「ご冥福をお祈りします」という言葉。一度は使ったことがあるかと思います。しかし、この言葉を使ってはいけない場面があることをご存じでしょうか? 本記事では正しい使い方や意味や例文、英語でどう表すかなども交えてご紹介します。
「ご冥福をお祈りします。」という言葉は、みなさん一度は使ったことがあるかと思います。
実は、この言葉を使ってはいけない場面があることや、誰に向けての言葉かご存じでしょうか?
通夜や葬儀の場では、正しく使えていないと、失礼にあたることもあります。
そこで、この記事では「ご冥福をお祈りします。」という言葉の意味と、正しい使い方を解説します。
ご冥福の意味
「ご冥福」の「冥」は、死後の世界を指し、「福」はそのまま「幸福」を意味します。
つまり、「ご冥福をお祈りします」は、故人に対して伝える、「死後の世界で幸せであってほしい」という気持ちになります。
お悔みの言葉は、ご遺族に対しての言葉になるので、「ご冥福をお祈りいたします」を使う場合は、「故人の」や、お名前を入れて、故人に対しての言葉ということが分かるように伝えましょう。
ご冥福の使い方
使う場面・使える期間
故人に対しての言葉となる為、霊前や棺の前で言うことが正しい使い方となり、葬儀や亡くなってあまり日が経たない期間での使用が一般的ではありますが、明確な使用期限は定められておりません。
亡くなられた方を思い言葉をかけるのであれば、数か月後などに訃報を聞いた場合でも使用することができます。
ただ、故人が死後の世界へと行き、幸せになったとされる四十九日の法要が済んだら使わないと考える方も多い為、四十九日を過ぎてからは使わないことをおすすめします。
ご冥福の使い方
ご遺族の方に伝える場合は、「故人の」や、亡くなられた方のお名前を入れることが正しい使い方となります。
「故人のご冥福をお祈りいたします。」
「○○様のご冥福をお祈りいたします。」
ご冥福をお祈りしますへの返し方
感謝の言葉を返すことが一般的となりますので「お気遣いをいただき、ありがとうございます。」とお返しで問題ありません。
ただ、感謝の言葉はためらわれることもあるので、その場合は「お心遣い、痛み入ります」や「ご連絡をいただきまして恐縮です」というような表現も使用が可能となります。
ご冥福のマナー・気をつけること
忌み言葉は使わない
「死」を連想させる言葉「死亡」という言葉や、「消える」、「苦しみ」といった不吉な言葉は、冠婚葬祭において「忌み言葉」と言い、使用を控えるべきです。使ってはいけない言葉と言い換えは下記の通りとなります。
忌み言葉
「死亡」→「逝去」「永眠」など
「急死」→「急逝」「突然のこと」など
重ね言葉
また、重ね言葉も不幸が繰り返されるようにイメージされるので使ってはいけません。
また、励ますつもりでも「頑張ってください」や「元気を出してください」などは負担に感じるものなので、使わないようにしましょう。
また、これらの忌み言葉や重ね言葉は、お悔やみの言葉だけでなく葬儀でも使用しないのがマナーです。葬儀のマナーについては「今更聞けない葬儀・告別式のマナーと費用を地域別に徹底解説!」 をご確認下さい。
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宗教宗派での気をつけること
「ご冥福」は、仏教由来の用語であるため、「冥福」の概念がない「キリスト教」「神道」では使えません。
また、「浄土真宗」は仏教ですが、「ご冥福」を使うことができません。
「キリスト教」「神道」「浄土真宗」での葬儀の場合に使う言葉もマナーとして知っておきましょう。
キリスト教
死生観の違いがあり、人が亡くなることは「地上で起こしてきた罪が許されたから」と考えられています。
そのため、天に召されることを祝福することもありますが、お悔みではありません。
キリスト教の葬儀で故人に想いを伝えたい場合は「安らかな眠りにつかれますよう、心よりお祈りいたします。」などを使うとよいでしょう。
神道
命はあくまでも神からの預かりものと考えられている為、亡くなった後は、命は神へと返されます。
その為、故人が過ごす「冥界」が存在しない為、「冥福」も使われません。
また、神道の葬儀は、故人がその後、家の守り神とする儀式と考えている為、「御霊のご平安をお祈りいたします」とお伝えするのが良いでしょう。
神道(神式)については「神式葬儀の流れとは?仏式との違いや基本的なマナーについても解説」の記事もご参考ください。
浄土真宗
仏教の中で唯一、「冥福」を使わない宗派になります。
「往生即成仏(おうじょうそくしんぶつ)」という考え方となり、亡くなった後はすぐに極楽浄土へ行くとされています。
極楽浄土へ行くことが決定されているため、冥土での幸せを祈る習慣はありません。
浄土真宗の葬儀の際には「お悔み申し上げます」というような心境を伝えることが良いでしょう。
尚、その際には「心より」をつけると深い悲しみを表し、「謹んで」をつけると敬意を表すことになるため、目上の方などにお伝えする際にも失礼となりません。
混同しがちな類語との違い
「ご愁傷さまです」
「愁傷」の「愁」は憂いの気持ち、「傷」は痛みを意味する為、相手を気の毒に思って使う言葉です。
ご遺族に慰めの気持ちを込めて使うようにしましょう。
また、使用可能なのは口頭のみとなるので、メール等の文面で使うのは不適切と言われておりますので、注意しましょう。
「お悔やみ申し上げます」
「お悔み」は故人の死を悲しみ、弔うことを意味する言葉となります。
その為、ご遺族と話す時も、弔電でも使用可能となります。
尚、ご遺族と話す時は「ご愁傷様です」と併用し、「この度はご愁傷様です。心よりお悔み申し上げます。」と伝えるのも良いでしょう。
「哀悼の意を表します」
故人の死を悲しみ、心が痛むという意味を持つ言葉です。
こちらは、口語体ではない為、弔電の文中に使うようにし、口頭で直接使わないようにしましょう。
また「謹んで」という言葉を文頭につけると、弔意がより強調されます。
「胸中お察しいたします」
「胸中お察しいたします」はどの宗派でも使えるお悔やみの言葉です。
ただし、年長者や目上の人に使うのはマナー違反になりますので使う際には十分気を付けましょう。「悲しい気持ちを十分理解しています」といった意味になります。
ご冥福の例文
それでは、実際の使い方を例文から解説していきます。
対面での使い方
「冥福」は故人に対しての言葉となるため、ご遺族へお伝えする際は「故人」や名前を入れて伝えるようにしましょう。
電話での使い方
ご遺族から故人の訃報を知らせてきた場合は、お悔みの言葉と共に、訃報を知らせてくれたことへの感謝の気持ちも伝えるようにしましょう。
メールでの使い方
身内が亡くなった時の遺族はゆっくりとメールを読む時間はほとんどないと考えます。
そのため、件名と内容どちらもシンプルに読みやすくすることが大切となります。
また、メールで送った場合、後々まで残ってしまうので、使ってはいけない言葉が入らないよう十分に注意しましょう。
最後には、相手の負担にならないように「返信は不要です」の旨を伝える言葉を入れる場合や、
「お身体を大切にしてください。」
「お手伝いできることがございましたら、お気軽にお声かけください。」といったような、
相手を気遣う気持ちを伝える言葉を入れることも喜ばれるかもしれません。
ただ、お悔みの言葉は本来直接会って伝えるものであり、メールで伝える上では、自身とご遺族の関係が重要となります。
メールで伝えた場合でも、次に顔を合わせた際には、改めて気遣う言葉をかけるようにしましょう。
メールの例文
【件名】
(自身のフルネーム)よりお悔み申し上げます。
【文面】
「突然のご逝去を伺い、本当に驚いております。お忙しいと思い、メールにてご連絡いたしました。謹んで哀悼の意を表します。○○様のご冥福をお祈りいたします。返信は不要でございます。」
メールは便利ですが、弔事での使い方には注意が必要です。「本当にいいの?お悔やみの言葉をメールで送る際の注意点を徹底解説!」「お悔やみメールはあり?突然の訃報に返事をする際のマナーや注意点を徹底解説!」の記事もご参考ください。
電報での使い方
電報サービスでは例文のテンプレートが用意されていることが一般的となります。
例文を選ぶのに迷ってしまった場合は、故人との関係と自身の立場を伝えると、適切な文面を提案してもらえます。
弔電については「どうやって送るの?弔電の送り方から費用・注意点までを徹底解説!」の記事もご参考ください。
英語で使う場合の例文
時には英語で伝える機会もあるかもしれません。参考までに例文をご紹介します。
「I am suprised at the sudden sad news regarding 〇〇. I respectfully pray for his soul.」
(○○様の突然の悲報に接し、驚いています。謹んでご冥福をお祈りいたします。)
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ご冥福をお祈りしますについてのまとめ
「ご冥福をお祈りいたします」という言葉の使い方や、場面を解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
今までの内容をわかりやすく箇条書きでまとめていきます。
【ご冥福をお祈りいたしますとは?】
●「ご冥福」の「冥」は冥土、「福」は幸福のことを指す為、故人に対して「死後の世界でも幸福に」という想いを込めた温かい一言である。
●ご遺族に対して使う場合は「故人」やお名前を付けて使う。
【ご冥福をお祈りいたしますを使える期間】
●使える期間に規定はありませんが、四十九日を過ぎてから使うことは避けることをおすすめします。
【ご冥福をお祈りいたしますを使う際の注意】
●「死」を連想する忌み言葉や、不幸が繰り返されるような重ね言葉は使わないようにしましょう。
【ご冥福をお祈りいたしますを言われた場合】
●ご冥福をお祈りしますへの返し方は感謝の意を伝えることが一般的です。
【ご冥福をお祈りいたしますを使うときの注意】
●「冥福」の概念がない「キリスト教」「神道」「浄土真宗」では使ってはいけない言葉となります。
●「ご愁傷様です」「お悔み申し上げます」はご遺族に対して使っても良い言葉ですが、「哀悼の意を表します」は口語体ではないので、弔電などで使うようにしましょう。
●相手を励ますつもりでも「元気を出してください」や「頑張ってください」などの言葉は、ご遺族が負担に感じてしまう可能性があるため、余計な一言は入れないようにしましょう。
ご冥福を使用しない宗教・宗派があること、故人に対しての言葉ということを把握していれば、形式を気にし過ぎず、故人を偲び、遺族を労わる気持ちを持って見送り、自分の言葉を捧げることが大切です。
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【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
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