お墓を持っていると改装や墓じまいをする機会も出てくるかと思います。しかし、それが集落の共同墓地だった場合、やりかたはどう変わってくるのでしょうか。今回は集落の共同墓地について、詳しく解説していきます。ぜひ、最後までご覧ください。
お墓を持っていると改装や墓じまいをする機会も出てくるかと思います。しかし、それが集落の共同墓地だった場合、やりかたはどう変わってくるのでしょうか。今回は集落の共同墓地について、詳しく解説していきます。ぜひ、最後までご覧ください。
集落の墓地の現状
集落の墓地はどのように存在しているのか
そもそも、集落の墓地はどのように存在しているのでしょうか。
集落の共同墓地の管理主体は、集落の住民です。
管理組合や町内会など、特別な権限を持たない住民たちが共有し、管理しています。
そのため集落墓地の中には、現在の管理者がわからなかったり、管理者が変わったりするので、管理のしかたも人によってかなり違ってきます。
また、集落の共同墓地には永代供養墓がなく、永代供養ができません。
永代供養とは、家族の代わりに施設の管理者が、将来にわたって供養する仕組みを指しています。
集落の共同墓地はその性質上、長期にわたった管理が難しいため、永代供養はできません。
集落の墓地の法律上の扱われかた
集落の共同墓地が他の墓地と1番違うところは、法律上の扱われかたです。
今ある墓地について、事細かに決められた法律を墓地埋葬法といい、昭和23年に制定されました。
集落の共同墓地の多くは、墓地埋葬法が制定される以前からある墓地です。
それらの墓地は、きちんと許しをもらって運営しているのなら、そのまま引き続き運営してかまわないと墓地埋葬法で認められています。
しかし、運営者がはっきりしていない墓地や墓地埋葬法で決められた内容と合っていない墓地がたくさんあるため、それが原因でトラブルになる場合もあります。
集落の墓地特有の問題
この項目では、集落の墓地特有の問題についてご紹介します。
どこの墓地でお墓を建てたとしても、他人とのトラブルや利用のしにくさなど、デメリットは大なり小なり出てきます。
それは集落の墓地でも同じことです。
しかし、どのような問題が起きやすいのかということをあらかじめ調べておくことで、集落の墓地を選ぶ際のよい参考材料となるでしょう。
お墓の区画があいまい
公営や民営の墓地などでは、区画をきっちりと分けているところが多いです。
しかし、それとは反対に集落の墓地では、お墓の区画があいまいになっているところが数多く存在します。
そのため、隣り合っている他人のお墓との土地に関するトラブルが生まれやすくなっています。
例えば、お墓に供えている花や食べ物などが、風のせいで隣の区画まで散らかっても、まだ自分の区画だとおもっていたら片付けない人もいます。
また、隣の区画に一部入ってる状態でお墓を建ててしまったというケースも多いです。
これらは区画が明確になっていないせいで「ここまでが自分の区画」という認識が、お互いにずれていることで生じる問題と言えるでしょう。
お墓の共用部分の手入れがされない
管理者が誰かわかっていない場合、お墓の共用部分は手入れがされません。
公営や民営の墓地などでは、管理者を決めているため、お墓の共用部分への手入れもしっかりと行われています。
しかし、管理者が不明の状態では、仮に誰かが共用部分の手入れについてクレームを入れても、対応が追い付かないことが多いのです。
共用部分と言えば、通路や塀などが挙げられますが、どのような理由でそれらが壊れたとしても、修復するための時間が通常よりもかなりかかります。
そのため、お墓参りをする人にとっては、共用部分に異変が起きただけで、長期間通いにくくなる場所になると言えます。
お墓が知らない間に撤去されることもある
法律ではお墓に1年以上立て札などで掲示をして、ご家族などの墓守が出てこなかった場合、お墓を撤去できると定められています。
無縁墓が増えていることへの対策なのですが、お墓の撤去にはお金がかかるため、法律で決まっているとはいえ、そう簡単にはできません。
しかし、公共事業などの場合は必要な土地になるため、1年以上経っても墓守が現れなかった場合は、お墓は撤去されてしまいます。
民営や公営などの墓地では、管理者が決まっているため、お墓の持ち主の情報が登録されているなどの場合、その心配はありません。
しかし、集落墓地では管理者不明の場合が多いため、お墓参りを2年空けて行ったらお墓が撤去されていたということはあります。
集落の墓地の改葬や墓じまいの方法
先述したように、集落の共同墓地は法律で特殊な扱われかたをされています。
そのため、公営や民営の墓地などで改葬する手続きとは、やるべきことが若干違ってくるのです。
この項目では、集落の共同墓地の改葬や墓じまいのしかたについてご紹介します。
集落のお墓を改葬する場合の手続き
まず、集落のお墓を改葬する際に必要な手続きをご説明します。
お墓の改葬先を決める
お墓を改葬する前に、まずはお墓の改葬先を決めておく必要があります。
なぜなら、改葬先の墓地によっては、改葬を受け入れていないところもあるからです。
そのため、まずはご自分の希望に沿っている墓地を探し、改葬をしてもいいのか確認する必要があります。
自力で見つけることができなかった場合は、ご自分が墓地に求める条件をまとめた上で、石材店などに相談してみましょう。
注意点としては、改葬先に墓地埋葬法制定前の墓地を選んではいけません。
墓地埋葬法で認められているのは、あくまでも墓地埋葬法ができる前に許可された墓地の運営についてです。
後からそういった墓地に新しくお墓を建てることに関しては、基本的に認められていないのです。
受入証明書を取得する
お墓の改葬を受け入れている墓地を見つけることができたら、次は受入証明書を取得します。
受入証明書は後で市役所に提出する必要があり、これがなければ改葬ができません。
受入証明書の発行は、改葬先と決めた墓地の管理者に頼めばもらうことができます。
その際、受入証明書を取得するために、申請書を記入する必要があります。
ご遺骨の名前と本籍、それから改葬元の名前と住所などを記入するので、必要な情報はあらかじめ調べてメモしておきましょう。
発行してもらった受入証明書には、発行した日付、改葬を申請した人の名前と住所、墓地管理者の名前と住所と捺印、ご遺骨の名前、改葬先の住所と名前などが記載されています。
埋葬証明書を取得する
改葬先で受入証明書を発行してもらったら、次は埋葬証明書を取得しましょう。
埋葬証明書も受入証明書と同じく、市役所に提出する必要があります。
埋葬証明書の発行は、現在の集落墓地の管理者に改葬のことを伝えればもらうことができます。
しかし、集落の墓地においては、先述したように管理者がはっきりしていない場合が多いです。
すでに管理者がわかっている場合は、そのまま埋葬証明書を発行してもらいます。
誰なのかわからない場合は、まずお墓の管理者を特定するという手順が必要になってきます。
調べかたによって、時間はかかるかもしれませんが、何とかお墓の管理者を探して埋葬証明書を発行してもらいましょう。
改葬許可証を申請する
現在の集落墓地の管理者を見つけ出し、埋葬証明書を発行できたなら、次は改葬許可証を申請します。
改葬許可証を発行するには、今までに取得した「受入証明書」と「埋葬証明書」そして「改葬許可申請書」をまとめて市役所に提出する必要があります。
そのため、改葬許可申請書に必要事項を記入し、市役所の窓口に出しましょう。
改葬許可申請書は市役所でもらえますので、受入証明書と埋葬証明書を揃えてから市役所に行きます。
改葬許可申請書の記入項目には、故人の亡くなった日付や改葬の理由の他、故人が埋葬された日付などがあります。
集落墓地は管理が曖昧な所も多いので、このあたりの情報は事前にしっかりと調べておきましょう。
集落のお墓の墓じまいの流れ
続いて、集落のお墓の墓じまいをする際の流れについてご説明します。
改葬許可の申請をする
改葬許可証を申請し、改葬許可証を発行してもらったら、現在の墓地の管理者に提出しましょう。
書類を提出したことで、やっと墓じまいを始めることができます。
お性根抜きが終わった後、石材店にお墓を撤去してもらい、ご遺骨と一緒に改葬先へ改葬許可証を持っていきます。
改葬許可証は本書を持って行ってもいいですし、あらかじめコピーしておいて、現在の墓地の管理者に本書を渡し、コピーのほうを改葬先に渡すという方法でも問題ありません。
市役所で発行してもらった改葬許可証をこのように両方の墓地へ提出することで、お墓の改葬が可能となります。
お性根抜き
改葬許可証を現在の墓地の管理者に提出した後は、お墓の撤去をする前にお性根抜きをしましょう。
お性根抜きとは、お墓に宿っている故人の魂を抜き出すという意味合いが込められた儀式です。
そのため、魂抜きとも呼ばれています。
事前にお寺へ行き、お坊さんにお性根抜きを依頼し、実施する日付を決めておいたほうがよいです。
そして当日、お墓の撤去前にお性根抜きをやります。
お性根抜きをすることで、お墓は魂の入っていた墓石から、ただの物体に戻るとされています。
ご遺骨を取り出す
お性根抜きが終わったら、今度は故人のご遺骨を取り出します。
ご家族の希望により、すでにあるお墓を改葬先に移すか、新しいお墓を購入して現在のお墓は取り壊すかに大きく分かれることでしょう。
どちらを選ぶにしろ、ご遺骨を改葬先に持っていくことは決まっているので、骨壺へ慎重に納めてから、お墓の撤去工事を始めます。
改葬先へご遺骨を持っていくまでの間、骨壺は骨箱に入れたり、布などで包んだりするなど、骨壺が壊れないための工夫をします。
改葬先でお墓の設置が完了するまで時間がかかる場合は、自宅で骨壷を保管しておきましょう。
注意点として、工事が終わるまでの間、骨壺を不注意で割らないよう安全な場所に置いておくことです。
墓じまい後のご遺骨をどうするか決める
最後に、墓じまい後のご遺骨をどうするかを決めます。
改葬先が民営や公営の墓地だった場合、先述したように改葬許可証を提出してから、ご遺骨をお墓に納めます。
そのためには、まずお性根入れの儀式を先に行います。
お性根入れとは、お性根抜きの反対で、抜いた魂を改葬先へと設置したお墓に入れなおす儀式です。
お性根入れをしないままだと、お墓ではなく、故人の魂が宿っていないただの物体です。
したがって、お墓だけではなく、故人の魂も引っ越しをするために、お性根入れをする必要があります。
お性根入れ完了後、お墓に納骨をして終わりです。
しかし、墓じまい後のご遺骨の扱いは、この方法以外にもあるので、いくつかご紹介します。
手元供養
手元供養はその名の通り、自分の手元でご遺骨を保管する供養方法を指しています。
この場合、自宅でご遺骨を保管するため、お墓は買わなくてもいい上に、これ以上の手続きはしなくてもいいというメリットがあります。
すでにお墓を撤去した集落墓地の管理者に対し、許可をもらう必要もありません。
注意点としては、改葬許可証を失くしたり、捨てたりすることは避けてください。
なぜなら、後で気が変わって、民営や公営の墓地に埋葬したいと思うかもしれないからです。
そのときは、改葬許可証が必要になります。
しかし、仮に改葬許可証を失くしてしまったとしても、再発行はできます。
樹木葬
樹木葬とは、樹木を墓標にして、故人のご遺骨を埋葬する供養方法です。
樹木葬は大きく分けて、里山型と都市型があります。
里山型は都市部から離れた山が墓地で、1人につき1本の樹木の側に、都市型は許可をもらっている墓地に植えた樹木の側に、それぞれご遺骨を埋葬します。
樹木葬は里山型、都市型のどちらにも管理者がいるので、改葬許可証が必要です。
散骨
散骨とは、故人のご遺骨を細かく砕き、海や空へ撒く供養方法です。
近年では、ロケットを飛ばしてご遺骨を宇宙に撒く「宇宙葬」というものもあります。
散骨をする場合、改葬許可証は市役所によって発行されない場合があります。
お墓に納める訳ではないため、墓埋法の定義から外れ、必要ないと判断されます。
その場合は、市役所で手続きをせずにご遺骨を取り出すことが可能です。
まとめ
本記事では、集落の共同墓地に関して、以下のようにご説明しました。
-
- ・集落の墓地は、管理者が明確に決まっていないため、永代供養ができない
- ・集落の墓地は区画が曖昧で、お互いに認識している区画の範囲がずれているため、トラブルになりやすい
- ・1年以上掲示を出してもご家族が出てこなかった場合、勝手にお墓を撤去してもよいと法律で定められている
- ・墓地埋葬法制定前の集落墓地に新しくお墓を建てることは認められていないため、改葬先に他の集落墓地を選んではいけない
- ・改葬で埋葬証明書を発行するときは、はっきりしない集落墓地の管理者を特定する必要がある
集落墓地の改葬や墓じまいを行う場合、通常の手続きと大まかな流れは同じですが、管理者を探す必要があるなど、細かな点での違いがありました。
やはり、民営などの墓地よりも手間や時間が多少かかるようです。
【監修】栗本喬一(くりもと きょういち)
- 略歴
- 栗本喬一(くりもと きょういち)
- 1977年生まれ
- 出生地:東京都(愛知県名古屋市育ち)
- 株式会社東京セレモニー 取締役
- ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
- 「おくりびとのお葬式」副社長として、葬儀会社の立ち上げ。「おくりびとアカデミー」葬儀専門学校 葬祭・宗教学 講師。
- 株式会社おぼうさんどっとこむ
- 常務取締役として、僧侶派遣会社を運営。
- 株式会社ティア
- 葬祭ディレクター、支配人、関東進出責任者として一部上場葬儀 社の葬儀会館出店、採用、運営を経験。
- 著書:初めての喪主マニュアル(Amazonランキング2位獲得)
プロフィール