死産の場合の葬儀は、赤ちゃんがお腹にいた期間が22週までと以降で流れや手続きの内容が変わってきます。費用はお棺や火葬料金なども含めて数万円で行うことができ、供養の形は大人同様に様々です。悔いのない最良なお見送りができるよう解説いたします。
妊娠という奇跡とも捉えられる体験をされ、多くの夢と希望を抱きながら過ごされていらっしゃったことと思います。
そんな中で赤ちゃんを亡くすことはご両親やご家族にとって人生で経験したことのない、非常に耐え難い事実です。
しかしながらそのような中、様々な手続きや火葬などを進めていかなければなりません。
本コラムでは死産の際の流れや必要な手続き。火葬と葬儀について理解することができますので、是非最後までお読み下さい。
INDEX
死産とは
死産とは胎児が生命を失った状態で母体から娩出されることです。
日本では、妊娠4か月以後の死産は医師、助産師による死産証明書発行の対象となり死産と定義されています。
死産の場合の葬儀の流れとは
死産の場合の葬儀の流れや手続きは妊娠何週目の死産かによって異なりますので下記2つに分けて解説いたします。
*いずれも火葬は必要となりますが、12週未満での死産の場合には火葬や届出自体が不要です。
市町村役場へ「死産届」を提出すると死胎火葬許可証が交付されますので、火葬の際にはそれを火葬場に持参します。
胎児が妊娠12週から22週までの死産の場合
妊娠12週以降で赤ちゃんを死産した場合には、「死産届」の提出が必要です届出人の住民票のある自治体、もしくは死産した病院のある自治体の市町村役場へ、死産から7日以内に提出します。
死産届の用紙は、死産を診断した病院で、死産証書(医師の立ち会いがない場合は死胎検案書)とともに受け取ります。
この場合は子供は母胎内で亡くなったとみなされるため、法令上子供はこの世に存在したことにはならず、出生届提出の必要はありません。
赤ちゃんの命名は必要なく、戸籍にも記載されることはありません。また、性別を記載する欄には未判明の場合は空欄で構いません。
胎児が妊娠22週以降の死産の場合
妊娠12週以降同様に「死産届」の提出が必要となります。
しかし、妊娠22週以降の赤ちゃんは母胎外での生存能力があると認められます。
そのため、早産などが原因で赤ちゃんが出生後に亡くなった場合は、「死産届」ではなく「死亡届」を提出するようになります。
出生後に亡くなったと判断された場合は「出生届」と「死亡届」を提出する必要があり、「出生届」の提出には赤ちゃんの命名も必要になります。
亡くなった赤ちゃんは戸籍にも記載され、その後除籍されるという形となります。
赤ちゃんが出生したかどうかの判断は医師の判断となります。
火葬について
日本では法律で死後24時間以上経過しないと火葬することが認められていません。
しかし妊娠24週未満の死産児については、蘇生の可能性がないと考えられることから法律は適用されません。
反対に妊娠24週以降の死産の場合、法律が適用されることになりますので注意しましょう。
火葬場の予約について
火葬場を運営する自治体で考えが異なるのですが、死産児の場合、火葬場に直接問い合わせを行い、そのまま火葬予約が出来ることが多いです。
したがって直接火葬場に連絡をされるご両親も多いですが、ご両親の心労もあり、お棺の手配、ご案内、火葬場の予約などを含め、葬儀業者に委託依頼を行う方もいらっしゃいます。
※ちなみに通常の葬儀を行い、火葬をする場合は、葬儀業者を通じて火葬場の予約を行うことが大半であり、一般の方から火葬場へ直接予約が出来ない場合が多いです。
死産の場合の葬儀費用相場はいくら?
死産の際の葬儀費用に関しては基本的に手配を葬儀業者にするのか、身内で取り行うかで変動します。概ね数万円程度となります。
内訳としては、火葬場を利用するための火葬料金、お棺、状況によりドライアイス等が必要なケースがあります。
搬送するためのお車(寝台車)は実際にはほとんど使用することはなく、ご両親が直接火葬場まで抱いて移動をすることが多いです。
荼毘に付す(火葬をする)ために、ご両親の手でお棺にご納棺を行い、火葬場のスタッフに依頼をいたします。
火葬料金
小さな子どもの火葬料金は自治体によって異なりますが、基本的に安価に設定されています。
その中でも、子どもと死産児と区別して、火葬料金を設定してる自治体も多く、子どもの火葬費用よりさらに安価に設定されています。
例:東京都大田区に所在する臨海斎場は「品川区・大田区・目黒区・世田谷区・港区民は10,400円・それ以外の方は20,800円、名古屋市立八事斎場は名古屋市民:1,200円 名古屋市民外:16,800円となります。
お住まいの地域により火葬費用の差があります。
お棺代
小さな子供は専用の小さい棺が用意されています。
葬儀社のプランに含まれていたり、もしくはご自身で購入することも可能となります。
おおよそ数千円から2万円くらいです。
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搬送費
お身体が小さいため、ご自身の自家用車で運ぶことも可能です。
葬儀社に依頼するのであれば、病院からご安置場所、ご安置場所から火葬場までの距離によって変動します。
その他
赤ちゃんの場身体がとても小さいのでドライアイスが不要な場合があります。
必要な場合でも数千円程度となります。また、宗教者の読経や供養を希望するのであれば、お布施や戒名料などが発生します。
葬儀式場を借りて葬儀・告別式などを行う形であれば、会場費や祭壇などもろもろの葬儀費用がかかってきます。
火葬の際、事前に認識しておくこと
大人の火葬と違ってお骨が全て灰になってしまったり、棺の中に入れたい物も違ってきたりするかと思います。
お骨が残らない場合がある
赤ちゃんの火葬をした場合、骨が非常に華奢であり、未成熟なので赤ちゃんの大きさや火葬場の設備によっては、遺骨が残らないケースが考えられます。
東京都の四ツ木斎場には赤ちゃん専用の火葬炉「小型炉」がありますが、全国的には極めてまれです。
赤ちゃんの火葬は炉の温度が上がり切らない朝一番の時間帯ですとお骨が残りやすいと言われていますが、必ずしも残せるわけではありません。
拾えるお骨が残らないこともある!ということを頭に入れておく必要があります。
副葬品は入れられるの?
基本的に棺の中に入れてあげられる物は火葬の妨げになることのない、可燃物に限定される点は大人と変わりません。
念のために必ず火葬場の担当者に相談・確認するようして下さい。
ご遺体や設備を損傷・故障させる恐れがあるもの、燃やすと環境に有害な素材でできているもの、燃えにくく不完全燃焼の恐れがあるものなどは禁止されています。棺桶(御棺)とは?意味と選び方と副葬品に入れてよいものダメなものを解説!ではお読みいただくことで理解を深めて頂けます。合わせてお読みください。
火葬後のご供養について
火葬後のご供養の仕方に関しては自由です。
一般的にお骨はお墓へ納骨するものとされているものの、昨今ではかなり多様化されておりご供養の形も様々です。これは死産した赤ちゃんについても同様といえます。
死産した赤ちゃんの遺骨を埋葬する場合には、市区町村の役所に出生届と死亡届を提出し、火葬許可証を受け、火葬場でその火葬許可証に印鑑を押してもらい、改葬許可証を作成し、そのうえで墓地管理者に提出する必要があります。
妊娠12週以前に赤ちゃんが亡くなった場合は、遺骨をどのように安置するかは両親や家族のお気持ち次第です。
墓地や寺院に納骨する場合も、一部またはすべての遺骨を手元で供養する場合もあるでしょう。
お墓へ埋葬する場合は、一般墓・納骨堂・永代供養・樹木葬など、大人の方と変わらない埋葬を行うことができます。
全く埋葬も供養もせず遺骨を処分してしまっても、気持ちの問題は別にして法的には問題ありません。
死産についてのまとめ
・赤ちゃんがおなかにいた期間に応じて、手続きの方法が異なる
・相場は概ね数万円
・供養の仕方は両親(家族)のお気持ち次第
おなかにいた期間として12週以降と22週以降に分類され、それぞれで手続きが異なります。
葬儀や供養に関しては絶対にこれをしなければならないというものはありません。
ご両親の気持ちを最優先にして、少しでも納得できる方法を選んで下さい。
本当にお辛いことですが、悔いのないお見送りができるようご家族でしっかり話し合ってゆっくり決められるといいでしょう。
【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール