったときの相談先5つ

親が認知症になってしまったので早めに対策したいけれど何からしていいかわからないという方は、専門家への相談を頼ってみることも良いでしょう。

理解できるまで教えてくれますので、1人で抱え込みすぎずに一歩踏み出すことで対策を進めることができます。

相談しやすい順でご紹介していきますのでイメージする予算とともに自分に合ったものを見つけましょう。

相談先 頼るべきケース
地域包括支援センター ・成年後見制度を利用したい

・遺言書を作成したい

・認知症についてのケア含めて相談したい

無料相談 ・どこから手をつければいいのかわからない

・何を専門家に任せたら良いかわからない

行政書士 ・相続手続きに必要な書類の用意だけ任せたい

・それほど予算をかけたくない

司法書士 ・相続の中に不動産を抱えている
弁護士 ・相続でトラブルになっている

・予算に余裕がある

地域包括支援センター(利用料は無料)

65歳以上の方が利用できるシステムで、地域の中での高齢者を広範囲で支えるためのシステムで、社会福祉士、保健師、主任介護支援専門員が在籍しているので、相続に限らず認知症に関しても幅広く相談できるのが特徴です。

各市区町村に1箇所あるのが一般的ですので、「お住いの地域 地域包括支援センター」と検索してみましょう。

成年後見制度や家族信託などの相談が可能なのと、必要に応じて専門家を紹介してくれます。

無料相談を利用して専門家を紹介してもらう

法律のことになると、自分の力でどこまでできるのか、そして出来ない部分は誰に依頼すればよいのか、いまいちよくわからない方もいらっしゃると思います。

そんな場合は一度無料相談を利用することで、自分に合った必要な専門家を紹介してもらうことができるのです。

お住まいの市区町村の役場でも無料で相談に乗ってもらえる他、「やさしい相続」では24時間365日無料で相談を受け付けています。

電話はもちろんメールでも可能ですのでご自身のお好きなタイミングでお気軽にご相談下さい。

しつこい勧誘などもなく、必要な手続きだけ依頼することができるのも安心できるポイントですね。

行政書士(費用相場:5万~15万円)

行政書士は書類作成業務を専門としているため、弁護士や司法書士に比べて値段が少し安く抑えることができます。

具体的には

・預金口座の名義変更や凍結した場合の解除手続き

・株式の名義変更や相続手続き

・遺産分割協議

・相続による車の名義変更手続き

といった内容が専門分野となるため、「出来るだけ費用は最小限に抑えたいけど1人で相続まで手がまわらないので、書類作成だけ任せたい」という方にオススメです。

司法書士(費用相場:5万~15万円)

司法書士と行政書士の違いは、司法書士は不動産を取り扱っていることと、法務局や家庭裁判所への提出書類が作成できるということです。

そのため不動産などの財産を名義変更したい場合などの手続きが唯一可能な専門家なので、家や不動産、預貯金、株式などを相続して名義変更したい場合は任せると良いでしょう。

弁護士(費用相場:5,000円~/30分)

弁護士は預貯金の相続手続きや株式の名義変更や相続手続きをすることは可能ですが、費用もこの中で一番高額となるため、相続についてトラブルが起きている場合に検討するのがオススメです。

もちろん、遺言書の作成や家族信託に関しても相談して対応してもらうことはできますので、相続トラブルが予想される場合は一括で任せておけると安心できるでしょう。

まとめ

・認知症で相続に関しての内容などを理解していない場合には手続きは無効となる

・認知症が重症化する前に下記対策をしておくことで相続トラブルを避けられる

  遺言書 任意後見人 生前贈与 家族信託
こんな人にオススメ 認知症の方が亡くなった後、誰がどう相続するかのトラブルが起こりそうな方 認知症になった場合の財産管理が不安な方 好きなタイミングで希望する人に譲ることで、相続のトラブルを防ぎたい方 不動産などすでにある財産を運用してほしい方
内容 死去後にどの資産を誰にどう分けるか、遺言を誰に執行してもらうかなどの希望を指定しておくもの 認知症になったときに「誰に」「何をお願いするか」をお願いする人とともに決めておくこと 生きている間に資産を信頼できる親族に譲ること 認知症により資産が凍結されるのを防ぐために家族に資産を託しておくもの
効力があるタイミング 死去後 認知症の症状がはっきり出てきて家庭裁判所への申立て後 譲る人と両者の同意が取れた生前の好きなタイミング 自由に決めることができる
できること 遺言者の希望通りに資産を分けたり、手続きをする人を指定することができる 認知症の方が希望した内容に含まれているものはすべて可能(ただし認知症の方の死後は一切の権利がない) 譲り受けた資産は自由に管理することができる 資産はあくまでも託されたものなので、運用、管理することができるが利益が出たら自分に託している認知症の方のために使う

・認知症が重症化すると「口座取引」「不動産取引」「遺言書作成」「生前贈与」「保険の手続き」ができない

・すでに症状が多く出てきている場合には成年後見制度のみ利用できる

・成年後見制度は家庭裁判所へ申立てを行い家庭裁判所が後見人を選び、第三者である弁護士などが後見人を監督してくれるシステム

・もしも対策しないまま亡くなってしまったら遺族間での話し合いである「遺産分割協議」で遺産を誰にどう分けるかを決める

もしも大事な家族が認知症にかかってしまったら、出来るだけ早く相続に必要な対策を進めておくことで、どの資産を誰にどう分けたいか、手続きは誰に任せたいかなどの親の希望を叶えてあげやすくなります。

相続など「終活」というものは、きっかけがないと後回しにしがちですよね。

しかし、内閣府が発表している 「認知症高齢者数の推計」では2025年には65歳以上の5人1人の割合で認知症になると推測されています。


画像引用先: 認知症高齢者数の推計

家族が認知症になってしまうと、認知症の方の介護だけでも負担がかかってしまい、精神的にも簡単なことではありません。

出来るだけ早く相続について考えて準備することで、親族への金銭的、精神的負担を最小限に抑えることにもつながるのです。

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【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)

略歴
高橋圭 (たかはし けい)
青山学院大学法学部卒業。
2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員

プロフィール

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