孫に遺産を相続することは可能。一方、孫は法定相続人ではないので事前準備が必要。遺言書を書く、生前贈与するなどの方法がある。トラブルを避けるためには、法定相続人の遺留分を侵さないよう注意しつつ、事前に法定相続人に対しての説明と理解を徹底するとよい。
「お世話になった孫に遺産を残してやりたい…」
「孫の進学資金や結婚資金を残しておきたい」
こんなお悩みをお持ちではありませんか?
結論から言いますと、お孫さんに遺産を残すことは可能です。しかし、お孫さんは法定相続人ではないので、事前に準備をしておく必要があります。
法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人のことで、故人の配偶者を先頭に、子ども、直系家族(より近しい人から)の順に相続人となります。
お孫さんは法定相続人ではないため、何もしないままでは孫に一円も相続させることはできません。
お孫さんに遺産を相続させるには、以下3つの方法があります。
1.お孫さんに相続するという遺言書を書く
2.お孫さんを養子縁組する
3.代襲相続※が発生している場合
※代襲相続とは、本来相続をするはずだった相続人が、被相続人より先に死亡した場合にその子どもが代わりに相続をすること。
お子さんが亡くなられており、お孫さんに相続することが決まっている方。損しない相続をするためにも 代襲相続人を完全解説!相続割合・権利・範囲を紹介!をご覧ください。
遺言書を使えば、法定相続人ではない孫にも遺産を相続させることが可能です。お孫さんを養子縁組して子ども(法定相続人)にするのも有効ですね。ちなみに代襲相続が発生するのは、「実子が亡くなっている」場合のみです。
加えて、お孫さんに遺産を相続するとき、トラブルを防ぐために注意すべきポイントは3つあります。
1.遺留分の確認
2.相続税と贈与税の確認
3.法定相続人の意思の確認
遺留分とは、法定相続人が一定割合の財産を確保できる権利のこと。いくらお孫さんにたくさん遺産相続させたくても、法定相続人がもつ遺留分は侵さないように注意してください。
また、お孫さんに相続したり、生前贈与する場合でも税金がかかります。上限金額や納税義務が発生する条件・タイミングなどを押さえ、賢く遺産を渡せるようにしましょう。
覚えておきたいのが、お孫さんに遺産相続するなら法定相続人への説明と理解は必須だということ。
法定相続人ではないお孫さんに相続するとなれば、法定相続人の取り分は少なくなりますよね。もらえる金額が減るとなれば、お孫さんへの相続に納得しない人がいるかもしれません。
相続手続きで親族間のトラブルを生まないためにも、事前に法定相続人の意思の確認をしておくことが大切です。
本記事を最後まで読んで、親族とのトラブルなく、もっとも税金のかからない方法でお孫さんに遺産相続できる方法を見つけましょう!
INDEX
お孫さんに正しく遺産相続するための3つの方法
本来であれば、お孫さんは相続の対象者ではありませんが、下記3つの方法とケースでは、法的にも問題なく遺産を相続させることが可能です。
取り組みやすい順に解説いたしますね。
1.お孫さんに相続するという遺言書を書く
2.お孫さんを養子縁組する
3.代襲相続が発生している場合
お孫さんに相続するという遺言書を書く
最も取り組みやすく、確実にお孫さんに相続できるのは『遺言書を書くこと』です。
なぜなら、法定相続分※よりも故人の遺言書の方が優先されるためです。
※法定相続人とは、民法で定められた故人の財産を相続できる人を指し、相続できるかどうか、いくら相続できるのか(法定相続分)は基本的に故人との血縁関係によって変わります。
法定相続分よりも故人の遺言書の方が優先されることは、民法964条で規定されています。
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。
引用元: Wikibooks|民法第964条
つまり、遺言書にある故人の意志が最優先されるということ。
遺言書で「財産のこれだけを孫に相続させる」旨を明記しておけば、法定相続人でないお孫さんにも正しく相続できるのです。
正しい書式にのっとった有効な遺言書の書き方を知りたい方は、 遺言書の書き方を完全解説!効力・有効な遺言書の書き方を紹介!をご覧ください。
お孫さんへの相続を確実にするなら公正証書遺言書がオススメ
お孫さんへの相続を確実にしたい方は、遺言書の中でも公正証書遺言書をつくるのがオススメ。
なぜなら、公正証書遺言書は公的機関による確認と元本保管がおこなわれることで「有効な遺言書である保証」があるからです。
自筆証書遺言書など、その他の遺言書は場合によって無効になる可能性があります。
遺族に遺言書の確認で手間を取らせたくない、遺言書を確実に保管しておきたいという方は「 専門知識不要!自分で作れる公正証書遺言作成の流れと費用・必要書類 」をご覧ください。
公正証書遺言書にかかる費用は15万円程度
遺言書によく利用される特定の型(定型)を使用して文案を作成する場合、相場費用は「10万~20万円前後」ほどかかることも。
