親族が亡くなってしまったときにどんなお葬式にするかと悩むケースもあります。
火葬式は近年よく見られるようになってきた故人の弔い方ですが、一体どのような方式なのでしょうか。
火葬式で故人を弔うメリットやデメリット、火葬式をするために必要な費用相場などについて紹介するので、弔い方を決めるときの参考にしましょう。
INDEX
火葬式とは?
火葬式とは火葬のみで故人を見送る方法のことで、お葬式のやり方ではなく弔い方の一つだと考えるのが適切です。
一般的な葬儀のように通夜や葬式、告別式を行うことはなく、火葬をするだけで故人を弔うことになります。
直接弔うことから火葬式は直葬と呼ばれることもある方法です。通夜や告別式などがないので特に多くの参列者を呼ぶことはありません。
一般的には親族やとても故人と親しかった極少数の友人や知人などが集まって故人を葬る形式になっています。
昔は葬儀屋が葬儀の費用負担が厳しいと感じる人に提案する弔い方でしたが、近年になってだんだんと火葬式を選ぶ人が増えてきています。
火葬式が増えている理由
火葬式を選ぶ人は年々増えてきている状況があります。まだ全体での割合としてはあまり高いわけではありませんが、増加率では家族葬に次ぐ第二位になっているのが現状です。
火葬式の葬儀形態による増加率は26.2%となっていて、家族葬の51.1%には劣るものの着実に件数が増えてきていることがわかります。ここではなぜ近年になって火葬式が増えているのかについて説明します。
経済的負担の軽減
火葬式が増えている理由としてまず挙げられるのが節約しようと考える家庭が増えてきたことです。
全国的に節約志向が広まっている影響で、親族が亡くなったときにもむやみに費用をかけて弔うよりも最小限のもので故人との別れをしようと考えるケースが多くなっています。
葬儀費用は一般的な方法ではかなり高くなってしまうのは確かで、平均費用についての統計によると約122万円の負担がかかっています。
その全額を負担するわけではないとはいえ、節約できるならしたいと思うのはもっともなことです。
これに対して火葬式にした場合には平均費用が20万円から30万円程度になっています。
一般葬の4分の1から6分の1の費用で済むとなるとメリットが大きいと感じる人も多いでしょう。
火葬式は小規模だから費用が少なく済むというのも確かですが、参列者をあらかじめ確定しておくことができるのも経済的負担を抑えられる理由です。
一般葬では誰が参列するかを完璧に予測するのはほぼ不可能です。多めに見積もって準備をしなければならない影響で予想していた以上に費用がかかってしまうことがあります。
しかし、火葬式であれば近しい人たちと相談して参列可能かどうかを確定できるのできっちりと必要な費用だけを払うことができるのです。
高齢化による参列者の減少
火葬式が増えている理由として参列者が減少してきていることも挙げられます。
大勢の参列者がいるだろうと考えて盛大な一般葬を計画したらほとんど来なかったというケースも起こり得る状況になっているのが現代社会の特徴です。
その原因は高齢化で、亡くなる方がかなり高齢になってしまっているケースが多くなっています。
元気があるうちには古くからの友人との付き合いがあり、地域の活動にも参加しているでしょう。
しかし、高齢になる程活動度が低下してしまって付き合いも少なくなってしまいがちです。
結果として亡くなる頃になると親しい友人が少なくなり、葬儀に是非とも参列したいという人があまりいなくなってしまっています。
高齢化に伴うこのような状況があるため、少数の知人と親族で葬れば故人も十分に浮かばれると考えるケースが多くなっているのです。
核家族化による影響
現代社会では核家族化が進行していますが、これも火葬式が増えている一因として知られています。
核家族化が進むと親戚付き合いが少なくなる傾向があり、あまり普段から連絡を取らなくなってしまいがちです。
拡大家族で暮らしている家庭がほとんどだった時代に比べると親族間の付き合いが疎遠になってしまっているのです。
特に人口が多い都市部で核家族化の進行が顕著に起こっている状況があり、だんだんと一般葬をするほど人を呼ぶ必要がない家庭が多くなってきています。
都市部では近所付き合いもあまり行われない場合が多く、地域でのつながりも弱まる傾向があります。
お葬式には地域の交流の場を設けるという意味合いもありましたが、その価値も低下してしまっているのです。
そのため、限られた身近な人だけで葬儀を行えば十分と捉えられるようになり、火葬式を選ぶケースが目立つようになってきています。
火葬式の流れ
このように増加してきている火葬式についてもう少し詳しくなりましょう。
火葬式は結局どういうことをするのかがまだよくわかっていない人もいるかもしれません。ここでは火葬式がどのような流れで行われているのかについて詳しく紹介します。
臨終・打合せ
火葬式であっても一般葬であってもまず親族の臨終が発端になって葬式について相談を始めることになります。
医師による死亡確認が行われた後、遺体を安置するというのが基本の流れです。臨終を終えたら葬儀社に連絡して安置場所の確保をします。
自宅か葬儀社の霊安施設を利用しているのが一般的で、病院や介護施設などでは長時間は安置できないので注意が必要です。
葬儀社に連絡すると病院や介護施設からでも専用の搬送車で遺体を自宅や霊安施設まで搬送してくれます。
安置を終えたら葬儀社とどのような形で弔うのかについて打ち合わせをします。
様々なプランの提案を受けることが多いですが、ここで火葬式を選びたいと伝えれば段取りを整えてもらうことが可能です。
なお、日本では死後24時間が経過しなければ火葬できないと法律で定められています。そのため、火葬式を選んだ場合には火葬は翌日行われるのが典型的です。
ただ、火葬場の空き状況や参列者の都合などに応じて数日後に執り行うということも少なくありません。
この間に棺に納める故人の思い出の品などを探しておくと良いでしょう。
納棺
火葬式で次に行うのは納棺です。火葬のときに使用する棺の中に故人の遺体を納める儀式のことで、出棺の直前または火葬式の前夜に行うのが一般的です。
故人の身支度を整えて棺に納めた上で、探しておいた故人の思い出の品や花を納めることになります。
ただし、火葬にそのまま入れることになるので思い出の品は燃えるものでなければなりません。
入れて良いものかどうかわからない思い出の品がある場合にはあらかじめ葬儀社に聞いておくようにしましょう。
納棺についての詳細は『納棺の儀式とは何?儀式の流れで知っておきたいことについて』
出棺
納棺を終えたら次に行うのが出棺です。火葬にする前にまずは安置場所に僧侶を呼んで読経してもらい、簡易的な葬儀を行います。
火葬式と言われるときには通常はこの葬儀を行いますが、直送の場合には僧侶を呼ばずにそのまま火葬へ進めるのが通例です。
ただ、近年では葬儀の有無によって火葬式、直葬という言葉の使い分けが曖昧になっているので注意しましょう。
葬儀社から提案を受けたときにも僧侶を呼ぶのかどうかを聞いてみた方が賢明です。
また、親族などに連絡をするときにも葬儀の有無を伝えるようにした方が誤解がありません。この簡易的な葬儀が終わったら出棺して火葬場に向かうことになります。
火葬
出棺して火葬場に到着したら最後のお別れをします。炉の前でお別れを告げたら火入れが始まり、1時間から2時間ほどは待合室で待機することになります。
なお、場合によっては読経するのが炉の前ということもあるので葬儀社に確認を取っておくと良いでしょう。火葬が終わったら親族から順番に収骨を行います。
喪主が最初になり、その後に血縁が近い人から順番に遺骨を拾って骨壺に納める儀式です。この収骨が終わったら火葬式も終了で解散になります。
火葬式のメリット・デメリット
火葬式を選ぶ人が増えていることからメリットが大きいことは想像できるでしょう。
ただ、誰もが選んでいるわけではないのはデメリットもあるからです。ここでは火葬式のメリット・デメリットについて説明します。
メリット
火葬式のメリットとしてまず挙げられるのが費用負担を軽減できることです。
通夜や告別式などの会場費用や人件費、食事接待費などを抑えられるので小資金でも行いやすいでしょう。
火葬式では親族や親しい友人のみで行うのが基本なので香典返しをする必要もないのが一般的です。手間も費用も減らせるという点で魅力があります。
また、参列者への対応をしなくて良いのもメリットです。
通夜などでは参列者への配慮がかなり負担になってしまうことが多いものの、気の知れた人だけで行う火葬式なら問題になることはありません。
食事での接待も必要ないので気重にならずに済むでしょう。
デメリット
火葬式のデメリットとして故人とのお別れをした実感を得にくいことが挙げられます。
一般葬に比べると時間的にもかなり短縮されているので供養をしたのかよくわからないという状況に陥りがちです。
また、親族や故人の友人から不満が出る場合もあります。一般葬が当然と思っていると通夜も告別式もないのが簡素過ぎて故人に失礼だと言われてしまうこともあるのです。
参列を希望していた人への配慮も必要で、火葬式にすることに納得してもらわなければなりません。後日に弔問の機会を設けるなどといった対応をすることになる場合もあります。
このような人間関係に関わるトラブルが起こり得ることに加えて、菩提寺がある場合には納骨を拒否されてしまうリスクがあるのもデメリットです。
菩提寺があるときはお寺の主導で葬儀を進めるのが原則となっているので、火葬式にしてしまうと納骨できない場合があるのです。
どうしても菩提寺に入れたい場合には葬儀をやり直さなければならないこともあります。
火葬式の費用相場
火葬式の費用相場は前述のように約20万円から30万円です。僧侶による簡易的な葬式をするときにはお布施として5万円くらいを支払うのが通例です。
火葬式の費用の大半は火葬場の利用料金なので、火葬場が公営なら安いですが、民営の場合にはかなり高くなるので注意しましょう。
また、物価による違いもあるので物価が高い地域では葬儀費用も高めになります。
火葬式で注意するポイント
火葬式を選びたいと思ったときにはどんなポイントを押さえておくと良いのでしょうか。失敗して後々まで問題を引きずってしまわないように注意すべきポイントを把握しておきましょう。
納骨トラブル
納骨に関わるトラブルに対策を立てておくのは火葬式を選ぶ上で欠かせないポイントです。
菩提寺から納骨を拒否されてしまうと散骨をするか、他に受け入れてくれる寺院がないかを探して送骨の手続きをしなければなりません。
それでも良いなら大きな問題ではないかもしれませんが、できれば菩提寺に入れたいと考えるのがもっともなことでしょう。
拒否理由としては宗派によって定められている儀式通りに葬儀をしていないことが挙げられます。
対応策としてお寺から何を提案されるかはケースバイケースですが、葬儀をやり直さなければならない、戒名をつければ良いといった対応が典型的です。
何らかの方法で納骨を認めてもらうことができたらお布施を納めれば納骨できます。
一方、あまり縁の深くない人の火葬の面倒を見る場合もあります。このときにも納骨トラブルが発生することがあるので注意しましょう。
遺骨を骨壺に納めたものの、納骨先が見つからずに苦労することもあるのです。この場合も納骨拒否をされた場合と同様に散骨するか送骨先を必死に探さなければなりません。
葬儀社に相談して探してもらうなどの打開策を考えておきましょう。
費用の追加請求
葬儀社に申し込みをしたときには葬式にかかる費用の見積もりをもらえるのが一般的です。
火葬式の場合には費用負担が少ないのがメリットではあるものの、費用の追加請求によってかなり費用が上乗せされてしまうこともあるので注意しましょう。
例えば、火葬式までの日数が延びてしまうと遺体を保存するためのドライアイス代や安置施設の利用料を追加請求されるのが通例です。
また、遺体の搬送距離が長いと実際の走行距離に合わせて費用が高くなることがあります。
また、事故によって亡くなった場合などには遺体の損傷などが酷く、専門的な特殊処理をする場合があります。その費用も見積もり時点では出ていないこともあるので気をつけましょう。
火葬式は念入りな検討を
火葬式は費用も手間も少なくて良いと思う人も増えてきていますが、実際にどんな形で故人と別れをするかはメリットだけでなくデメリットも含めてよく考えて決めないと失敗してしまうかもしれません。
親族や故人の友人などの意向も考慮して納得できる形で弔うのが大切です。後になって後悔してしまわないように本当に火葬式で良いのかを慎重に考えるようにしましょう。
-
超高齢化多死社会を迎える中、今の時代に必要なのは、ご遺族の状況に応じたプランをご提案することです。
厚生労働省認定1級葬祭ディレクターとして、これまでの画一的な「一般的な葬儀」を一から見直し、必要な人に、必要なお葬式を自由に選んでもらうためのプランを作成しました。
後悔のないお葬式を執り行いたいけど、シンプルなお葬式でいい。そんな方はぜひお気軽にご相談ください。 -
【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール