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遺留分のもらえる範囲と割合!遺産を損なく受け取れる3つのポイント

Jun 22 2022

「遺留分」とは、最低限の遺産を相続人が受けることのできる権利で、不公平な遺言が残されている場合などに、請求することができます。もらえる範囲や割合、期間など事前に知ることで、本来受け取れる遺産を損することのないよう、詳しくみていきましょう。

「遺留分って、具体的にはどのくらいもらえるの?」

「自分が遺留分の対象なのか知りたい」

「遺産の額に納得ができない…遺留分を取り戻したい!」

遺留分について、「確実にもらえる遺産」というのは理解しているつもりだけど、請求できる期間や、相続できる範囲や割合まで詳しく分からない方も多いのではないでしょうか。

遺留分とは、最低限の遺産を相続できる権利で、不公平な遺言が残されている場合などに、返還請求をすることもできます。

よって、遺留分の対象になる場合は、確実に損することなく遺産を相続することができるのです。

しかし、期間や相続できる範囲や割合が分かっても、請求手続きの仕方がよく分からない方や、身内と揉めたくないという理由で諦めている方もいるかと思います。

そこで本記事では、遺留分で抑えておくべき「いつ」「誰が?」「いくらもらえるのか?」の3つのポイントと、さらに遺留分を受け取れなかった際の解決方法や事前対策についてまでご紹介します。

ご自身が後悔、損することなく遺産をスムーズに受け取る為にも、ぜひ参考にされてください。

遺留分とは?

遺留分とは、『一定範囲の相続人に認められた、最低限保証される遺産取得分の制度(遺言があることが前提)』です。

遺言は亡くなられた方の意思や思いが入るため、相続人や相続割合が偏ってしまうことも珍しくありません。

例えば、「すべての財産は長女に相続させる」「愛人にすべての財産を譲る」「お世話になった○○さん(第三者)へすべての財産を譲る」などの遺言が残されていた場合でも、一定範囲の相続人は、主張すれば遺留分として遺産を獲得することができます。

このように、遺留分は、『遺言の内容よりも強い権利』になり、最低限の遺産を相続できると言えるでしょう。

遺留分を受け取れる人の範囲

受け取れる人 受け取れない人
・配偶者

・直系卑属

子ども、孫、ひ孫

・直系尊属

親(父母)、祖父母

・兄弟姉妹

・甥姪

・相続欠格

相続欠格事由に当てはまる場合(遺言書の偽造や変造など)は相続権を失います。

・相続廃除

亡くなった方に対する虐待や侮辱があった場合、被相続人の意志により相続権を失います。

その他、家庭裁判所へ相続放棄の申述を行った場合、初めから相続人にならなかった者とみなされます。

・相続放棄

遺産を相続する権利を自ら放棄した場合も、遺留分を受け取れません。

遺留分が受け取れる人を『遺留分権利者』と言います。

遺留分権利者は、上記表のように全ての相続人に認められているわけではありません。

遺留分の割合

遺留分の割合は『法定相続分の2分の1』となります。

ですが、親(父母)や祖父母などの直系尊属だけが相続人の場合は、遺留分の割合は3分の1です。

相続人がもらえる遺留分の基本的な割合は次のとおりです。

相続人 全員の

遺留分

配偶者の

遺留分

子どもの

遺留分

親の

遺留分

兄弟の

遺留分

配偶者のみ 1/2 1/2 ×
子どものみ 1/2 1/2 ×
父母のみ 1/3 1/3 ×
兄弟のみ × × × × ×
配偶者と子ども 1/2 1/4 1/4 ×
配偶者と父母 1/2 1/3 1/6 ×
配偶者と兄弟 1/2 1/2 ×

父母が2人揃っている場合や、子どもが複数いる場合などは、遺留分を人数分で割ります。

計算方法

遺留分の計算方法は、

相続財産÷1/2※÷相続割合=各自の遺留分

※親・祖父母が相続人の場合は1/3

となります。

相続財産には、下記も含まれます。

・被相続人が死亡時に所有している財産

(預貯金や株式、有価証券、不動産、土地など)

・1年以内に生前贈与された財産

・借金や未払金などのマイナス財産

※相続財産から差し引かれる

相続割合は、「遺留分の割合」でもご紹介したように、相続人によって異なります。

遺留分の計算方法の例

 

夫が亡くなり、遺言書に残されていた内容は「長男に全額の財産を譲る」とありました。

長男が1人で相続することになっていた場合、配偶者である妻と次男は遺留分が保証され、長男に請求することができます。

この場合、配偶者と子ども2人が相続人になりますので、総体的遺留分は遺産全体の2分の1になります。

そして、配偶者の個別的遺留分は4分の1、子ども2人の遺留分は4分の1×2分の1=8分の1です。

配偶者には、遺産総額の4,000万円×4分の1=1,000万円の遺留分が、子ども2人には、遺産総額4,000万円×8分の1=500万円の遺留分が認められます。

結果、配偶者は長男に対して1,000万円、次男は長男に対して500万円の遺留分を請求できます。

遺留分の請求時効

遺留分の請求時効は、『遺留分があることを知った時から1年』または、『被相続人が亡くなり、相続が発生してから10年』と決められています。

遺留分権利者が、相続の開始および贈与または遺贈があったことを知った時から、1年間の間で請求を行わない場合や、相続開始の時から10年を経過した場合も時効によって、請求する権利を失ってしまうため注意しましょう。

遺留分が侵害された場合の4つの解決策

遺留分が侵害されていた場合、受け取れるべき遺留分を返してもらうための4つの解決策を行うべき順番でご紹介します。

1.遺留分侵害額請求をおこなう
2.直接交渉
3.調停
4.訴訟提訴

ただし、調停から訴訟提訴までいくと費用も重なり時間もかかりますので、解決が長引きそうな場合は、始めから弁護士に相談をし直接交渉する方法も検討しましょう。

遺留分侵害額請求をおこなう

遺留分権利者は、侵害された遺留分を金銭請求する権利を持ちますので、『遺留分侵害額請求』を用いることで金銭を受け取ることができます。

遺留分侵害額請求は、一般的に内容証明郵便でおこないます。

遺留分の請求には、知ってから1年、相続開始から10年の時効があるため、期間内に行動を起こす必要があるでしょう。

内容証明郵便(配達証明付き)で出すことで、差し出した郵便の内容と宛先に到達した日付を証明することができるため、「期限内に請求を行った」ことを証明することができるからです。

もし、普通郵便で送っただけでは、時期や内容を証明することができません。

仮に、相手方から争われてしまった場合に、時効内に請求していたことを証明できず、支払いを受けることができなくなる危険性があるからです。

遺留分侵害額請求を実際に行う場合の手順や内容証明書の書き方、必要書類については、「遺留分侵害額(減殺)請求を成功させる全情報!手続き~割合・注意」の記事で詳しくご紹介していますので、合わせてお読みください。

相続人との直接交渉

遺留分侵害額請求を内容証明郵便で送っても反応がない場合、相続人(侵害者)と会い話し合って直接交渉する方法です。

直接交渉により相続人が納得の上解決できれば、時間的にも経済的にもコストを抑えることができる良い方法ですが、当事者間の協議は難しい場合があります。

直接交渉による話し合いで解決させることを望む場合、弁護士などに相談するのも1つの方法です。

家庭裁判所へ請求調停を申し立てる

直接交渉による話し合いで解決できない場合、家庭裁判所へ請求調停の申し立てをする方法もあります。

申し立てに必要な費用は、収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手分(約3,600円)です。

連絡用の郵便切手は、裁判所や人数によって価格が異なります。

調停では、裁判官と調停委員が第三者的視点から、当事者らの話しを聞いたり、資料を提示してもらったりなどをして、解決案を見いだしてくれます。

第三者が入ることにより、当事者間の協議よりも、交渉が円滑に進みやすいです。

訴訟提起をする

調停手続きをおこなっても、解決が図れない場合、訴訟提起をして解決しなけらばなりません。

遺留分侵害額請求の訴訟を起こす場合、地方裁判所、あるいは簡易裁判所へ訴状を提出する必要があります。

地方裁判所と簡易裁判所の違いは請求金額です。140万円を超える場合は地方裁判所で、140万円以下の場合は簡易裁判所に訴訟提起します。

遺留分侵害額請求をする側が、相続財産の価値や遺留分割合などを立証しなければなりません。

訴訟費用の目安

訴訟の費用は、価格に応じた手数料と、連絡用の郵便切手分(約6,000円)が必要ですが、裁判所や人数によって価格が異なります。

訴訟物の価格に応じた手数料は以下の通りです。

訴訟物の価格 手数料
~100万円以下 10万円ごとに1,000円
100万円超え500万以下 20万円ごとに1,000円
500万円超え1,000万円以下 50万円ごとに1,000円
1,000万円超え10億円以下 100万円ごとに1,000円

訴訟提訴をするには入念な準備がありますので、弁護士のサポートが必要になってきます。

弁護士に依頼する場合は、着手金として最初に150,000円から300,000円程度がかかり、成功報酬として、遺留分の20%前後を支払うことが多いです。

遺産の遺留分トラブルを事前回避する2つの方法

遺産相続や遺留分でのトラブルを事前回避する2つの方法をご紹介します。

・遺言書の作成に配慮する
・相続人たちと良好な関係を築いておく

遺言書の作成に配慮する

自分の思いを相続人に引き継いでもらうために大切なことは、きちんと遺言を残すことです。

遺言を作成する際に、遺留分のことを知らず、想いだけを記してしまうと、せっかく遺した財産について相続人たちが争いを始める可能性もあります。

そんな悲しいことにならないよう、ご自身の遺産総額を把握し、遺留分に対する配慮も必要になってきます。

遺言を通して、特定の方に特別な割合で相続させる場合、相続人に対して遺留分に相当する財産を、相続または贈与する準備をしておくことです。

相続人の権利を尊重することで、遺留分に対する配慮を事前に対策しておきましょう。

相続人たちと良好な関係を築いておく

生前からのコミュニケーションが大事になってきます。遺産相続でのトラブルが多い原因です。

コミュニケーション不足により、相続人たちによる遺産割合に対する考え方が合わない場合があります。

連絡の取れない相続人がいたとしても、相続人としての権利を持っていますので、曖昧にせずなぜ連絡がつかないかといった、調査をしておくことも大事です。

まとめ

不公平な遺言書が残されていた場合など、ご自身が法定相続人(兄弟姉妹以外)であれば遺留分の請求をできる権利があります。

相続人がもらえる遺留分の基本的な割合は以下のとおりです。

相続人 全員の

遺留分

配偶者の

遺留分

子どもの

遺留分

親の

遺留分

兄弟の

遺留分

配偶者のみ 1/2 1/2 ×
子どものみ 1/2 1/2 ×
父母のみ 1/3 1/3 ×
兄弟のみ × × × × ×
配偶者と子ども 1/2 1/4 1/4 ×
配偶者と父母 1/2 1/3 1/6 ×
配偶者と兄弟 1/2 1/2 ×

遺留分の請求には、知ってから1年、相続開始から10年の時効があるため、期間内に行動を起こす必要があります。

遺留分が侵害されていた場合は、遺留分侵害額請求を用いることで金銭を受け取ることができます。

また、遺産の遺留分トラブルを事前回避するためにも、正しい遺言書作成や日々のコミュニケーションを大事にしてくださいね。

ご自身が後悔、損することなく遺産をスムーズに受け取る為にも、ぜひ参考にされてください。

【監修】高橋圭(司法書士・宅地建物取引士)

略歴
高橋圭 (たかはし けい)
青山学院大学法学部卒業。
2007年司法書士試験に合格後、都内司法書士法人にてパートナー司法書士としての勤務を経て2016年ライズアクロス司法書士事務所を創業。
司法書士法人中央ライズアクロスグループCEO代表社員

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