定型であれば作成の負担がそこまでかからず、打ち合わせの回数も1回で終わることが多いためこのくらいの相場になります。
ただし、公正証書遺言書にかかる費用は遺産の金額によっても変動するため、ご自身のケースでの相場は弁護士や司法書士といったプロに見積もりを出してもらいましょう。
お孫さんを養子縁組する
お孫さんを養子縁組し、実子と同列にもってくることでお孫さんに相続させることができます。
実子と同列になれば、お孫さん(養子縁組後)は法定相続人。実子と同じく、遺産の2分の1を子どもの頭数で割って相続します。
法定相続人の相続分は、民法第900条に定められています。
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1.子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
2.配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
3.配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
4.子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
引用元: Wikibooks|民法第900条
ただし、法定相続人になれる養子の人数には限りがあり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までですのでご注意ください。
お孫さんを養子縁組するのに家庭裁判所の許可は必要ない
通常、養子縁組する際には家庭裁判所の許可証が必要ですが、お孫さんを養子縁組する場合に家庭裁判所の許可は必要ありません。
これは、民法第798条のただし書きで決められています。
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。
引用元: WIkibooks|民法第798条
必要なものは以下3つの書類です。養子縁組する側(祖父母)が居住する役所へ提出します。
・届書1通(成年の証人2人が署名したもの。)
・戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
※養親および養子の本籍が届出地の市区町村でないときのみ
・本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
養子縁組するお孫さんが15歳未満の場合は代理法廷人※が必要なので注意してください。
※代理法廷人とは、法律によって代理権が発生する代理人のこと。本人が未成年者の場合に法律を代行する。
養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
引用元: Wikibooks|民法第797条
代襲相続が発生している場合
相続発生時に子が死亡している場合、子が受け取るはずだった財産を代襲相続人である孫が相続できます。
※代襲相続とは、本来相続をするはずだった相続人が、被相続人より先に死亡した場合にその子どもが代わりに相続をすること。
これは民法第887条で定められているため、遺言を残したり養子縁組をしたりする必要はありません。
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
引用元: Wikibooks|民法第887条
ただし、お孫さんに兄弟姉妹がいる場合、兄弟姉妹全てが代襲相続人になるので注意してください。
お孫さん同士で財産を分け合うことになるため、特定の孫に遺産を譲りたい場合には向かないといえます。
トラブルを避ける!3つの事前確認
本来の法定相続人でないお孫さんに相続するとなると、配偶者や実子から自分の取り分が減ることに対する不満が出たり、遺産の分配が完了するまで年数がかかったりなど、さまざまなトラブルが予測されます。
この項目では、お孫さんが実際に相続するときにトラブルを避けるために必要な3つのポイントを順番に押さえましょう。
1.遺留分の確認
2.相続税と贈与税の確認
3.法定相続人の意思の確認
遺留分の確認
遺留分とは、法定相続人に分配される最低限の相続分を表す言葉です。
お孫さんに相続する際にも、法定相続人への遺留分を残しておく必要があります。
仮に遺言書の内容が法定相続人に遺産を分配しないという内容だった場合、本来遺産を受け取れるはずの方が受け取れないことになりますよね。
その結果、法定相続人の生活が危ぶまれることになるため、そういった事態を防ぐために遺留分という制度が設定されています。
例えば、上記画像のように故人が遺言書に「全財産を孫へ遺す!」としても、配偶者と子ども達は最低限の取り分である遺留分は受け取ることが可能です。
相続人が遺留分でどんな権利を持っているか詳しく知りたい方は「 遺留分のもらえる範囲と割合!遺産を損なく受け取れる3つのポイント」の記事もご参考ください。
法定相続人が持つ遺留分の割合は絶対に侵さないこと!
法定相続人が持つ遺留分の割合は必ず守ってください。
守らないと、相続人であるお孫さんに法定相続人から多額の遺留分の請求が行くなど、親族間のトラブルに繋がりかねません。
実際に相続人が持っている遺留分割合について、下記にまとめました。相続人の組み合わせにより変動する相続、遺留分の割合を見ておきましょう。
相続人 | 遺産の相続割合 | 遺留分割合 |
配偶者のみ | すべて | 2分の1 |
子供のみ | すべて | 2分の1 |
配偶者と子供 | 2分の1ずつ | 配偶者が4分の1、子どもが4分の1 |
配偶者と2人の子供 | 配偶者が2分の1、子供が4分の1ずつ | 配偶者が4分の1、子どもが8分の1ずつ |
両親のみ | 2分の1ずつ | 3分の1ずつ |
配偶者と両親 | 配偶者が3分の2、両親が6分の1ずつ | 配偶者が3分の1、両親が12分の1ずつ |
配偶者と親 | 配偶者が3分の2、親が3分の1 | 配偶者が3分の1、親が6分の1 |
兄弟姉妹のみ(1人) | すべて | なし |
兄弟姉妹2人のみ | 2分の1ずつ | なし |
兄弟姉妹3人のみ | 3分の1ずつ | なし |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1 | 配偶者が2分の1、兄弟姉妹なし |
配偶者と2人の兄弟姉妹 | 配偶者4分の3、兄弟姉妹8分の1ずつ | 配偶者が2分の1、兄弟姉妹なし |
相続税と生前贈与の確認
お孫さんに遺産相続する場合、押さえておきたいのが「相続税」と「生前贈与」の仕組みです。
特に重要な2つのポイントを、順番に解説いたします。
1.お孫さんへの相続は相続税が2割増しになる
2.生前贈与後に3年以内に亡くなるとお孫さんに相続税がかかる(※お孫さんが法定相続人の場合)
お孫さんへの相続は相続税が2割増しになる
お孫さんに相続した場合、相続税が2割増しでかかります。
理由は、お孫さんが祖父母の遺産を相続した場合、父母を経由して相続するのと比べて相続税の支払いを1度免れる計算になるためです。
また、相続税の2割増しは、お孫さんを養子縁組した場合でも適用されますので注意してください。
生前贈与後に3年以内に亡くなるとお孫さんに相続税がかかる(※お孫さんが法定相続人の場合)
実は、生前贈与後3年以内に被相続人が亡くなると相続税が発生します。
これは法定相続人に対して生前贈与をしていた場合のみに適用されます。つまり、養子縁組したお孫さん、代襲相続で法定相続人になったお孫さんの場合のみ注意してください。
生前贈与のやり方、具体的な控除額などを知ってしっかり節税したい方は「お孫さんに生前贈与する」をご覧ください。
法定相続人の意思の確認
法定相続人ではないお孫さんが相続する場合、本来の法定相続人である妻や子供への意思を確認する必要があります。
独断でお孫さんへの相続をおこなった場合、法定相続人からの理解が得られずお孫さんと親戚間でトラブルになる可能性があるためです。
孫に遺産を相続したい理由、法定相続人への遺留分はしっかり残すことなどを生前に説明し、理解してもらうことが大切ですね。
相続以外の形でお孫さんに財産を残す3つの方法
相続以外の形でお孫さんに財産を残すには、3つ方法があります。お孫さんにより多くの遺産を残せる順に説明していきますね。
1.お孫さんに生前贈与する
2.お孫さんの教育・結婚子育て資金として贈与する
3.生命保険の受取人に指定する
お孫さんに生前贈与する
相続する前、生きているうちにお孫さんに財産を贈与してしまうのもひとつの手です。
生前贈与の具体的な手順やメリットデメリットを順に解説していきますね。
1.贈与税の上限は110万円
2.生前贈与のメリットデメリット
3.生前贈与をおこなう方法を3ステップで解説
贈与税の上限は110万円
生前贈与するときの贈与税は上限110万円までかかりません。贈与には年間110万円の基礎控除枠があるためです。
遺産が110万円以上ある方は、1年に一度贈与していくことで遺産を渡す暦年贈与がオススメ。
ただし、注意したいのが暦年贈与と似たシステムである「定期贈与」です。定期贈与だとみなされると、年間110万以下だとしても贈与税が発生してしまいます。
例えば、10年かけて1,000万の贈与をする場合、暦年贈与と定期贈与では下記のように「偶発的なのか?」もしくは「取り決めがあったか?」の違いがあるのです。
名称 | 説明 | 前提 |
暦年贈与 | 年110万の基礎控除を利用して10年間毎年贈与をすること | たまたま毎年贈与をおこなっていた |
定期贈与 | 1,000万円の贈与を10回に分けて贈与すること | 1,000万贈与する取り決めがあって分割で贈与していた |
定期贈与だと判断されないためには、以下2つのポイントを押さえてください。
・入金する時期や金額をバラバラにする
・贈与を受ける方が普段給与や生活費の支払いに使用している預金口座に入金する
生前贈与のメリットデメリット
生前贈与のメリットとデメリットを以下にまとめました。
生前贈与のメリット | 生前贈与のデメリット |
・贈与税の節税が見込める場合がある
・贈与する相手を自由に選べる |
・高い税金(相続税・贈与税)を支払う可能性がある |
生前贈与の一番のメリットは、相続とは異なり「贈与する相手を自由に選べる」点です。
法定相続人ではないお孫さんへも、望むだけ財産を分与することが可能ですし、暦年贈与や教育・結婚資金として渡せば贈与税は節税できることもあります。
生前贈与のデメリットは、場合によっては高い贈与税を支払う可能性があることです。
暦年贈与で年110万円の控除枠を使うつもりが、定期贈与だと判断されて贈与税を支払う羽目になるかもしれません。
養子縁組したお孫さんや、代襲相続するお孫さんの場合、生前贈与してから3年以内に被相続人が死亡すると相続税がかかってしまうこともあります。
お孫さんに確実な生前贈与をしたいという方は、プロの力に頼ることも考えましょう。詳しくは「相続に関して困ったときの3つの相談先」をご覧くださいね。
生前贈与をおこなう方法を3ステップで解説
生前贈与をおこなう際に必要な手続きは、何を贈与するかにより異なります。
すべてに共通していえるのは、以下2つ。
・贈与契約書を作ること
・税金の申告を忘れずおこなうこと
贈与契約書は必ずしも必要なものではありませんが、いざという時に「どれだけ贈与したか」がパッとわかる証拠として活用できます。
2通作成し、割印をして各自が1通ずつ保管するにしてください。
後々の親戚間トラブルを防ぎ、税務調査の際にもサッと提示できるように持っておきたい書類です。
また、お金を移動させる以上税金の申告が必要です。年度末の確定申告で忘れず申告するようにしてください。
お孫さんの教育・結婚子育て資金として贈与する
贈与相手が直系卑属のお孫さんである場合、教育資金や結婚・子育て資金として贈与することで大幅な節税ができます。
このように、教育資金や結婚・子育て資金として贈与する仕組みを「非課税措置の特例制度」と呼びます。
ただし、渡したお金には使用期限があり、渡す名目により控除額が異なるなどの制約があります。
非課税措置の特例制度を使う際の注意点を順に説明していきますね。
非課税限度額は大きいがある時期までに使い切る必要がある
非課税措置の特例制度を使えば、控除額は大きいですが、決められた時期までに使い切る必要があります。
教育資金の場合、30歳になった時点で贈与された財産を使い切れなかった場合は、その残額に対して贈与税がかかってくるので注意してください。
結婚、子育て資金の場合、受け取った側が満50歳に達するまでに使いきれなかった場合にその残額に対して贈与税がかかります。
教育資金の一括贈与制度で贈与税の上限は1,500万に
教育資金の一括贈与制度を使えば、贈与税の上限は1,500万円になります。
その他、特例制度を使うために必要な条件を以下にまとめました。
非課税枠 | 最大1,500万円(学校以外:500万円) |
受け取る人の年齢制限 | 0~30歳 |
受け取る人の所得制限 | 前年の所得金額が1,000万円以下 |
1,500万までが非課税となる教育資金 | 学校に対して直接支払うもの
例) 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、入学試験の検定料、学用品費、修学旅行費、学校給食費など |
500万までが非課税となる教育資金 | 教育に関して学校など以外に対して支払うもの
例) ・習いごとの月謝や謝礼、入会金 ・通学定期代 ・留学渡航費 ・入学・転入学・編入学のための引っ越し費用など |
参考サイト: 国税庁|祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
結婚・子育て資金の一括贈与制度で贈与税の上限は1,000万に
結婚・子育て資金の一括贈与制度を使えば、贈与税の上限は1,000万円になります。
その他、特例制度を使うために必要な条件を以下にまとめました。
非課税枠 | 最大1,000万円(結婚資金:300万円) |
受け取る人の年齢制限 | 0~30歳 |
受け取る人の所得制限 | 前年の所得金額が1,000万円以下 |
結婚に際して非課税となる教育資金 | ・ 挙式費用、ドレスなどの婚礼(結婚披露)費用
※婚姻の日の1年前の日以後に支払われるものに限る ・ 家賃、敷金等の新居費用、転居費用 |
妊娠、出産及び育児に際して非課税となる教育資金 | ・ 不妊治療や妊婦健診の費用
・ 分べん費や産後ケアの費用 ・ 子の医療費や幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など |
参考サイト: 国税庁|父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
一括贈与制度をおこなう方法を3ステップで解説
一括贈与制度をおこなうには専用の申告書に以下3点の添付書類をつけて税務署へ申請します。
・贈与の事実及び年月日を証明する書類のコピー
・受取人の戸籍の謄本又は抄本や住民票の写しなど
※受取人の氏名、生年月日、住所又は居所および贈与する側との続柄を証する書類
・受け取る人の前年度の合計所得金額がわかる書類
専用の申告書については、以下リンクよりダウンロード可能です。
生命保険の受取人に指定する
お孫さんを生命保険の受取人に指定すれば、まとまった額のお金を渡せます。
保険金は遺産分割の対象ではないため、受取人のお孫さんは法定相続人に左右されず固有の権利を持つことになります。
生命保険金は遺産ではないが相続税がかかることもある
被相続人の保険金を受け取る場合、法定相続人かどうかでかかる税金が変わります。
1人あたり500万の控除枠があるのは法定相続人のみで、お孫さんが相続した場合、保険金の金額そのままに相続税が発生してしまいます。
加えて、法定相続人以外への相続は相続税が2割増しになります。詳しくは「お孫さんへの相続は相続税が2割増しになる」をご覧ください。
お孫さんへの遺産相続に関してよくある5つの質問
この項目では、お孫さんへの遺産相続に関してよくある質問を5つご紹介いたします。
1.お孫さんに生前贈与すると相続税はかかるか?
2.被相続人のお孫さんに遺留分はあるか?
3.遺産のすべてをお孫さんに相続させたい
4.未成年のお孫さんに遺産を相続させたい
5.未来のお孫さんに遺産を相続させたい
お孫さんに生前贈与すると相続税はかかるか?
お孫さんに生前贈与した場合、贈与税はかかりますが相続税はかかりません。
相続性がかかるのは、お孫さんに生前贈与してから3年以内に被相続人が死亡した場合のみです。
理由は、被相続人が死亡直前に、相続逃れのためだけに生前贈与することを防ぐためです。
なお、2024年1月1日からは期間が延長され、被相続人の死亡7年以内の生前贈与に対して相続税がかけられるようになるので注意してください。
被相続人のお孫さんに遺留分はあるか?
被相続人のお孫さんに遺留分はありません。遺留分を持つのは被相続人だけだからです。
ただし、被相続人がお孫さんを養子縁組をして実子と同位にすると、お孫さんでも遺留分が発生します。
遺産のすべてをお孫さんに相続させたい
遺産のすべてをお孫さんに相続させるのは、ほぼ不可能です。なぜなら法定相続人が遺留分を持つため、少なからずとも法定相続人に財産相続する必要があるためです。
遺留分を犯さずにお孫さんに相続させることなら可能です。ただ、この場合でも相続方法によっては贈与税や相続税がかかるので注意しましょう。
孫が損をしないよう、節税して相続する場合は「お孫さんに正しく遺産相続するための3つの方法」をご覧ください。
未成年のお孫さんに遺産を相続させたい
未成年のお孫さんに遺産を相続させることは可能です。
代襲相続もしくは養子縁組していない場合はお孫さんに相続できませんので、生前贈与するのがオススメ。
生前贈与で気を付けるべきことや、節税方法などは相続以外の形でお孫さんに財産を残す3つの方法をご覧ください。
未来のお孫さんに遺産を相続させたい
まだ生まれていないお孫さんに相続させることはできませんが、胎児の状態の場合は相続させることが可能です。
これは民法第886条に規定されています。
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
引用元: Wikibooks|民法第886条
代襲相続もしくは養子縁組していない場合はお孫さんに相続できませんので、生前贈与するのがオススメ。
生前贈与で気を付けるべきことや、節税方法などは「相続以外の形でお孫さんに財産を残す3つの方法」をご覧ください。
相続に関して困ったときの相談先3つ
「ひとりで相続手続きを進めるのは無理!」
こんな方は、相続に関する手続きをプロに相談・解決してもらうことをおすすめします。「緊急度の高い順」にご紹介しています。相談を上手に活用して、検認作業をスムーズに進めていきましょう。
1.弁護士 | 2.行政書士 | |
費用 |
25万円~ |
15万円~ |
メリット | ・各種書類の準備や申し立て作業など、相続に必要な一切の作業をまるごと依頼できる
・相続のアドバイスもしてもらえる |
・戸籍謄本などの書類を取り寄せてもらえる
・弁護士よりも依頼費用が安い |
デメリット | ・費用が高額になりやすい | ・相続に関する争いには対応できない |
いきなり、弁護士や行政書士に依頼するのは、ハードルが高い…という方は、
で、一度相談してみるのがおすすめです。
弁護士(相場:25万円~)
弁護士へ相続に関する相談をする場合は、以下の手順で依頼しましょう。
1.法律相談事務所へ遺産争いの内容を相談する
2.費用について弁護士から説明を受ける
3.着手金の支払い後、弁護活動を開始してもらう
必要に応じて、弁護士と都度打ち合わせが入る場合もあります。
また、弁護士へ遺産争いに関する相談をする場合は、以下の費用がかかることを覚えておきましょう。
費用の種類 | 概要 | 費用相場 |
相談料 | 遺産争いの相談にかかる費用 | 無料、もしくは約5,000円~(30分) |
着手金 | 弁護士が遺産分割や調停に着手した場合の費用 | 20~30万円 |
報酬金 | 遺産争いが解決した場合に発生する費用 | 経済的利益や着手金相場によって変動 |
実費 | 印紙代や切手代、交通費など | 1~10万円 |
日当 | 出張費用 | 約5万円 |
参考: 「相続会議」朝日新聞社
行政書士(相場:15万円~)
行政書士へ相続に関する相談をすると、弁護士に依頼するよりも比較的安く済ませることが可能です。
金額は15万円程度としましたが、おこなう手続きの複雑さや処理する案件の数、相続人の数によって変動します。
行政書士の中には、サービスごとに料金表を設けているところや、パック料金で一律の料金を定めているところがありますので、依頼する内容の複雑さにより使い分けましょう。
無料相談を利用して専門家を紹介してもらう
相続に関するお悩みに応える、 日本司法支援センター(法テラス)がおすすめです。
日本司法支援センター(法テラス)は国が設立した法的トラブルの総合解決所です。誰でも無料で相談でき、適切な支援先を紹介してもらうことができますよ。
『 やさしい相続』でも、24時間365日無料相談で承っています。電話でもメールでも行えますのでお気軽にご連絡下さい。しつこい勧誘等も行いません。
大切なことだからこそ、丁寧に・確実に進めていきましょう。
まとめ
今回はお孫さんに遺産を相続させる方法について解説してきました。
遺産相続できるのは法定相続人のみ。よって、法定相続人ではないお孫さんに相続するには事前の準備が必要です。
お孫さんに遺産を相続させるには、以下3つの方法があります。
1.お孫さんに相続するという遺言書を書く
2.お孫さんを養子縁組する
3.代襲相続※が発生している場合
※代襲相続とは、本来相続をするはずだった相続人が、被相続人より先に死亡した場合にその子どもが代わりに相続をすること。
お子さんが亡くなられており、お孫さんに相続することが決まっている方。損しない相続をするためにも 代襲相続人を完全解説!相続割合・権利・範囲を紹介!をご覧ください。
加えて、お孫さんに遺産を相続するとき、トラブルを防ぐために注意すべきポイントは3つあります。
1.遺留分の確認
2.相続税と贈与税の確認
3.法定相続人の意思の確認
遺留分とは、法定相続人が一定割合の財産を確保できる権利のこと。いくらお孫さんにたくさん遺産相続させたくても、法定相続人がもつ遺留分は侵さないように注意してください。
また、お孫さんに相続したり、生前贈与する場合でも税金がかかることがあります。
生前贈与のメリットとデメリットをまとめました。
生前贈与のメリット | 生前贈与のデメリット |
・贈与税の節税が見込める場合がある
・贈与する相手を自由に選べる |
・高い税金(相続税・贈与税)を支払う可能性がある |
生前贈与の中でも、教育資金や結婚、子育て資金として特例制度を使えば大幅な節税をおこなうことができます。
教育資金の一括贈与制度を使えば最大1.500万円分が非課税になります。
非課税枠 | 最大1,500万円(学校以外:500万円) |
受け取る人の年齢制限 | 0~30歳 |
受け取る人の所得制限 | 前年の所得金額が1,000万円以下 |
1,500万までが非課税となる教育資金 | 学校に対して直接支払うもの
例) 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、入学試験の検定料、学用品費、修学旅行費、学校給食費など |
500万までが非課税となる教育資金 | 教育に関して学校など以外に対して支払うもの
例) ・習いごとの月謝や謝礼、入会金 ・通学定期代 ・留学渡航費 ・入学・転入学・編入学のための引っ越し費用など |
参考サイト: 国税庁|祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
結婚・子育て資金の一括贈与制度を使えば最大1,000万円まで非課税になります。
非課税枠 | 最大1,000万円(結婚資金:300万円) |
受け取る人の年齢制限 | 0~30歳 |
受け取る人の所得制限 | 前年の所得金額が1,000万円以下 |
結婚に際して非課税となる教育資金 | ・ 挙式費用、ドレスなどの婚礼(結婚披露)費用
※婚姻の日の1年前の日以後に支払われるものに限る ・ 家賃、敷金等の新居費用、転居費用 |
妊娠、出産及び育児に際して非課税となる教育資金 | ・ 不妊治療や妊婦健診の費用
・ 分べん費や産後ケアの費用 ・ 子の医療費や幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など |
参考サイト: 国税庁|父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
生前贈与をするにしても、上限金額や納税義務が発生する条件・タイミングなどを押さえ、賢く遺産を渡せるようにしましょう。
自分の相続方法が正しいかどうか、後々トラブルにつながることは全て無くしておきたいなどの心配がある方は一度プロに相談するのがおすすめです。
弁護士や行政書士のほか、法テラスといった無料で相談できる施設もありますよ。
この記事があなたにとって後悔のない相続に役立つよう祈っております。
【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール