「喪に服す」読み方は「喪に服す(もにふくす)」です。近親者が亡くなってしまった際、しばらくの期間は「喪に服す」ことになります。今回は、意外と知らない「喪に服すこと」の意味や内容、注意点、お正月の過ごし方などを解説します。
(2021/4/5 情報更新)
近親者が亡くなってしまった際、しばらくは葬儀や法事で慌ただしくなり、その後「喪に服す」ことになります。
今回は、意外と知らない喪に服すことの意味や内容、注意点を解説します。あまり慣れていない方も多いと思いますので、非常識と思われてしまったり、恥をかいたりしないよう、ぜひ参考にしてください。
INDEX
喪に服すとは?(喪に服すことの意味)
「喪」という言葉は、人の死後にその親族が死者のことを思い、身を慎みながら供養に当たる、という意味になります。
「喪に服す」というのは、故人を偲び供養に当たる期間のことを言い、「喪中」とも言います。
喪中と忌中の違いは?
よく、「喪中」と「忌中(きちゅう)」の意味が混同している人も多いですが、「喪中」は故人を思い偲ぶ期間、「忌中」は故人を祀って供養する期間の意味になります。
「忌中」は、一般的には故人の死後四十九日の忌明けまでが範囲とされていて、「忌服(きふく)期間」とも言われます。
喪中と忌中の違いについては「喪中に神社へ行ってもいいの?喪中と忌中の違いから厄払いやお守りの処分の方法などを徹底解説!」の記事もご参考ください。
忌明けとは?
忌明けは故人が亡くなってから四十九日が経過したことを指します。
忌明けには、四十九日法要を行い故人の魂が成仏できるようにします。また、香典を受け取った方への香典返しは、忌明けのタイミングでお返しするのが正式なマナーです。
四十九日法要については「四十九日法要のお布施を完全解説!相場・地域・宗派を詳しく紹介!」の記事もご参考ください。
浄土真宗の忌明け
浄土真宗では、亡くなった後はすぐに極楽浄土へ行き仏になっているという考えです。そのため、四十九日法要は行いますが、あくまでも故人にではなく、遺族に対して信仰心を深めるための法要となります。
神道の忌明け
神道の場合は、五十日祭が忌明けの儀式となります。この儀式は神社ではなく自宅前や墓前で行われます。
神道(神式)については「神式葬儀の流れとは?仏式との違いや基本的なマナーについても解説」をご覧ください。
喪に服す範囲(何親等まで喪に服すのか?)
喪に服す範囲として、一般的に2親等までとされています。2親等とは、自身または配偶者の兄弟姉妹・祖父母・孫までの範囲になります。
ただ、あくまでも一般的な目安となりますので、3親等以上だったとしても親交が深かったり、お世話になったなど自身で気持ちがある場合は、その限りではありません。
また、実家や住んでいる地域、親族内での慣習がある場合はそれに従うのが安全です。最近では昔からの慣習も緩やかになってきていることもありますが、いらぬトラブルを招かないためにも確認は必要です。
親等別の関係性を一覧にしので分からない方は参考にしてください。
喪に服す範囲一覧(親等)
1親等:自身の父母、配偶者の父母、子ども
2親等:自身と配偶者の兄弟姉妹、その兄弟姉妹の配偶者、自身と配偶者の祖父母、孫
3親等:自身と配偶者の曽祖母、自身の甥/姪、伯叔父母、伯叔父母の配偶者
法人の場合は喪中という概念や考えが存在していないため、社長や役員が亡くなったとしても、その会社の社員が喪に服すということはありません。
喪に服す期間(続柄別の喪に服す期間)
喪に服す範囲と同じく、期間についても一般的なものは関係や続柄ごとにありますが、こちらもあくまでも参考としていただき、親族内や地域での慣習を確認してみてください。
喪に服す期間一覧(親等別)
自身または配偶者の兄弟姉妹:90日
子ども:90日
自身または配偶者の父母:13ヶ月
配偶者:13ヶ月
これは、明治7年に出された太政官布告で示されたものになっていて、昭和22年にこの法令は撤廃されましたが、慣例的に一つの基準とされています。
喪に服す際のマナー
喪に服す期間というのは、故人を偲ぶ期間ということなので、祝い事や晴れやかな場所への参加を控えることが一般的なマナーとされています。
年賀状や旅行、住宅の購入、お祭りやパーティへの参加を控えるべき、とされています。代表的なものについては次に解説します。
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喪に服す際に控えるべきこと
喪に服す期間に控えるべき、と言われているのが、正月の祝い(年賀状)、結婚式、旅行、神社参拝、などです。時代の変遷に伴い認識も変わってきていますので、こちらも一つずつ解説します。
正月の祝い(年賀状)
最も思いつきやすいものが、正月の祝いや年賀状になります。年賀状を出すことでの新年の挨拶を控えるのが一般的です。
年賀状の代わりに喪中はがきを出すことになりますが、喪中はがきを出すのも、故人が亡くなったことでの「正月の祝いをする気持ちになれない」という、故人を偲ぶ表現のひとつです。
喪中はがきについては、<喪中はがきを出す範囲>で解説します。
正月の祝い(おせち料理や正月飾りなど)
年賀状の他にもお正月には玄関に飾りを付けたり、おせち料理を作ったりするのをどうするか悩む人も多いと思います。
喪に服している期間は正月飾りは行わないか、どうしても飾りたい場合は、できるだけ質素にしましょう。おせち料理も重箱に入れたり華やかで豪勢なものは避け、こちらも正月飾りと同様に質素にするようにしましょう。
お年玉は渡しても良いか?
新年のお祝いと同様にお年玉も渡しでよいか気になる方も多いようです。
本来であれば控えるべきでしょうが、孫や親戚の子どもにお年玉をあげたい場合は、ポチ袋などに入れてお年玉ではなく「お小遣い」という名目で渡しましょう。
喪中期間の過ごし方については「喪中の正月の過ごし方とは?やること・控えることを完全解説!」の記事もご参考ください。
結婚式
喪中の期間内に結婚式を行うことや結婚式に参列することも、控えたほうがよいと一般的にされてきました。
しかし、最近では四十九日の忌明け以降であれば結婚式を行ったり、友人や会社関係者の結婚式の場合には、参列するケースは増えています。
わざわざ全員に喪中期間であることを伝えられなかったり、参列を断るために先方に気を遣わせてしまうこともありますので、あくまでも一つの慣例的な基準として捉え、時と場合に合わせて選択してください。
旅行
遊興という意味で、旅行も喪中の期間に控えるべきこととされる代表的なものになります。最近では忌明けまで、とされることが増えてきています。
現実的に、四十九日までは慌ただしくすることや気持ちの問題もあるかと思いますので、キャンセル料なども加味しながら行動するのがよいでしょう。
喪に服す際に控えなくてもよいこと
喪に服している間は上記のように守らなければいけないことがいくつかあります。一方、喪中の期間であっても控えなくても良いこともいくつかあります。下記にご紹介していきます。
お中元・お歳暮
よく、お中元やお歳暮について悩まれる方もいますが、これらは日頃の感謝を伝えるための慣習であり、贈りあっても問題ないとされています。
ただし、喪中の期間内の場合には紅白の“のし”は使用しないようにする、忌中の期間だけは避けること、を意識するとよいでしょう。
遺品の整理
故人の遺品を整理するタイミングですが、特に決まりはありません。喪に服している間でも行って問題ありませんが、49日を過ぎたタイミングで取り掛かるのが一般的です。遺品の整理は精神的にも負担が大きく、時間もかかります。家族や親戚と相談しながら進めていきましょう。
喪に服す際の寺社参拝
以前は、神道では死=穢れとされていました。そのため、神社への参拝や、氏神の祭事などへの参加はもちろん、初詣も当然控えるようにされていました。
しかし、最近ではそのような考え方は故人に対しても失礼である、と考えられるようになり、寺社でも、喪中や忌中の方に参拝をしてもらえるよう促す動きが出てきています。
以前の慣習を大事にしている寺社もまだありますし、時代に沿ってルールや考えも変えていこうとしている寺社もあります。大切なのは、その人が故人をどう思い偲ぶか、です。
どうしても気になるのであれば、せめて忌中は控えてみるというのもいいでしょう。他の人に影響しないことなのであれば、自身の思いや考えを持った上で決めるのがよいでしょう。
喪中の参拝については「喪中に神社へ行ってもいいの?喪中と忌中の違いから厄払いやお守りの処分の方法などを徹底解説!」もご参考ください。
宗教別(国別)の喪に服す方法
意外と忘れてしまいがちなことで知っておきたいのが、宗教や国によってどんな考えなのかです。
日本の喪中・忌中は神道がベースになっていることを理解した上でそのほかの国や宗教での考えも理解しておきましょう。
キリスト教の場合(主にアメリカやヨーロッパ各国)
キリスト教では、死ぬことは神様の元に戻ること、と捉えられているため、喜ばしいことだとされています。
もちろん、近しい人の死は悲しいことではありますが、宗教の教えとしてはネガティブなものではありません。葬儀が終わった後は、喪中のような慣習はありません。
イスラム教の場合(主にアジア、中東、北アフリカ)
女性については4ヶ月と10日の間は喪に服すことが義務付けられています。その間、娯楽に当たることは一切禁止されています。男性の場合は3日間の追悼をするだけ、となっています。
また、イスラム教においては、故人の写真を飾ることは禁忌とされていることもあります。こちらについては宗派によっても捉え方が違っており、必ずしも禁忌とはされないこともありますが、一般的なことではありません。
ヒンドゥー教の場合(主にインド)
故人の死後13日間にわたって葬儀や儀式が行われます。当日は火を使った調理ができなかったり、食べられるものが決まっていたり、期間中の洗髪や石鹸の使用を禁止したり、と色々な決まりがあります。
こちらも、宗派や家族によって異なることがあったり都市部に住む人では緩やかになっていたりします。
韓国の場合(仏教・キリスト教)
お隣の韓国においては仏教とキリスト教が主な宗教となっています。以前は仏教の人がほとんどでしたが、近年キリスト教の人が増えていると言われています。
韓国においては、仏教の方の場合、四十九日の法要などはありますが、喪に服す期間は、その故人や関係性に関わらず3日間だけ、となっています。
日本人で神道以外の宗教に入っている方の場合や配偶者が特定の宗教に入っている場合、とても対応に悩まれることになるでしょうが、まずは家族の慣習を確認し、相手を不快にさせないように、合わせるべきところは合わせ、気を配り行動すればよいでしょう。
喪中はがきを出す範囲
喪中はがきについては、誰しもが悩んだことがあるはずです。喪中はがきを出す範囲は、喪中の範囲と同じく、2親等までの場合に出すことが一般的です。
喪中はがきを出す時期
喪中はがきは、相手との行き違いを防ぐために、11月から12月中旬までに送るとよいでしょう。
喪中はがきを出せない場合は寒中見舞いを出す
また、年末近くに不幸があった場合には、寒中見舞いで喪中の旨を伝えるのが一般的です。
欠礼状を出していない人からの年賀状が届いたときには、一月七日(松の内)が過ぎたころに寒中見舞いを出すようにします。
「不幸があったために返礼が遅れた」ことのお詫びを書き添えるのが一般的なマナーとされています。
寒中見舞いについては「喪中に寒中見舞いを出してもよい?時期・マナー・文例集を紹介!」の記事もご参考ください。
最近では仕事関係者には年賀状を出すことも
最近では、プライベートとビジネスとを切り離し、仕事の取引先などには例年通りに年賀状を出すことが多くなっています。
そもそも、年賀状を出すこと自体、この数年で大きく変わってきていてメールなどで済ますことも増えてきました。
また、プライベートにおいても、親族の死去をわざわざ友人や知人に知らせる必要がない、と考える人についても同様に切り分けて行うケースも増えています。
喪中はがきの書き方
喪中はがきの書き方ですが、重要になるのは、「誰が」「いつ」「何歳で亡くなったか?」の3項目になります。
誰が?
まず、「誰が」の部分は故人の名前をフルネームで書きます。その後、差出人との「続柄」も書きます。連名で喪中はがきを出す場合は、一番目上の人から見た続柄を書きます。通常は夫から見た続柄になるので、自分の両親であれば「父」、妻の親であれば「義父」「義母」になります。
いつ?
「いつ」の部分は、「去る●月●日」「本年●月」「令和●年●月」などの書き方があります。「何日」まで記載しても良いですし、「何月」まででも問題ありません。
年齢
「年齢」の部分には通常数え年の年齢を書きます。しかし、最近では「享年九十五(満九十四歳)」のように、満年齢もあわせて記載することが多くなりました。
薄墨で書く必要はない
葬儀で渡す香典は薄墨で書くのがマナーですが、喪中はがきは亡くなってから時間が経過していることもあり、わざわざ薄墨で書く必要はありません。もちろん、故人を偲ぶ意味で薄墨を使いたい場合は、使用しても問題ありません。
喪中はがきを出す際の注意
喪中はがきを出す際は、できるだけシンプルな書体やハガキを選ぶように心がけましょう。また祝いの言葉や華やかな色合いも避けるべきです。
喪中はがきの文例
喪中はがきの文例を下記にご紹介致します。
喪中はがきでは句読点は打たないのがマナーとなっています。
喪中はがきについては「喪中ハガキとは?書き方と文例と出す相手と時期を徹底解説!」の記事もご参考ください。
本年●月に父●●(享年八十三歳)が永眠いたしました
ここに本年中に賜りましたご厚情を深謝いたします
時節柄一層のご自愛の程お祈り申し上げます
令和●●年十二月
郵便番号
住所
氏名
喪中につき年末年始のご挨拶ご遠慮申し上げます
祖母●●が●月●●日に九十二歳で永眠いたしました
本年中に皆様より賜りましたご厚情を深謝いたします
時節柄くれぐれもご自愛の程お祈り申し上げます
令和●●年十二月
郵便番号
住所
氏名
喪に服すことについてのまとめ
「喪に服すこと」について特に重要となるポイントを下記にまとめました。
【喪に服すとは?】
●故人を偲び供養に当たる期間
●「喪中」とも言う
【喪中と忌中の違いは?】
●「喪中」は故人を思い偲ぶ期間
●「忌中」は故人を祀って供養する期間
【喪に服す範囲】
●一般的に2親等まで
●自身または配偶者の兄弟姉妹・祖父母・孫までの範囲
【喪に服す期間】
自身または配偶者の兄弟姉妹:90日
子ども:90日
自身または配偶者の父母:13ヶ月
配偶者:13ヶ月
【喪に服す際に控えるべきこと】
●正月の祝い(年賀状)
●結婚式
●旅行
【喪に服す際に控えなくてもよいこと】
●お中元・お歳暮
●遺品の整理
【喪に服す際の寺社参拝】
●昔は神社への参拝や、氏神の祭事は控えるべきと言われていた
●最近では喪中や忌中の方に参拝をしてもらえるよう促す動きが出てきている
近年では、冠婚葬祭についてもかなり簡略化され、昔からの慣習を気にしない文化も浸透してきましたが、知っていて損はないことばかりです。
大切なことは、故人との関係性や期間に囚われず、その故人を大切に思い、偲ぶ気持ちを持つことです。
祝い事を控えたいと思えばそうすべきですし、偲ぶ気持ちを持ちながら友人の結婚式に参列することも、その人次第です。
祝い事や行事を長い期間避けるというのはとても難しいことですので、いざという時に恥をかいたりトラブルになったりしないようにだけ気をつけながら、自身の気持ちやスタンスを明確にして行動することが大切です。
そして、喪中かどうかに関わらず、故人を大切に思い続けてくださいね。
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール