今あるお墓を、自分たちの生活にあった場所や形式へと移し替える「改葬(かいそう)」をする人が増えています。家族の負担を軽くし、将来の不安感を軽減させましょう。改葬の基本的な知識や、費用の相場・検討のポイントなど、分かりやすく解説します。
「お墓の管理を任されたものの、定期的に帰るのも大変だから何とかしたい・・・」
「お墓参り代行の費用が負担だが、自分で清掃やお参りをする時間が取れない・・・」
働き方や暮らし方が変化していく中で、地方に残された一般墓地の管理に対して悩みを抱える人が増えています。定期的なお墓参りは、時間も金銭的にも負担となることから、「できることであれば供養をお任せできたらなぁ」と思う方も多いでしょう。
そんな中、近年注目が高まっているのが「改葬(かいそう)」です。
改葬とは「地方のお墓を居住地近くの墓地に移動させる」・「現在のお墓を辞めて納骨堂などの別施設に埋葬しなおす」など、お墓を引っ越しさせることを意味します。
ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)
厚生労働省が定期的に発表する『衛生行政報告例』によると、全国の改葬件数は増加傾向にあります。2000年には年間で約6万件だったものが10年間で約1.6倍まで増え、ここ数年は毎年10万件以上の改葬が行われています。
《改葬をした理由》
・遠方にあるお墓を定期的に清掃等、管理できないと感じたから
・娘が全員嫁いでいったので、自分の代で墓じまいをしたかったから
・誰が管理するかで親族同士揉めるのが嫌だったので、永代供養墓に移した
・自分の子どもにお墓の管理という負担をかけたくないから
このように、「管理の負担軽減」や「墓の跡継ぎがいない」などの理由で改葬が行われる傾向にあります。現在お墓に関する悩みを抱えている方は、「改葬」という方法があるということを知っておくだけでも大分気持ちが楽になるのではないでしょうか?
当記事では、改葬に関する基本を解説しながら、費用や手続きの流れなど知っておきたい情報をわかりやすくまとめているほか、「本当に改葬するべきか?」と迷った時に抑えておきたいポイントについてもふれています。
今あるお墓のこの先について考え始めている方は、是非「改葬」についての知識を深め、管理をしていく家族・供養されているご先祖様、どちらにとってもより良い選択をする為の参考にしてください。
INDEX
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- まとめ
「改葬」とはお墓を別の場所に移動させること
改葬とは、「遺体や遺骨の埋葬(納骨)場所を変えること」を意味します。日本では、遺体を直接土葬することは禁止されていますので、「遺骨を一度埋葬した場所から別の場所に移すこと」だとイメージしてください。
現在、日本では火葬後の遺骨を以下の7つのパターンで埋葬することが一般的です。
埋葬方法 | 特徴・管理の有無 |
一般墓(新設) | ・墓地や霊園などに新しく墓を新設する
・親族が管理する必要がある |
一般墓(既存) | ・既にある先祖のお墓に、追加で埋葬する
・親族が管理する必要がある |
納骨堂 | ・骨壺ごとお堂に納めて供養する
・永代供養墓なので、管理は不要 |
合祀墓 | ・遺骨を骨壺から出して、他の人の遺骨と合わせて埋葬
・永代供養墓なので管理は不要 |
自然葬 | ・樹木や草花を墓碑とした埋葬方法
・永代供養墓なので管理は不要 |
散骨 | ・海や山など、自然の中に遺骨を撒く
・自然に帰るという考え方なので、管理は不要 |
手元供養 | ・手元に骨壺を置いておき、自分で供養をする
・自身での管理が必要 |
納骨堂・合祀墓・自然葬・散骨は、永代供養墓であるため一度納骨すると、遺骨を返還してもらい改葬させることはできません。中には、一定の金額を支払うと遺骨の返還に応じてくれる場所もあるようですが、極稀なケースです。
そのため一般的には、「一般墓を閉めて中にある遺骨を別の場所に移動させること」を意味して「改葬」という言葉が使われています。
実際の改葬は、変更する事柄に応じて2つの種類に分けられます。
改装の種類 | 具体例 |
1.場所だけ移動させる
一般墓というスタイルは変えずに、墓の場所を移動させる |
一般墓→一般墓 |
2.埋葬方法を変更する
一般墓というスタイルを改め、別の埋葬・供養方法に変更する |
一般墓→永代供養墓 |
具体的な改葬のパターンについて、それぞれ詳しく確認しましょう。
【パターン1】一般墓→一般墓
一般墓というスタイルは変えずに、別の場所の墓地や霊園に移動させるパターンです。管理や供養の方法は改葬前とほとんど変わりません。
特徴 | |
・現在の墓を開け、中の遺骨をすべて取り出す
・新しい墓地や霊園を契約し、遺骨と墓石を移す |
|
メリット | デメリット |
・お参りや清掃といったお墓の管理がしやすくなる
・お墓をより身近なものにできる |
・都市部の墓地や霊園は高額
・引き続き、親族内で管理をし続けていく必要がある |
どのような人が選ぶのか? | |
・お墓はそのまま維持したいが、より管理のしやすい場所に移動させたい
・菩提寺(ぼだいじ)や霊園など管理元との考え方の違いがあり、墓の場所を変えたい ・墓地や霊園の閉鎖・倒産に伴い、遺骨を新しい場所に移動させる必要ある |
地方に残されたお墓を、より管理しやすい場所に移動させるという目的で行われることが多い改葬パターンです。既存の墓石をそのまま移動させることもできますが、改葬を機に新しく作り変えるという方もいます。
また、改葬先の区画の広さにもよりますが、将来の埋葬のことを考慮して1つのお墓を改装後は2つに分けるという例もあります。
【パターン2】一般墓→永代供養墓
一般墓に埋葬されていた遺骨を、いずれかの永代供養墓に移すパターンです。親族で管理していく「一般墓」をやめ、供養と管理は新しい施設にお任せする形となります。
特徴 | |
・現在の墓を開け、中の遺骨をすべて取り出す
・永代供養墓(納骨堂、合祀墓、自然葬、散骨)の種類を選ぶ |
|
メリット | デメリット |
・埋葬後は、管理が不要となる
・墓地の土地使用料がなくなるので、金銭的な負担が軽減される |
・永代供養墓も種類によって特徴が異なるので、検討が大変
・ご先祖様も含めた遺骨の取り扱いを決めることになる為、しっかりと家族で話し合う必要がある |
どのような人が選ぶのか? | |
・お墓の管理や維持が大変なので、負担を減らしたい
・お墓の跡継ぎがいないため、墓を閉めて管理が不要な永代供養墓に遺骨を移したい ・自分はお墓に入るという選択をしたくないので、先祖の遺骨を整理し墓を閉めたい |
永代供養墓とは、管理と供養を一任できるお墓のことで、現在日本で主に選択できる永代供養墓は主に以下の4種類です。
名称 | 概要 |
納骨堂 | 骨壺のままの状態で収蔵・供養 |
合祀墓 | 骨壺から出した遺骨を、墓石の下や仏像の中に埋葬 |
自然葬(樹木葬) | 木や花などを墓標にした、庭園のような施設に埋葬 |
散骨 | 海や山など自然の中に遺骨を撒く |
現在の墓を開け、中に埋葬されていた遺骨をそれぞれ契約した新しい永代供養墓にお任せしていきます。
埋葬されている遺骨すべてを同じ場所に移動させる義務はなく、この遺骨は納骨堂・この遺骨は散骨といった具合に整理することも可能です。詳しくは「どこまでの遺骨を改葬先に収蔵するべき?」も参考にしてください。
改葬するか迷った時に抑えるポイントは2つだけ!
改葬をするべきかどうか迷った時・悩んだ時には、「将来」と「相談」の2つのポイントをおさえて検討を進めていきましょう。
ポイント | 概要 |
将来 | 親の代・自分の代だけでなく、子の代・孫の代まで視野に入れて考える |
相談 | 親族や菩提寺(ぼだいじ)に相談し、トラブルや後悔を回避する |
※「菩提寺(ぼたいじ)とは代々お世話になっているお寺のこと」
改葬を巡っては、様々なトラブルが報告されています。
・閉眼供養のお願いをしたら「改葬なんて聞いてない」とトラブルになった
・親の墓を郊外の自然溢れる場所に移動させたが「そんな遠くまで行けない」「自分はそこには入りたくない」と子ども達に言われてしまった
・永代供養墓へ改葬したら、親族から「罰当たりだ」と批判された
改葬は、決して急いで決めること・焦って考えることではありません。2つのポイントをおさえて十分に時間をかけて検討することが大切です。それぞれのポイントについて詳しく確認しましょう。
「将来」のことも視野に入れて検討する
自分がお墓を管理している時のことだけではなく、自分がお墓に入ったあと「自分の子の代、孫の代」のことまで視野に入れて検討しましょう。
一般墓地の維持にかかる経費の項目や金額の目安は以下の通りです。
項目 | 金額の目安 |
墓地霊園管理費 | 1万円~/ 年 |
墓地清掃サービス | 2万円~/ 1回 |
墓参り代行サービス | 1.5万円~/ 1回 |
墓石の修理(ひび割れ等) | 1.5万円~/ 1か所 |
墓石コーティング | 3万円~ |
一般墓を維持するということは、上記の費用に加え、定期的な清掃や管理が必要です。近年では、管理者がいなくなった無縁墓地の増加が社会問題となるなど、お墓に関する考え方とライフスタイルが噛みあわなくなるケースが多くみられます。
自分の代だけでなく、将来を見据えた上でどうするのが最善かを考えてみましょう。
「事前相談」でトラブルや後悔を回避する
仏事関係は、個々の宗教観や地域性など様々な要因が複雑に絡みあうため万人にとっての正解を導き出すのが非常に難しいとされています。しかし、物事を進める前に事前に相談をするなど手をかけることで、より最適解を導き出すことは可能でしょう。
改葬において「親族間でのトラブル」や「菩提寺とのトラブル」が発生してしまうことは少なくありません。しかし、中には事前に相談という形でしっかりと話しあったことで問題が解決し、改葬しなくてもよくなったというケースもあります。
「お墓」というあまり積極的に取りあげることのない話題だからこそ、それぞれの考えや思いを相談し話し合うことが求められるのです。具体的なトラブル事例と、相談のポイントを確認しましょう。
親族
改葬について検討していく中で、親族に相談するべきことは主に2つあります。
1.今後のお墓の管理について
2.改葬先について
今後のお墓の管理についてどのような不安があり、なぜ改葬を検討しているのかを素直に伝えましょう。
墓参りが負担だということで改葬を検討していた方の中には、親族と相談の上、持ち回り制で墓参り代行を頼むということで改葬せずに負担を減らす案に落ち着いたという事例もあります。
親族の中に菩提寺との関係性が深く想い入れが強い方がいる場合には、改葬を反対されることもあるでしょう。その際には、今後の管理や改葬に踏み切るタイミングなどを親族一同しっかりと検討していくことが求められます。
菩提寺(ぼだいじ)
改葬について検討していく中で、菩提寺に相談するべきことは主に2つあります。
1. 離檀料について
2.連結墓地について
検討を進める前の段階で一旦菩提寺に相談し、親族内でお墓の管理や今後について話し合った上で改葬を検討しているということを伝えます。
「菩提寺(ぼたいじ)」とは代々お世話になっているお寺のことで、お世話になっている家のことを「檀家」と言います。先祖のお墓がお寺にある場合は、家単位でお寺の檀家となっている可能性が非常に高いと考えましょう。
菩提寺からお墓を改葬させるということは、「菩提寺・檀家」という関係性の解消(離檀)につながります。一般的に、離檀の際には離檀料(りだんりょう)を渡すのがマナーです。
離檀料とは、これまでお墓を守っていただいたことについての感謝の気持ちを込めたお布施のことです。気持ちをお金という形で表すのはもちろん、改葬にあたってお寺側が伴う様々な手続きに対する事務費用も兼ねています。
金額を指定せずにあくまでも「お気持ち」とするお寺がある一方で、高額な離檀料を請求されるケースもあるため、事前の確認は欠かせません。
また、連結墓地といってお墓の基礎部分が隣接するお墓と繋がった構造になっているものがあります。
周囲のお墓を保護しながらの作業となるため費用が高額になる可能性やそもそも工事をしてほしくないと考える住職さんもいるため、この点についても事前に確認を取っておくと安心です。
改葬の流れ
実際に改葬を行う際には、7つのステップを踏んで進めていくことになります。
7つのステップ | 概要 |
1.菩提寺と話し合う | 今後の日程や離檀料の支払いについて相談 |
2.改葬先と話し合う | 納骨の日程や手続きの方法について確認 |
3.書類関係の手続き | 各種書類を揃えて、事務手続きを行う |
4.抜魂式(ばっこんしき) | 改葬元で行う仏事。 |
5.遺骨の状態を整える | 埋葬されていた遺骨を、綺麗にする |
6.納骨式 | 改葬先で行う仏事。 |
7.旧墓石の解体 | 改葬元のお墓を更地に戻す作業 |
改葬先を決めてから「旧墓石の解体」までの流れについて詳しく確認しましょう。
1.菩提寺と話し合う
実際に改葬をすることが決まったら、菩提寺や墓地・霊園の管理者に連絡をして具体的な日程や料金の支払について話し合いましょう。
・抜魂式の日取りや時間
・墓石の解体の日取りや時間
・離檀料の支払い
・埋葬証明書の発行依頼
改葬の予定について何も知らせない状態で、いきなり日程の調整連絡をするのは大変失礼です。「菩提寺」でも触れましたが、改葬について検討を進めはじめた段階で一旦相談しワンクッション挟むことがマナーです。
2.改葬先と話し合う
菩提寺との日程調整の後は、改葬先に連絡をして納骨の日程や料金の支払について具体的な話を聞きましょう。
・納骨式の日取りや時間
・納骨式の内容
・諸費用の金額や支払方法
・受け入れ許可書の発行依頼
正式に仏事として僧侶を呼び納骨式を行いたい場合には、その旨をしっかりと伝えて内容の打ち合わせをします。永代供養墓などで大掛かりな仏事は行わない場合には、納骨の流れについて確認しましょう。
3.書類関係の手続き
改葬を行うにあたっては、改葬元と改葬先から発行される書類を持って「改葬元の市区町村役場」で手続きを行う必要があります。
書類の名称 | 概要 | 取得場所 |
1.埋葬証明書 | 遺骨が埋葬されていることを証明する | 改葬元の管理者 |
2.受け入れ証明書 | 受け入れ先があることを証明する | |
3.改葬許可申請書 | 改葬許可書を得るための申請書 | 改葬元の市区町村役場 |
4.改葬許可書 | 改葬を許可する証明書 | |
(5.改葬許諾所) | 使用者と申請者が異なる場合のみ必要 |
1〜3の書類を持参し、手数料を支払うことで「4.改葬許可証」を受け取ることができます。この改葬許可証は、改葬先に提出が必要となりますので大切に保管しましょう。
お墓の使用者として「1.埋葬証明書」に名前が書かれている人が、手続きを行うことが一般的です。諸事情によって別の方が申請をする場合には「5.改葬許諾所」を用意する必要がでてきます。
受入証明書引用元:鹿沼市役所|改葬許可申請と許可証の交付
改葬許可申請書引用元:横浜市役所|改葬(遺骨の移動)の手続き
4.抜魂式(ばっこんしき)
抜魂式とは、「閉眼供養(へいがんくよう)」や「御霊抜き(みたまぬき)」とも呼ばれ、既にあるお墓を動かす時や仏壇の処理をする際に行われる法要です。
宗教や宗派によって考え方に機微はありますが、「墓石には魂が宿っている」と考えるため、移動させたり処分する際には、魂を抜き自由にしてあげる必要があります。そのための読経を含めた儀式が抜魂式です。
改葬する際には、この抜魂式を行うことが一般的で、僧侶を呼び親族も喪服で参列し儀式が行われます。
5.遺骨の状態を整える
取り出した遺骨は、湿気の影響で埋葬時と比べて状態が悪くなっている場合があります。特に、屋外の墓地に埋葬されていたものは、雨水の影響も重なりカビや異臭を伴うケースもあるでしょう。
・ネットに入れて水でよくあらう
・カビが生えている場合には、ブラシを使う
・直射日光の当たらない場所でよく乾燥させる
・骨壺も綺麗に洗う
改葬先に新たに埋葬する前には、ご先祖様への感謝の気持ちを込めて遺骨の状態を整えてあげることが一般的です。骨壺を開けることに抵抗があるという方は、業者による遺骨洗浄などのサービスを活用するのもよいでしょう。
遺骨の状態や洗浄の度合いなどにもよりますが相場は、1霊(※霊はご遺骨の数え方です)あたり1万円~です。
6.納骨式
改葬先に改めて遺骨を納める時には「納骨式」を行います。読経や焼香を含んだ儀式で、抜魂式の反対で、魂が新しいお墓で安らかに眠ることができるよう祈りを捧げます。
永代供養墓では、施設が独自のタイミングで納骨をするため遺族が立ち会っての納骨式を行わないというケースも少なくありません。
また、個人的な納骨式は別途費用が発生する場合もあるなど、施設により対応が異なることが多々あるため事前に確認しておくとよいでしょう。
納骨式の詳しい内容や費用ついては「納骨式とは?納骨式を行うタイミングから必要な準備、当日の流れまで徹底解説!」の記事も参考にしてください。知っておきたいマナーや立ち振る舞いについても紹介しています。
7.旧墓石の解体
解体作業は、業者に委託をして行うものなので親族が立ち会う必要はありません。一般的には重機による作業がメインとなりますが、立地やお墓の形状によっては人力で行われることもあります。
指定の業者による作業のみ受け付けるという施設もありますが、後から高額な請求をされるトラブルを防ぐという意味でも、事前に立ち会いのもと細かい見積もりを出してもらうと安心です。
改葬にかかる費用と相場
改葬にかかる費用は、「墓じまい費用」「改葬先に払う費用」「諸費用」の3つの合計金額からなります。
項目 | 概要 |
墓じまい費用 | 改葬元のお墓を開け、更地に戻すまでにかかる費用 |
改葬先に払う費用 | 新たに納骨する場所に対して支払う費用 |
諸費用 | 各種証明書の発行手数料や、墓石の運搬費用など |
これらを合算した「改葬費」は、100万〜300万円が相場です。相場の金額に200万円もの差があるのは、改葬先の選び方によって費用に大きな差が出ることや、墓石の運搬など距離や大きさによって金額が異なることが原因です。
改葬費の細かい内訳や、費用をできるだけ抑える方法について確認しましょう。
改葬費の内訳
改葬費の内訳と相場を表にまとめました。
【墓じまい費用】
項目 | 概要 | 相場 |
離檀料 | 檀家先から離れる際のお布施 | 5万~20万円 |
お布施 | 抜魂式などでの僧侶に対するお布施 | 3万~20万円 |
取り出し費用 | 骨壺を取り出すのにかかる費用 | 2万円~/1霊 |
墓石解体工事 | 墓のあった場所を更地に戻す費用 | 10万円~/1㎡ |
参考記事:墓じまいで失敗しないために。墓じまい費用の内訳から費用を抑える方法まで!
【改葬先に払う費用】
項目 | 概要 | 相場 |
一般墓の場合 | 新しく一般墓を建てるための費用 | 200万円前後 |
永代供養墓の場合 | 永代供養墓への納骨にかかる費用 | 80万円前後 |
参考記事:
【諸費用】
項目 | 概要 | 相場 |
墓石運搬費 | 墓石を改葬先まで運ぶ際の費用 | 20万~80万円 |
墓石の工事費 | 運んだ墓石を立て直す作業費 | 20万円 |
戒名の付け直し | 宗派により戒名の付け直しが必要な場合も | 20万~30万円 |
改葬証明書発行料金 | 地方自治体に払う手数料 | 1千円/1通 |
埋葬証明書発行料金 | 改葬元管理者に払う手数料 | 1千円~/1霊 |
改葬は、改葬元がどこなのか・改葬先の選び方など項目によって発生する費用に大きな差があるため費用の相場を算出するのが非常に難しいとされています。あくまでも目安ではありますが、条件ごとの費用相場は以下の通りです。
・墓地霊園の一般墓→墓地霊園の一般墓:230万円前後
・墓地霊園の一般墓→お寺のお墓:250万円前後
・墓地霊園の一般墓→永代供養墓:100万円前後
・お寺のお墓→墓地霊園の一般墓:250万円前後
・お寺のお墓→お寺のお墓:300万円前後
・お寺のお墓→永代供養墓:130万円前後
改葬にかかる費用は決して安くはないため、費用分担を巡って親族内でトラブルとなるケースも少なくありません。内訳を明確化し、納得した上で検討を進めましょう。
改葬費を抑えるポイント
改葬費を抑えるためには、改葬先の選び方がポイントとなります。一般墓へのこだわりを減らすだけでも、費用は大幅に減らすことができるでしょう。
改葬先 | ポイント | 費用 |
お寺のお墓 | 入檀料が高くなるケースがある | 高い
↑ ↑ ↑ ↓ ↓ ↓ 安い |
民間の墓地・霊園 | お寺ではないため、入檀料がない | |
公営の墓地・霊園 | 民間の墓地・霊園よりも安価 | |
民間の永代供養墓 | お墓を建てるよりも安い | |
公営の永代供養墓 | 民間の永代供養墓よりも安い |
施設や地域により異なる部分もありますが、納骨にかかる費用としては「一般墓>永代供養墓」となる傾向にあります。墓石や工事にかかる費用がない分、永代供養墓の方が安価に納骨できます。
また、民間の施設だけでなく国や自治体の管理する公営の施設の検討してみるのも一つの手です。
改葬と墓じまいの違い
「墓じまい」とは、現在ある一般墓をやめて遺骨を整理することを指した言葉です。一方で「改葬」は、お墓のお引っ越しを意味しており、似ている様で意味が微妙に異なります。
墓じまい | お墓をしめる・やめる・更地に戻す |
改葬 | 遺骨を別のお墓に移動させる |
それぞれの意味の違いについて、より詳しく確認しましょう。
墓じまい:一般墓やめて遺骨を整理すること
墓じまいとは一般墓を閉めることで、お墓を閉じる・やめる・更地に戻すことを意味します。墓をやめることだけを表現した言葉なので、その後の遺骨の行方については意味に含みません。
改葬だけでなく、墓じまいを検討されている方は、「墓じまいのスムーズなタイミングと進め方!必要書類やマナーを全解説」の記事もご参考ください。流れだけでなくメリット・デメリットも分かりやすく紹介しています。
改葬には墓じまいが必須!
改葬とは、「遺骨を別の場所に埋葬し直すこと」です。永代供養墓に埋葬した遺骨を別の場所に移すというケースは極稀ですので、基本的には一般墓から別の埋葬方法に移し替えることを意味して使われます。
図のように、墓じまいは改葬のステップの1つであり、墓じまいをして別の場所に埋葬することを改装と呼びます。しばしば混同されがちな2つの言葉ですが、意味には大きな違いがありますので注意しましょう。
改葬に関する4つの疑問をQ&A方式で解決
改葬に対する知識をより深めるために、是非知っておきたい「改葬に関する4つの情報」をQ&A方式で紹介します。
質問 | 答え |
どこまでの遺骨を改葬先に収蔵するべき? | 親族内でよく話しあって決めるのがマナー。お墓を分けるという選択肢もあり。 |
お墓を閉める、永代供養墓に改葬させることは罰当たり? | 罰当たりなことではないので、自信を持って検討してOK。 |
誰も管理する人が居なくなったお墓はどうなるの? | 使用料の未納が続くと、「無縁墓」と認識され解体・合祀される。 |
改葬に関する補助金や助成金はある? | 施設や自治体によっては設けられている所もある |
それぞれの回答について、より詳しく確認しましょう。
どこまでの遺骨を改葬先に収蔵するべき?
1つのお墓に埋葬されていた遺骨を、全て同じ場所に改葬しなければならないという決まりはありません。そのため、中に入っていた遺骨の改葬先については親族内で話しあって決めましょう。
・全てを同じ改葬先に埋葬する
・一部を合祀墓、一部を納骨堂のように分けて埋葬する
・改葬先の墓地ではお墓を2つ建て、遺骨を分けて埋葬する
このように、改葬先に埋葬する遺骨については自由に決めることができます。面識がない人であっても大事なご先祖様ですので、独断で判断せず親族でしっかりと話しあうのがマナーです。
お墓を閉める、永代供養墓に改葬させることは罰当たり?
まず大前提として、仏教の考え方では亡くなった人が現世に戻ってきて誰かを祟る・罰を与えるということはないとされています。そのため、墓じまいをすることで何か不幸が起きるということは無いので安心してください。
「墓じまい」や「永代供養墓」に対しては、ネガティブなイメージを持つ人も多く、ご先祖様を蔑ろにしていると感じる人も少なくないでしょう。宗派によって機微はあるものの、きちんと閉眼供養をした上で改葬していれば問題ありません。
誰も管理する人が居なくなったお墓はどうなるの?
年間使用料などの未納が続き連絡がとれないお墓は解体され、中の遺骨は公営の合祀施設へと改葬されるのが一般的です。
管理する人・継承する人が居なくなったお墓のことを「無縁墓(むえんぼ)」と呼びます。この無縁墓の増加は日本が抱える社会問題の1つで、ライフスタイルの変化・お墓に対する若年層の考え方の違いなどが背景にあるものと推察されています。
墓地、埋葬等に関する法律では、「墓地の使用者が一定期間以上管理料を支払わずに放置した場合、霊園などの管理業者は契約を解除して、墓地の整理をすることができる」と定められており、合法的に解体と改葬が可能です。
一度合祀されてしまった遺骨は、他の人の遺骨と混ざり合ってしまうため返還を求めることはできません。自分の管理するお墓や自分が入る予定のお墓が無縁墓とならないよう、改葬も含めた新しい管理の仕方を考えてみると良いでしょう。
無縁墓と似た意味で使われる「無縁仏(むえんぼとけ)」の詳しい定義や葬儀・お墓の行方については「無縁仏とは?無縁仏になる理由や無縁仏にならないためにできることを完全解説!」の記事で紹介しています。
お墓の管理者がいない場合や料金滞納の場合に起こる事柄についてより詳細に知りたい方は参考にしてください。
改葬に関する補助金や助成金はある?
全国的に統一された取り組みこそありませんが、地方自治体によっては改葬時に申請可能な補助金制度や助成制度を設けている所があります。
・群馬県太田市 墓石撤去費用の総額または一部に助成金を給付
参考:群馬県太田市
・東京都立霊園 墓じまい後、合総埋蔵施設を無料で利用できる
参考:小平霊園返還について | 小平霊園ご利用トータルサポート (1483.jp)
・岡山県 玉野市霊園 墓じまい後、使用料の一部還付
参考:https://www.city.tamano.lg.jp/soshiki/10/1508.html
・千葉県市川市:市川市霊園一般墓地返還促進事業 で最大24万円の還付
参考:市川市公式Webサイト (ichikawa.lg.jp)
・千葉県浦安市:墓所返還者等支援事業で最大15万円の補助金を支給
無縁墓地が社会問題となる中、少しでも負担を減らし改葬や墓じまいがしやすくなるような取り組みをする自治体が増えてきています。改葬を検討する際には、活用できる制度がないかお住まいの市区町村や利用している霊園等に確認してみましょう。
墓じまいで使える補助金の詳しい申請方法については「墓じまいで40万円得する!補助金の貰い方と費用の抑え方5つを紹介」にて紹介しています。支払いが難しい場合の仏事向けローンについても解説しています。
改葬の疑問&不明点は『お墓のプロ』に相談しよう!
改葬や墓じまいに関してご自身やご家族だけでは判断ができない場合には、プロにしてみるのも一つの方法です。
改葬はご先祖様の遺骨に関わることであるため、判断に自信が持てず踏み切れないという意見は多く聞かれます。また、「周囲に相談しづらい…」「お墓の紹介サービスに改葬は該当しないのではないか?」と、悩みを抱えている方も多いでしょう。
墓じまいや改葬先選びについても、積極的に「仏事のプロ」に相談して検討を進めることがおすすめです。多くの仏事に携わってきた経験とノウハウから、一軒一軒の家庭にあった最適な改葬へのアドバイスをもらえるでしょう。
相談先を決めるときの3つのポイント
お墓に関する相談を受け付けている業者は非常に多い為、「どこに相談したらよいか分からない・・・」と迷ってしまうものです。そんな時には、以下の3つのポイントをクリアした相談先を選ぶようにするとよいでしょう。
1.供養形態は幅広く選べるか? |
相談の目的は「改葬先選び」や「墓じまい」ですが、供養や納骨に対して広い知識とノウハウを持っている所を選びましょう。
仏事ごと全般や供養方法についても詳しく理解しているからこそ分かることや、話を聞いていく中で当初の予定とは異なる埋葬方法の方が適しているとなればよりニーズにあったアドバイスも受けられます。 |
2.無料で相談可能か? |
気軽に相談するためにも、無料で相談できる業者を選びましょう。相談料や事務手数料がかかる所を選んでしまい、「せっかくお金を払ったのだから」と十分に納得できないまま手続きに進んでしまっては元も子もありません。
少しでも対応に不安があれば「違う所に相談しよう」と気持ちに余裕を持つためにも、無料相談が可能な所が良いでしょう。 |
3.お墓以外にも相談ができるか? |
改葬をする上で考えるべきことは、改葬先選びだけではありません。墓じまいや親族への連絡・役所への手続きなど改葬の「やらなければならないこと」は多岐にわたります。せっかく仏事のプロに相談するのであれば、お墓以外のことも相談できる業者を選びましょう。
葬儀は葬儀社、諸手続きは行政書士・・・とお任せ先がバラバラだと、どこに何を相談すればよいか分からなくなってしまいます。仏事に関するトータルサポートができる所であれば、相談先を一本化することができ、非常に便利で安心感も高まります。 |
最近では、お墓や仏事に関する知識やノウハウがないにもかかわらず代行業務を請け負い、高額な金額を請求する業者も出てきている為、業者選びにも注意が必要です。
ホームページや資料など業者側で提供している情報の他、実際に利用した人の口コミや評判も確認したうえで、信頼できる代行業者に依頼しましょう。
おすすめの相談先3社
ここで、墓じまいや改葬先の相談ができる代表的な業者様をご紹介します。
1.供養形態は幅広く選べるか?
2.無料で相談可能か?
3.お墓以外にも相談ができるか?
上記3点を基準とし、過去の実績や口コミの評価が高い業者様をピックアップしました。気になる方は、ぜひホームページをご確認ください。
やさしいお葬式
「やさしいお墓」では、「お墓探しサービス」として一般墓地・永代供養・納骨堂・合祀墓の案内サービスを行っています。地域の担当者が、費用面を含め、埋葬方法・供養の仕方・お墓の種類に至るまで、本当に納得できるお墓選びをサポートします。
▼お客様の声
改葬(墓じまい)をしたいと思っていたのは実は10年も前からで、なかなか親戚にも相談できず悩んでいました。
私には兄弟、子供がいなく、私が元気なうちに解決しておかないと色々な方に迷惑をかけてしまうのではないかと思っていたからです。ある日、インターネットで墓じまいを検索してみたところ、「やさしいお葬式」の記事を見てとてもわかりやすく、自分の知らなかったデメリットまで包み隠さずに書いてあることに好感を持ちました。
一旦相談でと思い電話連絡してみたところ、出られた担当の方がとても親切な対応で、そこからさらに1ヶ月くらい悩んで、墓じまいすることにしました。
墓じまいした後は悩んでた10年間はなんだったんだろうと思うくらいスッキリしました。ご僧侶にも来ていただき供養していただいたのできっと先祖も喜んでいると思っています。
イオンライフ(イオンのお葬式)
画像引用元:イオンのお葬式
流通系大手のイオングループが提供する仏事サービスです。お葬式後のご供養・お仏壇・お墓・相続税など、幅広いサポートを、24時間365日無料で相談可能です。
墓じまいだけでなく、お墓の販売や永代供養墓や散骨といった新しい供養先紹介にも対応しています。
▼お客様の声
父の葬儀の時の価格等の不明瞭さから葬儀に対し不信感が生まれ、安心して任せられる会社を探しておりました。
ホームページを見て比較したり、資料を取り寄せでお電話をした時、イオンさんはとても丁寧で親切でした。話し方や声のトーン、こちらへの気配り、話も聞きやすくわかりやすかったです。
引用先:お客さまの声・評判
ニチリョク
画像引用元:株式会社ニチリョク
宗旨・宗派を問わない優良霊園の案内をしているニチリョクでは、霊園選びとお墓作りのプロが無料で相談にのってくれます。霊園の他、樹木葬から永代供養墓、ペットと一緒に入れるお墓までご用意している他、葬儀やその後の納骨、法事、相続など幅広く総合的に相談でき、大きな安心に繋がります。
▼お客様の声
滋賀県の墓じまい。本当に一度も行かずに閉眼法要から解体工事まですべてお任せでできました。ありがとうございました。
引用先:お客様の声
まとめ
当記事では、「改葬とは何か?」について解説してきました。
改葬とは・・・ | |
遺骨を一度埋葬した場所から別の場所に移すこと
・【一般墓→一般墓】 パターン1:場所だけ移動し、埋葬方法は変わらない ・【一般墓→永代供養墓】パターン2:場所及び、埋葬方法を変更 |
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改葬費用 | 内訳:改葬費+墓じまい費+お布施等
相場:100万~300万円 |
改葬の流れ | 1.書類関係の手続き
2.抜魂式(ばっこんしき) 3.遺骨の状態を整える 4.納骨式 5.旧墓石の解体 |
改葬検討時のポイント | 将来:自分の代だけでなく、子の代・孫の代まで視野にいれる
相談:「親族」及び「菩提寺」への相談は必須!具体的なアドバイスが欲しい時には、「仏事のプロ」への相談もおすすめ |
ライフスタイルの変化に伴い、「お墓のあり方」に対する考え方が変わってきています。
先祖代々お墓を守っていくこと・受け継いでいくことが当たり前だった時代から、管理する人達が義務感・負担感を感じることなく温かい気持ちで供養できる方法が模索されるようになりました。
・現在墓地や霊園にお墓があり、管理を任されている
・自分が、墓地や霊園にある先祖代々のお墓に入る予定がある
という方は、「改葬」をしてお墓の場所や納骨のスタイルを変更することが可能です。お墓の将来について、家族や親族と改めて考えてみてはいかがでしょうか。
【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール