その家の先祖から現在まで、どのような人物がいてどんなルーツがあったのかを図で表すことができる家系図。
自分の家には無いから作ってみたいと思っている方もいると思います。
しかし、家系図を作る上で様々な注意点があることをご存知でしたか?この記事では家系図とはどのようなものなのか、どうやって作るのかについて解説します。
もしこれから家系図を作りたいという方はぜひ参考にしてみてください。
INDEX
家系図とは?
そもそも家系図とは一体なんなのか、という所から解説していきたいと思います。
家系図とは、その家の婚姻関係や養子など先祖をたどって作成するもので、巻物や掛け軸などに図面として残すものです。
また、家系図と似た言葉で家系譜というものがあります。
この二つは厳密な違いはないですが、業者によっては二つを区別していることがあるため知っておくと便利です。
業者が使う家系譜とは、家系図を作成する上で収集した情報をまとめ上げたものになります。つまり、家系図よりも情報が多いものになります。
家系とはなにか
次に家系とはなにかについてです。家系とはその家の親族や先祖がどのような人物なのか、代々の血筋のことを指します。
これをわかりやすく図にしたものが、家系図になります。
自分のルーツを知ることができる家系図
家系図を作っていく上で、主に使用されるのは戸籍になります。
国が保有している戸籍をたどっていくことで家系図を作成していきますが、その際に自分の先祖は遠い地に住んでいたことや、どんな人物だったのかが判明していきます。
それを知ることで、自分のルーツを知ることができます。最近では終活の一つとして行われることもあるようです。
家系図作成の魅力とは?
家系図を作ることはもちろん必須ではありません。ではなぜ家系図を作るのでしょうか?
それは、家系図を作成することで生じる魅力があるからです。家系図を作成していくと、自分の祖先やゆかりのある土地がわかります。
そこで、その土地に訪れるというルーツの旅をすることができます。
また、家系図を作ることで自分の両親や子ども、孫などに家の説明ができるほか、代々継承させることができます。
このように、自分のためだけではなく、家族のためになるのが家系図作成の魅力です。
家系図作成のメリット・デメリット
では家系図作成のメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
ここではそれぞれメリット・デメリット分けて解説していきます。
家系図作成のメリット
家系図作成のメリットの一つに、相続手続きがスムーズに行えるという点が挙げられます。
相続手続きで一番難易度が高いものに、相続人調査があります。この相続人調査では、相続の権利を有する人物は誰になるのかを、被相続人(相続財産を残した人)の戸籍から読み解く必要があります。
もし家系図があれば相続人調査を行う必要がなくなるため、相続手続きの負担が減ります。
もう一つは自分のことを知ることができるという点が挙げられます。
自分の先祖を知ることで、自分のことを深く知ることができ、新しいことに気付けるかもしれません。
また、それによって知的好奇心を満たすことができます。
家系図作成のデメリット
では家系図作成のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
家系図を作る方法には、自分で行う方法と専門家に作成を依頼する方法があります。
それぞれの方法については後述しますが、自分で行う場合にはかなりの時間と手間が必要になります。また、専門家に依頼する場合には料金が発生します。
家系図は自分で作ることができるのか?
先ほどにもご紹介した通り、家系図は自分で作ることが可能です。
ただし、かなりの時間や手間が必要なため、ある程度時間を確保しておく必要があります。
自分自身が家系図を作る方法
自分自身が家系図を作る場合には、役所で戸籍を取得して行く方法と、現地調査や家紋などから家系を調べるなどがあります。
具体的な方法は後述します。
専門的な業者に家系図作成を依頼する方法
もう一つの方法が、専門的な業者に家系図作成を依頼する方法です。
この場合には専門業者が全て必要な書類などを収集し、作成まで行ってくれるので自分が行う作業は特にありません。
ただし、料金がかかるため予算に合った業者を選ぶ必要があります。
自分自身で家系図を作る方法
では具体的に自分自身で家系図を作る方法について見ていきましょう。まずは戸籍から家系図を作成する方法について解説していきます。
この戸籍から家系図を作る方法が、自分で作る場合の最もオーソドックスな作成方法となりますので、自分で作成したい人はぜひ参考にしてみてください。
役所から戸籍を取得する
まずは役所から戸籍を取得します。
戸籍は本籍のある自治体で管理しているため、その自治体に直接行くか遠方の場合には郵送で届けてもらう必要があります。
もし本籍地が分からない場合には、住民票に記載されているため住民票を取得してみましょう。
郵送で取得したい場合には、その自治体のホームページで請求書がダウンロードできるか確認します。
請求書の様式は自治体によって異なりますが、記入する内容は下記の項目が一般的です。
・本籍地
・筆頭者の氏名
・取り寄せる人の氏名
・請求する戸籍の種類(戸籍・除籍・改製原戸籍など)
・戸籍の使用目的
取り寄せるまでには約1週間前後かかりますので、注意が必要です。また、郵送時に必要な書類は下記のようなものが挙げられます。
・定額小為替証書
・返信用の封筒
・本人確認書類(運転免許証・パスポートなどの写し)
また、戸籍は直系親族のものは自由に取得できますが、兄弟の戸籍は相続などの理由がない場合には取得できません。
戸籍の収集を進めていく上で、古いものだと本籍地がすでに存在しない名称であったり、合併している時があります。
そのような場合にはインターネットで調べて現在の自治体を調べて問い合わせてみましょう。
また、戸籍には保存期間が定められています。そのため保存期間が過ぎている戸籍は取り寄せることができないケースがあります。
しかし、実際に処分されているかどうかは自治体によって異なるためこちらも問い合わせてみると良いでしょう。
取得した戸籍から家系図を書き出す
無事に戸籍が取得できたら、戸籍を読み解いて家系図を書き出します。
この作業のうち最も難解なのは、戸籍の読み解きです。
最近の戸籍であれば特に問題ありませんが、家系図を作る際には遡れる範囲での古い戸籍が必要となります。
現在取得できる戸籍の種類は下記の通りです。
・明治19年式(取得できる最も古い戸籍)
・明治31年式
・大正4年式
・昭和23年式
・平成6年式(データ化された現行の戸籍)
平成6年式と昭和23年式以外の戸籍は、全て手書きで保管されています。
そのため、書いた人によってはクセが強く、そもそも書いてある文字の判別ができないという可能性があります。
また、誤字脱字も可能性としてはあるため、読解には注意が必要です。
読解が済んだら、紙に家系図として起こします。特に決まった様式はありませんので自由に作成して大丈夫です。
ただし、一般的には夫婦や親子関係を表すための記号があるため、調べておくと最終的に出来上がった時に見栄えが良くなります。
また、戸籍を読み解きながら情報を整理するためにパソコンを利用して、メモとしてエクセルなどで仮の家系図を作成しておくのも良いでしょう。
戸籍以外から家系図を作る方法
次に戸籍以外から家系図を作る方法について解説します。
戸籍以外の場合には、現地調査・名字による調査・家紋による調査の三つの方法があります。それぞれの方法について見ていきましょう。
現地調査
現地調査とは、文献などである程度自分のルーツの土地を探してから行う調査方法です。
本家や分家への聞き取り調査や菩提寺、墓石や位牌などから地道に調べていくため、数ヶ月ほどかかる可能性があります。
名字から家系を調べる
普段使用している名字からは、実は様々な情報を引き出すことができます。
名字によっては先祖の職業や身分などが分かったり、起源やどの地域に分布しているのかなどがわかることがあります。
ただし、一般の人が名字を持つようになったのは明治時代の「平民苗字必称義務令」によるため、明治時代までしか遡れないことがあります。
家紋から家系を調べる
お墓まいりなどで墓石に彫ってある家紋を見たことはあるでしょうか?家紋も名字同様に、色々な情報を持っています。
家紋自体は鎌倉時代に生まれたとされていますが、一般に広まったのは江戸時代だと言われています。
家紋からは同族関係などを読み取ることができますが、一つの家に一つまでと決まっているわけではないため細かい情報まではわかりません。
そのため、家紋だけでなく名字などと組み合わせて調べる必要があります。
専門的な業者に家系図作成を依頼する方法
では続いて専門的な業者に家系図作成を依頼する方法について解説していきます。
依頼した場合の費用目安やその場合のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
そもそも家系図の作成を誰かに頼むことはできるのか
今までの解説で、「家系図を自分で作ることは難しいのではないだろうか」と心配になった人がいると思います。
特に戸籍の収集などは大変時間も手間もかかるものです。そんな人のために、家系図の作成を専門として取り扱っている業者は数多くあります。
家系図の作成を外部に依頼したい場合には、行政書士か家系図作成を専門としている代行業者に依頼することが一般的です。
家系図作成を「行政書士に依頼する」という選択肢
行政書士はいわゆる士業の一つであり、みなさんが関わるのは相続の相談の際くらいなのであまり馴染みがないかもしれません。
司法書士は遺産分割協議書の作成や遺言の作成・検認、相続財産の調査などを請け負っています。
そのため、法律や書類などを専門的に取り扱っているため家系図の作成も業務として取り扱っています。
また、元々は戸籍という重要な個人情報の書類を取り扱うため、司法書士が独占的に家系図の作成を取り扱っていたのですが、司法書士以外の業者が徐々に家系図作成代行を始めるようになりました。
こういった経緯により、現在インターネットで「家系図 作成」と検索すると多くの業者がヒットします。
国家資格である行政書士に依頼することで、個人情報取り扱いの信頼はある程度担保できると言えるでしょう。
専門家に家系図作成を依頼するメリット
専門家に家系図作成を依頼するメリットとして、時間の節約が一番に挙げられます。
戸籍を取得できる自治体は、平日の10:00〜17:00などの限られた時間しか空いていないため、昼に働いているような場合には休暇をとって自治体に行かなければいけません。
もし取り寄せを行う場合でも、書類の作成や返送などが必要ですし、取得できるまで1週間前後かかります。
取得した後にも戸籍の読解や家系図の作成など、個人でやるにはやらなければいけないことが多いため、完成まで一ヶ月以上かかることは覚悟しておいた方が良いでしょう。
また、図面を作成する際にもどのくらいの大きさの紙にするのか、もし飾るのであれば額縁を探して購入する必要があります。
こういったあらゆる手間を一気に省けることが最大のメリットと言えるでしょう。
また、家系図の品質が高いというのもメリットの一つです。
紙の質や額縁などのクオリティなど、子供や孫の代まで引き継いでいきたいというような場合には、しっかり保管できるように立派なクオリティで作成してもらうと良いでしょう。
専門家に家系図作成を依頼するデメリット
では逆に専門家に家系図作成を依頼するデメリットには何が挙げられるのでしょうか。
一つは調査内容や品質のクオリティによって費用が高額になる可能性があるという点です。
高価な額縁や紙などを使用すればするほど作成金額は上がります。
また、業者が増加していく一方で中には司法書士が独立して行なっている場合や、提携している司法書士に実務自体は任せている業者などその実態は様々です。
また、その多くは中小企業のため依頼する前に評判や実績を調べておくことが重要です。
その際には司法書士が運営している会社なのかどうかを指標としてチェックしてみると良いかもしれません。
専門家に家系図を作成する場合の金額の目安
家系図の作成には、戸籍だけで作成する場合と戸籍で遡れる限界よりも遡って現地調査などを行なった上で作成をする2通りがあります。
戸籍だけで作成する場合には、現地調査などを行う場合よりも金額は安くなります。
戸籍だけの場合にはだいたい50,000円から100,000円前後の金額が一般的です。
また、自分の名字だけでなく二家系の家系図の場合には金額は2倍になります。
そのため、家系図といってもどこまでの家系をカウントするのかでも金額は大幅に変わります。
ただし、戸籍だけの家系図の作成では、自力でも行うことができるため、もし時間に余裕があれば自分で行うことを検討してみても良いかもしれません。
また、完成した家系図を受け取るだけでどういった人物だったのかなど、もし先祖の情報を知りたいような場合には、そういったオプションがある業者を選んでおくことが大切です。
現地調査や文献調査を行う家系図の作成では、遡る年代によっても金額が異なりますが、800,000円から1,500,000円とかなりの金額になります。
現地調査と文献調査を行う場合には家系図だけでなく調査の際に集まった資料などを合わせていただけます。
資料の中には墓地配置図や分布図などが含まれます。
また、この調査では郷土資料や菩提寺・出身地での実地調査が行われるため作成までに半年から1年以上かかることも多いです。
戸籍調査の場合には明治時代付近までの家系図になりますが、現地調査・文献調査の場合には江戸時代付近まで遡れることがあるため、より立派な家系図が作成できます。
自分にあった家系図作成の方法を選ぶ
まずは大きく分けて家系図の作成には自分で行うやり方と、専門業者に依頼をして作成してもらうやり方があります。
そして、家系図の内容には戸籍だけかあるいは現地調査や文献調査を行なった内容まで含めるかどうかの2パターンがあります。
ここまでの内容は今までにご紹介してきたものですが、家系図には様式や種類というものもあります。
大きく分けて下記の3種類があり、そこから選ぶ必要があるので事前に完成イメージを決めておきましょう。
・縦系図(縦書き)
・縦系図(横書き)
・横系図
巻物で保管しておきたいような場合には横系図が一般的で、掛け軸などで保管しておきたい場合には縦系図を選ぶことになります。
また、1家系だけでなく複数の家系を作成したい場合には、縦系図(横書き)が最適です。
そして家系図に記載する情報としては、下記が挙げられます。
・家紋
・名前
・戒名
・生年月日
・本籍地
・没年月日
・性別
・顔写真
この中から記載して欲しいものをピックアップして、家系図と余白のバランスに合わせて記載していきます。
このように、まずは「どのような家系図を作成したいのか」を検討してから自分に合わせた家系図を作成するようにしましょう。
家系図の作成方法についてのまとめ
ここまで家系図の作成方法について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
家系図には種類や作り方、専門業者への依頼の場合のメリット・デメリットなど押さえておくべき点が多いため、ここで重要なポイントをまとめていきます。
・家系図とは先祖から現在までの家のルーツをまとめたものである。
・家系図には、縦系図(縦書き)と縦系図(横書き)と横系図の3種類がある。
・家系図は巻物で保管したり、額装をして飾ったり、掛け軸にするなどの方法がある。
・家系図のメリットは相続手続きの際に利用できる点と、作成していく上で知ることができる情報によって自分のルーツを知ることができるという点である。
・家系図のデメリットは、自分で作成する場合には膨大な時間がかかる点と、業者に依頼する場合には希望によって高額になるという点である。
・自分で家系図は作成することができる。また、自分で作成する場合には戸籍を取得し、それを元に作成する。戸籍以外で作成する場合には現地調査、名字、家紋などを頼りに情報を集めていく。
・家系図の作成は業者へ依頼することができる。また、行政書士がもともと家系図作成の仕事を請け負っていたため行政書士が手がけていることが多い。
・業者へ依頼する場合のメリットは、時間の節約とクオリティの高さが挙げられる。
・業者へ依頼する場合のデメリットは、費用が高額になる可能性があるという点と、業者が多いため確かな実績や行政書士が在中しているなど事前に調べておく必要がある。
・専門家へ依頼する場合、戸籍だけでの作成費用は、1家系の場合は50,000円から100,000円前後、4家系から全系統の場合は150,000円から250,000円程度である。
・戸籍だけでなく文献調査や現地調査も含める場合には、800,000円から1,500,000円程度である。
家系図は自分のためだけではなく、両親や子どもなど自分の家の財産になるものです。
もし気になっている方がいたら、家系図をこの機会に作ってみることを検討してみてはいかがでしょうか。
【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)
- 略歴
- 高橋圭 (たかはし けい)
- 青山学院大学法学部卒業。
- 2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
- 司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員
プロフィール