臨終前の症状は、血圧の低下や走馬灯、中治り現象や便など排泄のコントロールができなくなるなどさまざまです。家族にとっては辛い臨終前ですが症状を知ることで落ち着いて見送ることができるかも知れません。老衰や病気が原因の臨終前の症状をご紹介します。
人には誰もが死が訪れます。この死を迎える段階になると、患者の体や心には様々な変化が表れることが一般的です。ご家族からすると苦しそうに見える瞬間もあるため不安になってしまうこともあるでしょう。
しかし臨終前の症状というのは、何も辛く苦しいものだけではありません。中には患者の苦しみを和らげるために起きていると考えられる症状もあります。あらかじめそうした症状について詳しく知っておき、いざという時に落ち着いた気持ちでお見送りできるようにしましょう。
INDEX
- 01
- 臨終前の症状は?
- 02
- 臨終前に体に起きる変化
臨終前の症状は?
どんな方にも「死」という形で最期の時が訪れるもの。「臨終」とは、この最期の時をいつ迎えてもおかしくないという状態を指します。
臨終の際には、身体的・精神的共になんらかの症状が表れるのが一般的です。なかには科学的に説明するのが難しいような現象が発生することもあります。それでは、そんな臨終前の症状を具体的にご紹介しましょう。
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臨終前に体に起きる変化
まずは体に起きる変化についてです。もうすぐ最期の時が訪れる方の体には、健康な方とは異なる症状が表れます。こうした症状は専門家でなくとも気付く可能性があるので、近々ご家族は覚悟を決めなければいけないかもしれません。
血圧や心拍数などのバイタルサインが不安定になる
バイタルサインとは「生命の兆候」と訳されるものであり、人間の生命活動がどの程度行われているのかの重要な指標となっているもの。臨終の時が近づくにつれて、このバイタルサインである血圧や心拍数などの数値が不安定になります。
健康体であれば、心拍数や血圧が一時的に変動することはあってもしばらくすれば元に戻るものです。これは「恒常性を保つ」と呼ばれる働きであり、この恒常性を保つことが生命力のある証になります。
しかし、臨終を迎えようとしている方はこの働きがほとんどできません。そのため原因不明のままバイタルサインが大きく上下してしまうのです。
飲食が少なくなってくる
臨終前になると徐々に飲食をするのが難しくなります。仮に本人に飲食をしたい意思があっても、そもそも咀嚼力や飲み込む力自体が弱まっているので飲食ができないのです。
この状態になると点滴で栄養を摂取することも検討しなければなりません。ただし痰が増えてしまうなどの作用もあるため、医者はもちろん患者本人の希望もしっかり確認しながら行うのが鉄則です。
また、この症状が進むと水分が摂取できずに唇が乾燥してしまいます。その場合はリップクリームを使うと良いでしょう。
排泄のコントロールが難しくなる
身体機能の低下に伴い、自力で排泄をコントロールするのが困難になります。この状態だと寝たきりになることも多いため、おむつや尿道カテーテルを利用する可能性もあるでしょう。
この症状が出始めると介護の必要性も上がり、いつ容態が急変してもおかしくありません。
また、排泄のコントロールができないことで排尿が止まる場合もあります。放置をしておくと臓器の働き低下や尿管の詰まりを引き起こす原因にもなりかねません。そのため、必要に応じて適切な処理を施す必要があります。
体の末端から血の気が引けてくる
指先など体の末端から徐々に血の気が引いていきます。この状態の肌に触れると少し冷たいため、体を暖めようと考える方もいるでしょう。その場合は毛布等で自然に暖めるのが効果的です。電気毛布などを使うと火傷をする恐れがあるので気を付けましょう。
睡眠時間が増える
臨終が近づくと眠っている時間が増えていきます。これまでお見舞いに行くと話はできていたのに、そこから徐々に眠っている時間が増えた場合は臨終が近づいている証です。その場合は無理に起こしてはいけません。
会話が成り立たないことが増える
臨終が近づいている患者と話すと、上手に受け答えができないこともあります。認知症だけでなく老衰であってもこうした症状は起こるもの。そのため、丁寧に話を聞いて患者の言いたいことをなるべく汲み取ってあげるようにしましょう。
また、会話をしていても呼びかけに反応しないことも増えます。しかしその場合でも、患者は話している内容自体を理解できている場合が多いです。そのため、普段通りに優しく接してあげると患者も安心するでしょう。
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臨終前に心におきる変化
臨終前には、体だけでなく患者の心にも様々な症状が表れます。もちろん患者の内面で何が起こっているのかを完璧に把握することはできません。
しかし、症状を知っておくことで「今苦しんでいるのか?」ということは知れるので、ご家族が患者に接する時の参考になるでしょう。
今いる場所や時間がわからなくなってくる
徐々にこれまでの感覚を失っていき、現在の時間や場所がわからなくなってきます。この時患者は、その場にはいない人の声を聞いたり姿を見たりするなど「現実との区別がつかない幻覚」を見ていることが多いです。これに伴い患者の落ち着きが無くなる可能性もあるので、慌てずに患者を安心させるような言葉をかけてあげましょう。
もしも「亡くなった人がそこにいた」というようなことを言っても決して否定してはいけません。本人が体験したことに対しては丁寧に話を聞き受け入れましょう。
終末期せん妄
また、身体的苦痛などが原因で引き起こされる「終末期せん妄」という症状もあります。この状態になると、点滴を邪魔に感じて外そうとしたり神経質になったりすることが多いです。薬の副作用の可能性もあるので、そうした原因が分かれば症状を緩和させることもできます。
走馬灯を見る
「走馬灯」とは、それまでの人生で印象深かった経験が頭の中を駆け巡ることを指します。主に、臨終前のような死に際に様々な経験を思い出すことを走馬灯と呼ぶことが多いです。しかしそれ以外にも、存命中に感情を高ぶらせる出来事が発生した場合に見ることもあります。
いずれの場合も、走馬灯は自分の意思ではなく様々な条件が重なった結果自然と頭に思い浮かぶケースがほとんどです。
安らぎと安心感を得る
先述のような体の症状が出ると「今とてもつらさや痛みがあるのではないか?」と不安になるご家族の方もいるでしょう。特に飲食の量が減ったり受け答えができないことを重く受け止める場合もあるかと思います。
しかし実は、老衰を迎えている場合は症状とは裏腹に患者自身に痛み等は無いケースも多いです。もちろん全員がそうではありませんし昨日まで健康的だった方がいきなり死を迎える場合は別かもしれません。
しかし基本的には、老衰が進行すると徐々に体の機能が失われていくので本人は意外と穏やかな気分であることも多いのです。こうしたことを医者がきちんとご家族に説明することで不安を取り除けます。
臨終前に起きる不思議な現象
こうした身体症状などはどのようなことが原因で起きているのかはある程度説明ができます。しかし中には、説明が難しいような不思議な現象が起こることもあるのです。
中治り現象
もうまもなく死を迎えると思われていた患者さんが劇的に回復することがあります。例えば、「飲食物を口に入れられなかったのに急に食欲が戻る」「朦朧としていた意識が急にはっきりする」などの現象です。
これは「中治り現象」と呼ばれるもの。ご家族からすると喜ばしいことですが、医療スタッフからすると「一時的な回復であり、もうすぐに臨終を迎える合図である」と考えられることが多いです。
脳内物質の分泌で起こる
中治り現象は「ドーパミン」「セロトニン」「アドレナリン」などの脳内物質が分泌されることで起こると言われています。脳内麻薬や幸せホルモンとも呼称されるこれらの物質が、寿命が尽きる直前の脳を守ろうとしているのかもしれませんが、まだ完全に解明されたわけではありません。
お迎え現象
上記と合わせて「お迎え現象」が起こることもあります。「故人が迎えにきた」「孫が手を繋いでくれていた」など、その場にはいない人物が現れる現象です。
このような現象は、科学的には「脳が酸欠になることで幻覚を見たのではないか」と推測されることがあります。臨終が近づくと呼吸不全になることも多いため、脳に十分な酸素が供給されずに幻覚を見るということです。高山病でも同様の症状が起こります。
しかしこのお迎え現象も、先ほどと同様完全に解明されたわけではありません。
看取りの際に家族にできること
このような臨終前の症状が患者に表れた場合、ご家族にできることは限られます。もちろん医療行為はできません。
近しい人たちに連絡をする
医師に臨終前であることを伝えられたら、近しい人たちにすぐに連絡を入れましょう。例え、深夜や早朝であっても近しい人たちには連絡をするべきです。どこまで連絡をすればよいか迷う場合は、3親等(父母、子供、祖父母や叔父叔母、甥姪)までを目安にしましょう。
声をかけ続ける
この症状が表れた患者に対してご家族ができることは、声をかけ続けることのみです。もちろん大切な方が目の前で弱っていくのを見るのは辛いことでしょう。しかし、患者は話ができなくてもこちらの声が届いていることもあります。そのため、患者を安心させるために最後まで声をかけ続けることが大切です。
声をかけるという行為自体は医者でもできますが、患者にとって一番力になるのはやはりご家族の言葉でしょう。
また、患者が本当に苦しそうであれば、必要に応じて苦痛を和らげるための処置を施してもらいましょう。臨終が近い時であっても医者はきちんとケアをしてくれます。
亡くなった後におこなうこと
残念ながらご家族が亡くなってしまった場合は、速やかに葬儀の準備を始める必要があります。深い悲しみの中で葬儀の準備をするのは大変辛いことですが、故人を供養する為にも必要なことです。下記に亡くなった後に行う流れをご紹介します。
医師の死亡確認
ご臨終を迎えた後、医師による死亡確認がおこなわれ、死亡診断書がご遺族へ渡されます。この死亡診断書は死亡後の手続きで必要になるので紛失しないように気を付けましょう。
末期の水
末期の水とは亡くなった方の口に水を含ませることです。「死に水をとる」とも言われます。故人があの世で喉の渇きを潤す為に行われます。最近では、水を入れたコップを近くに置くなど簡略化される場合もあります。
エンゼルケア
エンゼルケアとは、ご遺体に行われる処置です。ご遺体をアルコールをふくんだ脱脂綿で拭く清拭(せいしき)が行われます。看護師や専門の業者が行うことがほとんどです。
ご遺体の安置
病室で亡くなられた場合、ご遺体は病院の霊安室へ安置されます。しかし、霊安室は長期間安置することはできないので、その後、ご自宅や葬儀社の遺体安置所へ移動します。
ご遺体の安置については下記記事もご参考ください。
・故人様を預かる施設が足りない⁈都会のご安置所事情
葬儀社手配
その後は、すみやかに葬儀手配をする必要があります。病院から葬儀会社が紹介されるケースもありますが、断っても問題はありません。事前に依頼する葬儀社が決まっている場合は、早めに連絡を入れましょう。
葬儀社手配については下記記事もご参考ください。
・葬儀の手配方法とは⁉︎いざと言う時に困らないお葬式の手配方法について
・事前に知っておきたい、葬儀会社のスタッフに聞かれること
・きっとあなたもそう思っている「葬儀会社はどこも同じ」ではない
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死亡届などの手続きを行う
亡くなられた後は、死亡届の提出をはじめ様々な手続きが必要になります。
死亡後の手続きについては下記記事もご参考ください。
・死亡手続きを完全解説!するべきこと・期間・費用を一覧で紹介!
・親が亡くなったら何から始めれば良い?必要な手続きについて解説
・意外と知られていない「死亡届の提出方法」について徹底解説!
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臨終前の症状についてのまとめ
このように、臨終前には体や心に様々な症状が表れます。それでは最後に今回ご紹介した内容をまとめて振り返りましょう。
【臨終前の症状】
●臨終の際には、身体的・精神的共になんらかの症状が表れるのが一般的
【臨終前に体に起きる変化】
●血圧や心拍数などのバイタルサインが不安定になる
●飲食が少なくなってくる
●排泄のコントロールが難しくなる
●体の末端から血の気が引けてくる
●睡眠時間が増える
●会話が成り立たないことが増える
【臨終前に心におきる変化】
●今いる場所や時間がわからなくなってくる
●走馬灯を見る
●安らぎと安心感を得る
【臨終前に起こる不思議な現象】
●中治り現象
・もうまもなく死を迎えると思われていた患者さんが劇的に回復する現象
●お迎え現象
「故人が迎えにきた」「孫が手を繋いでくれていた」など、その場にはいない人物が現れる現象。
【臨終前の患者を看取る際に家族にできること】
●「声をかけ続ける」ということのみである。
「臨終前の患者の症状は必ずしも苦しいだけではない」と分かり、少しホッとしている方もいるかと思います。もちろんこうした症状が出てしまった時点で死期は近づいているということ。覚悟を決めなければなりませんが、少しはご家族の気持ちも楽になることでしょう。
もし身近な方にこうした症状が出ても、慌てずに落ち着いて最期の瞬間まで寄り添ってあげられると良いですね。
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
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