樹木葬の種類と選び方｜シンボルツリー型・里山型・合祀型の違い
「お墓のことを考えるのは、まだ先の話かな……」「樹木葬に興味はあるけれど、種類が多くて違いがよく分からない」と、なんとなくモヤモヤしたまま「そのうち考えよう」と先延ばしにしていませんか。
樹木葬は、「自然の中で穏やかに眠りたい」「お墓のことで家族に負担をかけたくない」という想いから広がってきた、新しいけれどとてもやさしい供養の形です。
この記事では、代表的な樹木葬の種類である「シンボルツリー型」「里山型」「合祀型」の特徴や、失敗しない選び方のポイントを分かりやすく解説します。読み終わるころには、「不安だから考えない」から「少しずつ動いてみよう」に気持ちが変わっているはずです。
樹木葬とは？-自然とともに眠る新しいお墓の形-
樹木葬の基本イメージ
樹木葬とは、従来のような大きな墓石を建てる代わりに、樹木や草花を墓標とする埋葬方法です。緑や花に囲まれた明るい雰囲気が特徴で、「自然に還る」「環境にやさしい」といった価値観から支持を集めています。
一般的なお墓と比べると、次のような特徴があります。
- 墓石ではなく、樹木・草花・プレートなどが目印になる
- 多くの霊園で永代供養が前提となっており、後継ぎの不安を軽くしやすい
- 区画の広さがコンパクトな分、費用を抑えられるケースも多い
- 「宗派不問」の霊園が多く、誰でも利用しやすい
一口に樹木葬の種類といっても、実は中身はさまざまです。とくに多いのが、この記事で取り上げる次の3つです。
この3つの特徴と違いを知るだけでも、樹木葬の全体像がぐっと分かりやすくなります。
樹木葬が選ばれる背景
樹木葬が広がっている背景には、現代ならではの事情があります。
- 子どもがいない・遠方に住んでいるなどで、お墓の継承が難しい
- 実家のお墓が遠く、管理やお参りが負担になっている
- 「墓石を建てること」より、「自然の中で眠ること」に価値を感じる
- 次の世代にお金や管理の負担を残したくない
こうした思いに応える形で、樹木葬は「負担を減らしながら、心のこもった供養ができる選択肢」として注目されるようになりました。
樹木葬の種類① シンボルツリー型
シンボルツリー型樹木葬とは？
シンボルツリー型樹木葬は、1本〜数本の大きな樹木（桜、ハナミズキ、モミジなど）を中心に、その周りに個別の区画を配置する樹木葬の種類です。
よく見られる構成は次のようなイメージです。
- 中央にシンボルとなる大きな樹木が立っている
- その周囲に、1人用・夫婦用・家族用の小さな区画が並ぶ
- 区画ごとに小さなプレートや石碑を設置し、名前やメッセージを刻む
パンフレットやサイトで目にする「いかにも樹木葬らしい写真」の多くは、このシンボルツリー型であることが少なくありません。
シンボルツリー型のメリット
お墓らしさと自然のバランスが良い
シンボルツリー型の樹木葬では、個別区画にプレートが設置されるため、
- 「ここがうちのお墓」と家族で認識しやすい
- 一般的なお墓に近い感覚でお参りができる
といった安心感があります。「自然の明るさも大事だけれど、家のお墓という実感も大切にしたい」方に向いている樹木葬の種類です。
明るい雰囲気で前向きな気持ちになれる
芝生や花壇、レンガの小路など、ガーデン風に整えられた霊園も多く、従来の墓地に比べると全体が明るい雰囲気です。
「お墓だから暗い場所」「寂しそう」というイメージがやわらぎ、故人との時間を穏やかに過ごせる空間として選ぶ人が増えています。
都市部・首都圏でも選びやすい
シンボルツリー型の樹木葬は、郊外だけでなく都市近郊にも多く展開されており、
- 駅からアクセスしやすい
- 車を手放しても通える場所にある
といった条件と両立させやすい点もメリットです。
シンボルツリー型で注意したいポイント
シンボルツリー型樹木葬を検討するときは、次の点も確認しておくと安心です。
- 樹の種類によって、花粉や落ち葉の時期など季節ごとの様子が変わる
- プレートのサイズ・書ける文字数・デザインに制限がある場合もある
- 人気の区画から埋まっていくため、早めに検討した方が選択肢が広い
こうした部分は、実際に見学に行くことでかなり具体的にイメージできるようになります。「写真で見るのと、現地に立ってみるのとでは、印象がまったく違った」という声も多いため、候補が見つかったら見学を検討すると良いでしょう。
樹木葬の種類② 里山型
里山型樹木葬とは？
里山型の樹木葬は、もともとの山林や丘陵地、里山の自然環境を活かした樹木葬の種類です。
- 山や森の斜面、林の一角などを樹木葬エリアとして整備
- 自然の地形や植生を残しつつ、最低限の区画整備を行う
- 環境保全や森の再生活動とセットになっている霊園もある
「山や森が好き」「自然に抱かれて眠りたい」という想いに寄り添ってくれるスタイルと言えます。
里山型のメリット
四季の移ろいをダイレクトに感じられる
新緑・紅葉・雪景色など、里山の樹木は季節ごとに表情を大きく変えます。お参りのたびに、自然の変化から故人を思い出すきっかけが生まれ、「自然とともにある供養」を実感しやすい樹木葬の種類と言えます。
自然保護や里山保全に貢献できる場合も
里山型樹木葬の中には、里山の再生・保全事業と一体になっているケースもあります。このような霊園では、樹木葬を選ぶこと自体が、森や環境を守る活動につながります。
「自然に還る」という価値観に合いやすい
「最期は土に還りたい」「自然の一部として眠りたい」という価値観を大切にしたい方にとって、里山型樹木葬はとても相性が良いと言えます。
里山型で事前に確認しておきたい点
里山型樹木葬を選ぶ際は、メリットだけでなく次のような点もチェックしておきましょう。
- 最寄り駅から距離がある、坂道が多いなどアクセスが不便な場合がある
- 足元が土や砂利のため、雨のあとはぬかるむこともある
- 高齢の方や足腰の弱い方には歩きづらい環境になる場合も
とくに大切なのは、「今の自分が行けるか」だけでなく「10年後・20年後の家族も通えるか」をイメージして選ぶことです。
見学の際には、
- 最寄り駅から実際に歩いてみる
- 坂道や階段の数・勾配を確認する
- 真夏・雨の日のお参りもイメージしてみる
といった、少し先の未来を想像した視点でチェックしておくと安心です。
樹木葬の種類③ 合祀型
合祀型樹木葬とは？
合祀型の樹木葬は、複数の方のご遺骨を一緒に埋葬するタイプの樹木葬です。
- 樹木や供養塔の下に、多くのご遺骨をまとめて納める
- 個別の区画を持たないため、費用を抑えやすい
- ほとんどのケースで永代供養とセットになっている
「子どもや親族に負担をかけたくない」「シンプルで良いので、きちんと供養されたい」という希望に応えやすい樹木葬の種類です。
合祀型のメリット
費用負担を抑えやすい
合祀型では個別の区画や墓石の費用が不要なため、樹木葬の中でも比較的リーズナブルな価格帯で利用できることが多くなります。
永代供養付きで後継ぎがいなくても安心
多くの合祀型樹木葬では、寺院や霊園が半永久的に供養と管理を行う「永代供養」がセットになっています。お墓を継ぐ人がいない場合でも、供養されなくなる心配が少ないのは大きな安心材料です。
管理を施設に任せられる
遠方に住んでいるご家族でも、「信頼できる施設にお願いしている」という安心感を持ちやすく、心理的な負担を軽くしやすい点も魅力です。
合祀型で必ず確認したいポイント
合祀型樹木葬を選ぶ場合は、次の点をしっかり確認しておきましょう。
- いったん合祀されると、ご遺骨を取り出せないのが一般的
- 個別のお墓がないため、お参りは「供養塔」や「合祀墓」全体に対して行う
- 名前を刻む銘板の有無・記載年数・表示方法などは霊園によって異なる
そのため合祀型を選ぶ際には、
- 家族がどう感じるか
- 将来、お参りに来る可能性がある人は誰か
- 合祀というスタイルへの心理的な抵抗はないか
といった点を、前もって家族で話し合っておくことがとても大切です。
3つの樹木葬の種類を比較してみよう
シンボルツリー型・里山型・合祀型の違い
ここまでご紹介した3つの樹木葬の種類を、イメージでまとめると次のようになります。
- シンボルツリー型
…自然もお墓らしさも大事にしたい人向け。都市部や郊外でも見つけやすく、「家のお墓」という感覚を持ちやすい。
- 里山型
…山や森に囲まれた環境を重視したい人向け。自然の中で静かに眠りたい、自然に還りたいという価値観に合いやすい。
- 合祀型
…費用と将来の安心を重視したい人向け。シンプルな供養を望み、後継ぎに負担をかけたくない場合に選ばれやすい。
どれが「正解」かではなく、あなたとご家族の価値観に最もフィットするものが正解と考えるのがおすすめです。
後悔しない樹木葬の選び方のポイント
1. まずは自分の希望を“言葉”にしてみる
具体的な霊園探しを始める前に、まずは紙やスマホのメモに、あなた自身の希望を書き出してみましょう。
- 自然の雰囲気：公園のような明るさがいいのか、森の静けさがよいのか
- 立地・アクセス：駅近が良いのか、多少遠くても自然重視か
- お墓のスタイル：個別区画が欲しいのか、合祀でシンプルが良いのか
- 費用の上限：どのくらいの予算なら無理なく用意できるか
一度文字にしてみるだけで、「自分が何を大切にしたいのか」が驚くほどハッキリしてきます。この作業が、その後の選び方の土台になります。
2. 家族の気持ちも早めに共有しておく
樹木葬やお墓の話題は、どうしても避けたくなるテーマですが、実は家族の価値観を共有できる大切な機会でもあります。
いきなり「もう樹木葬に決めた」と切り出すのではなく、
- 「樹木葬ってどう思う？」
- 「自然の中で眠るお墓もあるらしいよ」
といった軽い問いかけから始めるとスムーズです。
とくに、
- 合祀型を選ぶかどうか
- 将来お参りをする可能性がある人は誰か
といった点は、事前に話し合っておくことで、後々のトラブルや後悔を減らすことができます。
3. アクセスと管理体制は「未来目線」でチェック
霊園選びで迷いやすいのが、「アクセス重視か、自然環境重視か」というポイントです。このとき役立つ視点が、
「今の自分」だけでなく「10年後・20年後の自分や家族」にとって通いやすいかどうか
という未来目線です。
あわせて、管理体制も重要な選び方のポイントです。
- 樹木や花のお手入れはどのくらいの頻度で行われているか
- 清掃・草抜きは誰がどのように行うか
- スタッフは常駐しているか、相談しやすい雰囲気か
- 合同供養や法要はどのくらいのペースで行われるか
こうした点を確認したうえで、「ここなら長く任せても安心できそうだ」と感じられるかどうかを、自分の感覚でも確かめておきましょう。
樹木葬を見学するときのチェックポイント
1. アクセスの体感
見学の際には、パンフレットやサイトの情報だけでなく、実際に移動してみることが大切です。
- 最寄り駅から霊園までの道のりは分かりやすいか
- 坂道や階段はどの程度あるか
- 車で行く場合、駐車場は停めやすいか・台数は十分か
「思ったより近かった」「想像より大変だった」など、体感して初めて分かることは多くあります。
2. 樹木と周囲の雰囲気
樹木葬では、現地に立ったときの空気感もとても大切です。
- シンボルツリーや里山の樹木の種類
- 日当たり・風通し・静けさ
- 周囲の騒音（道路・線路・工場など）は気にならないか
「写真で見た印象」と「実際に立ってみた感覚」が近いかどうかも、樹木葬の選び方の中では重要なポイントです。
3. スタッフの対応と説明のわかりやすさ
長く供養と管理を任せる場所だからこそ、運営している人の印象も重視したいところです。
- 質問に丁寧に答えてくれるか
- メリットだけでなく注意点もきちんと説明してくれるか
- すぐに契約を迫るような雰囲気がないか
こうした点を見ながら、「この人たちになら大切な家族を任せられる」と感じられるかもチェックしてみてください。
4. 契約内容・費用の“見える化”
最後に、費用や契約内容のわかりやすさも見学時に確認しておきたいポイントです。
- 費用の内訳が明確に提示されているか
- 管理料や永代供養料がどこまで含まれているか
- 将来、追加費用が発生する可能性があるとしたらどの項目か
ここがスッキリしていると、「お金の不安」が軽くなり、前向きな気持ちで樹木葬を選びやすくなります。
よくある不安と前向きになるためのヒント
Q1. 親族から反対されそうで心配です
A. いきなり結論を伝えるより、「情報の共有」から始めるとスムーズです。
突然「樹木葬にするから」と話すと驚かれてしまうこともありますが、
- 「樹木葬にはシンボルツリー型や里山型、合祀型などの種類があるらしいよ」
- 「お墓を守る人がいなくなる心配を減らしたくて、いろいろ調べているんだ」
といった形で、「家族を思って調べている」姿勢を伝えることで、理解を得やすくなることも多いです。
Q2. どの樹木葬の種類にするか決めきれません
A. 「100点満点の正解」を探すより、「納得できる選択」を目指してみましょう。
どうしても迷う場合は、次の3つに絞って比べてみるのも一つの方法です。
- アクセス（自分と家族が通いやすいか）
- 管理体制（永代供養・清掃・スタッフの印象）
- 費用（無理なく用意できる金額か）
そのうえで、「自分たちにとって一番しっくりくるかどうか」という感覚を大切にして選んでみてください。
Q3. まだ元気なのに、お墓のことを考えるのは少し抵抗があります
A. 元気なうちだからこそ、“自分らしい選択”ができるとも言えます。
生前に樹木葬やお墓のことを考えるのは、決して不吉なことではありません。むしろ、
- 自分の目で霊園を見て、自分で決められる
- 家族と笑顔で話し合いながら準備ができる
- 将来の不安を一つ減らし、今の生活をより安心して楽しめる
といった、前向きな意味合いがあります。樹木葬の検討は「死後の話」ではなく、これからの生き方を整えるための準備としてとらえてみるのもおすすめです。
樹木葬の種類と選び方のまとめ
ここまで、代表的な樹木葬の種類である「シンボルツリー型」「里山型」「合祀型」の特徴や、後悔しないための選び方のポイント、見学時にチェックしたい点などを詳しく見てきました。
・シンボルツリー型は、自然とお墓らしさを両立させたい人に向いた樹木葬の種類
・里山型は、四季の自然や「自然に還る」という価値観を大切にしたい人にぴったり
・合祀型は、費用と将来の安心を重視し、シンプルな供養を望む人に選ばれやすい
・どれが正解かではなく、「自分と家族の価値観に合うかどうか」で選ぶことが大切
・アクセスや管理体制は、「10年後・20年後の家族目線」でチェックするのがポイント
・見学では、雰囲気・スタッフの対応・費用のわかりやすさをしっかり確認しておく
・小さな一歩でも、今から考え始めることで将来の不安を大きく減らせる
最後に、今日からできる小さなステップを3つだけ挙げておきます。
- 自分が大切にしたい条件を3つ、紙やスマホにメモしてみる
- 気になる樹木葬の種類（シンボルツリー型・里山型・合祀型）を1つ選び、少しだけ情報を調べてみる
- 家族や信頼できる人に、「樹木葬ってどう思う？」と一言だけ聞いてみる
樹木葬には、あなたの「こうありたい」を形にできる選択肢がたくさんあります。「いつか考えなきゃ」から、「ちょっとだけ調べてみようかな」に変わったその瞬間から、あなたとご家族の未来は、少しずつ軽く、安心な方向へ動き出しています。
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