個人を供養する方法としては、通常も墓以外にも永代供養墓という選択肢もあります。永代供養墓を利用する際には、事前に費用相場やどのようなメリット・デメリットがあるのかをしっかりと把握しておくことが大切なのです。そこでこの記事では、永代供養墓にはどのような特徴があるのか、メリットやデメリットは何なのかといったことについて解説していきます。
INDEX
永代供養墓とは
永代供養墓とは、寺院や霊園に管理を任せることのできる墓のことを言います。通常の墓の場合には、維持や管理、供養は残された家族や親族がおこなうことが基本です。しかし、永代供養墓の場合には管理や供養は霊園などが代わっておこなってくれるので、子孫が墓を継承していく必要がありません。永代供養墓は、永遠墓や永代供養塔などと呼ばれることもあります。
一般的には像や塔などのモニュメントが参拝用として地上に建てられることが多いでしょう。遺骨については主に、地下や地上の納骨堂に納められます。遺骨は一定期間ののち、ほかの遺骨と一緒に合祀されることになるのです。永代というと、永遠を意味していると思っている人もいるでしょうがこれは違います。永代とは「長い期間」を意味しているため、永遠に供養してもらえるわけではありません。永代供養墓に遺骨を納めれば永遠に供養してもらえると勘違いしている人も多いため、気をつけたいポイントです。
遺骨を安置しておく期間については明確には定められていません。それぞれのプランによって安置期間は異なり、安置期間なし・17回忌まで・33回忌までといったプランがあります。個人の戒名を記した木製の札である「位牌」は必ずしも必要というわけではありません。しかし、宗派によって考え方が違うため、あらかじめ霊園や寺院に相談しておくと安心です。また、永代供養墓は、墓地の使用権を得るための費用である永代使用料とは異なるので注意しましょう。
永代供養墓の種類
永代供養墓には、主に4つの種類があります。まずは、「個人墓に遺骨を安置するタイプ」です。このタイプは、一般的なお墓の形をした個人墓を設けて供養をおこないます。契約期間中は個人墓で供養をおこなって、契約期間が終了したら供養塔などに遺骨を移して合祀します。33回忌までを契約期間の目安としている場合が多いのが、個人墓つき永代供養の特徴です。
2つ目は、「納骨堂に遺骨を安置するタイプ」になります。契約期間中は納骨堂に遺骨を置いて供養をおこない、期間が終わったら合祀します。このタイプも、個人墓タイプと同様に33回忌までを目安としていることが多いでしょう。
次は、「初めから合祀するタイプ」です。こちらのタイプは、前者2つとは異なり、個人墓や納骨堂などに安置することなく、すぐに供養塔などで合祀します。最後は「樹木葬タイプ」です。樹木葬はメディアなどでも多く取り上げられ、注目を集めている供養方法となっています。墓石や供養塔などの代わりに、ハナミズキや桜といったシンボルツリーを用い、周囲に遺骨を納めるのが基本的なスタイルになるでしょう。
永代供養墓の費用相場
永代供養墓にかかる費用は、一般的な墓よりも安価だと言われています。しかし、契約タイプによって費用は大きく異なるため、ある程度の費用相場を把握しておくことが重要です。永代供養墓の中でもっとも費用相場が高くなるのが、個人墓つき永代供養墓です。はじめは個人墓で供養するため、納骨堂タイプなどよりも大幅に費用がかかるのが特徴でしょう。このタイプの場合には70~200万円程度が相場だとされています。
納骨堂タイプの場合には、30万~100万円程度が相場になります。都心に近い、アクセスがしやすいなど、好条件が揃っている場合には、高額になる傾向があります。すぐに合祀されるタイプはもっとも安く、費用相場は10~30万円程度になるでしょう。寺院や霊園によっては数万円から引き受けてくれるところ稀にあるため、費用に余裕がない場合には向いています。
樹木葬タイプは費用相場の幅が広く、5~100万円ぐらいになります。100万円以内で抑えられるケースが多いのですが、個人のスペースを設けるのか、それとも合祀するのかによって費用が大きく異なるのが特徴です。
いずれにせよ、価格帯が地域性、使用する墓石、どちらの会社に依頼を行うかで大きく変動します。こちらもお葬式同様、事前に調べておくことが大事です。
永代供養墓を利用する人の特徴
永代供養墓を利用する人の主な特徴としてはまず、「残される子孫に面倒をかけたくない」と思っていることが挙げられます。墓の維持、管理には費用もかかりますし、手間もかかります。墓が遠いところにあって管理が難しい、交通の便が悪いところにある、経済的な負担をかけたくないなどに理由から、永代供養墓を選択する人も少なくありません。
「墓の継承者がいない」ことも理由として挙げられます。子どもがいない、頼れる親族がいないという人も珍しくはありません。その場合、墓を管理してくれる人がいないため、永代供養墓を選ぶ人も多くいます。永代供養墓なら、管理や供養は寺院や霊園に任せることができるので、管理してもらえずに墓が荒れてしまうといったことがありません。
「1人、もしくは夫婦だけで墓に入りたい」といったことも考えられます。生涯未婚率の増加や家族との関係性の変化など、さまざまな理由から自分だけで、もしくは夫婦だけで墓に入りたいと考えている人は増加傾向にあります。その場合には、永代供養墓が有力な候補として考えられており、需要は増えてきているようです。
永代供養墓のメリット・デメリット
永代供養墓には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
メリット
永代供養墓のメリットは、2つ考えられます。まずは、後の世代に迷惑をかけないことです。永代供養墓は、年間管理料が発生しません。最初にまとめて支払うことになるので、後の世代に金銭的な負担を負わせることがないのです。金銭的な負担だけでなく、さまざまな負担を軽減できるのもメリットです。管理や供養は寺院や霊園が代わっておこなうため、墓掃除などの手間がかかりません。子どもが遠方に住んでいて頻繁に墓を訪れられない場合にも、大きなメリットになるでしょう。墓を継承していく必要がないため、心理的な負担もなくすことができます。
費用が安く済むことも大きなメリットです。永代供養墓は、一般的な墓を建てるよりも費用を抑えることができます。もっとも高価な個人墓タイプであっても、高くて200万円程度です。一般的な継承墓の場合には、250万円が費用相場になるため、大幅に安く抑えられます。
デメリット
永代供養墓のデメリットは3つ挙げられます。まずは、親族を説得できない場合があることです。永代供養墓に対して、「身寄りのない気の毒な人が入るための墓」というイメージを抱いている人も少なくありません。そのため、家族がいるのに永代供養墓にするなんて、と反対されてしまうケースもあります。合祀されたら遺骨が取り出せないこともデメリットになるでしょう。個人墓タイプや納骨堂タイプのように、一時的に遺骨が安置されるものであっても、最終的にはほかの人の骨と一緒に合祀されることになります。そのため、後から新しい墓を用意して移してあげようと思っても、合祀された後には取り出せませんので注意が必要です。
従来のイメージとは違う墓参りに慣れなければいけないことも、気になる点です。永代供養墓では、多くは個別の墓ではなくて供養塔といった大きなモニュメントに手を合わせることになります。そのため、故人を供養したという実感が薄く、抵抗感を感じる人も中にはいるようです。
永代供養墓を選ぶときのポイント
永代供養墓を選ぶ際には、供養の頻度や規模などをしっかりと確認しておきましょう。それぞれの寺院や霊園によって供養の仕方は異なります。お盆などのタイミングで大規模な合港供養をおこなうパターンや毎日読経してくれるパターンなどさまざまです。どのような供養をしてほしいのか、きちんと考えて選ぶことが重要になります。
維持費の有無についても確認しておくと安心です。基本的に永代供養墓では、年間管理料などの維持費はかかりません。しかし、墓所によっては墓の利用者が生きている間は管理料などがかかるといった条件を付けているところもあります。そのため、契約内容や費用の内訳などは、しっかりと確認して納得できるところと契約することが重要です。
永代供養墓という選択肢もあるということを知っておこう
少子高齢化や家族関係の変化などによって、無縁仏となる人や墓の数も増加傾向にあります。永代供養墓は無縁仏にならないためには、効果的な方法だと言えるでしょう。ただし、合祀されると遺骨を取り出せないなどのデメリットもあります。メリットとデメリットを見比べて、永代供養墓を利用するかどうか慎重に決断するようにしましょう。
【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール